『雫』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
雫
夕暮れの帰り道、だったと思う。重い鞄を肩に提げながら、今しがた角で別れた彼奴を振り返った。其処には、じっと此方を見つめる姿があった。微笑むような少し寂し気な瞳が、何かを傳えようとしている。それが永い時間に思われたけれど、其の儘踵を返して、行ってしまった。
其れから何度も、その道を通る度に、あの姿を探して仕舞う。時が経ち、もう逢わないと想いつつ。あの瞳から零れた雫を想出しながら。
息白く風切る君のまつげに六花
(冬の朝。自転車で登校してくる君の睫毛はいつも凍ってきらきら輝いている)
テーマ:雫
あ、雫が落ちた。
私の頬から、雫が落ちた。
どうして泣いているんだろう。どうしてこんなに悲しいんだろう。
雫は答えない。
雫はそのまま、私の手を叩いた。
まだ暖かい。
まだ暖かい。
『雫』
雫
君の涙は雫のようだった。
たった一滴だけれど,精一杯の気持ちが
詰まった雫。
あれ以来,僕たちの関係は少し変わった。
たった一滴の君の雫が僕の汚れを洗い流してくれたのかもしれない。
血が止まったものの,足元がふらつく。
家族にも,学校側にも秘密で登校している。
だって,どちらも僕の味方ではいてくれない
だろうから。
雫
節約節約してる自分は思う
料理番組等の卵をといたあと
フライパン等に流し入れる
その時、最後の一滴まで入れないの?
節約生活してる自分は思う
煮物や炒めものの残り汁
それをリメイク料理に使わないの?
雫の題目で綺麗な印象に結びつかない自分は
綺麗じゃないからか?😁
/雫
しりとりのめぐる輪のなかに
ひたり、と 沈黙が落ち
耳の底に氷がひとかけ溶けた気がして
誰かが「幽霊だ」などと叫ぶので
ちりぢりになってしまう
ずん、と地がひびき
人びとは足を止め不安に見かわす
列車は止まり 踏切は鳴り続け
それら全てをうつして
壊れた水道の口から一滴がふくらむ
くちびるに落ちる雨粒は
広い天から
どうやって私を目がけ
墜落(おち)てきたのだろうと
いつも思うが
思いつくことはどれも空虚で
せめてうたを紡ぐこの唇だけは、と
天から落たもので湿(しめ)して濡らして
今日もこればかりの
しずくうた。
水に滴った雫は我々には一滴
拡大すると何滴も何滴も分裂している
なんだか花火みたいだ
空に咲く花火と水面に咲く花水
これだと呼び方がはなみずになっちゃうなぁ ずびびび
お題:雫
雫
落ちるその先に貴方の影を見た
僕を透かすような貴方の瞳を
見つめることは叶わない
しずくときくと、
綺麗な感じがする。
窓を打ちつける雨よりも
かなりおとなしいしずくの音。
音もなく滑り下りる。
静かに地面を濡らし、ときに頬をつたう。
夏の夜には露で濡れた野草が電灯に照らされ、
ホタルと見間違えるほどのきらめきを持つ。
しずくに知らず知らずに癒やされている。
しずくみたいなそんな人になれたらいいな。
#007 『画家の告白』
ややFT/微ホラー
田舎暮らしに憧れて越して三月目、近くに高名な画家が住んでいると聞いて、会いに行くことにした。もっと早くに知りたかったとぼやいたら、せっかくのスローライフが台無しだと妻は言う。
「仕事人間に戻られちゃたまんないわ」
もっともな言い分かと主張を引っ込め、森を訪ねる許可をもらった。
村外れの一軒家を通り過ぎた時、どこまで行くねと声をかけられる。画家に会いに行くと答えると、住人はカンカン帽を持ち上げてしかめっ面をした。
「画家先生ねえ。なんの用事があるんだい」
「用事ってわけじゃないけど、ぼく、学芸員だったんです。こっちへ越して来る前ね」
「へぇ、学芸員。学者さん?」
否定も肯定も面倒で、適当に返事を濁しておいた。
「関わらない方がいいよ。悪いことは言わないからさ」
多くは語らない住人にあれこれ尋ねることはせず、森へと踏み入ることにした。
そこは静かな森だった。人の気配がないのは当然としても、小動物を見かけることもなく、小鳥のさえずりさえ聞こえない。
風がそよげば木の葉は揺れる。初夏の爽やかな風は心地いい。だが他に音を立てるものは何もなく、土を踏む足音が奇妙なほどに耳に障る。
かの画家を一躍有名にしたのは『最初の沈黙』という作品だったことを思い出していた。画面いっぱいに描かれた女性の魅惑的な唇とその前に立てられた指。顔の上半分が帽子で隠され、読めない表情。ぷっくりと艶のある唇は今にも動き出しそうで、じっと見入ってしまったものだった。
森には生き物の気配がなく、見回してみれば立ち枯れた木が多い。
画家の絵にあった、どちらかと言えば都会的な空気と艶かしい生命力。森からはそのどちらも感じとれない。
ぼくとは逆に、都会への憧れを形にしたのだろうか。不思議に思いながら静かな森を進むと、ぽつんと小さな家にたどりついた。土壁に茅葺き屋根の素朴な家は、やはり絵の印象にはほど遠い。
人物像をまったく知らないと今さらながら思い当たった。村外れの住人の様子を思い出す。村人とは交流せず、噂話にも上がらない。よほど偏屈な変わり者なのだろうか。
にわかに緊張を覚えながら家に近づくと、ノックする前に扉が開いた。現れたのは年嵩の男で中肉中背、気難しそうな印象はない。
挨拶がてら自己紹介すると、老画家は破顔した。実に人のよさそうな笑顔で何度もうなずき、訪問の礼を言い、家の中へと招いてくれる。
「お茶を淹れましょう。気の利いた菓子はないが、木の実の砂糖漬けも美味いもんです」
誘われるまま踏み入った家には、所狭しとキャンバスが並べられていた。顔の下半分しか描かない画家と思っていたが、どうやらそうではないらしい。ただし、並ぶ絵はどれも未完成だった。
「いや、お恥ずかしい。描きかけばかりがあふれて、アトリエには収まらなくなって」
老画家は困り顔で笑う。いかにも人懐っこそうな笑顔だ。村外れの住人が見たら考えを変えるのではないか。
茶が入るのを待つ間、椅子には座らず絵を見せてもらうことにした。少女から大人の女性まで、何層にも絵具を重ねた筆致。瞳の中とあの唇の艶入れを残すばかりの絵の数々。肌の塗りは十分に瑞々しくて、艶さえ乗れば今にも喋り出しそうだ。
艶入れは得意だろうに、こだわりが強すぎて塗れなくなったのだろうか。瞳の光はどうだろう。彼の描く瞳は一度も見たことがない。
完成品を想像しながらくるりと向き直った時、窓越しの風景に違和感を覚えた。木々は青々と生い茂り、太い幹をリスが駆け上がる。窓際には蝶々がひらめき、その向こうには鮮やかな花々が揺れる。豊かな茂みからウサギが顔を出し、木漏れ日は大地に落ちてキラキラ輝く。
窓の向こうに、通り抜けてきたはずの枯れた森はなかった。
嫌な予感が込み上げる。家に入ってはいけなかったかもしれない。
窓の外で子供の笑い声が弾けた。年端もいかない子供が駆け抜けていく。
「あれはね、娘です。もうとっくに大人になっていたはずだが、今でも幼い」
唐突に後ろから声をかけられ、心臓が口から飛び出すかと思うほどに驚いた。
「お茶が入りましたよ。なに、飲んでもなんのことはありません」
老画家の声にも表情にも、暗い影が乗ったようだった。
老画家は客人を通り越してテーブルに茶器を置く。背を丸めた姿は寂しく老い、無数の後悔を重く背負うかのよう。
「昔はね。気づいてもおりませんでした。気のせいだと思っていた。明日には開くはずだった蕾が落ちようと、小鳥が力尽きて地に伏せようと」
老画家は音を立てて椅子を引き、重い体をひきずるように回り込んで腰を下ろした。
「あたしは描いてはならんのです。もっと早くに気がつくべきだった。雫で描いている自覚なぞありませんでしたよ」
返事を求めもせず、まるで独白のように老画家は告白する。
「雫が乗るとね、まるで生きもののように動くんです。早く筆を降りたい、絵になりたいとね。おかしいと気づいたのは、体力が自慢の家内が突然倒れてからでした」
それでは、突然絵を発表しなくなったのは━━。
問いは言葉にはならなかった。ただ身体中の血がざわつき、駆け巡るのを感じるばかり。
「地獄の茶でも果物でもない。飲み食いしても何も起こりはせんでしょう。ただ、長居はするべきではないかもしれない」
老画家の忠告に曖昧な声で応じ、ふらふらと玄関先へと向かう。
後方から風がささやくような音がいくつも聞こえた気がしたが、振り返ることはできなかった。家にいるのは老画家一人のはずなのに、無数の視線を注がれているような気分だった。
窓の外、楽しそうに笑い転げる子供の声がする。
込み上げる予感を押し殺し、生唾を飲み込み、怖々開けた扉の向こうには、寂れた森がただ広がっていた。
《了》
お題/雫
2023.04.21 こどー
雫
が落ちている。
散歩でもしようかと踏み出した私の足を遮るように。
すくいあげようか、無視したものか思案する。
シアンバター。
今朝いれたコーヒーはもうひとつであったな。
それが雫となって足元に落ちたのだろうか。
とりあえず歩き出そう。
挨拶を交わすだけの交友など何が楽しいものだろうか。
しかし話し込むのも大変骨が折れるものだ。
それで私は鳥を眺め、花を愛でている。
今日はとても暑い。ぎんぎんぎらぎらの春なんです。
目が合って笑うということの中に含まれるものを解き明かしていく。
【雫】
先月まで勤めていた店が数年前に移転した際、
お祝いに観葉植物を2鉢いただいた。
お店の癒しアイテムとして愛されてきたのだが、
閉店に伴って新たな貰い手を探すことに。
これがなかなか見つからず、最終的な結論として
我が家の植物担当である母の許可を得て
2鉢とも私が自宅へと持ち帰った。
もらったときに赤い花が一輪咲いていたから
「おはなちゃん」
トゲトゲしい緑の葉っぱが印象的だから
「みどちゃん」
どちらも、品種の名前がわからなかったので
ネーミングセンス抜群のこの私が命名した。
正しい育て方もわからず、おそらくだけど
水はやりすぎず陽の光は沢山浴びた方がいいと
南向きの出窓に置いて毎夜霧吹きでの水やり。
おかげさまで「おはなちゃん」の方には
小さくて可愛らしい花の芽が新たにお目見えした。
あらためてネットで調べてみたところ、
「おはなちゃん」はアンスリウム、
「みどちゃん」はサンスベリア、
という品種名であるらしいと判明した。
どちらの品種もちょうどこれからが
生育期らしいことも新たにわかった。
たくさんの光と水の雫がこの子達を育んでいる。
家族みんなで見守っているから、
どうかこれからも伸び伸びと育っていってほしい。
『雫』
「あっ」
聞こえた声に隣の友人の顔を見上げると、額に雨粒が1つ落ちてきた。
「え、うそ、雨?」
一歩踏み出していた駅の構内に舞い戻り、屋根の下でにわかに雨脚を強める空を見上げる。
「天気予報で雨なんて言ってなかったじゃん。ついてないな〜」
今日は、間の悪いことにいつも入れている折り畳み傘もバッグの中にない。前回使って入れ忘れたか。
痛い出費だが、コンビニでビニール傘を買うしかないか。雨は土砂降りに近い勢いで、この中を傘なしで帰るのは結構な難題に思えた。
困っている私をよそに自分のバックパックを漁っていた友人は、折り畳み傘を取り出して私に向かって放り投げた。
「ほれ」
「え、なに」
「使えよ。俺んち近いから、走って帰るし」
「はぁ!? あ、ちょっと待て!」
言い置いて走り出そうとした友人の上着を掴んで引き止める。何度も言うが土砂降りである。いくら友人が馬鹿でも、こんな雨に濡れて帰れば風邪を引きかねない。
「なんだよ、お前傘ないんだろ?」
「だからってあんたの傘横取りするみたいな真似出来ないでしょ。あんたもいくら家近いって言ってもこの雨の強さじゃ無茶だよ」
私のように傘を持っていない人々は、傘を買いにコンビニへ行くかタクシー乗り場に長い列を作り始めている。
「そう言っても傘は一本しかねぇからなぁ」
「……じゃあ、家まで送ってよ。そしたら、私も傘に入れるしあんたも濡れないでしょ」
私の家は、駅を中心にして友人の家の反対側にある。最寄りは一緒だが生活圏の被らない立地だ。
友人にはだいぶ遠回りになってしまうが、この雨の中走るよりはマシではなかろうか。うちもそんなに遠くないし。
私の提案に、友人は砂糖と思って食べたら塩だったような妙な顔をしている。
「……お前のことだから絶対言葉通りの意味なんだよなぁ」
「何だって?」
「なんでもねぇよ。送ってやるから行くぞ」
「やった。まぁ、お礼にコーヒーくらいなら出してやってもいい」
「お前はさー、すぐそういうことをさー」
「えー?」
濡れないように、折り畳み傘の狭い空間で身を寄せ合う。
口の中で何事かモゴモゴと悪態をついている友人に、ひっそりと笑う。傘に当たる雨粒の音が大きすぎて、きっと気付かれはしない。
ばかめ、気がなければこんな事言うわけないじゃないか。
折り畳み傘すら借りずに、「私タクシーで帰るから」で終わりだ。
見上げた顔の向こう、傘から滴る雫で濡れる彼の肩を見ながら、そろそろ「友人」じゃなくなってもいいかな、と考えるのだった。
2023.04.21
目の前に涙を流している少女がいる
其れは、とても苦しそうでいながら口元には微笑を浮かべていた
道化を演じるのを辞め、憔悴しきったような笑みに私は思えた
私は何故か手を差し伸べようとしていた
ほおって置けなかったようだ
だが、あと数cmの所で辞めた
遅すぎたからだ
目の前に居たのは鏡に写った
今日初めて涙を覚えた自分自身であった
#雫
空から降ってきたこの雨は
まるで君が今まで必死に隠してきた涙みたい。
♯雫
どんなにちっぽけな雫でも
乾き切った大地は縋ってしまうの
私は、こんなにあなたを愛しているのに
雰囲気づくりの女の子の方が好きなの?
だってその子ほんとは、、、
『雫』
雨、君たちは一体どこからやってくる。
ザーザーと音を立て、何十万と大群で。
空から来た君たちは、花や草木に挨拶をして、
またすぐ、地下へ居なくなる。
雨よ、次会うときは何時か?
題「雫💧」
〜詩〜
#雫#
他人の子ってなんだか可愛く見えてしまう
どうしてだろう
あの子が好きあの子がいい
なんて思ってしまうけど、
雫は何回見ても同じ色で同じ形だ
1回でもいい、あの子と姉妹、兄弟になってみたい
たったの1回でいい
あの子になってみたい
ただそれだけで、私はいい
たまに思う
どうして他人の子は可愛いのだろう
そう思うと、泣けてくる
他人だから、何回思っても一緒にはなれない
雫はいいな
だって雫には感情がない
だからなんだか尊敬する
あの子になりたい、あの子が好き
でも、でも、思いは叶わない
毎日そう思ってる
私がいる。
『雫』
ぽた、ぽた、雨戸から石の上にしずくが落ちる。
「ほらー、本ばっかり呼んでないで、少しは勉強しなさい!」
毎日毎日、母親というものは勉強への催促しか声掛けできないのだろうか。
そんなことを考えながら読んでいる本のページを進めた。読み進めていると、ひとつの言葉が目に止まった。
とたん、胸がドキリとした。
それからの僕の行動は一風変わった。
勉強も進んでやったし、志望校もレベルの高いところを目指した。
沢山勉強をした、朝起きたらまず今日の予習、帰ったらワークを進めて、夜には単語を覚える、休日には昼間復習も挟んだ。受験に向けてたくさん頑張ったんだ。
なんの取り柄のない、こんな僕でも。
でも、現実は優しくなくて、
「君、本当にこんなレベルの大学へ行くんですか?」
「は、はい、なにか……」
「少し厳しいことを言うけど、あなたの力でここはきついと思います」
数日前の放課後、先生とこんな会話をしてからはもっと勉強を詰め込んだ。
何事も努力、努力、努力
試験当日になった。
頭の良さそうな人達ばかりだ。倍率も高く、とても入りずらいところであるここは、試験開始まで時間があるにもかかわらず、ほとんど人が揃い髪をめくる音だけが聞こえていた。
正直、そこからの記憶はもうない。
張っていた糸がプツリと切れたように、何もする気が起きなくなった。
合格発表が怖い。
受かっていれば実力がちゃんと身についていたということ、
落ちていればそこまでだ。
やっぱりそうだ、
継続は力なり。努力はこんな僕にもできるものだった。
小さな積み重ねが明日への一歩を切り開く
僕の目に止まったひとつの言葉、それは
『雨だれ石を穿つ』
雨戸の下の石には深い穴が空いていた。
───
『』の中の意味、良ければ調べてみてください