Morita

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(※百合注意)

彼女の熱が唇に残っている。

「どう? チョコレートの味した?」

こちらを見つめる彼女の視線から逃れるように、私は顔を逸らす。唇からの熱が頬へ、鼻先へ、耳の先まで広がっていく。

外は今年初めての雪が降り始めている。

「なに、してんの」

やっと絞り出せた声は、びっくりするほど情けなくて。

「かわいい」
「やめて」

再び顔を近づけてくる彼女を押し除けようとする。

「誰か来ちゃうよ」
「来ないよ」
「なんで」
「みんな雪に夢中だから」

昼休み。北校舎隅の生徒会室。校庭の喧騒が遠く聞こえる。降りしきる雪が私たちから音を奪っていく。

「誰も見てないのに、いつまで生徒会長の顔してるの?」
「やめて、城山さん」
「香奈って呼んで。昔みたいに」

彼女が私の頬に触れる。触れた場所が痺れそうになる。
彼女の吐息は甘い香りがする。


【お題:Kiss】

2/5/2024, 3:45:00 AM