『飛べない翼』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
お題:飛べない翼
地に足をつけて歩いてほしい。僕と同じように。
君は優しくて、誰にだって親切で、純粋で。
幸せを運ぶ青い鳥に相応しいほど、君は。
僕にも声をかけた。だって、君は青い鳥だから。
君の翼の手入れをした。
お湯は駄目で、水をたんと与えた。
力いっぱい擦らず、優しくなでた。
君は大いに喜んで僕を慕ってくれた。
手を差し伸べると君は破顔して僕の手を取った。
幸せの青い鳥 空高く舞う 君
奇麗だった。とても。だからもいだ。
丁寧に丁寧にお世話をして、美しい翼を授け、飛べない翼にするまでも、すべて僕がしたかった。
どんな顔も見てみたかった。
その顔が見てみたかった。
そんな顔をしないで。
僕と同じになってほしかった。
君は笑った。
いつもと同じように。
もげた翼を踏んづけて僕に手を伸ばした。
僕は取り損ねて君は思い切りこけた。
それでも君は笑った。手を伸ばして。
「これで、あなたと、同じになれます」
足で翼を踏んづけて、手を伸ばして。
僕と 同じように。
飛べないの
どうしても。
大事な大会なの。
飛ばなきゃいけないの。
あの2m11cmに届かない。
もし私に翼があったのなら、
あの高さを飛べたのかな。
「かなしみのない自由な空へ」と
唄うくちびるにうつる虹色
お飾りの翼を広げわたしたちは
うっかり太陽へと飛び立ちたがる
こんな世界クソだとわめきながら
もっといつくしまれたかったとべそかきながら
ここはすべてがほどけるところ
イドすら飛んで渦の中へ
泥濘む世界に安売るは石に
昨日の死に報う為に
明日死ねる為に
浴びる浪は玉に
浮かぶ文字に願いを
翼があったら必ず飛べるとか、
足があったら必ず歩けるとか、
それって違う。
女の子だからおしとやかとか、
男の子だから強いとか、
それも違う。
優しいって言われるからいつも優しくしなきゃとか、
頼りになるねって言われるから自分でやらなきゃとか、
それも違う。
全部全部違うし、違くていい。
他人から見てわかることが全て正解なわけない。
飛べない翼も、
歩けない足も、
かっこいい女の子も、
優しい男の子も、
優しい人のわがままも、
頼りになる人の弱みも
全部あっていいし、無くちゃダメ。
みんな居ていいし、居なきゃダメ。
全部受け入れたいし、知りたいって思う。
分かるよ。
出来るように
なりたいのに
頑張ってるのに
いつまで経っても
出来ない。
報われない。
理想の自分に
なれなくて
絶望する。
ダイジョウブ!
イツカ
キット―――
そんな
簡単に
言わないで。
適性
能力
みんな
違うのよ。
この道だけじゃ
ないんだよ。
違う道を
選んでいいんだよ。
世界は
広いんだから。
って
あの時のわたしに
教えてあげたい。
#飛べない翼
飛べない翼はつけている意味がないと皆が言った。
ただの飾りでいらない重りだとそう言った。
でも本当にそうだろうか。
その翼は本当は飛べないんじゃなくて、今まで飛んだことがないだけの翼なんじゃないかって。
僕はその翼で是非飛んでみたい。
まだ見ぬ可能性を秘めたその美しい翼で。
だから自分を責めてそんなに泣かないでほしい。
僕は死んだ今になって、そう自分をなぐさめた。
飛べない翼
鳩ばかりの鳥小屋へ新たに加わったのは、ふくふくと丸い雀だった。
どちらも神使のようなものだから普通の鳥のように飼う必要はないのだが、本鳥たちも満更ではない様子だったので、馬たちの世話と同じように交代制で面倒を見ている。
水飲み場を洗って井戸から汲んできた新しい水を入れ、小屋の中を掃除して、ここまで普通の鳥と同じで良いのだろうかと首を傾げながら餌を与える。
「この餌、結局なんなの?」
小屋の横で鍬や鋤についた畑の泥を丁寧に落としている男に尋ねれば、あれ? 知らない? と作業の手を止めて顔を上げた。
「粟とか稗だよ。この前みんなに収穫を手伝ってもらった」
「あれかぁ」
稲のようで稲とは違う雑穀を確かに収穫した。皆で食べるには量が少ないと思ったら、ここにいる小さな仲間たちの食糧であったらしい。
餌を啄み、水を飲み、ぺたぺたと歩く。小屋と言っても雨風を防ぐための屋根と壁、それから止まり木があるだけで、鍵をかけて閉じているわけではない。暗くなる前には皆帰ってくるが、仕事がなければ日当たりの良い場所で各々のんびりと、文字通り羽を休めていた。
ぺたぺた、よちよちと、まんまるの小鳥が歩く様子をぼんやりと眺める。
「飛べないわけじゃないのに、飛ばないんだ」
「なんだかねぇ、飛ぶのも大変らしいよ」
「鳥なのに?」
「鳥なのに」
翼があるからと言って、必ず飛んで移動するわけでもないようだ。考えてみれば翼の羽ばたきの力だけで己の身体を浮かせるわけだから、そう簡単であるはずがない。
「地上に危険がなければ飛ばなくなる鳥もいるくらいだし」
「ペンギンとかニワトリとか?」
少し前に読んだ本の挿絵を思い出しながら名前を挙げれば、鶏はちょっと飛ぶよ、と答えて笑った。
「他にはダチョウとかエミューとか、キウィとかドードーとか」
「結構いるんだ」
飛ぶ理由がなければ、わざわざ大変な思いをしてまで飛ぶ必要はないということなのだろう。
飛べない翼を、けれども彼らは持ち続けていた。ペンギンのように用途も形も変わることはあるが、空を飛ぶための翼であった名残は残っている。
「飛べない鳥の中には、空を飛びたかった鳥もいるのかなぁ」
「かもしれないねぇ」
自分の意思でそうなったわけではないのだから。空に憧れて焦がれたものも、飛べない翼を持つ鳥の中にはいたのかもしれない。雲が浮かぶ空を、首が痛くなるほど見上げて。
きゅっと胸が痛くなる。空に焦がれたことはないが、自分の手にはないものを渇望する思いは知っている。どんなに走って手を伸ばしたところで、何も掴めないことも。
思わず俯いて、両手で腹部を抱え込むように押さえる。まだそれほど痛みはないが、これ以上ぐるぐると考えていたら本格的に痛くなってしまいそうだ。
そんな様子に気づいているのかいないのか。隣に立つ男は普段と変わらない柔らかな口調で、いつもの言葉を口にした。
「でもみんな、最後は土と共にあるんだから同じことだよ」
遥か高く空の上にいても、深く静かな海の底にいても、それは変わらない。地上を走るようになった自分たちもまた同じこと。
「なんていうか、それを言っちゃうと元も子もないよね」
「でも安心できるでしょ?」
「どうかなぁ」
首を傾げつつも、腹の痛みが遠のいていくのはわかった。
全てのものは土と共にあり、循環するもの。そんな彼の話を隣でずっと聞いてるから、そういうものなのかもしれないと思うようになってきている。
難しくてよくわからない話も多いが、彼がゆっくりと語る声を聞くのは好きな時間のひとつだった。
この世界では飛ぶことが普通である。人々の背中からは翼が生えており、翼を羽ばたかせることで空を自由に飛び回る。
なのに、私だけは空を飛ぶことができなかった。翼はあるのに機能してくれないのだ。とんだサボり魔の翼に当たってしまったらしい。
「どうして飛ばないの?」
友人は不思議そうに私を見ていた。腹立たしいことに空を飛んで、高いところから私を見下ろす。降りてこいと言いたかったけれど、空を飛べるのが普通なのだから私は何も言えなかった。
「……気分が乗ったら飛ぶよ」
「ふうん。じゃあ、その羽は飾り?」
きっと彼女には私を馬鹿にする意図はないのだろう。どうして空は青いの、と質問する幼子と同じ表情をしているから。
「……そうだよ。とびきりおしゃれでしょう?」
全ての感情に蓋をして私は友人を笑顔で見上げた。友人もぱああと笑って言った。
「うん、素敵!」
そう言って飛んでいってしまう。取り残された私は一人しゃがみ込んだ。
飛べない翼には意味がない。でも、私は別に飛べなくてもいいと思うのだ。ただ普通になりたかった。ただそれだけなのに、それさえも叶わない。
世界は普通じゃない者に優しくなりつつある。
でも私の望んだ世界はそうじゃない。私は優しくされたいわけではないのだ。
ただ、普通になりたい。普通に生きて普通に笑って普通に馴染みたい。
翼を撫でながら私は空を歩いた。
かごの中にいる鳥は大層美しく、この世の贅沢を謳歌するものの象徴に思えた。
濡れた瞳は宝石のように輝き、瞬きからは星屑が散らばる。
口を開けばころころと涼やかな音色で歌い、羽ばたき舞う姿は天女の如く。
「どうですお客様。この美しさは他の何ものにも代え難いでしょう?」
商人は両手を擦り合わせながら笑顔で言った。
「ご安心ください。きちんと腱を切っておりますので逃げることは出来ません」
飛べない翼を纏うその鳥は大層美しく、この世の醜い残酷を象徴するものに思えた。
オオウミガラスって知ってる? ペンギンに似た鳥なんだけど、北極に住んでいたんだ。
人懐っこい鳥だったらしい。そして、19世紀頃かな? 羽毛も肉も卵も脂肪も重宝されて、乱獲されて絶滅したんだ。
飛べないからね。逃げることもできなかったんじゃないかな。
とにかく、そうやって消えてしまった。
まるで、君のようだね。
警戒心なんて持たずに人に近付いてしまう。自分の価値も、相手の思惑にも気付けずに。
飛べない翼で、逃げ出すこともできない。
でも、安心して。
社会から消えてしまっても、絶滅したわけじゃない。僕の世界にだけ存在している。
案外、オオウミガラスもそうやって生き延びているのかもしれないよ?
気を付けてね。
この世には恐ろしいものがたくさんあるんだ。
もう遅いけど。
大丈夫。僕が一生大切にしてあげる。愛を与えてあげる。僕だけが君を捉えて離さない。僕だけの鳥。
『飛べない翼』
「飛べない翼」
空を飛ぶためのものではなく
冷たい雨や 凍える寒風や
灼熱の太陽や 静かな雪さえ
あなたを悲しませるものから
あなたの掛け布団代わりになって
あなたを安らかに眠らせてあげるための
包んで護るためのものだから
私はこれでいい
私はこれがいい
「飛べない翼」
〖飛べない翼〗
大きな夢があったのに
苦しく
辛く
諦め
逃げようとここに立ったのに
神は逝くなと
飛ばせてはくれなかった
まだ私には天国まで飛んでいける翼はないと言う
飛べない翼が飛べる翼になるのはいつの日か。
ゆずの、『飛べない鳥』という曲。
父の好きな音楽が私の知っている平成の音楽。
「君と歩きそして笑うために」
「不釣り合いでも構わない」
今見返すと、寂しくて強くて優しい歌。
あの頃は曲の意味なんて考えてなかったから、車を運転する父の横で満面の笑みで叫ぶように歌っていた。懐かしい。
怪我をしたの?
疲れたの?
そもそも飛んだことがないの?
”飛べない翼”で閉じこもっている
足枷がついているのなら外してあげたい!
いやいや、それも自分で外す?!
飛べない時は飛べないのだから。。。
大丈夫! 大丈夫!
焦らず見守ることにしよう。。。
飛べない翼なんて要らない、見えない目なんて、動けない四肢だって、働かない頭だって、なにもかも、要らない。大切な物を見逃すような、大切な時に動けないような、大切な時にパニックにるような、そんな、大切な時にろくに機能を果たさないようなものは、要らない。だから、すべて投げ捨てたっていいから、あのこを、助けたかった。あのこといきたかった、ひとりに、しないで、ほしかった。
飛べない翼
遠い昔に飛んでいた空は
今は遠く、どんなに努力してもと届かない。
描いてた未来も、夢も
空が黒い雲に覆われる様に見えなくなっていた
どんなに強く足はいい日になるのだ。
今日はいい日だった。
そう思っていても刹那の瞬間に白露の様に消えていった
悲しいのとは違う何かが胸の中に渦を描き
その何かによって、他のものも間に入れない
生まれるということもない
悲しくはない。
ただ同じものが見られないと思うと少し切ない
「飛べない翼」
⚠️監禁表現あり。
苦手な方は自衛をお願い致します。
薄暗い部屋の中に座り込む。
何週間、いや何ヶ月が経っただろうか。
窓の光さえ入る事のないこの部屋に閉じ込められてから。こんなの、紛れもない監禁だ。
たった唯一の出口に向かおうとしても、私の足に鈍く光るそれがそれを拒む。
長さも調整されていて、丁度出口には届かない。
これさえ取れれば。
足首を締め付けるそれをガンガンと机に打ちつける。
高い強度を持つそれには傷ひとつ付いていない。
なんでよ、外れてよ!!
何度泣きながら願っても何も変わらない。
そんなことを繰り返していたある日のことだった。
カチャ
え?開いた!!
ずっと開かなかった、それが開いた。
外れた嬉しさを前に笑みが漏れる。何で外れたかなんて気にすることよりも先に体が動いた。
気が狂ってしまう前に早く、早く此処から。
そう思い、走ろうと足を着いた瞬間、体が前方に倒れた。手足に全く力が入らない。
もー、馬鹿だなぁ。
彼の呆れたような声が、部屋に響く。
何で、まだ昼間なのに。彼がいるの?
君さ、此処に何ヶ月居ると思ってんの?全く動いてなかった君が急に走れるわけないじゃん。
最初から仕組まれていた。私が逃げ出すと分かった上で足枷を外し、走らせた。もう、逃げられないとでも言うように。
さぁ、部屋に帰ろう。お姫様。
空を飛ぶための翼をもがれた、もう飛ぶ事のできない鳥はまた鳥籠の中へと戻っていった。
飛べない翼
朝起きて飯を食って歯を磨いて、さあ学校に行こうと思ったその時。気づいた。飛べない。羽はついているのに。昨日まではあんなに簡単に飛べたのに。何か悪いことをしたのがばれて、神様に天罰を下されたのだろう。自分が悪いのだと受け入れることなど到底できず、朝から本当に腹が立った。
飛べないなら、どうやって学校に行けばいいんだよ。
もうしょうがない、歩いていこう。普段はわざわざ道なんて面倒だから通らないのに。ふざけんなよ。でも、今までは飛んでたから見えなかったけど、こんなに綺麗な花がたくさんさいていたんだ。知らなかった。歩くのも案外悪かないな。なんだか気分がいいし、久しぶりに走ってみよう。走るのなんていつぶりだろうか。そう思って交差点を曲がったその瞬間、そこにもう道はなかった。
落ちていく。なんで道だけは絶対に用意されてると思っちゃったんだろう。
飾りとしての翼すらも、綻び散っていくのがわかった。
こんなことになるなら、こんな翼最初からいらなかったのに。
「飛べない翼」
この前までは大きく羽ばたいていた。将来を夢見て。
私は、ずっとなりたかった教師になった。高校、大学と、将来の夢を叶えるために飛び立ち、飛び回った。
だけど、今はベッドの中から出られない。私の翼は飛べない。
新人として働いたけれど、翼がズタズタに破れてしまったようだ。
私は、いつかまた飛べると信じて翼をゆっくりと休めている。