『鏡の中の自分』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
子どもの頃、家には鏡台があった。母の花嫁道具であるその鏡台は、扉開きの三面鏡だった。私はその鏡台を覗き込んで遊ぶのが好きだった。左右の鏡の角度を変えるとどこまでも自分の顔が映る。普段は目にしない自分の横顔や頭の後ろをみることができる。
ある日、ひとりだけ私と違う動きをしている子を見つけた。
鏡を覗く度に違う場所に移動している。どこにいるのかは毎回違う。それを見つけるのが楽しかった。
私はその鏡の中の自分に「かがみちゃん」という名前をつけた。
かがみちゃんを見つけて何度目かのある時、かがみちゃんと目が合った気がした。その次の時、かがみちゃんが私に話しかけてきた。
「あなたは鏡の前にいない時、どこにいるの?」
「幼稚園に行ったり、公園にいったりするのよ」と私は答えた。
かがみちゃんはずっと鏡の中の世界にいて、そこからいろんな人を見ている。だけど、それ以外の事はわからないし、鏡の前から人がいなくなるととても寂しくなるのだと言っていた。
それから私は毎日鏡を覗きかがみちゃんにその日の出来事を話した。幼稚園で遊んだ事。お兄ちゃんとケンカした事。私は悪くないのに怒られた事。
かがみちゃんはいつも表情豊かに笑ったり、驚いたり、時には一緒に怒ったりしてくれた。
友達の少なかった私にとって、かがみちゃんは一番の親友だった。
小学校に入ると外に友達もでき、かがみちゃんと話すことが少なくなっていった。たまに暇になるとかがみちゃんと話にいった。かがみちゃんは他に映る自分より少し幼い気がしていた。それでも私の話す友達の話や学校の話を楽しそうに聞いてくれた。
5年生になった頃、私は学校で除け者にされた。いじめというほどではないが、仲良しグループのみんなから遊びに誘われなくなったり、無視をされたりした。理由もわからず、悲しさと悔しさでいっぱいだった。かがみちゃんの前で泣いて、全て吐き出した。かがみちゃんに全て話すと気持ちが少し軽くなり、なんとか毎日学校に通えていた。学校での除け者扱いも時間とともになくなり、またかがみちゃんと話す機会が減っていった。
中学に上がるのを機に我が家は引っ越しをした。母は鏡台を処分することにした。私はかがみちゃんの事が心配になったが、母に話すことはできなかった。
鏡台を覗いてもかがみちゃんが現れる事が少なくなっていた。引っ越しの前日、久しぶりに現れたかがみちゃんに鏡台が処分される事を話した。
「大丈夫だよ、鏡の中の世界はつながっていて、どこの鏡にでも行けるから」とかがみちゃんは言った。それでもいつでも会えるわけではなくなる。それはわかっていた。私はかがみちゃんの前で泣いた。これまでのお礼をたくさん伝えた。
あれから数十年経った。昨日、美容室で髪を切ってもらった。最後に合わせ鏡で後ろ姿を見せてもらった。何番目かに映った私はとても幼くこちらを向いて笑っていた。私が小さく手を振ると、同じく小さく手を振り返してくれた。
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お題:鏡の中の自分
暗闇の中、幼い泣き声が響く。
部屋の奥に置かれた姿見の前で、鏡に寄り添い幼い少女が泣いている。よく見れば少女の手や頬には刃物で斬られたような一筋の線が走り、手や頬を赤に染めていた。
鏡に映る少女の姿はさらに傷だらけだ。指はいくつかなく、頬の傷は耳にまで達している。
はらはらと涙を溢して少女はしゃくり上げる。鏡越しの自分と手を重ね、その傷を痛みを共有するように新たな赤が溢れ落ちる。
「おちび」
いつの間にか、少女の背後に立つ人影が声をかける。
少女よりは大きく、けれども大人というにはまだ幼さが抜け切れていない。低めではあるが、女性特有の柔らかな声音に、鏡に寄り添う少女だけが振り返る。
「あるじさま」
「ごめんなさい、あるじさま」
鏡の前の少女と、鏡に映る少女が口々に人影に向かい謝罪する。それには言葉を返す事なく、人影は少女の側に寄ると、傷だらけの手を取り頬に触れた。
「また派手にやったね。でも全部ただのかすり傷だ。こうして触れば傷跡一つ残らないよ」
触れる指先が傷をゆっくりとなぞり上げる。触れる痛みに少女の眉が寄るがそれも一瞬。手が離れれば、そこに残るものは何もなく。
「ほら大丈夫。おいで、次はキミの番だ」
鏡に向けて手を伸ばす。その手に鏡の中の少女が手を重ねれば、人影は鏡に手を沈め少女の手を掴み引いた。ずるり、と鏡から出た少女に笑いかけ、人影は先ほどしたように頬と手に触れた。
「いくつかなくなっている気もするけど、気のせいだよ。全部かすり傷。触って離れたら元通りさ」
その言葉の通り、頬から耳にかけての傷は人影の指がなぞり上げた側から消えてなくなり。欠けた指も頬の傷から離れた手と触れていた手に包まれて。その両の手が離れた時には欠けていた事などなかったように、小さな五本の指が離れた手を追いかけて、服の裾を控えめに掴んだ。
「ありがとう、あるじさま」
「でも、ごめんなさい」
「永遠の呪いをほどく事が出来なかったわ」
「紐が切られてしまったわ」
「仕方がないよ。相手が悪い」
二人となった少女を宥めながら、鏡を見る。
そこに少女達の姿はおろか、人影の姿さえ映ってはいなかった。
鏡の縁に触れる。見つめた所で、そこには誰の姿もない。
「まだ戻っていないのね」
「あれからずっと戻ってないのね」
「大丈夫かしら」
「迎えに行った方がいいかしら」
「心配だわ。何もないといいのだけれど」
「怪我をして動けなくなっていないといいのだけれど」
「こら。不用意に言葉を紡がない」
窘めれば、不安を口にしていた少女達が、ごめんなさい、と口々に謝罪する。
まったく、と声に呆れを乗せた人影は、それでも鏡から視線を逸らす事はなかった。
それは鏡を通して何かを見ているようでもあり。何かを待っているようでもあった。
不意に、鏡が水面のように揺らめいた。
波打つ鏡面が次第に明るいどこかを映し出す。
室内ではなく、外のようだ。木と花と古めかしい屋敷。
べん、と弦の音。屋敷の濡れ縁で誰かが、三味線を。
ぴしり、とひび割れる音。
明るさが消え、一歩下がったその瞬間に、鏡が粉々に砕け散る。
きゃあ、と悲鳴が上がる。慌てふためく少女達に、大丈夫、と声をかけながら、人影は砕けた鏡の破片を見つめていた。
「師匠。なんかすっごい音したけど、どした?」
「何でもないよ。鏡が割れただけ」
「鏡が割れたって、それ結構大変じゃん」
「危ない。割れるの、触るのは駄目」
鏡が割れた音を聞きつけたのだろう。扉が開き、手を繋いだ少年達が入ってくる。
一人は割れた鏡の破片に顔を顰めながら、少女達をその場から離し、もう一人は人影の手を控えめに引いた。
「大丈夫だよ。鏡は割れるものだ。それでいて、流動するものでもあるからね。一晩経てば元通りになるよ」
人影の言葉に、鏡の破片がかたり、と音を立てた。
かたり、かたりという硬い音は、次第にぴしゃり、ぱしゃん、と液体のような音に変わり。音を立てながら破片は一つに纏まって、鏡の中に吸い込まれていく。
「相変わらず、師匠はすげぇよな」
「当然よ。あるじさまだもの」
「あるじさまは素敵ですごいのよ」
鏡が修復されていく様に思わず吐いて出た少年の言葉に、少女達が自分の事のように胸を張る。それをはいはい、と適当に流しながら、少年はそのあどけない姿には似つかわしくない強く鋭い眼をして、人影に笑いかけた。
「で?どうする、師匠。ちびすけが失敗した呪いを解きにまた行くなら、今度は一緒に行ってやってもいいぜ」
「いや、いいよ。必要ないって言われたなら、これ以上は手を出せない」
約束だから、と呟けば、約束か、と冷めた声が返る。
くすり、と笑う声。
「しばらくは様子見かな。こちらから積極的に動く必要はないし、まだ全部が未確定だ。あちら次第ではあるけれど、ごっこ遊びばもう少し続けられそうだよ」
人影の言葉に、それぞれが笑い頷く。
愉しそうに、互いに寄り添い嬉しそうに、幸せそうに。
口元だけで笑みを浮かべた少年が、引いていたままだった人影手と手を繋ぎなおす。
もう一人の少年は、そんな少年の空いていた手と繋ぎ嗤う。
同じ顔した少女達は互いに手を繋いだまま、きゃらきゃらと笑い人影に抱きついた。
「相変わらず、甘えただね。ちびたちは」
「あるじさまが大好きだもの」
「あるじさまと一緒が嬉しいもの」
「師匠と姉弟ごっこするのは結構愉しいぜ」
「おねえちゃん、呼ぶのは、好きかも」
「本当に物好きだね」
呆れを乗せた声は、それでもどこか優しさを含み。
少年少女達に促されるままに部屋を出る。
誰もいなくなり、静かになった部屋の奥。
割れたはずの鏡が、水面のように波紋を一つ音もなく起こした。
20241104 『鏡の中の自分』
「鏡の中の自分」
遅刻だー!!!∑︎ (╯︎•ω•╰︎)
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
ちょっとの間仕事場を開けていただけなのに、どうやらその一瞬の間に色々なひとに呼ばれていたみたいだ。「とにかく急ごう!」その一心でボクと◇◇◇は本部に戻った。
「少々準備にかかりそうだから、ゆっくり待っていてよ。」
ボクは彼にそう言って奥に引っ込んだ。
はぁ。最近は色々ありすぎて疲れたよ。
だが、ボクは元気のいいところがチャームポイントの公認宇宙管理士「マッドサイエンティスト」。
だから「いつも通り」元気でいないと。
そう言い聞かせて鏡を見る。
……うん、バッチリだ。
鏡の中のボクは、いつも通り元気だった。
はぁ……ボクはすっかり自分の感情に蓋をするのが得意になってしまったようだ。
こんなふうになったのは、いつからだろうね?
誰も悪くない。何も悪くない。
ただボクが疲れているだけだ。
もう少しだけ、あと少しだけ頑張らないと。
これできっと、一段落つく。
ほっとしたら、いつものようにお菓子を食べるんだ!
そう信じて、ボクは笑顔で奥の部屋を出た。
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
そして、構造色の少年の名前と正体が分かったよ。なんと彼は、父が考えた「理想の宇宙管理士」の概念だった。概念を作った本人が亡くなったことと、ボク以外の生きた存在に知られていないことで、彼の性質が不安定だった原因も分かった。
ボクが概念を立派なものに書き換えることで、おそらく彼は長生きするだろうということだ。というわけで、ボクも立派に成長を続けるぞ!
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#79 鏡の中の自分
[鏡は私の映しかがみ]
鏡に映る私を観る。
他人のために考えている最中は、
とても良い表情になる。
逆に、自分のことだけを考えている最中は、
顔色が曇っている。
鏡に映る私が、
今の私の状態を知らせてくれる。
だから、私は鏡の中の自分を観る。
『粧』
いつものバイト先に出かけるために私は化粧をする。
鏡に映る自分は今日も汚れている。化粧は私にとって、汚れた私を綺麗に見せるための作業だった。自分を隠す手段でもある。私は“美麗”。私は“美麗”
「ふぁ~、美麗おはよぉ〜。」
[玲奈おはよ。今日早いね。]
「うん。今日ね、ソラくんとのアフターなんだぁ!」
[そっか。楽しんできてね。]
「美麗もバイト頑張ってね!」
玲奈と住み始めてからおよそ半年。お互いに苗字も知らない。それがお互い心地ちょうど良かった。
玲奈は世に言うホス狂というものらしい。
1人の男性とご飯に行くために。派手な装飾の着いたシャンパンボトルを開けるために。一体、何枚のお札が飛んでいくのだろうか。
私には玲奈が“ソラくん”にすがっているようにしか見えなかった。でも、それが羨ましい気もする。
ドアの前で自分の顔を確認する。バイトはどんな格好で行ってもいいので気が楽だ。
大丈夫。言い聞かせるように頭の中で唱える。
「行ってきます。」
本当の私を知る者は誰もいない。隠し通してやる。
覚悟を決めて私はドアノブを捻る
誰も知らない、おねぇちゃんのために。
【鏡の中の自分】
「出来たよ」
その一言に目を開け、鏡を見る。そこには自分とは思えない顔が映っていた。粧って化ける、故に。
「魔法使い」は「魔女」生まれ変わる。強さを示すため、弱さを隠すため、あるいは決意の表れ。
行く先は険しいものだ。それでも、茨の道を突き進み、真の強さを掴み取らねば。
『決別』
鏡の中の自分
私はたまに発作を起こしてしまう。前触れもなく、いつ発症するのかも分からない。ただ、決まってそれは鏡で自分の顔を見たときに起こる。
洗面台やお風呂の鏡に映る顔。ガラスや液晶に反射して見える顔。自分の顔を見る機会なんて無数にあるのに本当に困ったものだ。
1日の終わり、歯磨きをしながら何気なく正面の鏡を見ると、口を開けた間抜け面の私が映っていた。
途端、嫌悪感と気持ち悪さが襲ってきた。胃の辺りがムカムカして、吐き気に似た何かに反射的にえずいてしまう。頭の中では「キモい」の言葉が何度も繰り返される。
タイミングが悪いなと、私は歯磨きを早々に終わらせると鏡に自分の顔を近づけ、映る自分の顔をギョロギョロと見回した。
「私はこんな顔じゃない」
知らない誰かが鏡の向こう側で自分の真似をしているような。試しに言葉を発してみるも、当然のように向こうも同じ口の動きをしてくる。
目の前にいるのは自分だと分かっているはずなのに、脳が理解をしてくれないことにますます気分が悪くなる。
だけど、この発作の解消方法はすでに知っている。
急いでリビングに戻るとスマホを手に取り、カメラアプリを起動。インカメで自撮りをしたあとにその写真を加工する。
つまりは自分の顔を思いのまま、イメージの通りに上書きをしてやればいい。
AIでお手軽加工なんてものもあるが、こういうのは細部へのこだわりが大事なのだ。
輪郭から始まり目や鼻と、それぞれにこれでもかと手を加えていく。形を整え終わったら最後にメイクアップをして完成だ。
「そうそう、こんな感じ」
出来上がった写真を見てうなづいていると、いつの間にか発作が落ち着いていることに気づいた。
自分顔写真を加工し始めるといつも気分が“ノって”、嫌なことでもすぐに忘れられる。これだからやめられない。
私は作品の出来に満足してスマホをテーブルの上に置いた。
「あ、コンタクトはずしてないや」
歯磨きの途中で抜け出したことを思い出し、私は再び洗面台へと足を向けた。
ひと気が無くなったリビング。テーブルの上に置かれ、いまにも消えるだろうスマホの画面の中で、怪物が笑っていた。
『鏡の中の自分』
鏡の中の自分をみると、老いているなと感じられる。
そういえば、鏡を見てからじゃないと「老い」ってやつを感じないかもしれない。
鏡から連想していって、そういえばあの場面では、みたいに追想が始まる。
という時間があればいいんですが。
鏡の中の自分と認識する暇もなく、さっと見て、さっと家を出る。
鏡は本当のわたしを映すから嫌いだ。
鏡の前では嘘をつけない。
なんでもお見通し。なんでも知っている。
鏡を前に、わたしは素直にならきゃいけない…
“鏡の中の自分”
夏場はシュッと減っこんでたのに、涼しくなってきたら途端に舞い戻ってきたな。
腹の肉。
プヨンと波打つヘソ周りをペチペチ叩いて、どうにか引き締まらないかと試してみたが無駄な足掻き。
それもこれも、ご飯が美味しすぎるからだよ。
キッチンの方にに向かってそう叫べば「量、減らそうか?」と引き戸から顔を覗かせた君が菩薩のような笑みを浮かべながら言う。
それはダメ!と勢い良く首を横に振って否定すれば、君はクスクスと笑いながら顔を引っ込めた。
テーマ「鏡の中の自分」
鏡の中の自分
ナーバスなので気分が晴れたら書きます。
#1_鏡の中の自分_
幼い頃、貴方と見る鏡が好きだったんだ。
貴方が帰って来なくなってしまった。
もういないと分かってしまった。
自分が受け入れられなくて、嫌いになって。
それから、鏡を見るのも嫌いになっていたんだ。
鏡が怖くて、怯えて、苦しくて。
『貴方が帰って来たら又一緒に。』
2024/11/04
鏡の中の自分
自分でも危なっかしいよ。
相手を理解したい。
相手の理解者でいたい。
その気持ちはきっと誰にも負けない。
友達がリスカしてしまったと
苦しんでいたとき。私はリスカしてしまう
苦しみを理解するために、一瞬の躊躇いも
なくリスカをした。
親にバレたくない。
執着してやめられない。
そんな気持ち、理解できた。
それで、相手は満たされた。
でも一番満たされたのは私。
私は皆の鏡人形。
あなたと一緒。私は貴方の理解者だよ。
いじめられた?なら、私もいじめて貰うよ。
みんなに嫌われたって、なんともないよ。
死にたい?なら、私も死ぬよ。
死にたい気持ちも死ぬ未来も全部一緒。
相手に合わせないと。
そんなこと、思わなくていいよ。私が全部全部
合わせるから。そうすると私も満たされる。
だって、一番嫌われない方法だもの。
鏡の中の自分は、貴方たちのモノよ――
顔を洗って、髭剃って。
髪型もビシッと整えて。
鏡から一歩引いて、襟元から背伸びして腰周りまで、着こなしの方にも気を配る。
うーん。お気に入りの紺のシャツを出してきたけれど、もっとラフな服の方が良かったか?
普段家で着てる服なんて気の抜けたものばかりだから、いざ来客があるとなると何を着れば良いか分からなくなる。
自宅で自分のテリトリーな訳だし、よそ行きのような気張った服を着ても張り切り過ぎだろうしな。あ~もう分かんねえよ!
「親父、いつまでそこで唸ってるんだよ」
洗面所の鏡の前で思案を重ねていれば、廊下から見ていた息子が呆れてため息を吐いた。
「もうその格好で良いじゃんか。お客って言ったって俺の友達なんだし。普通で良いよ、普通で!」
「だ、だってよ~」
背中を押して、俺を鏡の前から引き剥がそうとする息子に食い下がる。
息子は簡単に言ってくれるが、滅多に同級生を家に呼んだことがなかった息子がだぞ。
そんな子が日曜日の朝、まだぼうっとしているところへ急に、「あ。今日、友達家に来るから」なんて言い出したら、びっくりするに決まっている。
しかもだ。説明を面倒臭がる息子から、どんな子が来るのか少しずつ聞き出してみれば、学年トップの優等生。皆に王子だなんて呼ばれているイケメン君と言うじゃないか!
ずっと帰宅部だった息子が女の子ばかりの料理部に入ったときも驚いたが、いつの間にそんな交友関係が広がっていたのだろう。
親子のコミュニケーションは結構取れている方だと思っていたのに、まだまだ知らないことってあるんだな。心臓に悪いよ。
そういう訳で。こうしちゃいられない、と。
落ち着けと止めにかかる息子の制止を振り切って、一から身支度し直しているところなのだが。
ああ。こんなことになるなら、この前見付けたセール品。迷わずに買って、ルームウェアを新調しておけば良かったよ。惜しいことをした。
ああでもない、こうでもない、と。
洗面所で独り、ファッションショーよろしくずっと悩み続けていたのだが、後ろで見守っていた息子が遂にしびれを切らしたようだ。
「ああもう! そんな気張んなくて良いんだってば!」
しつこく髪型を整え続ける俺を見かねてか、息子が力技で俺を洗面所から追い出した。
「家に来るって言ったって、勉強と料理の特訓に来るだけだから。 親父は普段通りにしてて良いの! 余計なこと、絶対すんなよ!」
釘を刺すように指差して、息子は鼻息荒くキッチンへと消えていく。
廊下に残された俺は納得がいかない。
「え~。普段通りって、言ってもねえ」
おまえが友達を呼ぶってだけで、それがもうイレギュラーなんだけど。
お祭りのように浮かれてしまうことくらい、許してほしい。
諦め悪く、再び鏡でコーディネートを確認する。
「これで本当に大丈夫かねえ」
鏡の中の自分も、俺に相槌を打つかのように困り顔だ。
まあ、良いか。
これ以上の服も今日は揃えられないし。
このままお友達に会うとしよう。
通称、王子くん、かあ。
どんな子なのか、今から会うのがとっても楽しみだ。
そうして大人しく待った一時間後。
礼儀正しく訪れた、件の王子くんのイケメンぶりに、度肝を抜かれることになったのだ。
ああ、まったく。何が普段通りで大丈夫、だ。
着替えておいて本当に良かったよ!
息子よ。今度からは、大事なことは早めに教えておいてくれよ。頼むから!
(2024/11/03 title:064 鏡の中の自分)
毛穴ひとつない美しい肌。
目は強気なカラーで丁寧に彩って。
アイラインは目尻を少し跳ね上げる。
淡い桃色のチーク。
ハイライトは適度に自然に。
完璧な保湿のおかげでふわふわの唇にとっておきの赤を乗せる。
何度か唇を擦り合わせて最終調整を。
そうして鏡を覗き込み、惚れ惚れする。
「あぁ…すごくキレイだよ、姉さん」
鏡の中の姉さんが、蕾を咲かせた花のように柔らかく微笑む。
ありがとう。本当に自慢の弟ね。
口が動いて、これ以上ない褒め言葉をくれた。
「そろそろ時間だから、行かなくちゃ」
気をつけて。急いでいると危ないから。
「大丈夫だよ姉さん。僕はちゃんとやれるから」
そう、それは楽しみね。
僕の姉さんは、わらっている時が一番美しい。
【鏡の中の自分】
鏡の中の私は、笑っていた。
鏡のこちら側で泣いている私を嘲笑うように。
人を下に見ることでしか優位に立てない可哀想な笑み。
しばらく見つめていると、ゆっくり唇が動く。
"消えちゃえばいいのに"
鏡の中の私は、泣いていた。
鏡のこちら側で笑っている私を憐れむように。
悲劇のヒロインぶっただけの涙。
気持ち悪い視線を向けてくるから、口パクで伝える。
"消えちゃえばいいのに"
「消えちゃえばいいのに。私なんか」
fin.
鏡の前に立つ
今、どんな顔をしているか見るために
鏡に映る私をふと見る
そこには、感情がないかのような顔が映っていた
鏡に映っているのは自分なのは変わりない
けど、明らかに疲れているのがわかる
頑張って笑顔を作る
だけど、向こうの自分は、それを否定しているみたい
鏡の中の自分は、何を思って私を見ているの?
《鏡の中の自分》
保全させていただきます。
いつも読んでいいねを下さっている皆様にはいつも本当に感謝しております。
この場をお借りして、御礼を申し上げます。ありがとうございます。
最近は書けておらず、本当に申し訳ありません。
落ち着いたらまた書いていきたいと思います。
その時は、どうぞよろしくお願いします。
テーマ鏡の中の自分
鏡の中の自分と向き合う
笑顔でいられているか
話しすぎていないか
欲を出しすぎてないか
自分を律していくのは
難しい
むかしむかし、とある王国で、お妃様が魔法の鏡を手にしました。
その新しい鏡を自室に持ち込んだお妃様は、そこに映った自分自身を熱心に見つめながら、うっとりと呟きます。
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは私ね」
すると、それを受けて鏡が答えました。
[いいえ、貴女ではございません]
その鏡の言葉に、お妃様はとてもとても衝撃を受けました。
よろよろと数歩後退り、見開いた目で数秒鏡を凝視した後、ひとこと。
「…………え、今誰か喋った?」
思わず漏れた彼女の言葉に、今度は鏡が沈黙する番でした。
実はお妃様に、目の前の鏡が魔法の鏡であることは、一切知らされておりません。単に今朝がた愛用していた鏡を割ってしまい、その代わりにと用意された鏡がとってもお妃様好みの装飾だったため、上機嫌だっただけなのです。お妃様にしてみれば、おニューの鏡にいつも通り呟いたお決まりの独り言が、全く知らない人の声に突如として遮られただけ。とんでもないホラー展開でした。
不審者でも居るの……? とびくびくしながらお妃様は室内を見渡します。けれど人の気配はありません。鏡に向かって自画自賛するのがすっかり日課になっているお妃様は、恥ずかしがって普段から部屋には誰も入れませんから、当然と言えば当然です。
そうこうしているうちに、ふとお妃様は、鏡の異変に気が付きました。そこにはいつの間にか、お妃様ではなく不気味な仮面が映っていたのです。
ばっと後ろを振り向いても、当然のごとくそこには何もありません。鏡の中にだけ現れる仮面に、なにこれ怖、と思っていたお妃様は、ふと思い至りました。
「もしかして、呪いの鏡……?」
そんな話を聞いたことがあります。まるで現実味のないおとぎ話の類いでしたが、お妃様には目の前の鏡がそれに見えてどうしようもありません。
しばらく考え込んでいたお妃様はやがてふうとため息をつきました。
「やむを得ないわね、割ってしまいましょう」
[お待ちください!]
しかし、そんなことをされてはたまったものではないのが魔法の鏡。かねてより『聞かれたことに真実を返す』『聞かれていないことには答えない』を信条としていた鏡ですが、そんなものを律儀に守って壊されてはたまりません。今までの沈黙もなんのその。鏡はそれはそれは饒舌に自身のことを語りだしました。
自分が魔法の鏡であること。真実を語るものであること。先程はお妃様が自分に語りかけたがために返事をしたこと。
初めは驚きながらも、素直に鏡の言い分に耳を傾けていたお妃様でしたが。
[ですから、一番美しいのは貴女ではございません! 白雪姫です!]
突如として飛び出したデリカシーの欠けらも無い発言に、お妃様はノータイムでぶちギレてしまいました。
「あなたはいったい何様なのかしら」
鏡はいきなり声が低くなったお妃様に動揺しますが、そんなもので止まるお妃様ではありません。
「おあいにくだけれど。私は私の思い描く、最高の美をこの身に体現するだけなのよ。外野の評価など知ったことではないのだわ」
[し、しかし、客観的な意見を申しますと──]
「分かっていないようね。美醜の評価など、最終的には受け取り手の好みで変わる。なぜこの私が有象無象の好みなどに合わせなければならないの。身の程を知りなさい」
実はこの時、お妃様は鏡のことだけに怒っていたのではありません。鏡の無礼発言に、過去他人に言われた数々の失礼発言を重ね、長年溜まりに溜まった鬱憤を八つ当たりの如く打ち出していたのです。鏡にとっては実に不運な事でした。
もっとも、鏡は鏡で失礼なことを言ったことに変わりはないのですが。
「私は私の最高を追求するだけ。……余計な茶々を入れて要らない価値観を押し付けてくるのなら、ぶっ壊すわよ、あなた」
低音で放たれた最高にドスの効いた発言に、鏡はすっかり怯え切ってしまいました。
だんだん小さくなっていく鏡の中の仮面に、お妃様はフンと鼻を鳴らします。ですが微妙に怒りの収まらないお妃様は、腰に手を当てて鏡を指さし、眉根を寄せながら言いました。
「せっかくだわ。最後にその白雪姫とやらを見せてご覧なさい」
そうして鏡に映し出されたのは、白雪のように白い肌に、黒檀のように黒い髪、血のように赤い唇をもった、美しい少女の姿。
お妃様は今までの怒りを引っ込ませ、急に真顔になると、鏡の中の少女を穴のあくほど見つめます。鏡がハラハラと行く末を見守る中、無言で少女を凝視し続け、長い沈黙の末にぽつりとひとこと。
「かっわいー」
かくしてお妃様は白雪姫の隠れファンとなり、無礼を働いた魔法の鏡は無罪放免。お妃様は時折鏡に白雪姫の様子を映させては、それをにこにこと眺める日々を送るようになったのでした。
めでたしめでたし。
/『鏡の中の自分』