『雫』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
昨晩の嵐でしめった階段を上るさなかではじまるゲーム チ・ヨ・コ・レ・イ・トできみにキスした
「…どうしたの。なんか言ってよ」
片眉を下げて苦笑する。
もうきっと分かっている。気付きたくないだけで。二人は限界なのだと。
『…………私と、別れて。』
「…理由は…聞いてもいい?」
『……分かった。
………私ね。…あなたに腹が立ってたの。」
「どうして?」
『あなたがすごい人だから。』
彼女から落ちる雫が、綺麗に頬を伝って。何百回も見た君の顔を、改めて綺麗だと思った。
いつも彼女にしていたように、僕は彼女の涙を拭った。
『さわらないで。』
反射的に拭った涙のついた指を引っ込める。
「…うん。ごめん。
そうだね。別れよっか。」
そう言って、困ったように笑いながら、踵を返して歩き出す。
彼女の涙を拭った指を見つめる。
もう彼女は行ってしまったかなと振り返る。
もう、何処にいるのかも分からなくなってしまった。
たしか、腹が立ってる時の涙、その味はしょっぱいんだったかな。
変態だと思われるだろうが、涙の味が気になって、口につけた。
「…しょっぱくない…?」
彼女がいるはずの、歩いていた道と反対の道を走った。
#2024.4.21.「雫」
腹が立ってる時って塩辛いらしいっすけど、反対に悲しい時とか嬉しい時はそんなに塩辛くないそうです。
主人公を推しに置き換えて読んでもいいな。
雫。私は顔から流す雫が多い。
結構泣き虫だし、口論弱い。
泣きたくないって思ってるのに涙が出てくる、こんな自分が嫌だ。
どうにかならないかなぁ
ドッペルゲンガー
他人の目のないところでは、いやあってもこっそりと、彼女がやたらと身体に触ってくるので困っている。しかもセクハラ親父かよと思うようないやらしい触り方で、尻とか胸とか脚とか腹とか触ってくる。
付き合う前はむしろ冷淡に見えていたのでこういう人だったのかと驚いた。
誘っているのかと思ってこっちからも触り返すとちょっとびっくりしたような反応をされたりする。
ただ純粋に一方的に触りたい欲求があるようなのだ。
「黙って急に触ってくるのびっくりするんだけど、あれはどういう気持ちなの」
「付き合ってるんだしいいじゃん。触りたくなっちゃうんだよ。理由なんかないよ」
性欲なのか?
しかし観察していると彼女は常に周囲の何かしらに触っている。階段の手すりとか壁とか家具とかそういうものにだ。
周囲のものに触っていたい欲求が彼女には元々あって、セクハラじみた接触はその強化版なのかもしれない。
スキンシップによって心の欠落を埋めているようにも思えて、ちょっと不快なときも我慢して触られていた。
その対応がまずかったのかもしれない。
彼女の欲求はだんだんエスカレートして、触るだけでは済まず噛んでくるようになった。
例えば通りを歩いているとき、ちょっときて、と腕を掴まれ暗い路地に連れ込まれる。
しゃがんで。キスするようだがそうではない。彼女は俺を抱きすくめて肩に顔を埋めた。少しずつ力を込めて、血が出る寸前くらいまで噛んでくる。痛い。かなり痛い。
「なんで触るのって前聞かれたでしょ。あれから考えてみたんだけど」
噛み跡にキスして首元で幸せそうに息を吐く。
「触らないとあなたも私も本当にここにいるのかわからないから。こうすることであなたと私の存在がはっきりして安心する」
彼女の肩越しに、さっきまでいた明るい表通りからこっちを見ている女性が見えた。
顔も髪型も背格好も服装も、どう見ても彼女だ。
「あれ、双子のお姉さんか妹さんっていた?」
彼女はそっちを見ない。
「兄弟なんていないよ。もしかして私とそっくりな人が見えているなら、それはドッペルゲンガー。子供の頃から時々出現するんだ。でも私以外の人にも見えるとは思わなかったな。」
目が合っているのにまるで知らない人を見るような表情をした表通りの彼女は視線をそらして歩き去った。
俺は抱きついている彼女を振りほどいて大通りの彼女を追いたいと一瞬思った。あっちが本当の彼女でこっちがドッペルゲンガーのような気がしたから。
しかし俺を知っている彼女がドッペルゲンガーで、本体は俺のことを知らないとしたら。本体と話して戻ってきたとき、ドッペルゲンガーの彼女はまだここにいるのだろうか?
そう思うと暗い路地で彼女に抱かれたまま動けない。
小さい頃、
紅茶にミルクを
一滴一滴落とすたびに
ぶわっと広がるミルクを見ては
幻想的になる表現が好きで
楽しかった記憶がある。
今はもう
そんな表現を楽しまず
普通にミルクを注ぐけど
またあの時のように
幼心にかえって
一滴、一滴と
あの落とす瞬間、
時間を、楽しんでみようか。
きっと忙しない状況から
落ち着くものを感じると思う。
落とす間は
時間がゆっくり流れ
静かになる感覚を覚える。
今、ここにいるのを感じる。
ミルクが広がる幻想的な表現に
心が癒やされるかもしれない。
ミルクを落とすだけのことだが、
何気ない日常の一コマは
今を豊かにすることがある。
今度紅茶を淹れるときは
ミルクを一滴ずつ
落として見ようと思う。
そしてその時間も楽しんでみようと思う。
なんだか格別に美味しくなりそう。
遥か遠く
天から降り落ちる
一雫の雨
この緑の大地に
辿り着くまでに
どんな景色を
映してきたのだろう
人々の
心の美しさを映し出し
大地に光を
浸透させているのか
「雫」
雫のお題で思い付かなかったので、なんとなく雫と検索をかけたら、スキマスイッチの雫がでてきました。
懐かしい曲です。
10年以上前にやっていたアニメ、「獣の奏者エリン」の主題歌でした。
「獣の奏者エリン」は、大まかに言うと、主人公の女の子エリンが、人に馴れない獣「王獣」と絆を深め、手懐けていく話です。
名作なので、オススメです。
私の目から雫が落ちる。
ある雨の日の事だった。
私は恋人の浮気している現場を目撃してしまったのだ。
その事を記憶から消そうとしても無理だった。
今日も、私の目から雫が落ちる。
心を奪われたのはほんの一瞬だった
静かに流れている涙はキラキラしていて綺麗だと思った
彼女はスクリーンという大きいようで小さい世界で涙を流していた
物語はすれ違う恋人の話
どうしようもないもどかしさと分かり合えない悲しさで自分の涙腺は壊れかけていた
恋人に別れを告げる彼女は微笑み、振り返ると同時に泣いていた
"別れなきゃ守れないものもある"
二人の苦渋の決断と彼女の涙に心を奪われて、一つ、また一つと自分の頬を雫がこぼれ落ちた
雫____
2024.04.21
雫
(本稿を下書きとして保管)
2024.4.21 藍
雫といえば、毎朝飲むレギュラーコーヒーを淹れるときの雫かな
お湯の温度がどうとか注ぎ方がどうとか、いろいろ作法があるみたいだけど、正直、それでそんなに味が変わるかなあ、と言うのが実感
個人的には、ミルクと砂糖のバランスが重要だったりする
雫
軒下から伸びている氷柱が、
陽の光を浴びて輝く。
私は何故かそれに見入ってしまった。
もうすぐ春が来ると思いつつも、
まだまだ寒暖差が激しい。
氷柱の先からぽたぽたと雫が垂れている。
子気味いいリズムで、私はそれをじっと見つめる。
雫の音をいつまでも聞いていたいと思った。
雫
雨は相変わらず降り続き屋根伝いに水滴がポタポタと落ちてくる
地面には小さな水溜まりが出来ており落ちてきた水滴が雫となって跳ね上がる
店だったと思われる古びたシャッターの軒先で雨雲が過ぎるのを待っている
もうじき止むと言うお天気アプリを信じてからプレイリストの曲は5曲ほど進んだ
濡れるの覚悟で出ていくかここまで来たら止むまで待つか逡巡する
とりあえずしゃがんだ 空が大きく見える
まだ雨は続きそうだ
一滴の雫のような言葉を集めて
いつか世界を創りたい
水滴があつまっていつしか海原が広がるように
慎重に大切にコトバを拾って重ねていく
Drip drip …
【雫】
水溜まりに雫が落ちて波紋が広がっていくように
優しい言葉が伝播していく
雨のように言葉が降り注ぐ電脳世界で
私が落とした一滴はどのように広がるのだろう
雫って「美しい」と思うときもあれば、
「ウザい」と思ってしまうこともある。
「美しい」ときは前日の夜は雨で次の日が快晴。
太陽に当たりながら、葉っぱから落ちそうになる雫は
「美しい」と思ってしまう。
「ウザい」ときは雨が上がって、
電線から雫が落ちて顔や体に当たる。
自分に害があるかないかでこんなにも扱いが変わるのは
、つくづく人間のエゴだなと思う。
雫に当たっても、「ウザい」と思わないで、
「あら、こんなところに雫がいたのね」
と思えるくらい心に余裕があれば
いろいろ見える世界も違うのだろうな。
ふと思った。
単線のパンタグラフが火花を散らしながら追い越していった
大きくカーブしながら遠のいてゆくランプに目をやると
不規則な建物が狭苦しそうに折り重なって増え
やがてランプを飲み込んでゆくのが見えた
枕木の軋む音が遠ざかるのとは反対に
油塗れの換気口からのすえた臭いと
ネオンのチリチリとした音が増えていく
金網の傍に生えていたエノコロ草を抜いてみる
青臭さが手に染みついたままいくばくか歩いた
少し先に空の色を写したような黒揚羽が湿気て重そうな翅でよろよろと飛ぶのが見えた
その翅はやがて金網に止まり動かなくなった
近寄ると蜘蛛の巣があるのがわかった
さっきまで見えていた緑色の月が建物の隙間に隠れて消えた
近寄ることを避けて来た街はもうそこだ
蜘蛛の巣には夜露が煌いていた
-雫- 青 2024.04.21
『雫』
走り去ろうとする彼女を引き止めようとしたら足がもつれた。ふり返る彼女と近づく二人の距離。このままではまともにぶつかってしまう。とっさに彼女の腕を掴み引き寄せると、床に背中を打ちつけた。
この痛みは、罰だ。
口下手なせいで大事な彼女を傷つけた。
女性へのプレゼントは難しいからと、安易に異性の従姉妹と連れ添い街を歩いた。美男美女と耳慣れた言葉を流して。彼女がその場にいる可能性を考慮しなかった。
その上想いを伝えるために口づけをした自分への。
振り下ろされるだろうビンタか扇子に耐えるべく目をつむったままでいると、冷たい雫が頬に当たり首元へ流れていった。
「ア、アル様?お怪我は?お怪我はございませんか。ああ、私はなんてことを」
美しい彼女が泣いていた。
君こそ怪我はないかい。そう一言告げればいいものを。
泣いている君が愛おしくてつい抱き寄せてしまう。
そうして可愛らしい小さな額に唇を落とした。
『雫』
霧が濃くて前が見えない。
早くこの霧の中を抜け出したくて
急いで歩く。
霧で髪が顔にへばり付いて鬱陶しい。
先の見えないこの状況で不安が募る。
早く抜け出したい。
気持ちが焦る。
どんなに苦しくても一生懸命もがき歩き続ける。
顔にへばり付いていた髪の毛の先から
ひと粒の雫が垂れた。
その瞬間、光がさして道が見えた。
暖かな光の中、優しく見守ってくれていた人がいた事に気付いた。
ひとりじゃないんだ。
前に進もう…
【雫】
ぽたっ
ぴちゃんっ
なんだか 可愛いイメージ
おっとっと
落ちそうで 落ちない
がんばれって言いそうになる
ぽたっ
落ちる前の形が 可愛くて
ぴちゃんっ
水たまりに 当たる音が 可愛くて
落ちる姿をずっと見ていた
雫の落ちる音がした。
ポタッ、ポタッと確かに雫の落ちる音がした。
家族の誰かが夜トイレに起きて、洗面所の蛇口を閉め切らなかったんだな、
と察し、仕方ないから代わりに閉めに行こうかと、 ベッドの上で目を閉じたままモゾモゾしていると、
ふと、違和感が頭をよぎった。
何故1階の洗面所の音が、自分がいる2階の、ましてや扉が閉まっている部屋まで届くんだ?
古い家とはいえ、壁はそんなに薄くないはずだし、 なにより、雫が落ちる音など小さすぎて聞こえるはずがない。
だとしたら、この音は?
小さな違和感は、徐々に異質を孕ませ、次第に恐怖心すらも呼び起こそうとした。
そうこうしている間にも雫の落ちる音は止むことなく、一定のリズムで鳴り響く。
どう足掻いても拭い去れない違和感を耳にしたまま、再度眠ることなどできるはずもなく、
己の勇気を最大限にかき集め、目を開け、枕元にある
リモコンで部屋の明かりをつけた。そこには、
天井の隅っこでシミを作った雨漏りが、床に雫を打ちつけているだけだった。