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灼熱の空の下。風に煽られて飛ばされたのか、大きな麦わら帽子が、足元にコツ、と当たった。

「はぁ…っ…はぁ…よかっ…た…拾っ、てくれて…助かっ…た…」


全速力で追いかけてきたようで、息が上がっている幼馴染み。


「これ、おまえの?ほら。飛ばされないよう気を付けろよ」


拾ったそれを、彼女の頭へと被せる。


「ありがと!これ、大事な帽子だったから失くさないでよかったよ」


それはそれは、嬉しそうな笑顔で言うものだから、少し気になって訊いてみた。


「へぇ。誰かからのプレゼントか?」


「うん!お婆ちゃんが編んでくれたの!すごいよね!」


「……お婆ちゃん?」


「うん。お婆ちゃん。…どうしたの?」


そうだ、こいつはお婆ちゃんっ子だった。


「…なんでもない。そんな大事なら、こんな風の強い日に被ってくるなよ」


「でも、はやく被って出掛けたくなっちゃったから。それに、夏くらいしか、被れないし…」


「それで大事な帽子飛ばされて失くしたら、元も子もないだろ。お婆ちゃんも折角編んだ帽子失くされたら悲しむぞ?」


「それはイヤ!お婆ちゃん悲しませたくない!」


「なら、今日みたいな日は被らないこと。わかったか?」


「はーい…」


全く、世話の焼ける幼馴染みだ。






8/11/2024, 12:26:19 PM