冬至の今日は晴天
これが一番太陽が弱くなる日とはなぁ
ここしばらく仕事に追われて
親友の誘いも断ったりと人付き合いも減ってた
雑巾を絞る手にも気合いが入る
霞んだ目を見開く
今日は大掃除
カーテンを洗ってひらけた窓の外に太陽が見える
その前を雲が流れて
伸びる日差しに床が照らされたり陰ったり
あぁそうか
今日は0
つまり始まりの日
清潔になった部屋に
自分の居場所を見つけた
明日から強さを増してゆく太陽を
すっきりした気持ちで見つめる
【大空】
いつも冬はひとり
イベント嫌いな家族は付き合ってもくれないし
寒さを感じる頃になるとなぜか恋人もいなくなる
クリスマス、年末年始も、変わるのはテレビ番組と広告チラシの中身だけ
挙句の果てに、その後に巡ってくる誕生日もね
さらにヴァレンタインとかね
あぁ、もう、ね
でも先日、君が声をかけてくれた
一緒にこたつで飲もうよってね
親友よ、心の友よ
いつまでもそばにいておくれ!
ぁ、やっぱダメかぁ…
へへへ
【冬は一緒に】
話下手な僕の
それでも伝えたいという欲求を
君はいつも拾ってくれる
主語の抜けがちな僕の話を
君は的確に把握して
相槌はもちろん
自分が感じることまで話してくれる
そうこうしているうちに
君と話すことが生きがいになって
僕は君といまも肩を並べて話している
これからもたくさん積み上げよう
君と僕とのたくさんの日常を
【とりとめのない話】
新人の頃から大切に育ててきた後輩
彼の苦手な報告書の作成に付き合って深夜まで事務所に残ったり
営業でも謝罪でも何をするにも連れてって背中を見せてきた
あんなに弱々しかったのに
気づけば肩を並べて歩ける頼れる同僚となった
いつか一緒に起業しようと約束もしている
気も合って休みの日に遊んだり
夜にはオンラインゲームをしたり
連絡だって毎日とっている
こんなに気の合うひとと出会えたことは
自分の人生の中でも指折りに入る幸運
それぞれ家庭はあるけど
ずっとこんな関係が続く最高の相棒だと思ってた
それは突然のことだった
記憶を無くすほど酔い潰れて目が覚めたら
彼とふたり汗まみれでベッドの中にいた
断片的に思い起こせる記憶から逃げるように
家への道を走って帰った
ひと眠りしてから身なりを整えた
気を引き締めるよう白いカッターシャツを着込む
何かを振り切るように軽快すぎる足取りで快晴の空を見上げながら出勤した
いつものように顔を合わせたとき
いつも通りのテンポいいくだらない会話が広がってほっと胸を撫で下ろした
いままで通りうまくやれるはず
これからもこのままで
そう思った矢先に彼と目が合った
ふいに訪れた沈黙
口から言葉が出てこない
お互いの眼差しからは声にならない声が聞こえたような気がした
これ以上はいけない
私の心の奥に芽生えていた小さな感情に彼は気づいただろう
私も彼の心の奥で何かが蠢くのに気付いてしまった
お願いだから言葉にしないで
そうして沈めた気持ちから互いに目を逸らし合う
ツーカーも阿吽の呼吸もこれまで通りでいられますように
窓から空を見上げた
遠くに暗い雲が浮かんでいた
【心と心】
飲み会シーズン
気づいたら君とベッドの中にいた
こんなはずじゃなかったのに
君の幸せを願っていたのに
そっと抜けだして部屋を後にする
まだ動き出す前のしんと冷え切った街を
確かな足取りで歩く
大丈夫、今日もまたいつも通り同僚としてやり過ごせばいい
気持ちを顔に出さないのは得意だ
大きなバッグを肩に自転車の学生が通り過ぎていった
車も行き交い出す
今日がまた少しずつ動き出す
私の心が動き出さないように
まずは帰ってシャワーを浴びよう
大丈夫
【何でもないフリ】