「…どうしたの。なんか言ってよ」
片眉を下げて苦笑する。
もうきっと分かっている。気付きたくないだけで。二人は限界なのだと。
『…………私と、別れて。』
「…理由は…聞いてもいい?」
『……分かった。
………私ね。…あなたに腹が立ってたの。」
「どうして?」
『あなたがすごい人だから。』
彼女から落ちる雫が、綺麗に頬を伝って。何百回も見た君の顔を、改めて綺麗だと思った。
いつも彼女にしていたように、僕は彼女の涙を拭った。
『さわらないで。』
反射的に拭った涙のついた指を引っ込める。
「…うん。ごめん。
そうだね。別れよっか。」
そう言って、困ったように笑いながら、踵を返して歩き出す。
彼女の涙を拭った指を見つめる。
もう彼女は行ってしまったかなと振り返る。
もう、何処にいるのかも分からなくなってしまった。
たしか、腹が立ってる時の涙、その味はしょっぱいんだったかな。
変態だと思われるだろうが、涙の味が気になって、口につけた。
「…しょっぱくない…?」
彼女がいるはずの、歩いていた道と反対の道を走った。
#2024.4.21.「雫」
腹が立ってる時って塩辛いらしいっすけど、反対に悲しい時とか嬉しい時はそんなに塩辛くないそうです。
主人公を推しに置き換えて読んでもいいな。
4/21/2024, 1:42:36 PM