何かが頬に当たった。
泥沼に落ちた意識を必死に引き起こす。
まだ、気を失ったらいけないのにどうしても身体は重くて、おなかも重い…。
目を開けても真っ暗だった。
足が燃えるように熱いのに、神経が直接氷に触れているように痛い。
「ここ…」
息も苦しい。
ザリッと、岩肌が崩れる音と感触で急に意識が戻ってくる。
「ばか…なんで今、目を覚ますんだよ」
聞いたことのある幼馴染の声だった。
相変わらずの憎まれ口で、なのに両腕を突っ張って私を守ろうとしていた。瓦礫の間で。
「ヴィル…!?」
目が慣れてきて、見覚えのある赤毛からは汗がポタポタと零れていた。
「くっ…」
盛り上がった肩に、脂汗。とんでもない重量から守ろうとしているのだ。
私は崩れてきた建物に生き埋めになったのだ。この離宮が中から破壊されていく光景を思い出した。
それからの記憶がない。
「私が居なかったら避けれたでしょ」
「ったりめーだ。お前鈍臭いから…くずぐずしてっから…来てやったんだろーが」
最後の方は、言葉に力がない。
なんで私を見捨てなかったの…得意の足の速さで逃れたくせに。涙が零れて、瓦礫に無情に落ちていく。
「ごめんね、ごめんねヴィル…」
「何が!意味わかんねー、泣くなよ!」
キレながらも肩で息をする彼。もう限界なんだ…。
「お前の泣き顔はかわいくねーし、一番いやなんだよ!」
いじめてくる時にいつも言う言葉。
「ごめん…」
私は、血と汗のぬるついた彼の頬に触れた。
雫
4/22/2026, 5:45:31 AM