手鏡を持ち歩く彼女
「この世界は自分の心を映し出す鏡」
彼女がいった。
その通りだ。
心が汚れてると薄暗い世界。
心がキレイだと色鮮やかな世界。
心によって世界は天国にも地獄にも視える。
.......私の世界は、壊れてしまった。
彼女が、彼女こそが私の全て、私の『世界』だったのだろう。
何故気がつかなかったのか。
ずっと傍にいたから?
居ることが当たり前だったから?
もういいか。
そんな理由は。
考えても変わらない。
この事実も変わらない。
世界だって変わらない。
何一つ変わらないのに。
どうしてこんなに自分の目に映る世界だけが変わってしまったのか。
ほんの数秒前まではいつも通りだったのに。
目の前には黒と白のしましまのもようの上にある、真っ赤な鮮血。
その中に彼女の割れた手鏡があった。
鏡
8/18/2024, 1:47:07 PM