『麦わら帽子』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
おしゃれは我慢、とよく言うけど、麦わら帽子はその代表格だと思う。
まず買うところからめんどくさい。大きいし、形が崩れたらいけないから仕舞う場所を考えておく必要がある。
買ったところで、被るタイミングもあまりない。かわいいけど今日の目的には合わないな、とか考えてたら、いつの間にか夏が終わってる。
仮に被る機会があったとしよう。あの帽子を飛ばさずに1日を終えられたことはある?奇跡的に飛ばなくても、ずっと風を気にしてしまって一切話が入ってこない。
それでも、女の子は麦わら帽子を被るんだって。かわいいね。
#麦わら帽子
麦わら帽子からマリーゴールドの曲が連想される。小学校2年生まで麦わら帽子をかぶっている子が、昭和の時代多かった気がします。1歳から8歳までの成長期だと買っても次の夏には、サイズが合わなくなっていることがあり帽子が小さくなったからだと思ってしまう。6月の衣替えのたびに麦わら帽子をかぶって使えるかの確認です。今では、無い光景になります。衣替えで、しまう時に来年着れそうにない服は、リサイクルに出すや捨てることが一般的になっているし、お古を着ると言う習慣も消えつつあるのです。麦わら帽子の少女とカンカン帽の少年が、ひまわり畑で一緒に中を歩くと言う光景の大正ロマンなんてのもない。畑より宅地で、商業施設やマンション、一戸建ての家が建てられてます。私にとって子供の頃の麦わら帽子にワンピースは、お嬢様になった気分でした。いつもかぶっている麦わら帽子だけどなぜかよそ行きのかっこうと決まっていたのです。今の時代子供は、毎日がよそ行きのかっこうで、部屋着と言う服が存在して外から帰ったら部屋着に着替えになってます。外で日中遊ぶ子も少なくなり、麦わら帽子の需要が減ったら職人も減少し、消えてしまうのではないかと心配する私がいるのも昭和の時代に育った麦わら帽子世代だからなんのでしょう。
#6 麦わら帽子
あの時かぶった麦わら帽子
ボロボロになっても繕って、引きつがれ
また誰かがかぶってるのだろうか。
青春の証
また夏がやってくる。
きめ細かな肌になびく艶やかな黒髪と麦わら帽子。
君には " 麗しい " という言葉が似合うよ。
「あーつーいー!」
夏。
照りつける太陽が全身を焦がし、外にいるだけで干からびそうなほどに暑い。
「しーぬー」
おばあちゃん家の縁側でわたしは大の字で寝転がりながら唸り声を上げていた。
チリンとなる風鈴の音とたまに肌を撫でる風の心地よさがたまらなく好きで暑い暑いと言いながらもおばあちゃん家にいる時はいつもここに寝転がっている。
「なーつーきーらーいー」
リビングに行けば涼しいのはわかっていても、やっぱりここが一番好きで居心地が良い
コロコロと何度も何度も寝返りを打ち体制を変えながら寝転がり続けると、視界の隅で何かが飛んでいるのが見えた。
その何かはゆらゆらと揺れながらそのうち視界から外れる。
「なぁに?」
起き上がって庭を右から左へと視線をずらしていけば、麦わら帽子が木の上に引っかかっていた。
裸足のまま庭に降りて木のそばまで行き「よっ」という掛け声と共に軽くジャンプしながら麦わら帽子を手に取った。
真っ白いリボンのついたかわいらしい麦わら帽子。
きっと持ち主はおしゃれ好きなかわいい女の子だろう。
「近くにいるかな?」
裸足のまま玄関の方まで歩くと見知らぬ女性が家の前で立ち尽くしていた。
「これあなたの?」
麦わら帽子を渡しながら聞いても女性は何も答えずにじっと下を向いている。
「違うの?じゃあ回覧板?」
女性は首を横に振ったかと思うと走って逃げてしまった。
「ちょっ、え、待っ」
わたしは家のドアを開けて適当にサンダルを履くと女性の後を追っかけた。
家を出た時、女性の背は驚くほど小さく遠くまで走っていた。
追いつけるか心配だったが、気合いと根性と無駄にある持久力で追いかけ回す。
「まてぇえ!!」
短い悲鳴をあげながら逃げる女性の背を走って走って走って追いかけて数十分が経った頃、ようやく手を握ることができた。
「なんで逃げんの?」
ハァハァと上がった呼吸を整える間もなく聞いても女性は答えない。少し怯えているせいでわたしが悪者みたいな雰囲気が少し嫌だと思いながらもその手をしっかりと掴んで離しはしなかった。
「ぽ、ぽぽ」
「やっぱりあなたの?はい」
ようやく口を開いた女性に帽子を渡せば、女性はおずおずと帽子を受け取り頭に被せた。
「うん、かわいい!にあってるね」
「ぽぽぽ」
女性は少し照れくさそうにしながら帰っていった。
わたしは女性の背が完全に消えるのを待ってから帰路に着く。
「それにしてもあの子背がめちゃ高いなぁ。二メートルはあったりして」
この時わたしは知りもしなかったんだ。
「外国の地でも混ざってるのかな?」
彼女がこの村で有名な人だってことを
麦わら帽子に白いワンピース。
二メートルを裕に超える身長。
八尺様と様付けで呼ばれるとても有名でとあるネットサイトではいろいろな談義が施されているほどの人気者だと
わたしは後々サインをもらっておけばよかったと後悔した。
そして、あの子の被っていた麦わら帽子とそっくりなデザインな麦わら帽子を実家に帰った後に買った。
その年から何故かわたしだけおばあちゃん家を出禁になってしまったのはとても解せなかった。
お題「麦わら帽子」
金色の足で雨を踏みしめている何もかも吹き飛ばして行きそうな光を受けてなお
『麦わら帽子』
「これ、君に預ける!」
そう言う君の顔は、泣いているように見えた。
「暫くの間は、ここで一緒に暮らすのよ。」
まだ暑さが続く八月の頃、僕は祖父母の家に預けられた。川が流れ、田んぼ林が茂る。バスは一日に二本、電車もないし、コンビニもない。僕が住んでいた都心とは違い、自然豊かな場所だ。
「ここなら、事故も起きないんだろうね。」
僕の言葉を聞き、祖父母は困ったように顔を見合わせた。
中学の夏休みに入ったと同時に、両親は事故に遭い死亡した。最初は悲しかった。でも泣けなかった。きっと僕は何処かおかしい。そんな僕を見て親戚一同は、この田舎に一時置く事にしたのだ。
「少し、散歩してらっしゃい。」
僕は祖母が言うままに、田舎道を歩く事にした。本当に何も無い場所だ。でも、何故か懐かしさを感じる。暫くその感情に侵っていると、前から何か飛んできた。反射的にキャッチする。何かは、麦わら帽子だった。
「ちょっと避けてー!」
声が聞こえた時には、もう遅かった。少女が猛スピードで僕に突っ込んできた。少しの間、二人で目を回していた。
「ごめんなさい!」
彼女は起き上がり次第に、勢い良く謝ってきた。
「大丈夫。怪我はない?」
「はい。大丈夫です。」
「これどうぞ。これを追いかけてたんでしょ?」
僕は、手に持っていた麦わら帽子を差し出した。
「ありがとうございます。これ、私の宝物なの。」
彼女は帽子を手に取るや否や、嬉しそうに笑った。そして彼女はすぐに、来た道を戻っていった。その背中を見送っていると、また会いたいと思っている自分に気づいた。
数日後、僕達はまた出会った。今度はゆっくりと喋った。自分の事も、周りの事も。時間を忘れて喋っていた。そして帰る時間になると、またねと笑って解散した。
あれから何度も、僕達は遊んだ。彼女との時間が好きだった。天真爛漫な彼女は、僕とは対照的な存在だ。それでも一緒に居たいと、心の底から思えた。そんな僕は少し明るくなったと思う。時々祖父母は、嬉しそうに目を細めた。でも、知っている。僕はもうすぐこの場を去る事を。
「もう会えない。僕は東京に行くから。」
数日すれば、僕は叔父夫妻の家に行く。だからきっと今日が最後だ。彼女は僕の突然の別れの告白に、驚いていた。
「そっか。もう、会えないのか。寂しいね。」
「また来るよ。」
「うん。じゃあこれ、君に預ける!」
そう言って彼女は、被っていた麦わら帽子を僕に押し付けた。僕は戸惑った。
「駄目だよ。これは宝物なんでしょ?」
「だからだよ。絶対に返しに来てね。」
彼女は泣いているように見えた。それでも、全力で笑っていた。僕もつられて笑ってしまった。あぁ、そうか。僕は君に恋をしているんだね。
数年ぶりに訪れた田舎は、何も変わっていなかった。僕は早速、彼女と出会った道を歩いた。彼女に会えるかは分からない。それでも、会いたいのだ。暫く歩いていると、強い突風が吹いた。僕が手に持っていた麦わら帽子を風に乗って飛んでいった。僕は急いで追いかける。少ししたら風の勢いも弱まり、帽子は段々と降下していった。そしてそこに居た一人の女性が取ってくれた。
「待っていたよ。かっこよくなったね。」
彼女はそう言い、微笑んだ。頬には涙が伝っていた。
僕は彼女に、二度目の恋をした。
白いワンピースを着て
いつもの麦わら帽子を被った彼女は
私にとって暑さを忘れる程
眩しく輝いていた。
麦わら帽子をどこかカッコ悪いと思っていた自分がいた
帽子なのに隙間があって
薄茶色のあの色が寂しさを感じさせた
なぜだろう
今はあの帽子が夏を掻き立てる
幼い子供がつけていれば若さを感じるし
外て仕事をしてる人がつけているとやる気が自分も湧いてくる
なんと不思議な帽子だろうか
→短編・
僕と会う日、彼女は左薬指の指輪を外す。
(改稿 2024.8.12)
崖の上から、僕は下を覗き込む。
崖下に当たった白い波が、泡を立てて砕けた。何度も打ち返す。この崖も少しずつ侵食されているのだろう。
波間に麦わら帽子を見つけた。海に飲まれることなく浮かんでいる。
為す術なく揺れる麦わら帽子を見ていると、思わず体が海に引っ張られそうになる。僕はよろけながら崖から少し下がった。
あの麦わら帽子、彼女のによく似ていたな。麦わら帽子にワンピースは彼女の夏の定番スタイル。
若い頃に買った物なの。ごめんなさいね、古臭いわね。
そんなことを言って、彼女は目を細めた。目尻のシワが深くなる。僕の好きな顔。
彼女の手が僕の頬を優しく撫でる。少し骨張った手のカサカサと乾燥した感触に、僕は彼女の人生を思う。彼女の生活が刻まれた手は、とても優雅な動きをする。僕の周りに彼女ほど美しい所作をする人はいない。
彼女との出会いは一つの奇跡だ。
僕は彼女との静謐な愛情は、何物にも代えがたい宝物だ。
それを守るためなら、僕はなんだってできるよ。
何でも美味しそうに食べるわね、と彼女は食事のたびに、僕がたくさん食べるのを喜んだ。
昔よりもすっかり食が細くなってしまったわ。何事においても、定量を超えると胸焼けしてしまうのよ。
自嘲的に鼻を鳴らした彼女の目に、僕の間抜けな顔が映っている。
そんな風に笑わないでよ、と僕は懇願した。
背徳の蜜は、私には甘すぎるのかもしれないわね、と彼女は遠くを見た。
繋いだ手のひら。
いつもはない違和感が何度も僕の手を刺激する。
どうしてそんなものを嵌めてるのと聞いても、彼女は答えなかった。
だから僕は……。
あぁ、考え込んでしまっていたな。夏の太陽に照らされた全身から汗が噴き出している。
服の背中が濡れるほどの汗。
おかしいな、頭がズキズキする。
熱中症かもしれない。
崖を離れようと彼女の手を引こうとして、僕は慌てる
さっきまでいたはずの彼女がいない。
波の砕ける音に混じって、サイレンの音が聞こえくる。
僕の肩が乱暴に掴まれた。
振り向くと僕の背後には、数名の警察官の真剣な面持ちが並んでいた。
「8月12日、14時02分、殺人の容疑で現行犯逮捕します」
……。
そうか……、そうだった。
僕は自分の両手に目をやった。
赤く染まった手と、同じ色をしたこぶし大の石。
僕の願いは彼女にあの指輪を外してほしい、ただそれだけだった。
ただそれだけだったのに、どうしてあんなに抵抗したの?
あの取り乱し方は君らしくなかったな。
僕たちの穏やかな愛にそぐわないなものは、何一つ要らないんだよ。
僕は前からそう伝えていたよね?
「ところで、お巡りさん。
彼女の麦わら帽子は、もう波間に消えてしまいましたか?」
テーマ; 麦わら帽子
#21 麦わら帽子
[麦わら帽子とワンピース]
小学生の頃、
麦わら帽子にワンピースが夏服の
私立の小学生の子達を見て、
かわいいのに爽やかで何て素敵なんだろう、
と憧れた。
あの制服を着られるようになるまでの
各々の苦労と思うと、
それがまたいっそう排他的な魅力を
醸し出して、
目の前にみえるのに手に届かない上品な姿、
そんな美しさを引き立てていた。
もしあの制服を着たならば、
どんな風にみえるだろう?
麦わら帽子は、そんな空想の世界に
誘ってくれた、象徴的な存在であった。
公園のベンチの上に、麦わら帽子がぽつんと置かれていた。
誰かの忘れ物だろうか。周囲には自分以外に誰も居ない。
忘れ物なのだとしたら、交番にでも届けておこうか。ちょうど公園のすぐそこに交番もある事だし。
そんな風に考え、何気なく帽子を手に取った。
ベンチに伏せるように置かれていた帽子の中から、ひらり一匹の蝶が飛び去ってしまった。
ああ。捕らえた蝶を入れていたのか。やってしまった。
どうしようかと逡巡している間に、小さな虫籠を持った少年がやってくるのが見えた。
蝶を取り逃してしまった事を謝り、その後、少年と共に代わりに虫籠に入れる虫を探した。
数十分の後、虫籠にトンボを入れ、少年は満足げな笑顔で手を振って去って行った。
首から虫籠を下げ、麦わら帽子をかぶって走り去る後ろ姿を見送りながら、たまにはこういう日もあっても良いなと思った。
そんな、真夏の昼下がり。
お題『麦わら帽子』
麦わら帽子は…
もう消えた…
田んぼの蛙は…
もう消えた…
それでも待ってる夏休み
夏休み
昔その人が愛した場所で
若い芽吹き達が心踊らせ
のびやかにしなやかに育てよ子供!
やがて大地 踏みしめ!太陽になれ!!
吉田町の歌
こんな時代だけど…
夏真っ盛り!!夏休みの真っ最中!!
夏の子供達に明日もいいことあるといいな…✨
THANK YOU 吉田拓郎さん✨
眠いのでおやすみなさい✨
権力者が麦わら帽子を被っているのを発見した。
「やぁ、権力者。どうしたんだい、その帽子は」
そう声をかけると笑顔で答えた。
「えへへ、可愛いでしょ。貰ったんだ」
「……? 誰にだい」
僕と彼女以外にこの世界にいるのは住人だけだが、住人にそもそも意思はない。迷い子でも来てたのだろうか。
「それはもちろん…………あ」
嬉しそうに口を開いた彼女は途中で動きを止めた。ハッとした顔でこちらを見つめる。
「…………えっと」
気まずそうな顔をしながら必死に目を泳がせていて、明らかに口を滑らしてしまったらしいことがバレバレだった。
「…………まぁ、いいよ。素敵な帽子であることに変わりはない」
僕はそう言って微笑んだ。
「……あはは」
気まずそうに彼女は笑った。
僕には言ってはいけないことがあることは知っているけど、無闇に言及させるつもりはない。本当に確信を持ってからそれについて聞くつもりだから。
だから僕は何も聞かなかったことにした。
祖母がくれた麦わら帽子をみて、さてこれをどうしようかと、少し困って考えにふける。
祖母の家に毎年の夏休みに帰省する度に、彼女は若いときに使っていたというアクセサリーなどをくれる。物持ちが良い祖母の物はどれも綺麗で大切にされていたことがみてとれる。
というわけで、この暑いのに帽子も日傘もなしで、これ被って帰んなさい。と頂いた今年のお土産がこの麦わら帽子である。
頭がちくちくしそうだとか、最近の同年代の子たちはキャップやバケットハットを被っていることが多いとか、鞄に潰していれるわけにもいかないから荷物になりそうだとか、少し遠慮したい気持ちを巡らせつつも、祖母の気持ちを無下にもできず、つばの広いそれを深く被って駅に向かった。
少し前に流行ったカンカン帽のような可愛さはないが、昔ながらの広いつばの麦わら帽子は、顔に影を落として、意外と快適ではあった。
駅のホームにくれば、風が吹き抜けて火照った身体を少し冷ました。線路に落とさないように頭の後ろを手でおさえる。
ざらりとした手触りにあれ、と頭を撫で回す。このあたりには祖母が自分で巻きつけたであろう、つるりとした白いリボンがあったはずだ。
「あのぅ、もしかしてこれ落としましたか」
振り向くと、白いリボンをもつ彼はいきなり気が抜けたように「ええ?! なんだお前か」と笑顔になる。
偶然にもこんな場所で会えたことにまごついて、「うん」としか返せない。
「リボンとれたの後ろから見えてさー」と手を差し出す彼に言いそびれたお礼を言ってリボンを受け取り、畳んでカバンのポッケにしまう。
「つけねえの」
「またとれたら困るから」
ほーん、と彼が返してきたとき、プルルル、と電車がくる合図が鳴る。乗るときは外そうと帽子を脱ぐと「お、」と言い出した彼は「さっき顔見えなくてちょっと緊張した」と続ける。
「やっぱ顔見えたほうがいいなって思ったけど、うん、こっち向いたときにしか見えないってのもいいな!」
頭も守れるし! と謎の褒め言葉も付け足したあと、目の前の電車に気づいた彼がこれ? と指したのに頷く。
じゃあまた9月な、と別れる前にもう一度、リボン、ありがとうとお礼を言って電車に飛び乗る。
ボックス席の隅に座って、外よりいくらか涼しい車内で私は両手でつばを引っ張るように、また麦わら帽子を深々と被り直した。
【麦わら帽子】
麦わら帽子
ひまわり畑の真ん中で、夏の陽射しに当てられて。
向日葵のように微笑む君には黒髪がよく映える。
麦わら帽子の鍔から落ちる影さえ、美しくて。
夏なんて嫌いだ。それでも君と一緒なら、
この瞬間なら続いて欲しい...なんて、勝手なことだけど。
夏の暑い日差しをしのいでくれたり
はたまた、身にまといオシャレになったり
使う用途はいくらでもあるのかもしれない麦わら帽子
買い物から帰ってきたら、同居人の姿が無かった。
荷物を片付け、二階の私室を覗くがそこにも姿は無い。じわりと浮かぶ汗を拭いながら階下に戻り見回すと、裏庭に続くドアが開いていた。
猫の額ほどの小さな庭に、麦わら帽子を被ってしゃがみ込む後ろ姿があった。白いシャツにうっすら汗が滲んでいる。図体のでかい男がいるせいで、ただでさえ狭い庭が余計に狭く見える。
「おい」
「·····あぁ、おかえり」
しゃがんだまま振り返った男は、麦わら帽子のつばをほんの少し持ち上げて微笑んだ。
「不用心だな、鍵が開いていたぞ」
「まだ店を閉めるには早いかなって」
言いながら立ち上がる。男の頬に汗が伝うのを見上げながら、私は持ってきたペットボトルを差し出した。
「ありがとう」
「今日はもう閉めたらどうだ? この暑い日にチョコレートを買いに来る客なんかいないだろう」
「そうしようか」
男が水を流し込む。大きく動く喉元をぼんやり見つめていると、蝉の合唱がシャワーのように降り注いで、頭の奥がぐらついてくる。男の傍らにはむしった草が山になっていた。
「あ」
ペットボトルをこちらに返しながら、男が不意に声を上げた。視線を追うと土の上で蝉が仰向けになって死んでいる。白く変色した腹が、既にだいぶ時間が経っていることを伝えていた。
シャベルを拾い、蝉の死体を片付けようとした私の手を男が止めた。
「いいよ、そのままで」
「·····」
「そのうち蟻が全部食べてくれる」
私達の会話を非難するように、蝉の合唱が大きくなった。
「熱中症になる前に戻るぞ」
「うん」
夏が終わる。
今年は雨が少なかった。
雨の代わりに降り注ぐ蝉時雨が、私達を覆い隠してくれているのかもしれない。
店内に戻ると男は私に麦わら帽子を被せて、不意に唇を重ねてきた。
「なんだ突然」
「なんとなく」
子供のように笑う男に麦わら帽子を突き返すと、彼はそれを被ってふふ、とまた笑った。
END
「麦わら帽子」
「迎え火」
ずっと捨てることが出来なくて、上京するときの荷物にそれを入れてしまったのがいけなかった。
東京のジメジメとした梅雨と夏で、カビが生えてしまったのだ。
頑張ってカビを取り除こうとしたけど、結局全部取りきることは出来なかった。
しかし、あちらで捨てるのは抵抗がある。
だから帰省する際に荷物に入れたのだ。
かんばを焚く。
この辺りでの、お盆の風習だ。
じーさん ばーさん
このあかりで おいで おいで
迎え火と独特の香りに、歌う。
日中、それなりに暑くなるものの、日が傾き始めると気温が下がり、吹く風もひんやりとしている。
東京の大学に進学したのは、この町では見ることが出来ない違うものを見たいからだとか、視野を広げるためだとか、言っているけれど、本当はあの子との思い出しかない町に住み続けるのが辛かったから。
同い年で気が合ったから、ずっと一緒だった幼馴染の女の子。
ある年の夏、お揃いで買ってもらった麦わら帽子をこっそりと交換した。
なぜそんなことをしたのかは覚えていない。
でも、交換したことがお互いの家族にバレていないことが楽しかったのは覚えている。
いつの間にかサイズが合わなくなったけど、麦わら帽子を捨てることはできなかった。
それはきっと、あの子も同じだったのだと思う。
「ねぇ、今年は帰ってくるの?」
こんな時、どんなに仲が良かったとしても所詮は他人なのだと思い知らされる。
本当の姉妹だったらよかったのに。
家族だったらよかったのに。
じーさん ばーさん
このあかりで おいで おいで
「このあかりで……」
あの子の名前をこっそりと呟く。
「おいで、おいで……」
視界の端に何か白いものを捉えたけれど、視線を向けたら消えてしまうような気がした。
────麦わら帽子
町役人の河田谷五郎が外国人の帽子を真似して、1872年につくられたそうです。
伝えることのすごさが伝わりました。
それを私は今伝えました。
伝統が続いていく理由のひとつですね。