『Kiss』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
・思い浮かばなかったので曲パロです。
題名:カラクリ逃亡劇 作:夏山よつぎ
*:.。..。.:+・゚・*:.。..。.:+・゚・*:.。..。.:+・゚
これは、私の物語。
開演の合図がなってから、幕が閉じるまでの。
長くて短い、私の人生。
*:.。..。.:+・゚・*:.。..。.:+・゚・*:.。..。.:+・゚
うまれたときから、へいたいさんがいっぱいいた。
きょうもへいたいさんは、あっちにいったりこっちに行ったり。
「たのしそう、わたしもまぜて!」
でも、だれもわたしをまぜてくれなかった。
ひどいよ、みんな。
わたしだって、みんなとあそびたいのに。
*:.。..。.:+・゚・*:.。..。.:+・゚・*:.。..。.:+・゚
「お母さまなんかきらい!!」
そう言って、うら口から外に出た。
だって、お母さまがわるいんだもん。
わたしのこと、お外に出してくれないから。
わたしだって、お外にいってあそびたいのに。
はしって、はしった。
気がついたら、知らないばしょにいた。
絵本で見たまち。
だけど、ひとがいない。
なんでみんないないの……?
これじゃ、わたしとあそべないじゃん……。
「ここにいると、あぶないよ」
こえがきこえた。だれかいるんだ!
「こっち!」
まがりかどをまがったら、手を出された。
手をつなぐと、ひっぱられる。
いつのまにか、お空にはひこうきがとんでる。
ひこうき、はじめて見た。
「大丈夫?」
「うん! 大丈夫! それよりいっしょにあそぼ!」
「……うん!」
「ねぇ、名前、なんていうの?」
「ぼく? ぼくは××!」
「××くん! 覚えたよ!」
*:.。..。.:+・゚・*:.。..。.:+・゚・*:.。..。.:+・゚
あれから15年。終戦は、来なかった。
今も、沢山の兵士が戦いに出て、勝って、敗れて。
10年前に見たものの正体がすべてわかった。
……いい気ではない。
お父様方は、言うんだ。
「これは正しい戦争だ」
って。
隣の国との戦争は、おさまるどころか激しくなる一方。
あの少年は、無事だろうか。
また、会いたい。
でも、名前忘れちゃったから。
きっと、会っても気が付かない。
……。
「あぁロミオ! ロミオよ! 貴方はどうしてロミオなの? そのロミオという名前をお捨てになって! そうしたらわたしも、この名前を捨てるわ!」
うろ覚えの『ロミオとジュリエット』。
すごく感動したの、ジュリエットの考え方に。
多分私は、彼のことが好きなんだ。
だから、きっと……。
*:.。..。.:+・゚・*:.。..。.:+・゚・*:.。..。.:+・゚
ラブレターを送った。
10年前の、あのときの絵を描いて。
でも、いつまで経っても返ってこない。
あたりまえよ。こんな戦争の中じゃ。
きっともう、灰になっているわ。
もう、会うことは出来ない。
すごく、悲しい。
でも、仕方ないのよ。
愛じゃ国境は越えられないの。
*:.。..。.:+・゚・*:.。..。.:+・゚・*:.。..。.:+・゚
「返ってきた! 本当に、彼からなのね!」
手紙には、告白の返事、戦争について。
そして、最後の1文。
『僕等が奪い合って手に入れた物ってなんだろう』
この文が、頭から離れない。
この文がいつも、頭をよぎるの。
やっぱりこの戦争は、正しくなんてない。
今だって、人が亡くなっているんだもの。
この戦争は、早く終わらせなくちゃいけない。
*:.。..。.:+・゚・*:.。..。.:+・゚・*:.。..。.:+・゚
「いい加減認めて!! この戦争を続けてたってなんの利益もないの!!」
でも、両親も誰も認めてくれない。
もう、諦めよう。
戦争を終わらせられないのなら、私と彼で幸せになってみせる。
でも、ここにいるだけじゃ幸せが掴めないのなら。
家を飛び出る。
周りは血の海。
今まで見ないようにしてきた現実。
少しだけ記憶のある景色につく。
「君達!! 早く!!」
懐かしい顔が見える。
あぁ、貴方は何1つ変わっていない。
初めて会った、あの日のままだ。
「ずっと、貴方に会いたかった」
Kiss
くちづけや 交わす吐息と 止まる言の葉
「どなたか、私とKissをしてくれませんか」
1人の女性が、街道を歩く男性に1人ずつ声を掛けていく。
とても美しい女性だった。
声を掛けられた男達は、みな驚いた様に目を開き、少し考えると、どこか恥ずかしげに、どこか遠慮がちに首を横に振った。
その様子を見ていた私は、せっかくあんな美しい女性とキッスが出来るのに馬鹿だなぁと思った。
女性は道ゆく男達に順番に声を掛けていく。
いよいよ、次は私の番だ。
当然、私の答えは決まっている。
濃厚なKissを、夜が明けるまでしてやろう。
なんなら、場所を変えたっていい。
などと考えながら、胸を踊らせ女性がこちらに来るのを待ち構えていたのだが、
女性は私を素通りして、後ろを歩く男性へと声を掛けていった。
『Kiss』
新幹線に乗って、恋人の元へと向かっている。
遠方に住む恋人とは月に二度ぐらいの頻度で会えていたのが、流行り病が猛威を振るいに振るったせいで気軽には会えなくなってしまった。テレビ電話で連絡を取ってはいたけれど画面越しでは手も繋げないし抱き合えもしない。数年に渡る流行は互いの想いを募らせていった。
テレビや新聞で流行り病の扱いが引き下げられると発表されたその時に手配した新幹線がゆっくりと駅のホームに停車する。改札口で待っていてもよかったのに、恋人は降り立ったホームで待ち受けていた。お互いを確かめ合うように抱き合い、画面越してもマスク越しでもないキスをする。二人の間に涙の匂いが漂っていた。
(※百合注意)
彼女の熱が唇に残っている。
「どう? チョコレートの味した?」
こちらを見つめる彼女の視線から逃れるように、私は顔を逸らす。唇からの熱が頬へ、鼻先へ、耳の先まで広がっていく。
外は今年初めての雪が降り始めている。
「なに、してんの」
やっと絞り出せた声は、びっくりするほど情けなくて。
「かわいい」
「やめて」
再び顔を近づけてくる彼女を押し除けようとする。
「誰か来ちゃうよ」
「来ないよ」
「なんで」
「みんな雪に夢中だから」
昼休み。北校舎隅の生徒会室。校庭の喧騒が遠く聞こえる。降りしきる雪が私たちから音を奪っていく。
「誰も見てないのに、いつまで生徒会長の顔してるの?」
「やめて、城山さん」
「香奈って呼んで。昔みたいに」
彼女が私の頬に触れる。触れた場所が痺れそうになる。
彼女の吐息は甘い香りがする。
【お題:Kiss】
部屋の主はソファと一体になっていた。2人掛けのソファに横になって抱き枕を大事そうに抱えて、スヤスヤと寝息をたてている。
「待ちくたびれたんだろうな」
それだけ待たせてしまったという自覚があった。時計を見やれば、戻ると伝えた時刻から長針がふた回りも進んでいる。マグカップの中身も中途半端に残って冷めていた。
ちょっとだけ横になって、すっかり夢の国から抜け出せなくなってしまったお姫様は見られてることも知らないで幸せそうに寝ているから、膝立ちになって覗き込んだ。
正直な君の瞳は目蓋に覆われて、おしゃべりな口だって静かだった。少しだけ開いているから桃色の唇は乾燥しかけて、人差し指を押し当てて閉じてやる。
ふにふにと柔らかくて厚みがあって食べたら美味しいのだろうなぁ、と腹を空かせた狼に狙われているだなんて微塵も思ってなさそうな寝顔。
起きる気配もないものだから調子に乗って指先でつついていると食べられそうになって慌てて止めた。
「する場所で意味が違うんだってね」
前髪を払いのけた額と目蓋にただいまのキスをするとまつげに触れて君がくすぐったそうにする。
顔周辺だとあからさまに君を起こしているようで気が引けて、ぬいぐるみを抱く手の甲にまたひとつ。その手を取って手首に口付けて、手の平に再びキスを落とした。
「今の俺にぴったりだな」
このままにしてあげたいけど、ちょっとだけ起きて構って欲しいな、なんて。
真夜中の原宿で、階段に座り込んで一晩中お喋りしたね。
あの時あなたがキスしたがっていたことに気づけたら、もしかして未来は変わっていたのかな?
ずっと聞けずにいる。大人になった今も。
唇を合わせる、親愛のkiss
庇護愛、純愛、そして束縛の執着愛。
もうこの人に他の人に触れさせないという、独占欲の愛。
このキスには、たくさんの意味が込められている。かもしれない。
『Kiss』
キスに味があるとはよく聞くけれど、
そのどれもが今一つ要領を得ない不安定な答えばかり。
甘いだの苦いだのならまだしも青春の味ってなんだ。
そんな幻想的で甘美な夢を見るような年頃でも無く、
ただ私は実在的な本物の味が知りたい。
そう私は熱弁すると、君は悩むように空を見上げていたが、
意を決したように煙草を灰皿に押し付け、
虚空へ紫煙を吐き出した。
手招きされるままに君の元へ歩み寄る。
辺りに漂う煙草の煙に思わず顔を顰めた。
手を伸ばせば触れられる距離まで近付いたその時、
ぐいと腕を引かれて君の元へと引き寄せられると、
そのまま唇を奪われる。
初めてのキスは苦い煙草の香りと、
フレーバーの甘ったるいバニラの味が混ざった何とも言い難く、
少なくとも青春の味とやらからは程遠い程にありふれた味がした。
どれくらいそうしていたのかまるで覚えていないが、
どちらとも無く唇を放す。
どうだった? と、何も無かったような顔で言う君に
何だか無性に腹が立って、胸ポケットに入っていた煙草を奪い取る。
こいつと同じだよ、私は舌を出して君にそう告げた。
1000年先でもいいから
また
ママの子に生まれたい
お題:Kiss
「殺して」
Kiss meと言おうとしてやめた。だってよく考えたら僕達「キスして」なんて甘い関係じゃない。笑えるよね。
なのに僕ったらKill meなんて熱烈な告白しちゃったよ。
今まさにkissで悩んでいる。
恋人同士のキスを漫画に描く上で、唇と唇の触れ合う絵は必要だろうか。
あった方が俄然盛り上がるのはわかる。
それが応援しているカップルなら尚更だ。
でも、どうしても、本当にしょうがないのだけれど、キスしてる絵を書いてその上更に全世界へ公開するというのは、なんだかとても恥ずかしい。
歳を感じつつ、興味がまるで別の方向へ進んでいる自分も感じる。
同年代の既婚者が、浮気バレた!って騒いでる話を聞くと、なんで配偶者とは別の人と関係を持ちたがるんだろ?と思う。
いや、否定的な考え方ではないけれど、まだそういう事に興味関心があるんだ?!という部分に唖然としてしまう。
いや、最初がね、飲みに行って、酔った勢いでKissしちゃったらさ、なんかそんな流れになって、それからよく会うようになって、気がついたら5年?
よくこんなに続いたと思うけど、なんとなく切れなかったんだよね。
って、それ。言い訳のつもりか?
そんなにイイオンナだったの?
うーん。。セフレだったんだけどね。情が入ってさ。
へぇ。
幸せなのは貴方だけで、その女性も奥様も、みんな不幸だね。
気持ちワルッ!!
奥様、離婚する!って騒がなかったでしょ?
う、うん。、え?なんでわかる?
ふふふ、ただで済まされると思ったら大間違いだから、今のうちに身綺麗にしておいた方がいいよー、もう遅いけどな!
え、、怖!
あはは!ボロ雑巾め!
41.Kiss
私はずっと仲のいい幼馴染がいる。
幼稚園、小学校、中学校高校までもが一緒で私の隣にはいつも幼なじみがいた。私はあなたがいるだけで
いいと思った他の人なんて眼中にない。
あなたのことだけしか見ていなかった。
あなたに恋をしていた。
でもそんなことを言ってしまえば、この関係が壊れてしまう。そんなことは嫌だからこの感情は押し殺していた。
でもある日突然、君は私の隣からいなくなった。
友達ができたんだ。部活も初めて仲良くなる人が増えたって、とても楽しそうに話してくれた。
それを聞いて私の心はキュッと苦しくなった。
ずっと一緒にいたのは私なのに。
そんな奴らと一緒に居ないでよ。
私とずっと一緒にいるって約束したじゃん。
そう思うようになっていた。嫉妬心が強かった。
こんなにもあなたのことが好きで、
小さい時から一緒でずっと一緒にいられると思っていた。あなたがほかの人と話しているのを見ると胸が苦しい。あなたは彼氏が出来たようで顔を赤らめながら男と話しているのを見ると悲しくなる。
久しぶりに泊まりがけで遊ぶことになった。
私は胸がドキドキで緊張で張り裂けそうだった。
でも君はそんなこともお構いなしに近づいて、
一緒にゲームしてお話してとても楽しかった。
その時間だけは君を独り占めできた。この時間が終わらなければいいと思った。
でもそんな願いは叶えられない。いつの間にか寝落ちしていたようで床で2人で寝ていた。
君の寝顔を見て胸が高鳴る。とても綺麗で見とれてしまっていた。ふと気づくと私はその寝顔にキスをしてしまった。自分の感情が抑えられなかった。
「好きなのに、こんなに苦しいなんて…好きだよ。
世界で1番好き…だったよ。」
もうこんな恋はやめよう。もう実らないのだから。
そう思いながら君に布団をかぶせ、眠りについた。
「一応、チョコとコスメと、炭酸飲料の名前に『Kiss』が使われてるのは確認したわ」
あと、大量の「Kiss」の歌な。某所在住物書きはネット検索から顔を上げ、窓を見た。
今日は都心でも降雪・積雪の可能性があるという。「雪」をネタに、「白が地面にKissをする」とでもしておけば、そこそこエモいハナシは書けるだろう――物書きにそれを可能にする力量があれば。
「……いや、地面にKissは、それ、多分凍結路面で滑って尻もちの図か」
物書きはため息を吐いた。尻もちなら雪より書きやすかろうが、過去の失態を思い出すので遠慮したい。
――――――
私の職場に、雪国出身っていう、長い付き合いの先輩がいる。藤森っていう名前だ。
冬はたびたび最「高」気温が氷点下になって、時折歩道も車道も無料のスケートリンクに早変わりして、だいたい建物の2階から飛び降りても雪が受け止めてくれるくらい雪が降る。
そんな先輩でも、東京の積雪は怖いらしい。
大多数の人が雪に慣れてないから。それと、積雪路面をノーマルタイヤで走行してる車がいるから。
今日は昼から大雪の予想。
職場からも「無理に出勤せず、リモートワークを活用してください」のメッセが来たし、
先輩も明日と明後日必要になるであろう食材を買い終えて、準備万端整った上で在宅籠城らしいし、
私も、明日と明後日が賞味期限の食材を冷蔵庫から持ってきて、自主避難&リモートワーク。
やって来ました先輩のアパート。
雪国出身の先輩には事前に避難受け入れの要請。
「諸事情で稲荷神社の子狐が遊びに来ている。それでも構わなければ」ってオッケーしてもらえた。
これから24時間くらい、お世話になります。
「おじゃましまーす」
防音防振整った先輩の部屋。外の騒音は入ってこなくて、茶香炉の香りが優しく、穏やかに広がってる。
「寒かっただろう。ホットミルクを用意してある」
早くもデスクで仕事に取り掛かってる先輩。
少し離れたテーブルには、ウォーマーに乗っかったマグカップが準備されてる。
その横には少しのポテチとキューブチョコの小皿。
小さなサンドイッチ4個セットは、朝ごはん食べてきてない私への気遣いだろう。
そういうとこだぞ先輩(朝ごはん助かります)
で、先輩の部屋に遊びに来てる、っていう稲荷神社の、子狐ちゃんだか子狐くんだか知らないけど、ともかく何してるかといいますと、
淡々とキーボード叩いてる先輩にしがみついて、
うんと首伸ばして、
先輩の唇に、Kissしてた。
Kissというより、ちゅーかもしれない。
尻尾ぶんぶん振り回して、耳もぺったん幸せそうに畳んで、舌でベロンベロン。一方的べろちゅーだ。
先輩の部屋は、確かに防音防振で、外の音はあまり入ってこないけど、
この尻尾ブンブン、舌ベロンベロンのモフモフが、
くぅー、くわぅー、
ってバチクソ幸せそうに鳴いてるのだけは、室内のハナシだからよく聞こえるのだ。
わぁ。子狐というより子犬。
「先輩無事?」
「寄生虫と狂犬病は対策済みだそうだ。問題無い」
「そっちじゃなくて。ベロンベロンのべろちゅー」
「……そのサンドイッチを食い終わったら、面倒だが、例の神社に子狐を置いてきてもらっても?」
「らじゃ」
先輩から子狐を引っ剥がして、抱っこして、おなかを撫でてあげると、
今度は私にベロンベロンのベロキッスをしたいのか、前足でよじよじ、服を引っ張ってくる。
サンドイッチ食べてホットミルク飲んで、ポテチかじって、チョコをぽいちょ、口に放り込んだら、
子狐抱えて部屋を出て、この子の飼い主が居る稲荷神社まで、ちょっとお散歩だ。
別に、雨っていう雨も降ってないし、雪っていう雪もまだまだだったけど、
スマホの予報によると、2時間3時間後、東京に雪が降るらしい。
初めてのキスは甘いとよく言われるけど
額への口付けや手の甲への口付けが初めてのキスだったら
その時はどんな味がするんだろうか
マメ豆腐
最近では、ちょうどこの時期に新垣結衣のCMが美しかった「Melty Kiss」なのかもしれないけど、子どもの頃には「Kiss」というそのまんまのチョコレートがあって、円錐形というかちょっとヘタったスライムみたいな小さなチョコが、ひとつづつ銀紙に包まれて大袋に入ってた。
これは当時からカカオの味がした。
「ねぇ〜、キスしよーよー」
誰が見てもおねだりとわかるように言った。
「そ、それは…ちょっと、だめ…かな」
彼はおどおどしながら言った。
「やっぱりだめ?」
「いつも言ってるだろ?僕のトラウマを共有したくないって」
現在、科学的に解明されていないが、稀に、キスをすると、キスをした相手の記憶を見れてしまう人がいる。私達はどちらもその体質を持っている。
彼は過去に犯罪の被害者となり、私にその時の記憶を共有したくないと言うのだ。なので付き合って2年になるが、一度もキスできていない。
「私はあなたに私の全部を知って欲しいのに」
「君だって生々しい犯罪の記憶なんて見たくないだろう?」
「別にそんなことないよ。とにかくあなたとキスしたい!」
もう我慢の限界である。はやく!いっぱい!2年分!すっごくキスしたい。
「ねぇ、もう無理。キスする」
「ちょっ、ちょっと待って。だめだって」
そんな言葉は耳に入らず、あとずさりする彼に足でドスドスいわせながら近づき、そのままソファに押し倒した。
「あなたの胸ぇ、あったかいねぇ」
顔を彼の胸にスリスリしながら、媚薬を盛られたのかってぐらいとろけた声で言った。
「しちゃだめだよ?君に苦しい思いをさせたくないんだ!」
もちろんそんなこと関係無く、彼の顔に近づいた。
「するね?」
「だ、だめ…」
彼は顔をそらしたが、私が力強く正面を向けさせ、そのままキスした。
彼の記憶がなだれ込んでくる。
小さな病室に、何人もの死体。その死体を生み出しただろう、腕が細い、小さい女の子のような、仮面をつけたバケモノ。
場面が変わった。
死体のふりをして隠れていた彼の顔を覗き込む例のバケモノ。馬乗りにされ、小さい手と腕から刃の大きいナイフが彼の喉に突き立てられる。
「あなたは私と同い年だと思うから見逃してあげる」
そう言ってバケモノは彼を気絶させた。
「…っ…はぁ」
長いことキスしたので息があがった
「あぁ…あ、あぁぁ」
彼は怖気付いていた。顔は恐怖に染まっていた。
「へぇ、あなた、あの病院にいたんだ?」
「そ、そん…な、嘘…だろ?」
とても震えた声で問いかけてきた。
「だいじょぶだって、私もう足洗ったから」
「ば、バケ…モノ…」
彼はソファからずれ落ち、そのまま後ろの壁に向かってあとずさりした。
「あなたのことは大好きだよ?殺せないよ」
どうやら彼は私の初犯の記憶を見たらしい。
「や、やめて!助けて!」
ついに彼の背中が壁にぶつかり、逃げ場を失った。
「だから殺さないし殺せないってば。もう殺しなんてやってないし、刑罰も受けて反省してるって」
「嫌、いやだ!やめて!」
「あなたには愛することしかしないよ?安心して?好きだよ」
「はぁ、あぁ、来ないで!やめろぉ!」
彼は泣き、叫び続けた。
「顔が汚れてるあなたもかわいいね?好き」
壁によたれかかっている彼の頭を撫でた。
「あんな過去、忘れられるくらいに、今の私に溺れて欲しいな」
そこから私達は、キスと絶叫を繰り返した。
かくして彼と私は狂依存の道を歩み始めた。
結構面白いかな〜?
「kissだってさ。信じられるか?」
吐き捨てるようにそう言って、ぐいと酒を煽る。
「軟弱な、あまりにもロマンチストぶった音だ。好きじゃないね」
英語というものが良くも悪くも日常に浸透しつつある今日に、こんなことを平然と吐き捨てるとは。僕は汗だくになったグラスにそっと口を添えて、さも呼応しているかのように軽く唸る。向かいに座る男は大袈裟なまでに溜息をついて、正気を失ったようなギラつく視線をこちらに向けた。
「またこれで母国語の力が落ちて、ついには日本語と英語のハーフの、軟弱な言葉が台頭するんだぜ?難しい漢字を使う単語や文言の意味はわからない人が増えて、喋り言葉以外の文章を正しく読みとれない人も増えるだろうよ」
僕は空返事をする。そんな大きな話をこんなところで愚痴ったところで何も変わらないし、変えられない。そもそもこんな話をするためにこの男は、平日の仕事終わりに僕をこんな居酒屋に呼び出したのか?適当に、と言うと亭主が好き勝手に料理を作って持ってきてくれる、もはや家のような居酒屋に。
テーブルの向こうの酒飲みは、グラスを傾け、残り少ない酒の波を見つめている。楽しくない食事会、もとい飲み会に参加するのは不本意だった。
「それで、例の彼女とは上手くいってるの?」
僕は鎌をかける。男ははっと目を開いたかと思うと、先程の猛然とした様が信じられなくなるほど、落ち着かなげに体をゆすり、口元を緩めた。
「愛してるも言わなければキスもしてくれないのかって、毎日可愛いことを言うんだ。行ってきますのハグをして欲しい、とかな。恥ずかしいって俺が言うと、からかうように笑うんだ」
ほら来た、そんなことだろうと思ったよ。
僕は溜息に音を乗せて、まるで面白がっているような返事に聞こえるそれをグラスの中に響かせた。ぬるくなったお茶を少しだけ口に入れる。
そこから火がついたように、男はあれやこれやと惚気けだした。酒の力で愛を語り、聞いているこちらが胸焼けするような惚気を垂れ流し、時折視線を落とし静かに幸せを噛みしめている。的確な相槌を挟み、並べられた料理に箸をつけながら僕は、酒飲みの戯言は話半分で聞けよと、下戸の爺さんが言っていたことを思い返していた。
Kiss
どうしよう。
大丈夫。
なるようになるだけ。
愛情はやさしく触れるだけで
伝わる。Kissのように。