『閉ざされた日記』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
祖母が死んだ。
誰からも人格者、良妻賢母と褒められた祖母だった。
夫を立て、子には厳しく、孫を慈しみ、友人を大切にした祖母だった。
母と共に祖母の遺品を整理していると、一冊の分厚い手帳が見つかった。鍵付きの古い手帳だ。家中を探したが鍵は見つからない。
色褪せたそれを開ける術が無く、母と私はしばらく顔を見合せてどうしたものかと思案したが、捨てるのも偲びなかったので私が持って帰ることにした。
あれから一ヶ月。
私は手帳を前にカッターナイフを握る。
色褪せたその手帳がどうしても気になって、中を見たくて我慢出来なくなったのだ。
人格者と言われた祖母。
良妻賢母と言われた祖母。
非の打ち所が無いと言われた祖母。
そして、祖母のように讃えられたりはしないが朗らかで〝善良な〟母。
――ならば何故、孫の私は〝こんな〟なのだろう。
祖母にだって一つや二つ、シャツについたシミのような汚点があった筈だ。誰にも言えない黒歴史がある筈だ。ならばこの、鍵のかかった手帳に、きっと。
私は手帳のベルトの部分にカッターナイフを突き立てる。ようやく開いた手帳の中には、びっしりと、祖母らしい几帳面な字で、
黒歴史と言うにはあまりに残酷な物語、が。
綴られていた。
END
「閉ざされた日記」
今から少し昔の話
悲劇の歴史女王は
日記をつけていたという
あの日記どこへ行ったのかしら
牢屋に繋がれた女王は
あれはわたしのプライベートだからと
恥ずかしそうに言う
実らなかった初恋
結婚する時のとまどい
夫を戦地へ送る心細さ
飢饉の時の粗末な食事
子供の成長
刺繍の模様デザインなど…
どれもたわいのない日々のことなの
あの日記が人に知られたらと思うと
それだけが心残りよ
侍女は言う
奥様大丈夫ですわ
ごく平凡な内容だったので
誰にも気にされず
わたしの日記として
娘が持ち出しました
あぁ、良かった
強いわたしの心の中は
ささやかな夢を見ている
弱い女だったとは
知られたくなかったの
家族を愛してただ生きていた
そんなわたしを閉じ込めた
日記のことは秘密よ
今から少し昔
悲劇の歴史女王は
女王らしく凛として死んだと言う
お城の侍女の日記は同じ頃
村の片隅で火にくべられた
日記は女王と共に天国に昇っていった
現在…お城には何重にも鍵のかかった
立派な本があり、それはこの国の宝
かつての女王の日記だと伝えられている
俺は日記を見たことあるんだよ
稀代の怪盗は声をひそめ
恋人に打ち明ける
あの日記を盗んでやろうと
思ったんだけどさ
あの日記は偽物の白紙だったんだ
盗む価値などなかったんだ
だから俺は前以上にガチガチに鍵をかけて
とんずらしたよ
何百年か後
中身だけ盗んだ怪盗がいたなんて
噂になるかもしれない
そうなったら愉快だろ?
空の上
のんびりと庭を歩く娘がいた
最近、役割を終えてここに来たと
清々しく笑った
日記に綴られていた平凡な娘だ
やわらかな陽射しと
はためく洗濯物
彼女の名を呼ぶ声がして
幸福な想いに溢れそうになりながら
娘は振り返る
風が吹いて
ベランダのテーブルに置いた
日記帳の
白いページがめくられてゆく
(テーマ「閉ざされた日記」
ミニストーリーを考えてみました)
薄い灰色の砂埃を着込んだ本は、その鮮やかな赤いドレスの美しさを燻ませていた。
お題:閉ざされた日記
7年間のあの日々
あいつとの未来になんの疑いもなかった
あと2年待ってね
その言葉を信じ待っていた
待ったその先にあったのは酷い裏切りだった
そういえば見慣れない洒落た服
突然始めたバイト
どれもあの子のためだったのね
きもいきもいきもい
残念だけど私は今とっても幸せ
女は上書き?
とっくに上書いた
"閉ざされた日記"
きっと、望まれていなかった。
それでも、と夢想したことはあった。
祖母の手によって時間経過を感じさせないように保たれていた彼女の部屋。
机の引き出しの、隠しの底に押し込められていた小さなノートを見るまでは。
紙面には、滲んだインクで
どうしよう、と。
彼女の可能性が閉ざされた日が、記されていた。
先祖たちの文章を見て思う。
血が滲んでいると。
リアルで血が滲んでいるのでは無い。
思いが籠っている、という意味だ。
私たちの家は、それはそれは古い部類の家だ。
その分、多くの先祖の文章が残っている。
今尚、私自身、間繋ぎの当主とは言え、文章を遺している。
私に子は居るが、孫やその先の世代の事など想像出来ない。
私たちの家は、確かに生き残ってきた。
それは、唯、運が良かったに過ぎない。
だからこそ、恐ろしい。
将来とは、恐ろしい。
私の成している事が、将来の弊害に成らぬ事を祈る。
それだけしか、私は遺してやれぬのだから。
相棒が書いていた日記。
胸に風穴を空け、眠り続けている持ち主を横目に、表紙を見つめていた。
開けない。
中身は、オレと、想い人のことでいっぱいだと知っている。
見なくても分かる。だから開けない。
相棒はどんな風にオレを語るのか。どんな風に、想い人を語るのか。
知った後に漏れ出る感情が、容易に想像できる。
日記の中の想い人の名前を全部オレの名前に上書きしてしまいたいほどの嫉妬と、そんな気持ちを抱いてしまう自分への嫌悪。
惨めになりたくない。己の保身のために、開かないでいる。
かといってそんな自分も別に好きではない。
相棒にとっては、一番大切であろう私物。
でもオレにとっては、どう転んでも良くない感情を与える、呪いのような代物。
ごめん、と心の中で呟きながら、ただ、表紙を見つめていた。
【閉ざされた日記】
この間初恋の人に久しぶりにお会いしました。大好きだったのに何もできないままお別れした彼。
それなのに温かい気持ちは何も湧いてこなかったんです。成長とは時に寂しいことなのかもしれませんね。
閉ざされた日記
閉ざされた日記
引越しの最中、埃まみれのその日記は出てきた。錆びついた小さな錠前は、かつての私が誰にも見せたくなかった心の防壁だ。鍵はもうない。
壊して開けることもできたが、私は表紙の冷たさを確かめただけで、再び箱の底へと沈めた。そこには、今の私には眩しすぎる未熟な熱情が眠っているはずだ。封印された言葉たちは、誰の目にも触れず、記憶の中で美化されたまま朽ちていくのが、一番幸せなのかもしれない。
閉ざされた日記
想いをそっと書き記す
自分の中の想いは頭の中にあるが
自分の記録として残す
誰に伝えるでもない
自分だけのもの
私の人生の記録
今日もそっと閉じる
母がまだ日記を付けていた頃。口喧嘩をした際、「死んだら引出の中の日記を読め!」と言われたことがあった。
きっと僕の親不孝の数々やそんな僕を心配する言葉がその時の感情のままに綴られているのだろう。
だいたい想像が付くから読みたくないような、意外な一面や事実が記されてるのかもと読んでみたいような…。その時僕はどんな気持ちになるのだろう。
#閉ざされた日記
「閉ざされた日記」
暗い、暗い部屋の奥。
俺は一人で座っていた。
「やっちまった〜〜!!」
部屋の隅々まで響くほどの声で叫ぶ。
(研究員の人ぶん殴っちまったのは不味かったかなぁ)
ところどころ骨が軋んで痛む体で、ぼんやり考える。
俺たちは実験台。
異能を持った子供の人体改造とか、自我を欠落させることによる兵器化だとか、おぞましいったらありゃしない。
(さぁーて、これからどうすっかなぁ
抜け出してえけど、、、、。 )
どうしようかと頭を悩ませる。
その時。
部屋の角で、物音がした。
「誰だ?」
物音がした方を見る。
「、、、お前かよ」
拍子抜けしてしまった。
「はっ、悪かったねぇ僕で」
「本当だよ」
「それよりさ」
レウの声が、少し強張った。
「ここから抜け出さない?」
「、、、はぁ!?
無理に決まってんだろ!
あいつらの力のことわかってんのか?」
「つれないなあ〜
でも、いつかはできると思わない?」
どきり、とした。
こいつとならできるかもしれない。
いつか。
いつかここから逃げられるのかもしれない。
「いつかな」
できるだけ平然という。
「はいはい、楽しみにしてるよーん」
本当に、いつかそんな日が来るんだと思った。
そしてその隣には、お前がいると思っていた。
当たり前のように。
笑顔で笑ってくれるんだと思っていた。
保証なんて、どこにもなかったのに。
それからしばらくして、レウが死んだ。
実験の拒否反応で、あっけなく。
俺は、全く泣けなかった。
そのすぐ後ぐらいに、俺は警察に助け出された。
抜け出せなんてしない。
俺は無力な子供で、夢なんてそんなもんだった。
警察の人が、レウの遺品だと言って一冊の日記帳を渡してくれた。
古ぼけた日記帳。
記憶が、蘇った。
『レウ、なんだよこれ〜』
『あー!それは見ちゃダメ!』
『え〜ケチじゃん!』
『じゃあ、いつか僕が見ていいって言ったら見せてあげる。それまで待ってて!』
涙が溢れた。
なんで忘れていたんだろう。
なんでもっといろんなことを話さなかったんだろう。
なんで、なんで、なんで。
「なあ、日記、見ていいって言われてねーぞ
何書いたか知りてーのに、これじゃ見れねえじゃん
返事しろよ、レウ、、、」
気づけば、写真に向かってそう言っていた。
日記の裏表紙を見る。
『ここを出たらやりたいこと!
①零といっぱい遊ぶ
②普通になる
③零のしたいことをする!』
レウがやりたかったこと。
全部、俺がしたいと言ったことだった。
「レウ、俺、ここに書いてあることのうち二つはもう
できねぇけどさ、この普通になるってやつ、やって
みるよ。
そしたら、この日記、見てもいいかな、?」
涙を拭って美しい立ち上がる。
普通になって見せるんだ、精一杯。
レウが心配しないくらい。
その為に。
今はまだ、閉ざされたままにしておこう。
テーブルの上に置かれた日記が、涙と共に輝いた。
良いと思える経験とはなに。
失敗すること。挫折を経験しとかないと、後々しんどくなると聞く。
それはどんな経験なんだろうか。
想像できない程かな。苦しいほどかな。
わかる。訳ない。
中学の時に書いた日記には嫌なことばかり書いている
何に苦しんで、何が嫌だったのか。
強い力で書いているから、読めない文も所々にある。
濃くなっているところは本当に苦しかった時。
今20歳になって見ると、読めきれないほどの量。
でも、書いていた内容は何となく自分で覚えてる。
どんな気持ちで書いたのかは分からないけど。
でも、今更一から読もうとは思わない。
棚の間に私の日記4冊が入ってる。
中学の思い出と日記は閉ざされた日記として保管してる
厨二病って言われるけど、この文には嘘は書いてない。
泣いた跡もあるページもある。
どうしたらいいのが分からない時期だった、
でも、書いていて良かったと思う。
また、気が向いたら読んでみようと思います。
おやすみなさい。
閉ざされた日記
半世紀生きてきた節目で、日記をつけて
みたいと思って、書き始め
毎日が積み上がっていくことが、楽しみ
今まで閉ざしてきたから
なおさらだ。
あの人は無数の日記に埋もれていた
長いこと細々とつけていたようだ
彼以外の誰も開いたことはない
彼が決して許さなかったから
いつしか彼は1人でそれらを処分した
いつだったのかは誰にも分からない
しかし、彼の手元にはいくつか残っていた
そして今日、
それらは彼と共に灰になった
骨の髄まで焼き尽くす炎の前に
薄い紙たちはなす術もなく
全て塵となり灰となった
日記に何が書かれていたのか
今となっては死人に口なしである
閉ざされた日記
私は夢日記というものを書いていた。
ただその日見た夢を記録するだけの単純な作業だ。
2ヶ月ほど続けたある日、明晰夢というものをみた。
それから、歯車が狂ったかのように悪夢ばかりを見るようになった。偶然にしては出来すぎている。
もちろん日記は閉じたが、夢を見ること自体に恐怖を覚えるようになってしまった。
あの閉ざされた日記は、もう二度と開きたくない。
【閉ざされた日記】
閉ざされた物には
きっと理由がある
自分が閉ざした物でなければ
そのままにした方が
きっといい
それでも開く事を望むなら
閉ざした者が
その意思で開けるように
出来る事はそれくらい
閉ざされた日記を開くと
結ばれなかったかつての想い人への
未練を綴ったものが出てきた
会うことも連絡することもなくなったことは
寂しくも悲しくもあるが
結ばれなかったがゆえに
嫌な面を見ることはなかった
いつ振り返っても
笑顔の素敵な優しい人のままでいてくれる
日記なんて一週間もしたら書かなくなるんだろうな。
でも、文字に起こして感情を殴るように書き写していけばいつのまにか心がスッキリするものだ。
だが、青い表紙に金色の字で『daily』と書かれたこの日記はいつのまにか最後のページまで埋まっていた。
ところどころ抜けた日付。
書かなくなると思っていた。でも、人間とは案外単純で、一日の出来事を書くだけでも日記というものが楽しくなるものだ。
明日にでも新しい日記を買いに行こう。
◯月◯日 ( 晴れ )
題:閉ざされた日記
今まで
日記というモノを
続けられたためしはない
何日か書いている
日記帳だけが
増えていく
あるとき
それぞれが
あまり思い出したくないので
何を書いたか忘れたので
読み返さず
そのまま燃やしてしまった
忘れ去った
わたしの記憶を
閉ざされた日記に
閉じ込めたまま