『鏡』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
この世には、鏡の世界が存在するらしい。
そこには自分そっくりな人がいるとかいないとか、、、、
あなたは本物、?
【No. 26 鏡】
鏡
かがみ、同じものを映し出してくれるもの。
今までは見えるものを映し出すものだと思っていたけれど、
自分が出会う人々もまた、鏡であると知った
自分の調子がいい時、悪い時、それを目の前にいる人が鏡となって教えてくれるのも、またおもしろい。
鏡の鏡、今日の私の調子はどうでしょうか。
鏡
鏡は今の私を映してくれる
眠い私
イライラしてる私
目が輝いている私
ワクワクしている私
どんな自分が鏡に映り私の目に見えてきたとしても
私は私を受け入れます
だってその私が今の私の気分なのだから
何か違うって感じても受け入れてあげたいです
私の味方は私だけ
なのですから
「うわっ!?」
「どうした?」
後ろからヨキの悲鳴が聞こえギンジたちは振り返った。
ヨキは口をパクパクさせながらこちらを──その奥の大きな鏡を指差している。
「いま、男女が……鏡に映ってなかった……!」
「真弓が? ああこれ、照妖鏡だからな」
「しょうようきょう?」
「照妖鏡、またの名を照魔鏡。相手の本当の姿を映し出す鏡の妖《あやかし》です。映っていなかったわけではなく、私の真の姿は弓曳童子《ゆみひきどうじ》──とどのつまり、からくり人形にすぎませんから。ほら、ここに」
真弓の伸ばした指先を見る。鏡に映る一同の足先、そこには片手に弓を握り腰から矢筒を下げた日本人形がちょこんと座っていた。
「本当の姿を映す……。じゃあ、オレは……」
ヨキは自分の腕を抱えた。
人の身でありながら内に妖を宿すこの身は──真の姿を映す鏡にはどう映るだろう。
この姿がそのまま映ればそれでいい、だが、もしそうでなかったら──。
俯くヨキを見てギンジは小さく息を吐いた。そしてコンコン、と軽く鏡を叩く。
「鏡子、いるんだろ?」
「はいは〜い、ただいま。ギンジ様、お久しぶりです〜! 今日はなにを見ちゃいます? 左腕の具合? 10年後の姿? それともあの子のお・風・呂?」
「あの子のおふぐぁっ! 真弓、本気の腹パン痛い……」
「まったく、ギンジ殿はいつからこうなってしまったのか……。側近として情けない限りです」
「くすくす。矢一は相変わらずね。失礼、いまの名は真弓だっけ」
高い可愛らしい声と共に、鏡に映った襖が開いて髪の長い女が現れる。ヨキは思わず振り向いたが、そこには誰もいない。
ギンジはニヤニヤと目を細めた。
「振り返ったって誰もいねぇぜ、ヨキ。こいつは照妖鏡の鏡子。鏡の中に住んでる」
「わ、わーってらい!」
「鏡子、このガキが通る時だけ見たまんまの姿を映してくんねぇか? お前なら屋敷中の鏡に干渉できるだろ」
「できるけどぉ〜。いいのかしら、ギンジ様。その子、内に妖がいる。人と妖、どちらが本体かわかったものじゃないわ」
鏡子の言葉に、ヨキはまた下を向いた。その頭をクシャリと撫でられる。
「どっちだって、こいつはこいつだ。何が映ったってそこは変わんねぇよ。な、そうだろヨキ!」
出演:「からくり時計」より ヨキ、ギンジ、真弓、鏡子
20240818.NO.26.「鏡」
『鏡の国の……』
今日もいつもの日常が始まる。
職場と家の往復。
この生活に苦しみも幸せも特に感じはしない。
毎日を無心で過ごしている。
そんな俺にも趣味のようなものがある。
……いや、やっぱり訂正する。
趣味と言うよりたぶん習慣だ。
俺は毎晩古い鏡を見ながら晩酌をする。
なんとなく小さい頃からその鏡を夜にみている。
何か特別な思い出があるのかというと別にそうでもない。
記憶は曖昧だが、俺が小1になるかならないかのときに叔父にもらった。
叔父が言うことには、おまえは俺に似ているから という理由で俺にわたしてきた。
当時は意味がわからなかったし、今もその時叔父が言ってきた意味は謎のままだ。
その鏡が俺の役に立つのかはわからないが、この鏡を見ているとなぜだかほんの少しだけだが心の疲れがとれる。
最近は、少しはちゃんと使ってやるかなとか考えてる……。
おっと、もうこんな時間か……。
俺は明日も早いからここで終わらせておくか。
(部屋の電気を切る音)
部屋の中で月明かりで光る鏡。
鏡の周りに無数の光が散らばっている。
それが一体なんなのかはよくわからない。
ただ、とても綺麗な鏡の奥には何かがあることだけはわかる。
多分、〝俺〟はそれに気付くことはないだろう。
ただ、いつもと同じ日々を過ごすだけだ。
end
鏡を見ると
鏡の向こうに、世界が広がっているのではないかと想像してしまう。
虚像の自分が住まう、無数の平行世界──パラレルワールドが広がっているのではないかと。
パラレルワールドの世界では、様々なルートが存在している。
これから起こり得る未来だって、もしかしたらそこには存在しているのかもしれない。
だから、鏡の向こう側へ
「こちらのルートは、玉石混交なれど笑顔あり。小さな幸せに満ちているよ」
そう、微笑みながら報告する。
私の笑みにつられた鏡の向こうの私(虚像)が、笑みを返してくる。
パラレルを行く私の元にも、きっと笑顔が届いたのだろう。
パラレルの世界は、時空さえも軽やかに超える。
今が幸せであるならば、それは過去や未来、どこかしらで答えとして現れてくる。
ほら、
現に今だって──
ココでこうして貴方に出会えている。
この奇跡こそが、答えだ。
鏡
その人はとても綺麗な人だった。
顔の造作は決して派手ではないが、目鼻立ちがスッキリ整っていて、綺麗な人特有のキツさを卵型の輪郭が絶妙なバランスで緩和させていた。
手足がほっそりとしていてどこかお人形さんを思わせる風貌だ。
背はおそらく155cmに満たないくらい。
165cmの私に比べると若干目線の位置が下にくる。
肩下で揺れる黒髪が上品さを醸し出しつつ、口元にはいつも柔らかな笑みを讃えていた。
最初に断っておくがこの話自体大分昔のものである。
今回これを書くにあたり、私の頭の中の古ぼけた記憶を無理やり引っ張り出そうとしているせいで、どこにどう着地するのかすら分からない。
しかし、鏡というお題においては最適解だと思うのでこのまま話を進めていこうと思う。
その人とは、ほんの一時、とあるグループの中の一人として同じ時間を過ごしたに過ぎない。
期間にしておよそひと月足らずだったと思う。
別段付き合いらしい付き合いがあった訳でもなく、名前を名乗り合った記憶すらない。
しかし、こうして物語の題材となる程度には私の中で印象的な出来事として今も記憶に残っている。
仮にその人のことをUと呼ぶことにしよう。
Uとは、某運送会社の倉庫でお歳暮時期限定の仕分け作業のバイト仲間として出会った。
会社に指定された時間に指定された場所で待っていると、専用のバスがやってくる。
それにその他大勢の人たちと乗り込み30分ほど揺られると、海を埋め立てて作られた埠頭に建つ、巨大なコンクリートの建物群が現れる。
そこには何の飾り気もない灰色の箱がいくつも点在している。
無彩色の世界とでも言おうか。
そこはこの世の色という色が徹底的に排除された一種異様な世界だった。
一切無駄がなく、ただただ何かの目的を果たすためだけに作られた様々な箱たち。
余りに現実とはかけ離れたその光景に私は少し恐怖を覚えた。
そんな無機質な箱の一つが私の作業場だ。
年齢もはっきりとは覚えていないが、確かUの方が私よりも幾つか年上だったと思う。
訳あって、その頃の私は定職についておらず、割のいいバイトをいくつか掛け持ちして食い繋ぐような生活を送っていた。
法律にこそ触れないものの、人には言えないような際どい仕事をしていたこともある。
正直、暮らしぶりは余りまともではなかった。
別れたり戻ったりを繰り返すような彼氏とも呼べない男の後ろにくっ付いて、朝からパチンコ屋に出入りするような安っぽい女。
それが私だった。
当時の私はかなりの人見知りで、警戒心も強く、ぶっきらぼうなところがあった。
自分でも可愛くない女だったと思う。
一方、Uは私とは違い、穏やかで優しい雰囲気が全身から滲み出ているような女の子だった。
誰の目から見ても感じのいい子に映っていたことだろう。
倉庫の中は高低差のある巨大迷路の如くベルトコンベアが配置されていて、迷路の出口にあたる部分で待っていると、次々バラの包装紙に包まれた大小様々な箱が運ばれてくる。
私はその箱の一つ一つを手に取り、キャスターの付いた鉄製の大きなラックの中に収めていくのだ。
「重くて大きな物は下に、上にいくにつれ軽く小さいものになるように。」
担当の社員さんにはそう教わった。
最初こそ手間取って何度かレーンを停めてしまったものの、数をこなすうちに段々とコツが掴めてくる。
あの色々な形が上から落ちてくるゲームの要領でどんどん隙間を埋めていけばいいのだ。
一度だけ手を滑らせ、日本酒の一升瓶が二本入っている箱をベルトコンベアから落としてしまったことがある。
ガツンと鈍い音を立てて落ちたそれは、見る間に緑色の床に透明な水溜まりを作っていった。
とっさのこととは言え、よりによってなぜそんな大層な物を落としてしまったのだろうと悔やんだが、得てしてミスとはそういうものなのかもしれない。
保険に入っているから大丈夫とのことで特にお咎めもなかったが、やはり気分は晴れなかった。
しかし、失敗という失敗はそれくらいだった。
私の担当する練馬区関町北のラックは、見る見るうちにバラの包装紙で包まれた贈答品で埋め尽くされていった。
「あんた上手いわね。なかなか筋がいいわよ。」
時折見回りの社員さんに褒められるようになった。
「ありがとうございます。」
私は照れながらも礼を言った。
愛想こそ良くはないが仕事ぶりが評価され始め、一週間ほど経つとそれなりの人間関係を築けるようになっていた。
Uとは担当地域が違うため一緒に仕事をしたことはないが、私の三列先がUの担当地域だった。
「ほらほら、ちゃんと見ないと!まったくもー、何度言ったら分かるの!」
時折、Uのいる西大泉方面からそんな声が聞こえていた。
私は自分にはどうにも出来ないもどかしさを感じつつも、目の前の箱の処理に追われていた。
その日、何度目かの「ほらほら」の後だった。
ちらりとそちらの方向を見ると、Uが現場から走り去っていくのが見えた。
キュイーーーン
ガタンッ!!
金属が擦れたような嫌な音がして、西大泉のベルトコンベアがゆっくりと止まった。
Uの手によって緊急停止ボタンが押されたのだ。
Uと顔を合わせるのは基本的にお昼休憩の時だけだった。
倉庫内には広い食堂があり、何となく歳の近い女子4人ほどのグループでお昼を食べるのが通例になっていた。
しかし、私も含め、ここにいる人たちは皆寡黙で、自ら積極的にコミュニケーションを取ろうとする人はいなかった。
おそらく、その頃皆それぞれに事情を抱えていたのだろう。
私と他の二人がコンビニ袋を手に食堂に集まる中、Uだけはいつも手作りのお弁当を持参していた。
それは驚くほど小さなお弁当だった。
Uはその小さなお弁当箱の中からパール大のご飯粒を箸でつまみ口に運んだ。
それをゆっくり咀嚼し飲み下したあと、一旦箸を置く。
手元には小さな手鏡が置かれている。
慣れた手つきで左手で持つと、丹念に口元を確認し始めた。
何度も何度も角度を変えては口元を見ているようだ。
もちろん口元には何も付いていない。
今度は鏡を見ながら右手に持った白いハンカチで口元を拭い始めた。
これも右の端、左の端と繰り返し何度も何度も丁寧に拭っている。
パール大のご飯粒→咀嚼→手鏡→ハンカチ
これが食事の間中繰り返されるのだ。
私は初めてその光景を見た時ギョッとしてしまった。
しかし、Uにとってはそれは当たり前の行動なのだろう。
周りの目など一切気にしない様子で一連の流れをやってのけた。
最初こそ、歯の矯正中なのかな?と思ったりもしたがそうではなかった。
むしろ矯正ならどんなに良かったことだろう。
当然と言うべきか、あとの二人も私と同じような反応だった。
しかし、そのことを改めて話したことはない。
西大泉のベルトコンベアが度々止まるようになってから、Uの鏡での確認作業は一層激しくなっていった。
それからしばらくして、Uの姿が消えた。
お題
鏡
「これが…私?!」
我ながら月並みで、捻りのない言葉が漏れた。
これで鏡を覗く場所が、学校の同級生の持つ手鏡か、おしゃれな三面鏡か、美容室の一角だったなら、素敵なワンシーンであったろう。
だが、私が居るのは水垢の香りが漂う、狭い洗面所の、曇った鏡の前である。
ところどころがひび割れた鏡は、それでも、ここの所の生活では、貴重な道具だ。
数週間前に、この建物は崩壊した。
私の職場であったこのエネルギー生成施設は、たった一つのヒューマンエラーによって、冷却機能を失い、一夜にして崩壊し、閉鎖された。
原料を覆う炉の金属は溶け、生物はじわじわと焼け腐り、植物は吸い上げた土から枯れていった…らしい。
この数日間で、施設の至る所を調査しまわった結果、そういう推測ができた。
そう、実は私はこの一部始終を全く知らなかったのだ。
もう何日目かも分からない連勤の果て、疲れを癒すためにちょっと睡眠をとったら、いつの間にか施設が変わり果てていたのだ。
…どうやら、自分が思った以上に、この身体と脳には疲れが溜まっていたらしい。
途方に暮れた私は、とりあえず自身の好奇心に則り、辺りを調査して把握し、この施設が清潔で安全な地獄から、汚染された危険な地獄へと変貌したということを理解した…ところで、ようやく自分の健康状態の異常に気づいた。
といっても、何か問題があるわけではない。
健康すぎるのだ。
私の記憶と計算が正しければ、こんな所に取り残されたなら、生きながらに細胞が死滅して、今頃死んだ方がマシなほどの苦痛を味わっているはずなのに。
気づけば、数日間水も食料も取らずに歩き回っておきながら、身体の汚染や不調はおろか、空腹や喉の渇きすら感じない。
遅ればせながら、私の身体は一体どうしてしまったのだろう、と鏡を探し当てて覗き込んだ結果が、あのベタベタな独り言である。
だが、この見た目は…
我が身体ながら見れたものではない。
鏡の中の私は、四肢の先ばかりが肥大化し、痩せばった腕脚に関節ばかりが球体のように目立つ。
おまけに、ボコボコと水膨れた腫瘍のような突起がズラリと並んでいた。
顔はもっと見られない。
落ち窪んだ目に鳥類のソレに似た、瞬膜のような厚ぼったい膜が張られており。
口や鼻は見当たらなかった。
耳だけが異様に大きく目立つ。
一体どうしたことだろう。
この施設の研究者一の美人(自称)と謳われたこの私の美貌が見る影もないではないか!
しかし、この変化は興味深い。
失った代償は大きいものの、この変異が私の命を守り、超耐性を授けてくれた秘訣であろうから。
これは研究課題ができた。
救助はもはや期待できまい。
この施設に人間や機械や生き物が侵入するのはもはや行きすぎた自殺行為だし、何よりヒトに会えたとて、この見た目では駆除されるのがオチだ。
つまり時間はたっぷりある。
ならば、やる事は決まりだ。
実験と研究を繰り返す!この変異を必ずや解き明かす!
肥大化した爪で床にメモを取る。
高音で表面が柔らかく変異したコンクリートは、難なく数式と文字を刻印してみせた。
素晴らしい!あとで推敲してから冷やし固めよう。
冷却システムを修正し、冷却水を供給すれば、書いた文字の保存も可能だ。
私は這いつくばって、メモを書き始めた。
鏡だけが、怪物となった私を映し出していた。
鏡に映る顔に浮かぶ疲れを覆うように笑顔を塗りたくって今日もやり過ごす。疲れた顔しか映さない鏡にもう少しマシな顔が映せる人生だったらよかったのに。
作品No.140【2024/08/18 テーマ:鏡】
鏡を見るのが嫌いだった。
すきじゃない自分の顔と向き合うことになるから。
目と目が合ってしまうから。
鏡の中の自分
鏡だったら私は逆になるし
少しは今より楽になれるかな、?笑
【鏡】
自分の事を客観視するのって難しい
出来てるつもりで出来てない事も多い
都合よく捉える事もあれば
悲観的に捉える事もある
感情に影響されない所はわりと見えても
感情の強い所に行くとブレブレだ
人の事はまだマシかと思いきや
やはり感情の乗る相手だとブレる
自分がどう見えてるか
自分の背中がどうなってるのか
自分の耳はどんな形なのか
首元のホクロは何個あるのか
自分だけでは分からない
人は自分を映す鏡
聞いた事のある言葉
若い頃にはケッと思ってたけれど
確かになぁ
と思えるようになった今日この頃
誤解や勘違い
伝わらなかった事も含めて
そうなんだと思う
鏡に映った自分から目を逸らさず
受け入れてようやく
ダイエットの意思も湧いてきた
まだまだ自分を正しく見るのは難しいけれど
自分が誰かの鏡になる時は
真っ直ぐに映せる鏡でありたいと思う
【鏡】
暗闇の中、誰か誰かと歌うのに
動き出すことも出来ずにいる様は
僕そのものなのに
たった一枚の壁がきみと僕を遮って
ここに居ると歌うきみに
こちらから応えを届ける術もない
決して触れられないのに
等身大の僕を見つけて写しだして
そのままで居て良いと優しく包み込んでくれるきみへ
まるで鏡合わせのきみへ
映す背景が変わっても
人の想いを背負わされるきみへ
あの時のままで変わらなくても良いと歌う歌を
どうかあの時の系譜の歌を混ぜ込ませて
2024-08-18
鏡は
私を映しているようで
私ではない何かを映している
ずっと見ていると
そこにいるのは
不気味な自分だった何かである。
鏡
鏡は今の自分がうつる。
今の状況がわかる。
恐ろしいものだ。
「鏡」#9
朝になる。今日も独りぼっちの朝。鏡を覗く。いつも通り、手入れの行き届いていない艶を失った髪、寝不足からくる濃い隈、なんでも我慢するせいでついた唇の噛み跡がある酷い顔が映る。さあ、今日はこの酷い顔をどう繕おうか。汚れた小さな鏡の前で今日も引き攣った歪な笑顔を作った。
電気がとまった
暗い六畳半
今感じているこの気持ちは
一人暮らし故の胸の高鳴りか
あるいは
目まぐるしい日々と
怠慢を感じるこの暗さ
鏡にうつる自分
なんて哀れだろうと
こぼれる寂しさはとめどなく
私を嫌にさせただろう
だから今日は
鏡と違うことをしてみたい
今日という夜を生きてみたい
手鏡を持ち歩く彼女
「この世界は自分の心を映し出す鏡」
彼女がいった。
その通りだ。
心が汚れてると薄暗い世界。
心がキレイだと色鮮やかな世界。
心によって世界は天国にも地獄にも視える。
.......私の世界は、壊れてしまった。
彼女が、彼女こそが私の全て、私の『世界』だったのだろう。
何故気がつかなかったのか。
ずっと傍にいたから?
居ることが当たり前だったから?
もういいか。
そんな理由は。
考えても変わらない。
この事実も変わらない。
世界だって変わらない。
何一つ変わらないのに。
どうしてこんなに自分の目に映る世界だけが変わってしまったのか。
ほんの数秒前まではいつも通りだったのに。
目の前には黒と白のしましまのもようの上にある、真っ赤な鮮血。
その中に彼女の割れた手鏡があった。
鏡
〝鏡〟
最近、友達がよそよそしい気がする。あたし何か気にさわること言っちゃったのかな。でも言って何でもなかったら、ウザいって思われたりしない?
「はぁ……あっ?!」
トイレに行きたくなって入ってみたら、同じクラスの男子が1人。
「何してんの。女子トイレだよ?」
「まだ入ってはないでしょ。手洗い場とも言えるスペースだ。こういった部分は男子トイレにもある」
足元はすのこで、左右に鏡……合わせ鏡みたくなってて、それに関する怖い話があるらしい。
それらを通過したら、扉があって、個室のトイレに繋がっている。だからまぁ、悪さするにも人の視線があるわけで、心理的なハードルがあるからか、小学六年間ずっと困ることはなかった。
扉が、男子と女子とで色分けされているから、手を洗うだけにしても自然と男女分かれて使用するのが日常茶飯事だったりする。
「泣いてたの?」
「どうして?」
「目、赤いから」
「別に。あたしがトイレから出てくるまでには、どっか行っといてよね」
けど、向こうはまだ居た。
「何で居るの」
「女子トイレのは、合わせ鏡なんだなぁと思って」
「男子トイレも同じだって、言ってなかった?」
「こっちのは鏡はあっても合わせにはならないんだよ。身だしなみを整えたりもするから、そういった意味で差別化してるのかな」
ていうか、調べてる風なのは何で?
「誰もいなくても、鏡を見たら人は良い表情をしようとする。何でだろうね」
「そうかな。家だったら見るけど、あたしは外では見ないかな」
「へぇ〜。じゃあその距離感を、人にもしてるってわけだ」
「何を言いたいの?」
「友達と喧嘩ではないよね。聞く限りでは、自然消滅?」
何も言ってないはずなのに、当たってるのはどうして。
「あー……図星だった? ごめん」
「クラス離れて、同じアプリも入れて遊んでたけど、段々と飽きてきて話題がなくなったんだよね。気にさわることを言った覚えはないから、喧嘩じゃないとは思うんだけど……接点が急に無くなったから、なんかつまらないなぁって」
そう言い出したら、涙が溢れてきて、流れそうになる。
「別にいいんじゃない? 誰かに良い顔をしたくなるものだし、気を遣いすぎるなんて面倒だし、疎遠だと気づいて急に寂しくもなる」
「なんか、大人だね。あたしが知らないだけか」
泣き笑いにみせて、涙を拭う。
「似てる部分があったから、言ってみた。ほんとうに図星なんだな、なんかごめん」
同じクラスだったのに、本ばっか読んでて変な人の扱いをされていた男子と過ごした放課後。
中学、高校と同じ学校になって、一応スマホで連絡も取れる。周囲がみたら仲が良いんだと思う。友達かと聞かれたら悩む。でもね、気を遣いすぎる相手じゃないんだ。
鏡
普段 生活しているなかで
身の回りに大切なものはたくさん
あって中でも鏡は上位の方なくらい
必要なものとなっています。
毎日のメイクや髪のセットは
鏡があるからこそ、確認できて
ととのえられているので
これからも普段できてることを
大切に思いながら過ごしていきたいと
思います。