「いい空だね。こういう空って、見てるとなんだか飛んでみたいなぁ、とか思わない?」
友人と、カフェの窓側席で会話していると、何を思ったか、そんなことを言ってきた。
「えぇ?うーん…私は別に…」
「そうなの?こんなにいい天気、鳥みたいに飛べたら、気持ち良さそうじゃない?」
「ごめん、私、高所恐怖症だから」
「え!うそ⁉」
面白いくらいに、驚いているその姿にプッ…と吹き出してしまった。
「ごめんごめん。嘘だよ。相変わらずいいリアクションありがとう」
「ひど‼え、じゃぁ飛んでみたいと思わないってのもウソ…?」
「それはホント。飛んでみたいとは思わないね」
「えぇ~?なんで?」
「きっと、他の生物に襲われて、すぐ飛べなくなるだろうし…あと、飛んでるとき、休憩場所ないと飛び続けないとならないってのもね」
「夢ないなぁ。らしいと言えばらしいけどさぁ…」
そりゃ、純粋無垢な幼い子供の頃は、"空を飛んでみたい"なんて素直に夢見たことはあるけれど。
「地に足をつけて生きるのが、向いてるんだって。私は。つまらない、って思うこともあるけどね」
冗談交じりに、本音を溢す。
ふと、退屈な授業中に、窓から見た空は、どんよりと曇っていた。
(これは…降る、か?)
傘、持ってきたっけ、なんて考えながら、空を見上げ続けていると、ポツ、ポツ、と音がしたと思ったら、一気にザーッっと雨が降りだした。
(昨日は暑かったけど、今日は打って変わって、肌寒くて更に雨、か…明日はどうなるかな)
自然現象が見せる、様々な空模様を見るのは、面白くて好きだ。
雨とか、悪天候は、移動が大変になることもあるから嫌だけど。
でも、その悪天候が、過ぎ去って、太陽の光が差し込む瞬間や、雨上りに見える虹とか。
悪天候が来てこそ見える空も、好きなんだよな。
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」
有名な童話の、魔女のセリフ。
「なんでこんな自信たっぷりに問いかけられるんだろう…?」なんて、幼いながら不思議に思った記憶がある。
あれから年月が過ぎて、大人になった現在も、この魔女のセリフに対しては、あの頃と同じように変わらぬ印象を抱いている。
きっと、自分はこの魔女のことを、理解できないままなんだろう。
普段は重い腰を上げて、いざ、と整理しようと取り掛かるまではいい。
でも、気が付けば、久し振りに手に取った過去の思い出とか目にすると、ついつい夢中になって、懐かしさに耽って。
まだこれあったんだな、とか。こんなの読んでたっけ?なんてパラパラと軽く読むつもりが、夢中で読んでしまっていたり。
そうして、あっという間に時間は過ぎて。
結局は大した断捨離も出来ずに、終わる。
それが積み重なって、いつまでも捨てられないものがどんどん増えていく。
そろそろ、本気で四次元ポケットみたいな、無制限収納が欲しい。
片付け下手な人間の、切実な願い。
静かな夜に、海の波打つ音が、心地良い。
朝とはまた違った、表情を見せる、海。
朝は、キラキラと日差しが反射し、眩しくて。
夜は、海の深さが分からないくらい、真っ暗で。
思わず、吸い込まれそうになる。
それでも、怖さはなくて。
裸足になって、海へ入る。
ぱしゃぱしゃと足を遊ばせて、夜の海を楽しむ。