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単線のパンタグラフが火花を散らしながら追い越していった
大きくカーブしながら遠のいてゆくランプに目をやると
不規則な建物が狭苦しそうに折り重なって増え
やがてランプを飲み込んでゆくのが見えた

枕木の軋む音が遠ざかるのとは反対に
油塗れの換気口からのすえた臭いと
ネオンのチリチリとした音が増えていく

金網の傍に生えていたエノコロ草を抜いてみる
青臭さが手に染みついたままいくばくか歩いた

少し先に空の色を写したような黒揚羽が湿気て重そうな翅でよろよろと飛ぶのが見えた
その翅はやがて金網に止まり動かなくなった
近寄ると蜘蛛の巣があるのがわかった

さっきまで見えていた緑色の月が建物の隙間に隠れて消えた
近寄ることを避けて来た街はもうそこだ
蜘蛛の巣には夜露が煌いていた

-雫- 青 2024.04.21

4/21/2024, 1:27:34 PM