Morita

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3/6/2026, 1:19:17 PM

金の糸で「絆」と刺繍されたお守りが打ち捨てられていた。

拾い上げ、前を歩くブレザーの背中に声をかける。

「ねえ、これ美冬の」
「いらない」

彼女の声はいつになく尖っていた。

「でも」
「いらないってば!」

差し出したお守りは手荒くはたかれ、足元の水たまりに落ちた。泥が跳ねて「絆」の文字が黒く汚れた。

「ちょっと」
「塾やめる」
「そんなこと」
「落ちた人間なんかいない方が良いでしょ」

みんなで一緒に志望校を目指そう。試験日直前に赤井講師から塾生全員に渡されたお守り。どこまで熱血なんだか、と失笑しながらも、私たちはおそろいのそれを試験日も、そして合格発表の今日も、持ってきていて。

「待ってよ、美冬」

立ち去ろうとするその腕をつかむ。意地でもこちらに顔を向けないが、その頬からいくつもの涙がこぼれ落ちていくのが見えた。

「離して。どっか行って。ひとりにして」

絞り出すような声だった。

「やだ。一緒にいる」
「今すごく、意地悪なこと言いそうだから」
「言っていいよ」
「なんなの」
「いちごパフェ」
「は?」
「ね、これから食べに行こうよ。試験終わったら一緒に行こうって、約束したじゃん」
「二人で受かったらの話でしょ、それ」
「食べたっていいじゃん」

受かっても受からなくても、美冬は私の大切な友達だから。

水たまりに落ちたお守りを拾い上げる。泥を拭いてもう一度差し出す。

「……前から思ってたんだけど」

お守りを見て、美冬がぽつりと言った。

「これ、デザイン、ダサすぎ」
「いやほんとそれな」

目を腫らした美冬は、私の顔を見てちょっと笑い、差し出したお守りを受け取った。

【お題:絆】

3/5/2026, 12:34:28 PM

(※GL表現あり)



「たまには私がやっても良いでしょ」
「えー?」

返事を待たずに、私はトモカの後ろに回り込み、彼女のセミロングの髪に櫛を入れた。

「わーなんか恥ずかしっ」
「私のは毎朝触るくせに」

美容師のトモカはオンでもオフでも人の髪をいじるのが好きで、とりわけ私のは彼女のお気に入りだった。

「みーちゃんのはツヤツヤだからいーの。ウチ枝毛だらけっしょ。そういうの何だっけ、高野豆腐の白パンツ?」
「紺屋の白袴ね」
「そーそーそれそれ、コーヤコーヤ」
「パンツはないわ」
「えっじゃあコーヤはパンツも藍色ってこと?」
「知らん」

トモカの髪はサラサラだ。アッシュグリーンの毛束に触れてみれば、さらさらと指の間をすり抜ける。淡く甘やかな大人の香り。

「二つ縛りの三つ編みにしようかな。先っちょにピンクのリボンつけて」
「あはは、こないだの。根に持ってるのウケる」
「ほどくの大変だったんだからね、あれ」

外で鳥が鳴いている。レースカーテン越しの朝の日差しは柔らかい。

サービス業のトモカと会社員の私の休みが重なることは珍しくて、だから今日は少し特別な日。

彼女の髪をかきあげる。白く光るうなじが美しくて吸い寄せられて、思わず唇を寄せる。

トモカが振り返り、私に応えた。

【お題:たまには】

3/4/2026, 11:37:17 AM

「大嫌い」

君の息の熱を感じる。
紅潮した滑らかなその頬を撫でると、君は体に電気が走ったようにびくっと震えた。

許しを乞うように、うるんだ瞳がこちらを見上げてくる。ぞくぞくする。その視線。その熱。





【お題:大好きな君に】

3/4/2026, 9:03:47 AM

ひなあられを肴に酒を煽る独身女性32歳

【お題:ひなまつり】

3/3/2026, 2:58:37 AM

6個入りのピノの箱に、たったひとつだけピノが残されている。

前向きに捉えるなら「一個も残っている」と言えるかもしれないが、これは私が私のために私のお金である180円を払って買ってきた貴重なものなのだ。それが食われている。誰かによって。5つの虚無ピノと空になった5つの窪みは、その事実を私に知らしめる。

「誰だ」




【お題:たったひとつの希望】

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