『麦わら帽子』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
上京の荷物の中から覚えのない麦わら帽子を発見したのは、引越しの翌日の昼ごろだった。
春から東京の大学に通うことが決まり、一人暮らしをすると母親に告げた時は、あそう、がんばって。という淡白な返事だった。引越しの荷造りは一人で進めた。その時に麦わら帽子が紛れ込んだわけがない。じゃあ母親が入れたのだろうか。多分そうだ。なんのために?小さめのダンボールに居座る麦わら帽子を見つめていると、大きめの傷を発見した。
これは…!オレが5歳の時、つけた傷?確か木登りしてて足を踏み外し、小枝が引っかかってできた傷だ。これを皮切りに懐かしい田舎の風景がいくつも思い出される。麦わら帽子が大好きだった幼き日のオレの感動と共に。母親がオレに、東京に染まるなと言いたいのかもしれないと思った。素直な心を忘れるな、かもしれない。確かなのは、オレがちょっとだけ嬉しかったことだ。
電車が終点に到着して、旅行中の恋人たちがゆっくりとホームに降りる。そこに広がるのは青い空。漂う潮の香りが鼻をくすぐった。
「うわぁ!!」
「いいところでしょ?」
「はいっ!」
愛らしい恋人の満面の笑みを見る青年は口角が上がる。以前、職場の仲間たちと来た時、とても楽しかったこの場所に、彼女を連れてきたかったのだ。
「日差しが眩しいですね」
「そうだね。でも、晴れてよかった」
朝から電車に揺られて陽も天に昇りきった頃合で、その陽射しは強く痛みを覚える。
青年は自分の鞄から折りたたみができる麦わら帽子を取り出して、彼女の頭に被せた。
「わ!?」
「被って、日焼けしちゃう」
彼女は驚きつつも、柔らかく微笑んだ。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
この麦わら帽子は、彼女へのプレゼントに用意したものだった。頭の調節しやすい太めの紐はリボンに見える。その紐はふたりが好きな夏の時によく見る爽やかな空の色。
色素の薄い肌の彼女が、日焼けしないようにと青年が選んだ。
照れつつ嬉しそうに微笑む彼女を見ていると、青年は嬉しさが込み上げてくる。
絶対、君に似合うと思ったんだ。
おわり
お題:麦わら帽子
さて、今朝書いた文章(終点)は、常総線の中での出来事を書いただけで終わってしまった。
その文章も改めてこちらに載せた方が、親切なのだろうか。けれど、あちらも長いからなぁ…。
うーん…。
長くて読み辛いかもしれないけれど、ちょっと一応こちらにも置いておきますね。
その為今回は「終点」と「麦わら帽子」のテーマで、一つの文章となっています。
いつもとは違う作りですが、夏休みの番外編と思ってもらえれば幸いです。
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母親と行く親子二人旅。
車のない我が家は、電車旅が多い。
母親も私も、乗り鉄や撮り鉄ではないが、電車に乗ることは好きな方だ。
人生の中で一度は乗ってみたいと言い続けていたSLに今回とうとう乗ることになった。
SLの発車駅「下館駅」に向かうには、つくばエクスプレスの「守谷駅」から関東鉄道常総線へ乗り換え、「水街道駅」にて再度乗り換えが必要となる。
常総線「守谷駅」のプラットフォームにいると、母親が面白いことに気がついた。
通常、駅のアナウンスは「電車」という言葉を使うが「列車」という言葉を使っているという。
耳をすましアナウンスに注意を向けると、確かに「列車」と言っている。
プラットフォームに入ってきた車体を見て、納得した。
2両編成の車両の上部には、パンタグラフが付いていない。
調べてみると「ディーゼル」を使用した「気動車」と出てきた。
普段乗らない列車に乗るだけで、旅の気分は格段にあがっていく。
「下館」行きと書かれた列車に乗車したのだが、三駅先の「水街道駅」で乗り換えが必要だという。
通常、行き先の電車に乗れば、乗り換えは必要ないはすなのだが。路線ルールなのだろうか。とても不思議な感じがした。
「水街道駅」にて乗り換えをし、今度は一両編成で終点の「下館駅」へと向かう。
田畑が目立つ長閑な景色を列車は行く。
途中途中に止まる小ぢんまりとした駅も、味があって良い。
旅の気分を味わっていると、田園と筑波山の雄大な姿が織りなす、見事な景色が車窓に広がった。
薄黄緑。緑。時折、黄金色。
稲穂が風に吹かれている。
その光景を見て、思わず「あっ」と声を上げた。
一人散歩の時の景色が頭の中に広がっていく。
思い出の中の景色は、目の前の広大な景色よりも小ぢんまりとしたものだったが、記憶の彼方に置き去りにされていた、中学生の時の言葉が蘇ってきた。
「山が見えたら、もっと素敵なのに」
生きていると不思議な事はある。
つい最近懐かしいと思い出していた光景の、理想の光景が目の前に広がっている。
このタイミングで忘れていた言葉を思い出すだなんて。
まるでこうなることが、初めから決まっていたかのような。まるで、運命のような。
車窓の奥では、筑波山に見守られる稲穂が、そよそよ風に揺れている。
その光景を観ていると、滾々と感情が湧いてきて、体の隅々にまで行き渡っていくのを感じた。
透明で清らかなものに満たされていく心が、ふるふると揺れ琴線に触れはじめる。
過去。現在。全てに共鳴しあった心が、ハーモニーを生み出していく。
穏やかでどこまでも優しいその音に、鼻の奥がツンとする。
鼻を啜りはじめた私に、母親が「アレルギー?」と心配そうに聞いてくる。
違う。違うよ。
心が溢れて零れそうなんだ。
そう伝えたかったけど、言葉にならなかった。
終点の下館駅に着くまで、私の心は共鳴の音を奏で続けていた。
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真岡鉄道は、茨城県の下館駅と栃木県の茂木駅を結ぶ、全長41.9キロの路線だ。
SLは、9月と10月を除く土日に運行している。※一部例外がある為、乗る際は要事前チェック
SL発車時刻の1時間前に着くようにしたのだが、SLのプラットフォームにはすでに人が居る。
家族連れ。カップル。撮り鉄の方だろうか、立派なカメラを持った人もちらほら。
皆、何故かプラットフォームの前あたりで待機している。
プラットフォーム後方のベンチに座りながら「皆さん早くから居るんだなぁ」と感心していると、踏切が鳴りだした。
ガタゴトと車輪の音を響かせプラットフォームに入ってきたのは、SL真岡の回送・補助をするDE10 1535。赤いガッチリとした車体は、ラガーマンのように頼もしい。
力強い走行に見惚れていると、その後ろに茶色い客車が3両と黒光りする車体の後ろ姿が見えた。SL真岡。主役のご登場だ。
車輪の回転音に混じって、蒸気を吐き出すシューッと言う鋭い音がする。
ブレーキと共に重たい金属音が、ガチャンと響いた。
ラガーマンの様な赤い車体を写真に収め、人だかりのある前方へと向かう。
これまでSLは博物館などで見たことがあるのだが、現役のSLを見るのはこれが初めてだ。
人の邪魔にならないよう後ろの方から、SL真岡をそっと伺った。
漆黒の重厚な車体は、まるでスチームパンクの世界から抜け出してきた乗り物のように見える。その一方で、歴戦の戦士といった貫禄も滲み出ている。
非常に格好良い。
つい何枚も写真を撮ってしまった。
車体待機の間、汽笛の音と黒煙を吐き出す姿を堪能出来るので、早い時間に行くのはおすすめだ。
SL真岡の車内は、緑色のボックス席とロングシートの2種類がある。天井には細い蛍光灯と古い型の扇風機があり、荷物を載せる網棚は金属製というレトロ感満載な作りをしている。
ボックス席に座ることが出来たので、ここでも写真をいっぱい撮ってしまった。
午前10時35分。
汽笛が鳴り、車体がゆっくりと動き始めた。
シュッシュッと言う音に、ガタンゴトンと重いジョイント音も響く。
窓の外では、黒煙がスーッと流れていく。
電車では決して見られない光景だ。
SL真岡には扇風機以外の冷房がない為、乗客の多くは窓を開けている。
その窓から、黒煙が入り込むからだろうか、車内は不思議な香りがする。
木が燃えた時とも、炭の香りとも違う。
これまで、体験したことがない香りだった。
車内で読もうと、銀河鉄道の夜を用意していたのだが、読もうとして驚いた。
表紙がザラザラとしている。
どうやら窓から入り込んだ煤がついてしまったらしい。
これまた電車ではあり得ない経験だ。
本を読むのではなく、SLを堪能しなさいという事だろう。
内心感動しながら鞄の中に本をしまい、SLに身を任せることにした。
SLが走るリズムは、電車のリズムとは異なる。
通常の電車は、ガタンゴトン…ガタンゴトン…とリズミカルだが、SLはガタンゴトトン、ガタン。人のことをとやかく言えないが、意外とリズム音痴だ。
けれどそれがまた、味があると感じるのだからSLというのは不思議である。
…もしかしたら、贔屓が過ぎるのかもしれないが。
SLに乗っていると、手を振る人たちとよく出会う。
麦わら帽子を被った小さな子だけでなく、バスの運転手さんやカフェの店員さん。道を行く人や自家用車に乗る人たち。
皆がニコニコしながら手を振っている。
そういう人たちを見かけるたびに、私も母もそっと手を振り返した。
とても平和な光景だと思う。
その一方で、よく考えると不思議な光景だとも思う。
SLに向かって、或いは、SLの乗客に向かって、何故人は手を振るのだろう。
何故、手を振り合うと、こんなにも心がほっこりとするのだろう。
心理学の中には、ミラーリングという行為がある。
人の行動を真似することによって「共感」が生まれ好意などを抱くという効果があるが、それとも違う気がする。
もっと、人の奥底にある温かさの根源に繋がっているような──。
笑顔で手を振り返す人が、こんなにもいるのだと思うと、自分の人生も捨てたものではないなぁとしみじみと感じた。
沢山の初体験をしたSL旅の一部を文章で綴ってみたが、綴りながらも良い体験をしてきたなと心から思う。
また、こういう旅が出来ることを願いつつ。
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最後まで読んでくださりありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
向日葵畑の真ん中で僕があげた麦わら帽子をかぶり
「私に似合う?」と笑う君
そんな君を撮る僕
少しジメッとしたあの夏から20数年
棚に置かれた若き写真を眺めている僕の隣で寝ている君はあの時と変わらない笑顔を僕に向けている
あの帽子は娘にあげたらしく、君と同じように気に入ってるみたい
麦わら帽子をかぶった娘は世界で2番目に可愛い
いつまで経っても世界一可愛くて綺麗な君
嗚呼、やはり貴女は狡い人だ
そんな貴女に惚れ込んだ僕も大概かな
『麦わら帽子』
「くぅ!やられたぁぁぁ」
麦わら帽子を被った息子にパンチされ
床に倒れて伸されたふり……
「おれは海賊王になる!」
フンッと鼻息
ふんぞり返った息子が去ると
「ちょっとアナター!
ビールは夜までお預けって言わなかった!?」
大根役者の俺は妻に現行犯逮捕
手渡された麦わら帽子と軍手
真夏の炎天下で庭掃除
当然ながら
夕方には演技なしで床に沈没だ
#麦わら帽子
うっすらと汗をかきながら目覚める朝
幼なじみと目を擦りながら行くラジオ体操
セミの合唱の中自転車で森を走り抜け
いつもの市民プールでくたくたになるまで泳ぐ
そうめん、麦茶、スイカ
扇風機の前で少しだけ眠る
母に言われた通り麦わら帽子を被って公園へ
虫取り、ボール遊び、上の学年の子から聞くちょっと怖い話
日が沈んできたら迎えに来てくれる母がいた
普遍的な夏を過ごしたあの日の麦わら帽子の少女。
帽子の顎紐のゴムをパチンパチンとのばしながら、
ヒリヒリする日焼けの後を気にして過ごした日々。
あ また来ないかな?
い どうだろ
あ 何かやりとりがさ
い 命がけだったけどね
あ 向こうだって精一杯で
い もう、こんなとこまでは
あ ま、な
い 憧れみたいな…
あ 向こうもうちらも、な
『麦わら帽子』
また、来年も一緒に来よう。
彼女が笑う
釣られて僕も笑う
麦わら帽子が風に揺られて影を落とす
来年も、その先も一緒に
麦わら帽子/夜凪
麦わら帽子
麦わらの~♪
帽子の君が揺れたマリーゴールドに似てる~♪
この曲好きなんだよね~
流れ星を見に行こうよ
明日の夜
こっそり家を抜け出して
角のところで待ち合わせて
お気に入りのワンピース
いつものジーパンとTシャツ
自転車に乗って、丘の上までいこう
あの原っぱに 寝転がって
飽きるほど 星をながめよう
次々に流れてくる星屑たちに
すっかり感心してしまうんだ
この夏が永遠につづきますようにって
そっと星に願いをかけてしまうぼくを
どうか赦して
麦わら。
今日のお題は麦わらかぁ。
煙草をふかしながら、
どうしたものか、と悩んだ。
小生の時代、というか現代において
麦わらと言えば、某海賊漫画の主人公が
余りにも強く思い浮かぶ。
数年前なら、マリーゴールドと言う曲の
サビの出だしなんかもそうだろう。
そもそも現代において、
身近では無い、と思うのだ。
都市部から外れれば、農作業に従事する
ご年配方々が身に着けている事もあるだろうが。
‥‥‥麦わら麦わら麦わら。
いかん、ゲシュタルト崩壊してきた。
今日は、何にも浮かばないが
ここを観ている人なら、
そういう日もあるよね
と、優しい気持ちで
いてくれている事だろう。
無いのだ、麦わらで作れる話が。
白いワンピースの女の子の話とか
祖父の話とかが浮かんだが、
どれもピンと来ないから仕方ない。
ここに至るまで、何度も推敲しては
何回も全部消しているほどだ。
もう仕方ないから
夏の季語という事で、
俳句でも詠んでやろうか。
それで今日は、終わりにしよう。
‥‥‥いや別にノルマとか無いし、
思いつかないなら黙ってろよ、
とも思うが、
後でこの苦悩を読み返すのも
悪くない、とも思う。
もうこの2時間ばかしの
苦悩を、稚拙な俳句で飾ろうじゃないか。
んんっ
麦わらを
目深に被り
見失う。
夏の夜の
苦悩に満ちた
黒歴史。
明日頑張ろうね。
麦わら帽子をかぶって、虫取り網と虫かごを持って。
あの夏の、少年だった頃の思い出。
「麦わら帽子」
麦わら帽子が飛んでいた。
ひらりひらりと風に舞い、地面に落ちてしまいそうになった瞬間。
小さな手がそれを拾う。
少年は数秒その麦わら帽子を見つめ、持ち主は誰かと周囲を見回した。
小学一年生程度の少年が、美しい青空の下、向日葵畑の近くの無人駅で麦わら帽子を持っている。
傍から見ればなんとも絵になる光景だった。
キョロキョロと周りを探す少年の目に、一人の女が写る。
白の夏らしいワンピースに、麻でできたショルダーバッグを肩にかけている髪の長い女。
夏の似合う美しい女であったが、少年はそんなことよりも帽子の持ち主を見つけられたことに歓喜していた。
周囲に人間は見当たらない。つまり麦わら帽子この人のものだと判断する。現に女は首を回して何かを探す素振りをしていた。
「はい、お姉さん!落としたよ!」
駆け寄って麦わら帽子を届ける少年の笑顔は太陽の如く明るかった。
女は笑顔で帽子を受け取る。
「ありがとう。良い子ね。」
その日、その夏の暑い日。
一人の少年が、女と共に姿を消した。
麦わら帽子
夏休み 蝉の声 少しだけやけた肌
日が暮れるまで
貝殻を拾い集めたり
砂浜を駆け回ったり
畑のお手伝いをしたり
ぼんやりと記憶をたどってみる
どこへ行くにも一緒だった
妹とおそろいの麦わら帽子
いつから被らなくなったのだろう…
カラリ…グラスの氷が溶けて
窓の外の陽射しに目を細める
麦わら帽子
あの夏の記憶をたどる
麦わら帽子をかぶった子どもの目の前には
草むらが一面に広がっている
黄色い光が射して草の匂いを風が運んでくる
すべてが眩しく何とも幻想的な風景だ
日が暮れるまでこの風景と同化していたい
灼熱の空の下。風に煽られて飛ばされたのか、大きな麦わら帽子が、足元にコツ、と当たった。
「はぁ…っ…はぁ…よかっ…た…拾っ、てくれて…助かっ…た…」
全速力で追いかけてきたようで、息が上がっている幼馴染み。
「これ、おまえの?ほら。飛ばされないよう気を付けろよ」
拾ったそれを、彼女の頭へと被せる。
「ありがと!これ、大事な帽子だったから失くさないでよかったよ」
それはそれは、嬉しそうな笑顔で言うものだから、少し気になって訊いてみた。
「へぇ。誰かからのプレゼントか?」
「うん!お婆ちゃんが編んでくれたの!すごいよね!」
「……お婆ちゃん?」
「うん。お婆ちゃん。…どうしたの?」
そうだ、こいつはお婆ちゃんっ子だった。
「…なんでもない。そんな大事なら、こんな風の強い日に被ってくるなよ」
「でも、はやく被って出掛けたくなっちゃったから。それに、夏くらいしか、被れないし…」
「それで大事な帽子飛ばされて失くしたら、元も子もないだろ。お婆ちゃんも折角編んだ帽子失くされたら悲しむぞ?」
「それはイヤ!お婆ちゃん悲しませたくない!」
「なら、今日みたいな日は被らないこと。わかったか?」
「はーい…」
全く、世話の焼ける幼馴染みだ。
彼女と歩いていると、いきなり彼女の麦わら帽子が宙を浮いた。
風が強かった。デートの日としては、少し気分が下がったけど、彼女と一緒に歩くと、気分なんかすぐに元通りになった。
車に注意しないとね。と彼女は可愛い笑顔で言った。
僕は、彼女が大好きだ。
もっとデートしたいな
でももう叶わないのかな
彼女が被っていた麦わら帽子が宙を浮いた。
車に跳ねられ宙に浮いた
人を傷つけた言葉で
私を救える言葉など紡げるはずもなく
あの時の罰だとでもいうように
地獄の中を歩いている
麦わら帽子
背の高いひまわり畑の中、
ほぼ毎日麦わら帽子を被った君の背を追いかけていた。
背中をタッチすれば麦わら帽子をもらい、
今度は僕が追いかけられる番。
そうやって小さい頃は君と遊んだ。
ひまわり畑と同じくらいの背になった頃、
僕は麦わら帽子を被らなくなった。
麦わら帽子は君の物になり、
純白のワンピースととても似合う。
ひまわりより、太陽より眩しい君の笑顔は今でも覚えている。
ひまわり畑よりも背が高くなった今、
君はあの麦わら帽子を被らなくなった。
新しい麦わら帽子を被り純白のワンピースを着て笑う
その姿は昔と変わらない。
昔の麦わら帽子は...
「パパー!ママー!」
ひまわり畑より背の低いところになった。
太陽より眩しい笑顔が僕の隣で輝く。
2人もいると眩しいが、それが幸せなのだろう。
語り部シルヴァ
「あっ…」
君が被っていた帽子が風に流されていく。
二人で追いかけてもまた遠くへ飛ばされ
「全然追いつけない 笑」
『ね、早く風止んでくれないかなぁ』
そうは言ったものの、こんな時間が楽しくて
君とならどこまでも行きたいな。なんて
ある夏の一時