仕事やめちゃいなよ。と、ささやきが聞こえた。
空耳かもしれない。駅のホームで行き交う人の声を拾ってしまっただけかもしれない。それでも私は、そのささやきに強く惹かれてしまった。
元々向いていない仕事だと分かっていた。
一週間で50組のカップルを成立させろ。というのが上司から課せられたノルマで、支給された弓はオンボロで、矢はなぜか48本しかなかった。
50組のカップルを成立させるには、普通に考えれば100本必要なはず。どちらかが片思いで、それをくっつけるにしても、50本は必要だ。
上司に掛け合ったところ「自分で考えろ」の一点張り。
頼みの綱のサポート役の先輩も自分のノルマで忙しく、「なんかこうガーッとやってバーッ!」で終了。
ちなみに私は学生時代は弓道部ではなかったし、彼氏いない歴=年齢の干物女。矢ってどうやって打つんですか?張り詰めた糸の力で飛ぶのは分かるけど引っ張る間とうやって固定するの?ゆびぢからオンリーなんですか?なんて愚痴っていたら早3日が過ぎてしまい。
【お題:ささやき】
4/21/2025, 3:39:41 PM