『0からの』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
―0からの―
推し俳優のTさん
5月に主演映画がある。
もし、記憶を消せるならTさんの事全て忘れてその映画を観てみたい。
初めてTさんのお芝居を観た時の感動をもう一度味わってみたい。
その双眸越しに、己の過去を見ている。
まるでわたしが水子に成り損なったのを、
見抜かれているような、
指摘されているような、
酷く懐かしく、心が騒がしくなるその瞳に
逃れるように、口を開いた。
これは零からの、0からの、nilからの、
無に成る筈だったわたしからの、
音のない
さ
え
ず
り。
《0からの》
人は何故こんなにも生きたがるのか私には、分からない。
生きたところで死んだところで変わることは何も無い。
そんな世の中に生きている私たちを、
どんな目で神様は見ているのだろうか。
テーマ“0からの”
ボクには何も無い。
名前も、居場所も、家族も、友達も、仕事も、恋人も、趣味も何も無い。
昔はあった気がする。
どのくらい昔なのか、それさえも憶えていない。
気がついたら、ココに居た。
ココが何処で、ココが何なのか
さっぱり分からない。
ただ、何故か知らないけれど
物凄く派手な格好の人に、カラフルな服、カラフルな髪色、カラフルなメイクをしている人に
歓迎されている。
カラフルな空間で。
ハート型や星型のバルーン、壁や床もカラフル。
カラフル過ぎて目が痛い。
でも、ボクは、真逆な
とてもシンプルな、真っ白な服装。
しかも何だか、これは………死装束…的な
え
ボク死んだの。
死んでたの。
呆然とする。
カラフルな人は、ボクに言った
「貴方は新しい人生を歩みます。コレはその送迎会なのですよ!」
「送迎…会?」
「はい。新しい人生へ送り出す為の会」
「……」
「あれれ?嬉しくないですか?」
「分からない…です」
「まあ、確かに、生を受けると言う事は、嬉しい事だけじゃないです。産まれてすぐ、また、コチラ側に戻ってくる人も少なくは無いですし。」
コチラ…側。
「でも、その時はその時で歓迎会をします」
「…えー…」
思わず声を上げる。
それはもう、嫌そうに。
「アチラ側で悲しかった分、コチラ側では笑わせてあげたいのです。喜ばせてあげたいのです。勿論、長くアチラに居た人の場合は、お疲れ様会になります。まあ、どちらでも無い場合は、まあ。それなりに何かしらの会が行われます」
何かしらの会…とは。
恐らく、その人の死に方に寄って変わるのだろうか…。
じゃあ、ボクも……?
記憶を遡ろうとするけれど、何も思い出せない。
「でも、ボク、何もされてない」
「そりゃあそうですよ。その時の事は全て忘れます。今、この時も、アチラ側に行く寸前に忘れます。」
「何で」
「0からのスタートさせる為に、何も憶えていない方が良いからですよ。コレは前の事を全て忘れさせる為の会ですから。さあ!楽しみましょう!」
今日は何かを作る予定だ
オリキャラを作るか全く違う料理を作るか
さぁ。今日は何を0から始めようか
❲0から❳
《0からの》
毎日が苦痛でした。
ある日には
「あなたは、私以外と接する人間も少ないでしょうから、この職場でコロナワクチンを打つのは最後でいいわね?他の職員から優先的に接種してもらいますから」
と言われました。
自宅待機させてくれるかと思いきや
毎日出勤しなければなりませんでした。
また、ある日には
痩せた私を見ては、
「その腕、細すぎて血管が浮いてて気持ち悪い」と
言われました。
見せないように、アームカバーを着けていれば
「なにそれ、不潔」とあからさまに嫌な態度をとられました。
こんなことを言われるために
側にいるわけではないのに
心は拒みますが身体は抗うことはできませんでした。
感情も次第になくなり、気持ちの起伏は
少しずつ真綿で絡め取られていきます。
「あなたのことは、大事に思っているから」
疑心しかないのに
どこかでその一言にしがみついていたんだと思います。
どの口がそんなこと言うんだろう?
とこからその言葉が出るんだろう?
気になって仕方ありませんでした。
この日
彼女は
私のそばから立ち去り際に、床の段差に
つまづいて転びました。
倒れた彼女に馬乗りになりました。
そして
どの口がそんなこと言うんだろう?
とこからその言葉が出るんだろう?
口を開けやすいように両手で歯を持ってこじ開けました。
顎を外して、手を入れやすいようにして
右手を突っ込んでさがしました。
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「これが当時の、あなたの調書です。」
「何か、思い出すことはありませんか?」
「些細な事でも気になったら、看護師さんに伝えてください。」
と担当警部補達は帰っていきました。
・・・誰のこと、書いてあるんだろう?
担当警部補さんは
さも私が殺めた口ぶりだ。
このところ、毎日同じ事を質問される。
だけど、何も思い出せない。
《やっと他人になれたんだね。よかったね》
《こんな嫌な奴、0からやり直すこともないもんね》
何度も読まさせるけど、そう思う。
そう思う事を、看護師さんに伝えたほうがいいのかなぁ。
千篇一律なアフロの軍団。全身真っ白でいかにも清潔な布を身にまとい、声もなくただただ追ってくる。
四方八方真っ白な空間。
どこが光源なのか分からないが、とにかく影とのコントラストからできる凹凸のおかげで、ここが施設内であり廊下であることを脳が認識できた。
ペタペタと廊下に足をつけているのに、埃がつく感覚はまったくない。行き先が閉ざされていても、近くまで来ればおのずと開いてくれる。
口から「ハッ、ハッ」と空気の出入りもなく。
ドクンドクンと首の下から音と振動が伝わってきて、それが激しくなるたびに苦しい。
広い空間。
横長に広く、何か四角いものが床の上に生えていた。行きどまりかと思ったが、プシューッと音をたてて開いたから。
迷わずに足許の隙間を乗り越えて。
すると、アフロの軍団が隙間を乗り越える前に壁が閉まった。壁の上半分は透明で、隔てた向こう側――アフロたちがよく見えた。
それらはぴたりと動きを止め、直立不動。
じーっと黒目だけが追ってきている。
頭上から、
『■■■■行き、只今発車致します』そう声が。
それと同時に地面がずれてゆく。揺れとともに前方へ進んでゆく感覚。どんどんとアフロたちが遠くなって、途切れた。
突然の大きな揺れ。
身体が後ろに持ってゆかれ、転ぶ! と思ったが、何か、やわらかいものにぶつかって倒れずに留まった。
また頭上から同じ声が、
「この先揺れることが御座います。お気をつけ下さいませ。こちらに御座います座席にどうぞご着席を」と。
見上げれば、三メートル以上はありそうな人型。
鋭い眼光が見下ろしてきて竦む。それにしては、引かれる手はひどくやさしい。
……凄まじい眼光には思わず目を背けてしまうけれど。
動きが停まった。
壁の透明部分からはアフロが見える。
それが近づき切る前にふたりが走り込んできた。手をつないで、後ろを見て呆然とする顔はよく似ている。
同じように大きな人型は座席に誘導した。見れば、長い座席には何人もが座ってそわそわしていた。
気がつかなかっただけで、数は多い。
それらを見渡した大きな人型は、
「ご乗車有難う御座います。こちら、始号は終着駅まで停車しない特急列車で御座います。お降りのさいは声をかけさせて頂きますため、それまでどうかお座りになってお待ち下さいませ。間食は車内にてご用意しております。順次配給して参ります。途中下車は場合によってのみ許可されております、ご理解下さいませ」
深く頭を下げてからどこかへ行ってしまった。言っていることの半分も分からなかったが、となり合う数名も同じように首を傾げていたから、まあ、そんなものなのだろうと。
しばらくすれば、あの人型が「間食で御座います」と渡してきた。長さと厚みのある、肌色のカサついたもの。
少し硬さがあって、口に含めば口内の水分が軒並み取られる。おいしいのかおいしくないのかは、よく分からない。
人型が言っていたとおり、停まる回数は少なかった。停まったときに、座っている子を壁の向こうまで誘導して。
それから目線を合わせるようにしゃがみ、大きな手でその子の手を握る。
「ここがあなたの終点で御座います。またのご乗車を、心から、心から、お待ちしております」
その子はアフロのひとりに抱きかかえられて、そこに置き去りになった。
それがひどく怖くて。
途中では別の号車から人型ほどではないが、大きな人型がたくさん入ってきた。彼彼女らの年齢は様々で、けれど一様に首飾りを持っていた。
それを受け取る子と受け取らない子がいて。
動き出した箱は、たまに停まることが多かった。壁が開かないときには、人型が「只今、運行状態の確認をしております。ご迷惑をおかけしますが、どうぞそのままお待ち下さいませ」とアナウンスをしてまた動く。
これを何度か繰り返した。
何だか、喉がむず痒い。
そうしていると、またゆっくりと動きが停まる。
少し身構えながら待っていると人型が出てきて、背筋をピンッと伸ばし居ずまいを正した。
「皆様、長らくのご乗車、まことに有難う御座います。当列車はまもなく終着駅に到着致します。皆様、お忘れ物の御座いませんよう、お確かめ下さい。お忘れ物はお届けできかねますので、くれぐれも、くれぐれも」
一度見渡して。
それにつづいて揺れが収まった。
「どうぞ、降車の際は必ず足許にお気をつけてお降り下さいませ。ゼロからの皆様、イチからの皆様、皆々様に幸多からんことを、心より、心より、願っております」
完全に開かれた壁の向こうにアフロはおらず、けれども何だか、恐ろしい気もした。
けれど、足が戻ることはない。
何もない首許を触りながら、ひとりで降りる。
身体に空気が入り込んで、喉が疼いてくる。ひどく叫びたい、叫ばざるを得ない。
そんな気分だ。
「――――――ッ‼」
#0からの
0からの
からの〜
マイナスッ!
なーんて
0からの出発とか
メンドクサイ
0にしなくたって
てか
出来ないし
積み上がったもの
それはそれ
使い方は
変えられる
縛り付けてくる観念を
よく見てみよう
それいる?
0に戻らなくたって
今ここから変えてけばいい
自分が変わったと思えるのなら
変わったんだよ
誰が認めなくたって
「0からの」
『0からの』
積んで重ねて繰り返す
パッと散っては元通り
はじめまして
どうぞよろしく
どこにいくでもない
あてもなく彷徨って
私はどこにもいけないことに気づく
それがどれだけ嫌だとしても
今はそれに耐えるしかない
嘘の笑顔の裏で嫉妬に呑み込まれ
汚い言葉を吐く君の涙も
ただ隣で見守ってくれていた君の暖かさにも
気づかないままに
自分の苦しみだけが全てだった
逃げ出した場所で出会った
あなたの姿、声、雰囲気全てが
生きることへの痛みを和らげた
世界が反転してあなたを中心に回り出した
0から始まる歌がずっとリピートされているのに
どうしてもタイトルが思い出せない
0と1が交差するじてん……何だっけ
お題:0からの
生まれたときに
世界から予め決められた長さの道を与えられるのだと
誰かがそう言った
平坦に伸びた一本道ではない
始まりと終わりが重なった
紙の輪っかのような道です
始まりには線が引いてあって
そこをスタートラインにしてひたすら歩いていく
その長さは人によって違います。
ものすごく長くて途中でグニャグニャ波打った人
テレビのCMみたいにすぐに終わっちゃう人
途中でハサミを入れられて道から落ちてしまう人もいるそうです
歩くのも走るのも自由です
立ち止まるのだけルール違反です
あと、後ろに戻るのもダメです
最初は楽しいです
みんな、歩幅はそんなに変わらないから
でも、始まりから距離が離れるほど不安になります
理由は分からないけど、どうにも心細いのです
でも、それは途中までです
ゴールが見えると何故か安心してしまいます
もう、何処に向かうか分からない道を
独りで歩かなくてもよいのです
***
「−0からの−」
「えっと、ここは…」
見たことはあるけど読んだことがない文字と開いた本を交互に眺めては同じ形を探す。正解を見つけては丸を付け、意味を書き、他の使い方があれば付け足していった。見れども見れども記号が文字として結びつかず首を捻る。自国の文字はこんなにも読めるし、話せて、組み合わせて文章を作ることだってできるのに。
手探りで学んでいるつもりが彼の故郷の吹雪にあったみたいに道が見えない。
言葉に触れた経験が少なく、足りないのは明らか。
彼の母国をもっと知りたくて、はじめに言語からと教本を手に取った。
たまに彼の口からこぼれる言葉が何を意味してるのか知るにはちょうど良いと思ったけど…。それがわかるまではまだまだ先のよう。そもそも発音すらままならなかった。
『0からの』挑戦は新しい発見と驚きを、無駄になるなんてことはないものの早く理解したくて使ってみたくて。
いつか手紙や話した時にそれを披露して彼を驚かせることを目標に、彼の故郷の歌を噛み砕きながら翻訳してペンを走らせる。歌の旋律を知らない私は言葉の意味から捉えたイメージだけで口ずさみ、少しだけものにしたに気になっていた。
本当に今のままでいいのか
それとも
全てリセットして
全てをゼロから始めたほうがよいのか
悩み、悩む
いまの状況を捨てられないのは
自分の中にあるプライドと
勇気がないだけ
本当は何も気にせず
なんとかなるって
思えたら一番生きやすいのに
『0からの』
新しい事を始めるのは、いつだって0からのスタートだ。
それは、人間関係も同じこと。
新しく友達を作るのも0からのスタートだと思う。
【親切】という漢字が、なぜ「親を切る」と書くのか、考えたことがある。わたし個人の勝手な解釈だが「親しみを切り出す」にたどり着いた。
「切り出す」は、スタートだ。
人に親切にすることは、親しみをスタートさせることだと、勝手に思うようになった。
そして、コミュニケーションは興味から始まる。
興味を持って、親切にしたら、人間関係もスムーズにスタート出来るように思う今日この頃。
ぼくの彼女は、嫉妬深い。彼女の交際経験は0に対し、ぼくは一人だけ元カノがいた。
この時点で彼女との交際は0からのスタートではなく、元カノの面影を重ね、無意識のうちに比較し、ある時は思い出に浸ったりする。それをどうにかしたくて、彼女は嫉妬するのだ。
「元カノと連絡は絶対禁止だから。名前を出すのも禁止!」
人生において、0からというのは実は相当難しいのではなかろうか。以前の経験が必ず印象の邪魔をする。
子供の頃は全てが初めてに包まれて、世界が輝いて見えた。人生の半分が20代で終わるという所以もその辺りにあるのだろう。
きっと彼女の目には、ぼくとのお付き合いはぼくより一層輝いているに違いない。デートに行く時も、キスをする時もドキドキと、ずっと心を高鳴らせて。
この一生に一度しかない体験を大切にしてあげよう。
「分かったよ」と彼女のちょっぴり面倒で可愛らしい願いを聞き入れた。
限りはあると知っていてももう少しだけ近づいて
『0からの』
好きなものは積もる。無意識に引き寄せ、絡め取り、少しずつ自分の中に蓄積されていく。顕在意識下で行うよりもずっと効率が良くて、繋がりやすい。
苦手なものは避けられる。誰しも好まないものに率先して近付くことはない。それは明確な意識のもとで行われる。
たとえば、自分が不得手だと思っていたこと。自分には出来ない、他者に劣ると思い込んでいたこと。それを実は無意識に自分が愛していたとしたら、どうだろう。
距離を取っていた、恐れていたもの。だけど目を惹いてやまないもの。意識的に避けていた。それでも、人の中では無意識が強いものらしい。
人生の中では思いがけず、何もないと思っていた0の輪の中に、無数のギフトが眠っていることがある。
向き不向き、得手不得手、効率や合理性。世の中には色んな基準や言葉があるけど、結局のところ愛に勝てるものは見つからない。
〉0からの
「0からの」
砂浜に
足跡を一歩
残して歩くような
すぐに
寄せる波に
流され消えるような
そんな感覚
0からのスタート
わくわくする歓びと
ドキドキする不安と
心の内側に
二つの感情が
同居している
自分ではない、「誰か」になりたいと
思う時がある。
愛しいものも、憎いものも全て取り払って
自分ではない、まっさらな存在に。
新しい人生へ。
そう願っても、朝起きたら名前が変わっていたり
性格が変わっていたり、
過去が変わるなんてこともない。
だから、少しだけ、変えてみる。
いつも朝はトーストだけど、今日は白いご飯。
いつも食後はコーヒーだけど、今日は紅茶。
いつもリップは赤だけど、今日はピンク。
きっと誰も気付かない。
でも、今日の私は全然違う、新しい私。
こうやって私は生まれ変わる。
何度でも、新しい私へ。
―0からの