『雪』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
【雪】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
1/1 PM 2:30
「飲み物尽きそうだな。ドリンクバー行ってくる」
「……天明(てんめい)、オレも行く。
暁、何がいい?」
「アップルティーでお願いします!」
「了解」
「……? 宵のは聞かなくていいのか?」
「聞かなくても分かるから」
「おー、さすが双子」
「じゃあ、真夜(よる)くんと天明くんが
戻ってくるまでちょっと休憩~。
楽しいねぇ、冬ソング縛り」
「まだ続ける気?」
「だって名曲揃いで歌うのも聞くのも
テンション上がるんだもん。
やっぱり冬って寒いから、温もりを求めて
素敵な恋の歌が出来やすかったりするのかな」
「どうかしらね」
「それにしても!
天明くん、歌うま過ぎない?
『粉雪』も『Lovers Again』も原キーで
余裕で歌いこなしてたよ!
音域どうなってるの!」
「……なんで怒ってるのよ」
「だってイケメンで背が高くて運動神経良くて
性格良くて歌までうまいなんて……正直、
とんでもない欠点のひとつやふたつあって
欲しくなっちゃう」
「理不尽な……」
「大変……宵ちゃんがもうメロメロに骨抜きに
されて天明くんの味方しかしてくれない……」
「…っ、メロメロにも、骨抜きにもされて
ないし、味方をしたつもりもないわ」
「冗談だよ~。天明くんの歌には感動したけど、
わたしにとっての最高得点は宵ちゃんの
『雪の華』と真夜くんの『ヒロイン』だしね」
「……暁の『White Love』も良かったわよ」
「やったぁ。……でも確かにそろそろ冬ソング
ストックが切れそうかも。
もうボカロを入れるしか……」
「アタシと真夜はアンタに聞かされてきたから
ある程度わかるけど、槇(まき)くんは
全然知らないかもしれないわね」
「いっそ天明くんをボカロ沼にはめたいんだよ。
歌って欲しい曲が多過ぎて」
「……メロメロなの、暁の方じゃない……」
雪
今年の冬は例年より雪が多い。
|知佳《ちか》に同い年の彼氏|幸成《ゆきなり》が出来てから初めて迎える一年目の冬、彼は天気予報で雪のマークを見つけては喜びにふけっていた。
「今度の休みは友達とスノボー行ってくるから宜しく!」
「う、うん、分かった」
週末になると二人の休みが合うというのに、この時期、「雪」が降るこのシーズンだけは彼は私をほっぽり出してスノボ一直線となってしまう。
とはいえ、付き合いたての頃、彼は自分の自己紹介をしてくれてきちんと趣味がスノボーだと言うこと、だから「雪」が降るシーズンはあまり一緒に居られないことを伝えてくれていたから全然嫌になんかならならなくて……。
知佳は一度もスノボーをやったことが無かったので、「雪」が降るシーズンは毎週末笑顔で見送り、帰ってくるのを笑顔で待った。
ところが付き合って二年目の冬のこと……。
「ねぇ、一緒にスノボーやらない?」
突然幸成に誘われたのだ。
「う、うん……で、でも難しそうだから私なんかに出来るかどうか……」
「大丈夫だよ、|知佳《ちか》はバレエ習ってたんだからバランス感覚良いじゃん、スノボーはバランスのスポーツだから、女性でも上達してる人多いよ」
「う、うん……じゃぁ、やってみようかな」
そう答えると、彼は凄く喜んだ表情を見せた。
「それじゃぁ、僕が教えてあげるよ」
「で、でもそれは……」
せっかく幸成が教えてくれると言ってくれたのを拒んだけど、それにはそれなりの理由があった。
それは、知佳の友達が同じパターンでスノボー経験者の彼に教えて貰ったところ、人に教えるのが不向きな彼だったのか、スパルタ指導をされたとかで散々そのことを愚痴っていたからである。
「置いてけぼりにする……」
「口で言われても分かるわけ無いよね……」
と、イライラした口調で話していたので、その時は可哀想に……なんて思ったりして同情していたけど、これって今になって良く考えると彼に対する甘えと八つ当たりだったのだと思えてきて……。
だから、もし知佳自身がスノボーをやるとしたら、彼と一緒にスノボーを楽しく滑る為に、きちんとライセンスを持っているインストラクターに教わり、指導して貰った方が早く上達するんだろうな……なんてことを思い描いていたのである。
ただ、本当にやることになるとは思っていなかったし、勇気が無くてスノボーやってみたいことを幸成に言えずにいたけど、今こうして誘って貰えたのはチャンスだと思ったのだ。
優しい幸成は知佳のことを指導したかった様子だったけど、知佳の提案を了解してくれて、当日は一緒にゲレンデに行くと別行動をすることに……。
こうして知佳は一日スクールに参加して滑り、幸成は習う必要がないとのことで一人で滑ったけど、最後は二人で一緒に合流して滑った。
こうして回数を重ねる毎に知佳はどんどん上達していき、何時しかきちんとターンが出来るようになり、コツを掴んだお陰で斜面が急になっても滑れるようになっていた……。
「知佳、ちゃんとお金払ってインストラクターに教わって良かったな」
「うん……えへへ」
こうして三年目の冬……。
友達は、彼氏に教わったスノボーが楽しくなくて喧嘩になり別れてしまったけど、知佳は今の彼、幸成と一緒に今年も「雪」のシーズンをスノボーをして満喫しています。
……えへへ。
――三日月――
例えば某日
世界は透明になった
電車が通る合図と共に
地球はふわふわと雪のよに落ちてゆくだけ
君の涙より穏やかに
それはとても長くて
早く終わっていかないかなと思う
最後に遊園地ではしゃぐだけ
君と手を繋ぎ走り出す
真っ赤な観覧車の上を飛んで
夢と夢の間もゆききする
誰かの御籤をビリビリに破る
六月のことを思い出して
鳴きたい鳥は
泣きじゃくって終わってゆく
毎年待っている。
白く染るのを。
人も、物事も、何も変わらないのに。
音が消える気がするから。
綺麗になる気がするから。
この、真っ黒な心を、隠してくれる気がするから。
雪
雪は白いと誰が決めたんだろう?
銀でも青でもなんなら赤でも良いはずなのに。
そう呟いた俺の横で半笑いを浮かべてパック牛乳を飲む悪友。
何が可笑しい、と、自分でも少し尖った声音で咎めると余計にニヤニヤしながらヂューッと牛乳を吸い上げた。
「だってこの牛乳も元をただせば牛のお母さんの血だろう?それだって赤じゃなく白くなってんのに雪が白だとかそれ以外だとか何もお前が悩まなくて良いんじゃないか」
チョンチョンと指先でストローを弾いてまた一口。
「雪が青だったら?それとも赤だったら?この牛乳が赤いままだったら?」
言われた景色を想像して思わず口元を抑えた。
赤や青の雪原は見たくないし牛乳が赤かったら飲もうとも思わない。
「慣れてないから気持ち悪いだろ?雪が白いってのはそう言うことさ」
どう言う事か聞かなくてもこいつの言いたいことは感覚で解る。
誰も決めてないけど雪は白、それで良い。
私は出来ることなら今すぐにでもあなたに会いに行きたいし、出来ることならずっと君と一緒にいたい。でも、叶わないって分かってるから苦しい、分かっていてもあなたが変な素振りをしてくるからまだ可能性があるんじゃないかって思ってしまっている私がいる。諦めた方が身のためだって分かっているのになぜかあなたに夢中になっている。ほんとにおかしいよね。
でもねこれを恋と認識してしまうとほんとに諦められなくなってしまって苦しむ未来が分かってるからまだ私は気になっているで押さえるようにしている。苦しいけどこうでもしないと私が本当におかしいなってしまうから。
私はあなたが変な素振りをする度にまだ可能性があるのかと嬉しくなっちゃうけどこの恋とは言わない気になってるってことを伝えたりバレたりしたら今までの関係ではいられなくなってしまうかもしれないと考えるとそれが嫌で怖くて伝えられないし、頑張って声とかにでないように努力してる、伝えたて関係が壊れるぐらいなら抑えている方がいいのかなって思ってしまっている。
私あなたと出会って話してくうちに他の人とは違った何かを感じたのよ、すごく相手のことが知りたくて話してて楽しくてバカ話も真面目な話もして知れば知るほど気になってこの時間が永遠に続いてほしいと思ったことだって何度あったことかでも、永遠というものはなく切れてしまう。切ってからもさっきまで話してたのにまた話したいと思ってしまう。
私が今あなたのところに行ったらなにもできないだろうなって思う。こんな中途半端な気持ちで会ったとして私が辛くなるだけなんだろうなって思った。
だからね未来がどうなってるか分からないけど気持ちの整理がついているのかも分からないけど、しっかり成長してあなたと肩を並べられるくらい大きな存在となって会いにいくね。だからそれまでしっかり生きててね。
恋心以外にあなたに会いに行く道を作ってくれてありがとう。頑張るから見守っててね!
「君と一緒に」
‘’ゆーきーやこんこ、あーられーやこんこ、ふってーはふってーは……‘’
外から子供の歌声が聞こえてきた。
「今朝は雪が降るほど寒いのに、元気でええなぁ。」
隣で横になっている彼女に声をかけた。
『そうやねぇ。本当に元気がよろしくて羨ましい限りやわぁ。うちもまた、外に出たいなぁ。』
子供の頃からずっと一緒にいた幼馴染であり、俺の彼女。そいつは、まだ20代だというのに病におかされている。ここ最近は起き上がれないくらいに体調が優れないらしい。
「そんな弱音なんか吐いて…お前も治療を続けとったら病気なんてどっかに飛んでってしまうがな。また俺に、元気な姿見せてぇや。」
俺には病気を治してあげることは出来ない。
彼女の為にしてあげられることと言ったら、元気づけてあげることくらいだ。気休め程度にしかならないだろうが。
本当なら俺が彼女を病気から救ってあげたい。外に連れ出して、2人でまだしたことない、旅行もしたい。
でも、それは多分叶わない。
医者が言うには、彼女の病気が治る確率は10%にも満たないらしいから。
そしてつい先日、余命宣告もされてしまった。
長くてあと…1年、と。
「ふふ、ありがとうな。うちがこんな姿になるまでそばにおってくれて。あんたくらいやわ。うちのことこんなにも元気づけてくれる人。」
日に日に弱っていく彼女の姿を毎日見るのは、正直辛い。俺が変わってやれたらって何度も思ったことある。それに、どうしてあんなにも優しい彼女が病気になって、余命宣告なんてされなきゃいけないんだって、神様を恨むことだってある。
でも、俺は彼女と一緒にいたい。それが辛く、苦しく、悲しい別れを知ることだとしても。
『それは大袈裟やて。それに、お前はどんな姿でも可愛ええよ。だから一緒におるんや。好きでなかったら毎日ここに来ぉへんよ。』
「そんなことないやろ。内心、こんな病気のやつと付き合うんやなかったーとか思っとるんやろ?もうすぐ死ぬ私なんかとおっても時間の無駄やよ。」
雪は、なんでいつもそんなに、自分を否定するのだろう。
『いつ俺がそんなこと言ったんや?1ミリもそんなこと思ったことないわ。雪、お前は俺にとって生きる理由そのものや。だからそんなこと言わんで、一緒におってくれ。』
出来ることなら、死ぬ直前まで、雪の生きた姿を見ていたい。
「あんた、ほんまにバカやな。まだ若いんやから色んな子と遊んでくればええのに。」
…若いから色んな子と遊ぶ?誰と?俺には雪しかいないのに…
『んなことできるかい。お前みたいな彼女がいるってのに。俺がどれだけ雪のこと大好きなのか、知っとるやろ?』
今まで、数え切れないほどの愛を伝えてきた。はず。
「雷(らい)はうちがいないと生きていけんもんなぁ。でも、こんな死が目に見えてるやつなんかとおったら、あんたまで不幸になってまうかもよ?」
愛がちゃんと伝わってたのは良かった…でも、不幸になるって…何の話だ?
『雪の隣に居られるなら俺、不幸になってええ。なんなら死んでもええんや。駆け落ちでもなんでもしていいから、雪と一緒に居たいんや。』
時々、ちょっと考えてた。このまま雪と駆け落ちするのもいいなって。
「駆け落ちて、あんたほんまバカや。まぁ、嬉しいけどなぁ。雷がそこまで考えてくれてるなんて…」
嬉しい…?なら……
『……本当にするか?駆け落ち。』
もしかしたら本当に、してくれるのか…?
「え?何言っとんのよ。私の命はもうすぐ終わるけど、あんたはまだまだこれからや。先の人生長いで。雷、あんたが私の分まで生きてぇや。そして、幸せになってな。……っ…うぅ…」
もうすぐ死ぬって分かってるんだ。そりゃ泣きたいよな。もっと、もっと泣いていていい。一生分の涙を、流してくれたって構わない。
『…雪がそのセリフを言うのにどれだけ勇気がいったのかはわかる。でも俺は、雪やなきゃ無理や。居なくならんとってくれ。お前の分まで幸せになんか、なれんよ…雪やなきゃ、もう、だめなんや…俺っ…』
頼むから、そんな事言わないでくれ。そんな約束できない。雪がいない人生なんて、考えられない。
雪とじゃなきゃ、幸せになんてなれない。
「……!そんなこと、言っとったら絶対あかんっ!うちの分まで幸せになるって約束してくれんかったら、成仏できへん!」
雪、わかってくれないのか?いや、雪は俺の1番の理解者なんだ。ちゃんとわかってるに決まってるか…雪の勇気を無駄にしているようで申し訳ないが、やっぱり無理なものは無理だ。
『無理なものは、無理なんや…雪、なぁ雪、頼むから、俺を残して、逝かんとってくれ…』
先に死なれるのは、やっぱり嫌だ。俺よりもっと、生きて欲しい。
「…ほんまは、うちやってあんたとずっと一緒にいたい。雷の隣にうちやない誰かがおるなんて、絶対に嫌や。でも、神様は許してくれへん。多分うちが、雷と出会って、たくさんの幸せをもらいすぎたからや。バチが当たったんやわ。当然の報いやと思って、死を受け入れる。うちにはな、それしかもう、道は残されてへんのや。」
いや違う。雪は何も悪くない。俺が、無力だからだ。
『俺が、雪を助けられるほど、強かったら。でも俺には、何も出来へん。ほんまダメな男やわ。ずっと隣におるのに、見守ってることしか、出来へん……ほんま、ほんまにごめんな、雪。ごめん…ごめん…っ!』
何も出来ない自分は、もう…
「まったく、また泣いて…男がみっともないで?ほんまに泣きたいのは、うちのほうなんやからな…」
いつの間にか涙が大量に溢れ出ていた。辛いのは、俺よりも雪の方なのに。
『…う、うん。ごめんな…ほんまに、かっこ悪いよなぁ。』
本当に自分はかっこ悪い。
「何言っとるの。あんたはすっごくかっこええよ。いつも雷が私を、助けてくれたやないの。」
雪は…気が強くてよく男子に喧嘩売って泣かされてたからな。その時は助けられた。でも…
『でも、本当に助けなあかん時に、何も出来んのや。今やってそうやろ?』
雪が病気に苦しんでいるのを、ただ見ているだけ。
「雷が隣におってくれるだけで、うち、助けられとるよ。あんたがおらんかったら多分もう死んでたわ。わからんけどな…」
隣にいるだけで…?俺と一緒だな…
もう、暗い話するのはやめよう。
また雪を泣かすことになる。
無理やりにでも、笑顔を作るんだ。俺。
『…わからんのかいな笑』
今、ちゃんと笑えてたかな。
「うん、わからん!笑」
あ、今の笑顔、可愛かったな。
『そっかー、そっかー!俺、できるだけ長く雪の隣におるから。安心せえよ。』
俺がそばにいる時だけは、苦しみを忘れて欲しい。
「うん、期待しとるわ。…ふわぁ…ちょっと眠くなってきた…寝てもええ?」
そういえば、長話してしまったからな…身体を第一に考えてもらわないと。
『もちろんや。雪が目覚めるまで、ずっと隣におるわ。安心して眠れ。』
ずっと、ずっとら一緒にいるから。雪の死は確実に近ずいている。でも、もう怖い思いはさせない。
「…ありがと。ほな、おやすみな。」
お礼を言うのは俺の方だけどな。
『うん、おやすみ。』
ゆーきーやこんこ、あーられーやこんこ、ふってーはふってーは……
これは多分、4歳くらいの時の記憶。夢に見るのはとても久しぶり。でも、雷との思い出だから、どれだけ古くても鮮明に覚えてる。
この日は雪の降る、とても寒い日だった。私が寒いから手を繋いでって言ったら、雷がいいよって言ってくれたから、雷と手を繋ぎながら、この歌を歌った。
懐かしいなぁ…あの時は、悩みなんて全然なかった。
あの頃に戻れたら…なんて、願ってもどうせ叶わないんだけどね。時を戻すことなんて、出来ないから…
…来年の雪が降る頃には、私はもう、多分この世にはいない。
でも、雷、あなただけには、幸せになって欲しいの。何がなんでも。ずっと、空から見守ってるから。
来年は、空から降ってくる雪を見て、私のことを思い出してね。
今日も雪が降る。
涙が零れるように、静かに、静かに、雪は重力に逆らわず、降っていた。
彼との別れも今日みたいな雪が降り続けていた。
彼は僕の前から急に居なくなった。
雪の降る冬の寒い日の事だった。
彼は人知れず雪の中で項垂れていた。
どうして、とか、早く行けばよかった、とかじゃなくて
ただ、何も考えられなかった。
言葉が詰まって出てこなかった。
後悔もクソもない。流した涙は雪の中に消えていった。
それからもう何日か、雪が降ると思い出す。
このまま死んでしまいたい。
毎日そう思っては、勇気が無くて死ねなくて、
あっちの世界で彼はどうしているんだろう。
僕なんかよりも、ずっと可愛い子と遊んで暮らして、美味しいもん食べて、ゆっくり寝て、そんな生活してんのかな。
そしたら、僕のことも、忘れてんのかな。
拳を強く握る。
「それじゃ、アイツに会いに地獄行く意味無いよな、」
白い息を吐く。少し前を向こう。
まだ、その時じゃない。
彼がどうして死んだのかとか、彼の地獄での生活とか、
そんなんどうでもいい。
「地獄で待ってろ」
アイツの分だけ生きてやる。
白い雪の中に消えていく。彼の背中を探して。
#雪
後半わけわかめですね!!スランプです!!
積もり募り量が増し
いつしか溶けて水となる
想いも積もり募り続ける
雪
わかるだろう
この声とこの肩幅は
ゆきみだいふくに魅せられた
あいつらが迎えにきたんだ
さあ準備だ
今宵はマイノリティもこぞって
珈琲豆の香りだけ堪能し
扉を開け放す
奏でるクラリネットも聴こえない
気付けば霜が降りて真っ白になった箱の中
何度も聞いた挨拶が飛び交っていく
やっと終わって現実は
やっぱり宇宙の原理に従順だ
#雪
歩みたい道へ 未知へ歩みを進める もがいても あがいても 信ずる道へ
犬は喜び庭かけまわり
猫はこたつでまるくなる
雪が降らない土地で育って
犬も猫もいなくて
父もいなくて
青いセキセインコの男の子
肩にとまるとこそばゆくて
よくおしゃべりしてたんだった
今は雪がふりつもり
あたり一面が真っ白になっている
こたつの中で2匹の猫が寄り添っている
ソファーの上から犬が
お散歩に行こうと催促してくる
雪やこんこの唄が頭の中で流れる
よしかけまわりにいこう
ふってはふってはずんずん積もる前に
雪が好きなやつなんかこの世にいるか?
いや、いないね
雪ってやつは全くもってろくなもんじゃない
まず、僕の地元では
冬の恒例行事に家族総出の雪かきがあるんだが
よく考えてくれよ
雪かき、を朝イチにこなしてから
学校なり仕事なりに行くんだ
無理だろ、普通に疲れるだろ、
しかも一銭も貰えないときた、最悪だよ
なんでこんな土地に住もうと思ったんだ親は
大学生になって
やっとこさ冬の筋肉痛から逃れられた、と
安堵したのも束の間
都会は都会で、
雪が降ったら電車は止まるは車はスリップするわで
やっぱりどこに行っても
雪はな〜んにもいい所がない
今だって、
大学終わりのエスカレーターの中で
片思いの相手とたまたま2人きりになってしまい、
何故か不思議な距離感を保ったまま
大学の最寄りの駅まで来てしまって
サークルでは話したことあるけど2人きりでは話したことない男女特有の気まずい雰囲気を更に盛り上げるかのように
積雪による運転見合わせのアナウンスに見舞われている
そして、確かこの子の帰路はここから電車をいくつか乗り継ぐものだったと思い出したところだ
ここで立ち往生を食らっていては
おそらくこの子は今日のうちには家に帰れない
彼女は僕の斜め前にいて、
電光掲示板を見つめたまま動かない
駅の白っぽい光に照らされて、
彼女の髪が茶色に透けて見える
いや、そんなことを考えている場合じゃない
一体僕はどんな顔して彼女に声をかければいいんだ?
僕の家はここから頑張れば歩いていけるけど、
ここで家に来る?
なんて誘うのは陰キャの僕には無理だ、
そんな度胸はない
でも無視して僕だけ帰っていいのか?
いや、ダメだろ…
好きな女の子を雪の中に1人残して帰るのはダメだろ……
「あなたこの後、暇?」
僕の呆けた思考に切り込んできたのは、
僕がいつも一方的に焦がれていた大きな瞳とその声
思いがけず戸惑いの声を発するより早く、
「暇ならさ、雪合戦しようよ。私雪大好きなんだ」
そう言うと彼女は僕の手をひいた
僕達2人は雪景色の中に飛び込んでいった
ウンザリするほど見慣れた雪景色だったが
既に積もっている雪も、空から舞い落ちる雪も
彼女の雪のように白い肌も
今まで見たことがないほど煌めいていた
正直腹が立つほど寒かったけれど、
彼女の手のひらの熱がその苛立ちを消し去った
前言撤回
僕は雪が好きかもしれない
今までの筋肉痛も遅延もスリップも
全部この幸福と引き換えだったのだと思うと
まあ、なんだ、
雪も案外やるじゃないか
『雪』
どかーんと雪降って
ドクターが
患者にどのくらい雪が積もったか聞いて
『積雪◯◯cm』
って
カルテに書いてる
それ、
いるん??
他に聞くことあるやろ?
ま、おもろいから
えーけど
ちょっとお祭り気分
いっそ雪降ってくれ。関東の乾燥具合やばいよ。コロナなのか、インフルエンザなのか、風邪なのか、ほんとにただの乾燥なのか分からないくらい鼻の中痛い。まんべんなく全国にうすーく降ってくれたらいいのに。ほんとそろそろやばいよ。何日雨降ってないの。近所も火事あったしさ、ほんと。
わたしハウサギ
吹雪はおさまるどころか、日没が近づくにつれさらに勢力を強めていくようであった。
入山から三日。テルシアからカトガールまでの、比較的平坦な3号ルートである。3号ルートと並走するように眼下に国道が走っているのだが、この時期は通行止めであり、その理由は今現在、わたしが体験していることに由来するのだろう。
猛吹雪に見舞われてはいるが、位置を見失ったわけではないので、別に遭難しているわけではない。
しかし試験内容は『五日以内にカトガールに到着すること』である。多少無理をする必要がある。この猛吹雪は、おそらく師匠の『自然誘導』であることは分かっていた。わたしの師匠は普段は温厚な魔術師であるのだが、試験の障害を作るためではあろうが、ときおりこのような無茶をするのだ。
わたしは魔術師ではないから、師匠が仕組んだであろうこの猛吹雪に真っ向から対抗しても無駄であることは承知している。吹雪は強まる一方である。とはいえ、自然現象であるからして、当然勢いにムラがあった。わたしは勢いが弱まる数時間、もしくは数分の間に、なんとかしてカトガールに近づこうと歩きつづけた。
不意に足に何かが絡まった。
輪になった細いワイヤーの先に、折れた木の枝が縛り付けられている。何度か外そうと試みたが、細いワイヤーはしっかりとわたしの足をくくり、どうにもならなかった。
わたしは以前に師匠から、これがウサギ用の罠であることを教わっていた。この罠にかかった兎は体力を奪われ、雪の中で動けなくなり、やがて餓死か凍死か衰弱死を選ぶことになる。死んだ兎はそのまま凍りついて腐ることもない。人間は易々と肉を手に入れることができる。人間の恐るべき悪知恵の産物であった。
「罠から抜けることは不可能だろうね」
師匠の言葉が思い出された。
「兎には無理だよ」
師匠の予言通り、罠に掛かったわたしは数時間後、死のきわにいた。
すでに手足は雪の中に埋まって。耳と鼻だけがかろうじて風に吹かれている有様だ。
「それでも生きたいと思うなら、そうだね、お前は自分を思い出さないといけないよ。なに、ちょっと忘れているだけさ。大丈夫、お前ならできるよ」
やがてわたしは、雪に埋まりかけている自分を眺めているような、まるで夢の一幕でも見ているような、不思議な感覚にとらわれていた。
わたしは人間の女性のような姿で立ちあがっているのだった。足元に罠にかかって凍りついている兎の死骸があった。
それはわたしだった。
ソレハワタシデアリコレモワタシダッタ ワタシノマエアシハヒトノテデアリそのほっそりしたてにはミオボエがあった。
ワタシハシショウデアリワタシハウサギデアッタ わたしの知識は師匠のものであり コノキオクハワタシノモノデアッタ
わたしは自由であった。兎でも人でもない自由であった。
空に上がり、グルリと見渡すと遠くにカトガールの廃城の一部が見えた。振り返ると吹雪に閉ざされたテルシアの平原も向こうに見えた。不思議である。猛吹雪で視界はホワイトアウトしているのにもかかわらず、テルシアの様子を感じることができるのだ。
カンカクとカンジョウに師匠の言葉を当てはめると、それを新ためて理解できるようであった。
「でもね」
わたしは師匠の手のひらに乗せられてすーと持ち上げられたときのことを思い出した。
「言葉に頼ってはいけないよ。大きく捉えるんだ。なるべく大きく。え? 分らないって? そりゃあ分らないだろうね。分かろうとしないことさ。大きく捉えるんだ」
暖炉の火は冷気に勝っていてわたしには熱いくらいだったが、師匠は膝掛けがないといられないと、ボヤいていた。
師匠の師匠は震える師匠を「これも修行のうちだ」といって笑っていた。
この二人は夫婦のようであり、恋人のようにも見えたし、ときおり兄妹のようにも見えた。
「いいかい。これからお前がわたしの使い魔にふさわしいかどうか試すからね。試すなんて大袈裟なもんじゃない。思い出してもらうだけさ。でも油断しちゃいけないよ。兎は弱いんだ。途中で死んでしまうかもしれない。でもわたしはお前が必ず試験に合格することを知っているよ。お前はわたしでもあるんだからね」
夢から覚めて、わたしはまだ、わたしを失っていなかった。
兎の死骸はすでに雪に埋まってしまっていた。あたり一面ギンセカイであった。
ギンセカイ ギンセカイ ギンセカイ
これは師匠の言葉だ。そしてもうわたしの言葉だ。
わたしは兎である。
そうしてぴょんと前に飛んだ。そう、これがわたしである。進むたびに銀世界に足跡が付いた。吹雪は相変わらず猛威を奮っていたが、わたしはそれをものともせずに、銀世界を駆けることができた。
もっと、もっと速く!
わたしは雪を蹴りぐんぐんと加速していく。疲労はなく、無限に力が湧いてくるようだった。やがて筋肉が加熱し炎上をはじめる。火の玉となった全身がついに消失して、わたしには視界だけが残った。
さらに加速する。
景色は風の一部となって、わたしはカトガールの城壁を一息で駆けあがった。
森を抜け、空を駆け、全ての世界がわたしの視界と同一になった気がした。わたしは世界中のどこにでも存在していた。
そうして世界を限界まで味わうと、急に寂しさがきた。
一人であることに耐え難くなり、世界中を探し回ってようやく師匠の温もりに辿り着くと、わたしは暖炉のある部屋で目を覚ました。
わたしは師匠の膝掛けの上に立ち上がって、その先の匂いを嗅いだ。
「おや、もう目を覚ましたのかい」
師匠はくすぐったそうな笑い声をあげて、わたしの頭を撫でた。撫でつけられるたびに耳がぴんぴんと跳ねて、わたしは再び五感が戻っていることを感じた。
「ほら、言ったとおりだ。わたしのカンはわたしの師匠も一目を置くんだ」
師匠はそういうと立ちあがり、僕を広いテーブルの上にちょんと下ろした。
「お前に名前を付けなくっちゃいけないね。お前はもう『わたし』じゃないんだから」
#雪
雪
少し赤くなった手を
震える手で繋いだ。
あの春の香りを
待つためのお手伝い。
静まった世界に
2人で篭ろうか
大丈夫、すぐに暖かくなるから。
私は今日、初めて雪を食べた。
雪って、真っ白で綺麗なのに、色々と不純物が入っているんでしょ?
まさにその通りだって思った。
あれ、たくさんの汚いものが混じってて食べるもんじゃないって思った。
今すごくお腹が痛い。
……でも、仕方ないでしょ?
雪がずっと一緒にいるって言ってたのに、約束破ったから。
でもこれからは違う。
ずっと、ずっとずぅっと一緒だからね。
〜雪〜
雪
降り積もるのに
理由は必要ない
音すら必要ない
灰色に染まる心
覆い隠すように
静かに降り注ぐ
迷い揺れ動く心
日和見な感情に
黒では悲しいと
全て白い世界へ
そうしちゃえば
美しい世界へと
言葉すらいらず
沈黙の白世界に
準じていけるよ
降り積もるのに
言葉はいらない
涙すら必要ない
覆い隠すように
静かに降り注ぐ
「雪」
まっしろな真綿のような雪みたいな心でありたい。