ただの社畜

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『本日の処刑により白陣営の勝利となりました。』

GMから告げられた言葉と同時に屋敷の鍵が開く音が聞こえた。

また。また沢山の人が死んだ。
何回繰り返せば。…一体何回繰り返せばこの【人狼ゲーム】というもから解放されるのだろう。

屋敷から出た瞬間意識がとびまた新しい1日が始まる。
その度に割り振られる役職が変わり騙し合いが再会される。

もう疲れた。もう解放してくれ。
もう、人を疑い続けるのも、アラを探し続けるのも、
殺されるのを怯えるのも、人の本性を目の当たりにするのも。
もう嫌だ。誰か早くこの地獄を終わらせてくれ。

喜んで屋敷を出る人に続いて屋敷のドアに近づく。
横目で今もなお屋敷に留まる少女を見る。
その子にそっくりな死体を見つめ呆然としている姿を確認する。
何度も見た光景。何度繰り返してもあの2人が揃って屋敷を出ている姿を見たことがない。
いや。もっと言えば今死体になっている子がこの屋敷のドアをくぐっているところを見たことがない。
それに蛇足するならば、今生きている子も結局屋敷を出ていない。

はは。あの双子は何度繰り返しても、屋敷から出てないことになるな。

そもそも同じ陣営になったことあるかな?
まぁ、僕には関係ないけどね。
…でも、僕はあの2人と何度も話して純粋に好感を持ってるんだけね。

あの狂った空間でも最後までブレず自分の意思を貫く人は少なからずいる。
頭の弱い抜けてるエマだったり、殺しあいを拒むミカだったり、自分の信じている人を愚直に信じるマイクだったり。
片割れを騙してでも生き残したいサンドラとどんな状況になっても2人で生き残りたいジェシカ。

うん。やっぱり裏表のない人は好きだな。
息をするのが楽になる。

意識が遠のく。今までいた屋敷がドンドン透けていく。
消えていく屋敷の中で泣きさけぶ女の子が見える。

あぁ。本当にクソだな。まごうことなきクソゲーだ。

この世界を最大限に睨んで目を閉じ、意識を手放す。

もう目が覚めないことを祈って。

====

嫌に頭に響く低い鐘の音で目を覚ます。

ハハハ。
神様には僕の声は届かなかったようだ。
もう記憶を継いでる同士を探すのはやめようか。
こんな記憶。持ってる方が最悪だ。

『1日目の議論を開始します』

GMにより指定された席につく。
何度席が変わろうと僕の対面にはサンドラが座る。
これも運命なのか?
…僕が君をどうにかして救いたいと思ってるからかなぁ?
ジェシカと共に会議の間に現れ、目の前に着席したサンドラと目があいニコリと笑う。

さぁ、今回こそ君たち2人を生かしてゲームセットするぞー!

と、他の人は絶対思わないことを掲げながら朝の挨拶をかわした。







あーあ。また始まった。今回も姉様を生かすぞー!



お題「向かい合わせ」
ロディ視点

8/25/2024, 1:51:43 PM