『麦わら帽子』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
気づいたら、トラックに轢かれそうになっていた。
最愛のあの人からもらった麦わら帽子。
赤いリボンの装飾が巻かれていて、
最近暑いね。と言い合っていた夏の日にさり気なくプレゼントしてくれた宝物。
『似合ってる。』
って少し頬を染めながら言ってくれたっけ。
でも、。
あの人はもう居ない。
あの日は強風注意報が発令されていた。
彼は飛ばされた麦わら帽子を拾おうとしてトラックに轢かれそうになった私の身代わりとなってしまったのだ。
沢山、たくさん恨んだ。
トラックの運転手を。
風が強い日なんかに麦わら帽子を被って出かけた私を。
私なんかの身代わりに…なることを…選んだあの人を…。
彼を…恨んじゃいけない。
私を助けてくれたのだから。
でもやっぱり。。
「なんで…なんで…また置いて逝っちゃったの…?」
掠れた声でそう呟く。
そういえば、
『君の声は澄んでいて綺麗だね。』
と言ってくれたっけ。
もう、ちゃんと声を出すことも出来ない。
嗚呼、もし。もし、あの時こうしていたら。
無駄だと分かっていても、そう考えることを辞められない。
だって。だって!
「彼をまた…助けられなかったんだから…」
そこで意識が途切れた。
目が覚めた時、私は…
2023.8/11 麦わら帽子
蝉の声に飽きたころ、
庭の倉庫で祖父の麦わら帽子を見つけた。
クタクタになって、ほつれていたけれど、
なぜか、また祖父に会えたような気がする。
祖父は朗らかな人であり、
詩を愛し、本を愛し、そして自然を愛していた。
いつ会っても本の匂いに包まれている人であり、
私が生まれた日には、私の名前を主題にした詩を
作ってくれた。
かなり昔には、猪を狩って、猪鍋を身内に披露し
「この産毛が美味しい」と語ったという。
祖父は私が幼い頃に亡くなった。
酒を交わして語り合いたいこともたくさんあるが、
今はただ、墓を経由して語りかけるのみである。
再び会うことができたとするならば、
「大きくなったね」と声をかけてくれるだろうか。
そう思いながら、祖父の麦わら帽子を
そっと持ち上げると、ちいさな蜘蛛が一匹
倉庫の奥へと逃げて行った。
私は麦わら帽子を少しだけ叩き、綺麗に置き直すと、
倉庫を閉じた。
まだまだ夏は続く。
黄金色の麦わら帽子を被ったあなた
いつ見ても美しく輝いている
/♯麦わら帽子
ねぇねぇそこの君。
「何ですか」
あなたはお風呂を知ってるかい?
「知ってますよ」
じゃああなたはお風呂だね。いや、みんなか。
「(さっきから何を言ってんだコイツは。)
どういう意味ですか?」
少しはその頭で考えてみなよ。すぐ聞くんじゃなくて、
「(なんだコイツは。さっきから腹が立つな。)」
「なんなんですか、さっきから」
あら〜もうキレちゃったの?
やっぱお風呂だね〜。みんな。
「迷惑なんで、さよなら。」
何か行動をとったら波風が立ち
何も行動をしなかったら何も起こらない。
みんなは波風が立つのを恐れて
何も行動をしない。
代わり映えのない日々に
一滴の血を流しましょうよ
恐れずに挑戦した人達はきっと
たくさんの血を流してるから
モノを見誤れば波風は立ちやすい
さっきのモノもその部類だ
ただし
次は分からない
さぁまたモノに話しかけているようだ
恐れずに挑戦しているカレを見てみよう
ねぇねぇそこの君。
「はい。何ですか?」
あなたは人生を知っているかい?
#麦わら帽子
いきなり強い向かい風
僕の飛んでいった麦わら帽子
その先に君がいた
それが僕の初恋
麦わら帽子、風になびく涼し気なワンピース
そんな服が似合う女の子になりたかった。
麦わら帽子が似合う、ふわふわした子になりたい。
でも、そんな風にはなれないから
私は私らしくいる。
けど、やっぱり、麦わら帽子に憧れる。
「 麦わら帽子 」No.27
麦わら帽子が風で飛んだ。 飛んだ麦わら帽子を取ってくれた人は私の夫。
運命の出会いを私は体験した。
夏の時期に
麦わら帽子の
君に出会った。
白いワンピースを
着ていて
かわいい。
僕は恋に落ちた。
白いワンピースに白い肌
そして綺麗な黒髪に似合う麦わら帽子
名前も知らない貴方は麦わら帽子で顔を隠す
口元だけを見せてひまわり畑に消えていく
僕は貴方の後ろ姿をしっかりと目に焼き付けた
二度と会うことはないだろう
野球部のマネージャーしてた頃
日焼けするのが嫌で
麦わら帽子を被ってグラウンドに出てた
3年間使った麦わら帽子は
今も大事に娘の部屋に飾ってる
娘がキラキラ輝いていた青春時代の思い出
『麦わら帽子』
麦わら帽子 イヤホン外せば蝉しぐれ ぼやけた頭にハルモニア 時間が夏と手を組んで 時計の針を止めてしまった アイスキャンディー蜜柑味 1番汗ばんでるのは君だろう 甘い匂いに蟻の行列 蟻に夏休みはないのだろうか? 大学通りはお盆で人手が少ない
喫茶店に行くにはうってつけの午後なのだ
『麦わら帽子』
「母さん 僕のあの帽子どこに行ったんでしょう」
確か昔の映画だった
何の映画だったか?
どんな内容だったか?
もう忘れてしまった
だけど
父さんと観た
最初で最後の映画だった
あの日
家に帰ると
母さんの荷物も姿もなかった
そして
あの日から
父さんも
帰って来なくなった
そして
ボクは
独りぼっちになった
それは、昔、まだ身を隠して生きてきた頃の思い出。
ある老夫婦に、お世話になっていた。その年は、いつもより暑い夏で、小さなため池は干上がるほどの暑さだった。
その日は、一段と暑い日で、早朝には暑さで目が覚めた。いつものように、水差しから桶に水を注ぎ、顔を洗い、かたく絞った手ぬぐいで、体を拭いた。
机の上の硬い黒パンをちぎり、口に運ぶ。しかし、いつもの量の3分の1しか喉を通らなかった。
いつものように畑に出て、植物に水をやり、雑草を摘んでいた時だった。
突然、汗が全身から吹き出で止まらなくなり、指先が震え出した。
気がついた時には、ベットで横になっていた。
ベットの横には、老夫婦が居た。「ああ、良かった。本当によかった。目が覚めた。」と、老夫婦は泣きながら、喜んでくれた。
そして、ぎゅっと僕を抱きしめてくれた。
それから、間もなくお医者さまが家に来て、診察してくれた。
「数日間、安静に過ごしたら、体調も回復するよ。それと外では、帽子を被るように。そして、こまめに水を飲むようにね。なにか有れば、また呼んで下さい。では、これで失礼します。」と、お医者さまは、帰っていった。
その翌日には、おばあさんが、おじいさんと僕の分の麦わらで帽子を編んでくれた。
麦わらで出来た帽子は、農作業になくては、ならない必需品となった。
今では、もう小さくなって被れないが、これだけは手放せず、手元に残している。
旦那が最近素っ気ない気がする。
結婚して10年、日常の会話も少なくなってきた。
些細なことが気になってしまうし、小言もよく言ってしまった。
気分悪くさせちゃったかな
そうだ、久しぶりにひまわり公園に2人で行こう。
昔よく行ったあの公園。
初めてのデートもあの公園。
付き合ったのもあの公園。
そして、私たちが結婚しようと決めた日も
あの公園。
昔よく被ってた思い出の帽子を両手に、るんるんと旦那に声をかけた。
一緒にひまわり公園にいこう。
忙しいからまたにしよう。
私は麦わら帽子を捨てた。
『麦わら帽子』
数年振りに幼なじみの家に来た。
昔は毎日遊ぶ仲だったのに、最近では学校ですれ違っても全く話さないようになってしまった。いつからこうなったのかは良く覚えている。確か小6の夏だ。それまではいつも友達とやんちゃしている快活な少年だった彼だが、小6の夏休みで別人のように変わってしまったのだ。人との間に壁を作るようになり、中学生になった今では、最早彼を友達だと認識しているのは私くらいだろう。小6の夏に何があったのかは私も知らない。当時、うちのお母さんは「思春期に突入したんでしょ」と言っていたが、恐らくそんなのではない。勿論、本人に何があったのかは訊けていないが。それは触れてはいけないことで、彼にその話をしたら二度と元の関係には戻れなくなる、当時の私にはそんな気がしたのだ。
今日久しぶりに彼の家に来たのは、家族が皆旅行に行っている私のために、彼のお母さんが夜ご飯を作ってくれることになったからだ。受験生だからって家族旅行に連れていってもらえないのには納得がいっていなかったのだが、彼と話す絶好のチャンスが巡って来たことには密かに喜びを感じている。
「ご飯出来るまでもう少し時間かかるから、それまで二人で勉強しとけば」という彼のお母さんのファインプレーによって、私は今、彼の自室で彼と二人きりだ。受験生とはいえまだ八月。集中力がそんなに続くわけもなく、私は部屋の中で話題になりそうなものを無遠慮に探し始めた。白い壁、木製の勉強机、無地のベッド。一見何の変哲もない男子中学生の部屋だが、私はそこに一つだけ気になる物を見付けた。
「ねえ、この麦わら帽子って女物だよね。どうしたのこれ」と私が訊くと、彼は少しだけ迷った様子を見せたが、ゆっくり口を開いて短く答えた。
「…俺の大切な人の物なんだ」
その返答に私は驚いた。幼なじみの私が知らないような、彼にとって大切な女性とはいったい誰なのだろう。見当もつかない。何しろ、今の彼には親しい友人すらいないのだから。私が彼について知らないのはあの夏のことだけのはずなのに、と思ったところで全てが繋がる。
「もしかして、小6の夏休みに関係あったりする?」
彼は一瞬驚いた顔でこちらを見て、やがて静かに頷いた。私は私で、彼のその表情があまりにも哀しいものであることに驚いた。この麦わら帽子の持ち主は今何処にいて、何をしているのだろう。色々な想像が浮かんでは消えてゆくが、敢えてそれを口に出すことはしない。今はただ、その哀しげな様子をなんとかしてあげたいと思う。けれどきっとそれは私には出来ないことだ、というのも頭の何処かではっきり分かっていた。きっとその胸の傷は、この麦わら帽子の持ち主にしか癒せない、そんな気がしてしまった。だから私はそれ以上何も言えなかった。
開いた窓から聞こえてくる蝉の声が、部屋に夏を響かせていた。
小麦色の肌にワンピース
小麦色の肌に短パン
虫取あみと虫かごをもって
草の上を走り抜ける
スイカを食べて
種とばし
微かに聞こえる秋の虫の声
さんさん照りつける太陽に
一風の風
舞い上がる
私の麦わら帽子
夏は毎日、私の相棒──
(2023.08.11/麦わら帽子)
「君ほど麦わら帽子が似合う子、他にいないよ」
日差しの降り注ぐ暑い日、
そう言って彼は優しく微笑んだ。
「そうかしら」
限りない青色が広がる空の下、
彼女は照れくさそうに笑った。
ああ、蜜蜂さんったら
ああ、向日葵さんは
なんて素敵なんだろう。
麦わら帽子、巨大な入道雲、恐ろしく青い空、蝉の声、鼻すじにかかる影、こめかみを伝う汗、熱い手のひら、煌めきながら上下する喉仏、濡れた髪、真っ赤な唇、レースのような血管が走る瞼、光る頬、眩しすぎる太陽、燃やせ、すべてを忘れるために、帽子を
麦わら帽子と聞くと
あいみょんのマリーゴールドを思い出す
#25
君の麦藁帽子に僕だけの印をつけた。夏の間中、日差しのつよい場所へ出かける度に身につけていた。公園のベンチでアイスを食べる横顔にツバが影を作る。「昨日食べたアイスよりこっちのほうがおいしい。」レシートをペッと僕の太ももに置いた。
次の梅雨が明ける頃に髪型と髪色を変えると、「今の雰囲気には似合わないんだよね」と被らなくなった帽子がクローゼットにしまってある。