『雫』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
葉からポタポタと落ちる雫
雨上がりからしか見れない姿だね
月華
『雫』
「いらっしゃい。今日はどんなモノをお探しで?」
路地裏の古道具屋の店主は、カウンターに並んだ無数の小瓶を指差した。瓶の中には、ビー玉のような形の透明な液体が一つずつ収まっている。
私は迷わず、一番淡く光る瓶を選んだ。
「これを。失くした初恋を思い出したいんです」
店主は頷き、瓶の蓋を開けた。
私はその雫を指先に滴らせ、そっと舌に乗せる。
瞬間、視界が弾けた。
放課後の教室、夕立の匂い、そして隣を歩くあの人の体温。
甘酸っぱく、けれど胸の奥がキリリと痛む――完璧な再現度だった。
「……満足しました。でも、コレどうやって集めているんですか?」
私の問いに、店主は古びたスポイトを振ってみせた。本体は硝子で、指でつまんでいる部分がゴム製の。
「簡単ですよ。誰かが泣いたとき、その頬を伝う前に盗み取るんです。喜びも悲しみも、乾いて消えてしまう前にね」
店主の指が僅かに動いた。
私の頬を伝おうとした、今の「感情」が吸い取られたことに、私は気づいていなかった。
『雫』
深夜。
甘やかな湿度が寝室を満たす。
大きな瑠璃色の瞳に張っていた薄膜が、俺の律動に合わせて雫となって零れ落ちた。
「気持ちいーね?」
俺の問いかけに彼女が答える余裕は既になく、弛緩した小さな唇から艶めいた声を響かせていた。
普段、凛と澄ましている彼女が俺の熱に翻弄されてよがっている。
その事実だけでひどく興奮した。
「ねえ、愛してる」
既に密着している彼女のナカが、俺の気持ちに応えるようにキツく締まる。
彼女が嬌声を必死に抑えようとすればするほど、滑らかな素肌が熱を持ち汗ばんでいった。
熱と欲を食んでいた彼女の口元が理性をかき集め始める。
「っ、たしも……っ、ひぅう」
いじらしく言葉を紡ごうとした彼女の薄い唇を、唇で重ねた。
彼女の目尻から溢れた生温かい雫が俺の皮膚に乗り移る。
かわいい。
かわいい。
かわいい。
たわんだままの理性で目先の快楽に手を伸ばした。
あとから死にたくなるくらい後悔することはわかっているのに、俺は彼女に無理を強いる。
ああ。
堪らないな。
蕩けそうなほど柔らかくて熱くなった彼女の首筋に、俺は独占欲の華を咲かせた。
雫みたいに
こぼれそうな想い
触れた瞬間
それが恋だと知った。
あの子の頬を流れる雫
わがままで落ちる雫
悲しくて落ちる雫
悔しくて落ちる雫
嬉しくて落ちる雫
どれも私に伝染する
何度も一緒に泣いちゃって
ごめんね
頼りないママで、ごめんね
あなたの頬に雫が滑り落ちたらね
今度こそ強い眼差しで
明るい笑顔で受け止めてあげたいの
だからいつでもおいでね
待ってるからね
雫
世界樹の傍に咲く金色の小さい花は
世界樹から零れ落ちる雫をもらいながら
永い永い年月の間咲き続けていました。
今日も雨だった。
晴れ空の色を思い出せない。
いつからこうなっていたのかも忘れてしまった。
飽きることなく泣く空を眺める。
いっそ空の方から「もう二度と晴れませんよ」だとか言ってくれればまだ諦めがつくだろうけど、空はただ泣くばかりだ。
……窓の下を見下ろす。
暗い水面の奥、沈んだ建物の間を魚たちが泳いでいる。
ふと手を伸ばしてみた。
空から落ちてきて、腕に驚いて跳ね返るように飛び跳ねるそれを見ていると、不思議な気分になった。
なんだか気になって、私はしばらく水面をつついていた。
お題*雫
『雫』
流れていく水流を思い浮かべて欲しい。滝であっても、蛇口から流れる水であってもいい。とにかく、重力に従っている水を想像して欲しいのだ。それらは群体である。繋がって居るように見えるが、実際はそれぞれの個として分解できるのだ。大きな水流から、小さい雫へと。あくまで人の目には、水流に見えるだけであって、実際は雫の集まりなのだ。
組織的な犯罪の構造と言うのも、実際にそれに近い。例えば、複数人で大きな犯罪を犯したとする。全体で見るとやったことはとても大きい、テロ行為とかだ。だが、一人にできることは小さい。大人数いるから、大きいように感じるのだ。
まぁ、何が言いたいかと言うと。基本的には全員鎮圧してしまえばいいのだ。
したいことも
やりたいことも
きっと
たくさんあった
まどからおちる
ちいさなしずくをみて
なんだか
ぜんぶどおでもよくなって
それでも
おわらなくて
おわらせかたも
わからないから
まちのゆうぐれを
静かに眺めるに至った
掃除を一生懸命すると額からこめかみにつるりと転がる汗の雫
雫。
雫の滴る昼下がり。
アイスの溶けた雫
ラムネ瓶の雫。
近所の水やりの雫。
喉元の汗。
あの夏は良かったな_______________
そう言って私は雫をこぼす。
『雫』
雨上がり、緑の葉に溜まった雨粒が雫となって落ちるように、私はあなたに恋に落ちた。
2026 4/22 テーマ「雫」
ずっと、ひびいてる。
にじんで分かんないお目々の代わり、
水のはねる声が、ひびいてる。
体は全部ぬるくて、ぬめって、私はお風呂にいるみたい。
でも、出そびれちゃうと寒いから、きっと私は風をひく。
かえる、かたつむり、あと、そう、なめくじ。
皆と違って、いつもぬるぬるしてないからだめなんだ。
雫が目に入りそうになって、一生けん命、目をつぶったら、
そのままはなの後、口に入っちゃった。
しょっぱい。
水でできている
雫は滴り落ちるもの
一定のリズムでおちる
: 雫
青空の下を走らせる先に
爽やかな緑が広がる
バイクの音が華やかにキレ
風を裂き一体化する
いつも立ち寄る社に止め
一息つくことにする
ここに来ると心が落ちつく
深呼吸しながら空気を感じていると
消え入りそうな声が聞こえてきた
周りに目を凝らすと
小さく震える体があった
子猫だ
辺りに母猫の姿はない
きっとはぐれてしまったのだろう
そっと手を伸ばし、ゆっくり触れると
震えながらも頬を寄せてきた
一人で怖かったよな
もう大丈夫、一緒に帰ろう
安心したのか、僕に預けるように
体を小さく丸めた
僕たちの新しい生活が始まった
君は今日から、月野 雫だよ
ミルクを顔いっぱいに飛ばしながら
名前が気に入ったのか
ミャ〜っと嬉しそうに笑った
桜月夜
『代わりにもなれない』
「お母さん」
目の前の背中に手を伸ばす。でも、その手は届くことなく宙に落ちた。
「その呼び名で呼ばないでって言ってるでしょ」
冷たい瞳が私に向けられる。体がビクリと震えた。
私の顔を一瞥した後に、ため息を1つつくと部屋から出てしまった。
やっぱり…私じゃダメなの…?
ドロリとした雫が部屋に落ちた。
【雫】
前回投稿分から続くおはなし。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこに整備されておるキャンプ場の、美しい湧き水にこんこんと満たされた泉の近くで、
1匹のドラゴンが完全ジト目、豪雨の余韻たる霧雨の雫に当てられておりました。
というのもこのドラゴン、前回投稿分で鼻先にゼロ距離でワサビクリームを食らいまして、
どんがらがっしゃん、がんがらどっしゃん、
キャンプ用の個室の中で悶絶して暴れ倒しまして、
それから外に出て、ごうごうごう、絶叫の火を吹いてボヤ騒ぎなど起こしまして。
…––『わるい竜神さまが、あばれてる!』
同じ同じキャンプ場をちょうど利用しておった子供たちが、ドラゴンのごうごうごうを発見しました。
『龍神さま、龍神さま!わるい竜神さまを、やっつけて、こらしめてください!』
わーわー!悪い竜神さまだ!
わりゅーじんさまが、わるいことしてるぞ!
子供たちは大騒ぎでした。
あらあら、いったい、なにごとかしら。
ほぼほぼお祭り騒ぎのキャンプ場の、子どもたちの祈りを聞いて駆けつけたのが、
子どもたちの故郷から一緒にやってきた、雨と海と雫の龍神様。
龍神様が到着してみると、炎と雷と光のドラゴンが悶絶して、火など吹いて、
あっちこっち、ぷすぷす焦がしておりました。
『こら。若きドラゴンよ、おやめなさい』
龍神様は大きなため息を、ひとつ吐きました。
『我が降雨で、頭と心を冷やすのです』
龍神様が美しい、水晶の角と水宝玉の珠を晴天の空に向けますと、
途端にもくもく、暗く大きな雲が空に湧いて、
どじゃあ!ごうごうごう!
激しい土砂降りを降らせて、ドラゴンをずぶ濡れにしてしまったのでした––…
「悪い竜神さま、反省した?」
さて。
豪雨の余韻、霧雨の雫に当てられたドラゴンです。
龍神様の隣で子供たちが、まるで自分たちに母親・父親がそうするように腕を組んで、楽しそう。
「ダメだよ、わりゅーじんさま。キャンプ場では、火は、しんちょーに使わなきゃ」
『不可抗力だ』
部下からワサビアタックを食らった結果として暴れたドラゴンは、不服です。
『あと、俺はもう、千年も2千年も生きている。
龍神よ、前言撤回しろ』
しきりにお目々をパチパチしておるのは、霧雨の雫が断続的に、ドラゴンの瞳を襲うから。
断じてワサビに泣いてるワケではないのです。
『千年・2千年しか生きていないドラゴンよ、それを若いと言うのです』
ぴゃっ。
まだまだ反省してないと思しきドラゴンに、龍神様が水鉄砲で、お仕置きです。
『管理局のドラゴン。あなたは本能をもう少し抑えて、理性的に、知性的になるべきです。
我慢を学習なさい。若きドラゴン』
ぴゃっぴゃ。 ほら、ごめんなさいは。
龍神様はドラゴンが、わるかった、と言うまで、
霧雨の雫をサラサラサラ、ぶつけ続けましたとさ。
『雫』
ん? 額がサワサワする
暖かくなってきて
虫も飛ぶようになり始めてきた
小さい蜘蛛か羽虫でも
飛びついたかなぁと
ついサッと手で払う
濡れた、
うげ……潰した……?
変な汁でてきた…??うげ……
いやな気持ちなりながら
払った手を見つめてみる
……あれ違った
濡れては いるものの…
虫じゃない、―――私の汗だ
割と普通なつもりだったけど
体はちゃんと正直だった
そう思った途端 乾きを覚え
おもむろに並々の水を飲み干した―――
〜シロツメ ナナシ〜
何かが頬に当たった。
泥沼に落ちた意識を必死に引き起こす。
まだ、気を失ったらいけないのにどうしても身体は重くて、おなかも重い…。
目を開けても真っ暗だった。
足が燃えるように熱いのに、神経が直接氷に触れているように痛い。
「ここ…」
息も苦しい。
ザリッと、岩肌が崩れる音と感触で急に意識が戻ってくる。
「ばか…なんで今、目を覚ますんだよ」
聞いたことのある幼馴染の声だった。
相変わらずの憎まれ口で、なのに両腕を突っ張って私を守ろうとしていた。瓦礫の間で。
「ヴィル…!?」
目が慣れてきて、見覚えのある赤毛からは汗がポタポタと零れていた。
「くっ…」
盛り上がった肩に、脂汗。とんでもない重量から守ろうとしているのだ。
私は崩れてきた建物に生き埋めになったのだ。この離宮が中から破壊されていく光景を思い出した。
それからの記憶がない。
「私が居なかったら避けれたでしょ」
「ったりめーだ。お前鈍臭いから…くずぐずしてっから…来てやったんだろーが」
最後の方は、言葉に力がない。
なんで私を見捨てなかったの…得意の足の速さで逃れたくせに。涙が零れて、瓦礫に無情に落ちていく。
「ごめんね、ごめんねヴィル…」
「何が!意味わかんねー、泣くなよ!」
キレながらも肩で息をする彼。もう限界なんだ…。
「お前の泣き顔はかわいくねーし、一番いやなんだよ!」
いじめてくる時にいつも言う言葉。
「ごめん…」
私は、血と汗のぬるついた彼の頬に触れた。
雫
《雫》
ポタポタと 雫が伝う 君の頬 大丈夫だよ キミならやれる
あんまり自信ないけどとりあえず一句……
2026.4.21《雫》