さぶろー

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雫の落ちる音がした。
ポタッ、ポタッと確かに雫の落ちる音がした。

家族の誰かが夜トイレに起きて、洗面所の蛇口を閉め切らなかったんだな、
と察し、仕方ないから代わりに閉めに行こうかと、 ベッドの上で目を閉じたままモゾモゾしていると、
ふと、違和感が頭をよぎった。

何故1階の洗面所の音が、自分がいる2階の、ましてや扉が閉まっている部屋まで届くんだ?

古い家とはいえ、壁はそんなに薄くないはずだし、 なにより、雫が落ちる音など小さすぎて聞こえるはずがない。

だとしたら、この音は?

小さな違和感は、徐々に異質を孕ませ、次第に恐怖心すらも呼び起こそうとした。
そうこうしている間にも雫の落ちる音は止むことなく、一定のリズムで鳴り響く。
どう足掻いても拭い去れない違和感を耳にしたまま、再度眠ることなどできるはずもなく、
己の勇気を最大限にかき集め、目を開け、枕元にある
リモコンで部屋の明かりをつけた。そこには、

天井の隅っこでシミを作った雨漏りが、床に雫を打ちつけているだけだった。

4/21/2024, 1:25:08 PM