スマホから、通知音が鳴った。
何かなと、見てみると、それはLINEだった。
相手は、好きな人からで。
『明日、暇なら遊び行かない?』
『いいけど。どこ行くの』
素っ気なく返してしまうけれど、本当は、もっと、愛想よく、可愛げある返事をしたいと願うけれど、そんなことは出来なくて。
だって、彼は…。
『ゆっくり話できるとこ。また、話聞いてほしくてさ』
『分かってるよ。またあの子のことでしょ』
私の親友に、恋してる。
それでも、こうして彼と会う口実が出来ることが、嬉しい。
2人が恋人同士になったら、もう、こうして彼からのLINEは来なくなるだろうか。
もし、そのときが来るのなら、まだ先でありますように…と願ってしまう私は、意地が悪いなと自嘲する。
いつからか、自分の胸の鼓動が、やけに速くなる。
分かっている。それは、決まって、あの人を見たとき。
あの人のことを、考えているときだと。
あの人の、仕草ひとつひとつに、いちいちドキドキさせられる。
この想いを伝えたら、あの人も、同じ様に胸の鼓動を速くさせてくれるだろうか―。
ふわりと、鼻を掠める心地よい香り。
君はいつもその香りを纏わせている。
そのせいで、同じ香水を付けている他人とすれ違うと、君を思い出す。
そして、君に無性に会いたくなってしまう。
刷り込まれた、君の香り。
表紙に惹かれて、買った日記帳。
そこに何を書き留めようか。
ワクワクしながら、開いたのを思い出す。
白紙のページばかりが続く日もあった。
それもまた記録のひとつ。
まだまだページは残りがある。
これを一冊書き終えるのは、いつになるだろう。
海へ、足を運ぶ。
今日の海は、とても穏やかで、凪いでいる。
あの日も、こんな海でいてくれたら。
けれど、海は突如、荒れ狂う。あの日もそうだった。
君を、海が呑み込んで連れていってしまった。
喧嘩して、仲直りも出来ないまま別れてしまった後悔が、ここへ僕を向かわせる。
もっと、一緒にいたかった。
喧嘩しても、また仲直りして、バカなことで喧嘩したねって笑い話にして。
そういうことを、積み重ねていけると、勝手に思ってた。
ねぇ、君の身体は、今どこにあるの?
記憶を喪っていても、どこかで無事でいるなら、それでもいい。
けれど、君の身体は、未だ見つかっていない。
会いたい。
僕も、海に呑み込まれれば、君と同じ場所へ辿り着けるかな?