三日月

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 今年の冬は例年より雪が多い。

 |知佳《ちか》に同い年の彼氏|幸成《ゆきなり》が出来てから初めて迎える一年目の冬、彼は天気予報で雪のマークを見つけては喜びにふけっていた。

「今度の休みは友達とスノボー行ってくるから宜しく!」
「う、うん、分かった」

 週末になると二人の休みが合うというのに、この時期、「雪」が降るこのシーズンだけは彼は私をほっぽり出してスノボ一直線となってしまう。

 とはいえ、付き合いたての頃、彼は自分の自己紹介をしてくれてきちんと趣味がスノボーだと言うこと、だから「雪」が降るシーズンはあまり一緒に居られないことを伝えてくれていたから全然嫌になんかならならなくて……。

 知佳は一度もスノボーをやったことが無かったので、「雪」が降るシーズンは毎週末笑顔で見送り、帰ってくるのを笑顔で待った。

 ところが付き合って二年目の冬のこと……。

「ねぇ、一緒にスノボーやらない?」

 突然幸成に誘われたのだ。

「う、うん……で、でも難しそうだから私なんかに出来るかどうか……」
「大丈夫だよ、|知佳《ちか》はバレエ習ってたんだからバランス感覚良いじゃん、スノボーはバランスのスポーツだから、女性でも上達してる人多いよ」
「う、うん……じゃぁ、やってみようかな」 

 そう答えると、彼は凄く喜んだ表情を見せた。

「それじゃぁ、僕が教えてあげるよ」
「で、でもそれは……」

 せっかく幸成が教えてくれると言ってくれたのを拒んだけど、それにはそれなりの理由があった。

 それは、知佳の友達が同じパターンでスノボー経験者の彼に教えて貰ったところ、人に教えるのが不向きな彼だったのか、スパルタ指導をされたとかで散々そのことを愚痴っていたからである。

「置いてけぼりにする……」
「口で言われても分かるわけ無いよね……」

 と、イライラした口調で話していたので、その時は可哀想に……なんて思ったりして同情していたけど、これって今になって良く考えると彼に対する甘えと八つ当たりだったのだと思えてきて……。

 だから、もし知佳自身がスノボーをやるとしたら、彼と一緒にスノボーを楽しく滑る為に、きちんとライセンスを持っているインストラクターに教わり、指導して貰った方が早く上達するんだろうな……なんてことを思い描いていたのである。

 ただ、本当にやることになるとは思っていなかったし、勇気が無くてスノボーやってみたいことを幸成に言えずにいたけど、今こうして誘って貰えたのはチャンスだと思ったのだ。

 優しい幸成は知佳のことを指導したかった様子だったけど、知佳の提案を了解してくれて、当日は一緒にゲレンデに行くと別行動をすることに……。

 こうして知佳は一日スクールに参加して滑り、幸成は習う必要がないとのことで一人で滑ったけど、最後は二人で一緒に合流して滑った。

 こうして回数を重ねる毎に知佳はどんどん上達していき、何時しかきちんとターンが出来るようになり、コツを掴んだお陰で斜面が急になっても滑れるようになっていた……。

「知佳、ちゃんとお金払ってインストラクターに教わって良かったな」
「うん……えへへ」

 こうして三年目の冬……。

 友達は、彼氏に教わったスノボーが楽しくなくて喧嘩になり別れてしまったけど、知佳は今の彼、幸成と一緒に今年も「雪」のシーズンをスノボーをして満喫しています。


……えへへ。

――三日月――

 

 
 


 


1/7/2023, 4:42:32 PM