『遠くの空へ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『遠くの雲』
赤らんだ太陽が、遠くにそびえるビルとビルとの間に沈んでいく。今日ももう終わり。
いつも通りの帰り道から少しそれて、周りよりもずっと高くにある階段から帰ることにする。特に理由はない、ただの気まぐれだ。
段を一段ずつ踏みしめると、街がすこしずつ遠のいていく気がした。騒がしかったわけでもないのに、静かになっていく。風が耳のそばを通り過ぎて、髪をほんの少しだけ乱した。
踊り場で足を止める。見上げると、空の端に雲がいくつか浮かんでいた。遠くの、ほんとうに遠くの雲。夕陽に染まるでもなく、かといって白いままでもなく、どこか曖昧な色をしている。行き場を決めかねているみたいに、ゆっくりと、でも確かに流れていた。
べつに、どこかへ急ぐ雲なんてないのかもしれない。ただそこにあって、風に任せて、いつの間にか見えなくなる。それでいい、とでも思っているのだろうか。
そんなことを考えながら、また歩き出す。階段を降りきると、いつもの道に戻っていた。遠回りをしたはずなのに、そんな気がしない。何かが変わったわけでも、何かに気づいたわけでもない。ただ、雲を見た。それだけのことが、今日の帰り道にはあった。
「レオナルド・ダ・ヴィンチは、鳥を空へ放つために鳥を買ったらしいよ」
目が潰れるくらいに澄んだ空を見上げると、かつての親友の話を思い出す。
彼はよく、屋上で空を飛ぶ鳥たちを見上げながらその話をしていた。
いろいろ諸説はあるが、一人の天才がかつて鳥籠の鳥を解放した話を。
いわゆる偉人の美談というやつを、彼は何処か期待に満ちた目で語っていた。
「とっても慈悲深い人だったんだろうね」
話の最後で彼は決まってこう言った。
でも僕は、いつも決まってその話に嫌悪感を感じた。
鳥は、かの天才のエゴを押し付けられたんじゃないかと思わずにはいられない。
その鳥は、もしかしたら人に飼われることが前提で育てられたのかもしれない。
それなら、人々にとって自由の象徴であったあの広い空が、その鳥にとっては厳しい現実になる。
今でも空の鳥を見てると、そういう考えばかり浮かぶ。
そもそも何故、人間は空を自由の象徴だと思うのか。
僕にとって、あの無限の空は恐怖の対象でしかない。
永遠に広がり続けて、何処へだっていけるのに、何処にも正解なんてない。
そんな空が怖くて仕方がない。
正解のないものが怖い。
……目的地くらい教えてくれれば良いのに。
今までだってそうだった。
手塩にかけられて、
期待されて、
躾けられて、
急に何もない世界へ放り出される。
……僕らもあの鳥と案外似ているのかもしれない。
実際のところ、僕にはあの鳥が幸せだったのかわからない。
僕にとっては恐怖でしかない空も、
あの鳥、または他の生き物にとっては自由の象徴かもしれない。
かつての親友だって、
いつも、何処か悲しい目をした彼だって、
空に焦がれてたのかもしれない。
だから彼は飛んだのだ。
一人で、
正解なんて求められない空へ。
彼にとって、空は自由な場所だったのだろうか。
……これは、僕のエゴかもしれないが、
彼が、僕らの頭上で無限に広がる遠くの空へ
無事に飛んでいけたことを願う。
それが飛べない僕に、唯一できることだから。
〖遠くの空へ〗
例え離れていたとしても
今日の、今の空を共に見上げれば。
それは「同じ空を見ている」
それは「同じ青を眺めている」
空が私たちを見渡せるように
私たちは同じ時間の同じ空を見られる
遠くにある空だからこそ
青を通じて繋がることができるなんて
どんなに幸せなことなのでしょう
繋がる2人は同じ眼をもっていない
けれど同じ青を見ることはできる
快晴になってくれてありがとう
青く、清くいてくれてありがとう
私たちを繋いでくれて、ありがとう。
遠くの空へ行ってしまえたら、どんなにいいだろう。
わたしはあなたを大事にしたい。
大事にしたいから、あなたから遠ざかる。
あなたがわたしから距離を取っても構わない。
そうすることであなたが楽になるなら、その方がいい。
あなたに迷惑をかけたくない。
そうやって、逃げている。
優しさに甘えて、逃げている。
あなたがやさしいひとだから。
それに甘えて、生きている。
遠くの空は、天国だ。
わたしには、その贅沢はまだ早い。
わたしが今まで積み上げた業は、
まだ見上げるほど残っている。
わたしに傷つけられた何の罪もないあなたが、
この上ないほど幸福でありますように。
人生
悲劇を繰り返し
過ちを繰り返し
互いに憎み合い
互いに慰め合う
振り返ると木漏れ日
宝石のような雨粒が滴る葉
日曜日の朝、人生についてそんな風に考えてみたんだ
僕らは中途半端に賢くて
僕らは極端に愚かなんだ
それを許せない人がいて
それを受け入れざるを得ない人がいる
見上げると飛行機雲と白い月
日曜日の午後、人生についてそんな風に考えてみたんだ
特別なことじゃない
僕らは行くようにしか行かない
そんな風になってるんだ
不安なことじゃない
この大雨だっていつしかは止むから
大きな川になってどこまでも流れていこう
流れ流れていこう
そんな人生の繰り返しさ
遠くの空へ
「単刀直入に告げる。」
「お前の母親はな、呼吸器官の病気なんだよ。」
まだ5歳の子供に、こんなことを告げる日が来るとは全く思っていなかった。
第1子の長男に、病気という事実を理解するにはまだ早いだろう。
ただ、理解させないといけない。
先程、息子は興味本位で母親の人工呼吸器に触れた。抜くつもりはない手の動き、ちょんちょんと、いつも通り誰かを起こす仕草で。
それがもし、人工呼吸器が抜けてしまえば
あいつの命に関わることになる。
そして今、目の前で理解できない顔を見せている息子。自分は、今現在、腕に1歳のふっくらとした娘を抱えている。
実際、自分の妻、つまり母親は
呼吸器官系の病気を患い、もう長くは無いのだ。
今は病院で、人工呼吸器に繋がれて苦しそうに息をしているに違いがない。
そしてその一ヶ月後。
妻は、突然自分にぎゅーを求めた。
自分は妻の要望通り、上から覆いかぶさった。
「ん…ぅ、も、し。わたしが…死んだら」
「やめろ、そんなこと言うな」
「えへへ、大事にされてるのしあわせだね」
そう言って、眠そうな目をしながら妻は、自分の背中に手を回した。
その数秒後、突然背中に回っていたはずの手がずるりと、滑り落ちた。
「…………え」
彼女は、もう息をしていないのだ。
遠くの空へ、行くことになった。
春になってきて
心地よいそよ風と
新鮮な草木の匂い
この丘の上から見える景色は
また新しく世界が生き始めたように感じられる
そうして私は
なんとか生きているよと
存在しているかもわからない
私の親愛なる隣人のために
遠くの空へ
静かに叫ぶのだ
小学校の頃、よく掃除の空いた時間にカードゲームで遊んでくれた先生。
そこを卒業して数週間後に聞いた話によると、彼は子ども達を心配させないために、持病のことを何も言わずに、亡くなってしまったという。まだ若かったのに…
いきなりそんなことを言われて、驚きと、深い悲しみを感じた私だった。
そういえば、彼はギターが上手でよく授業で弾き語りをしてくれた。そのとき弾いていた「3月9日」が、遠くの空から今でも聞こえるような気がする。
先生、あれから数年経ちましたが、私はあなたのことを忘れませんよ。ありがとう。
「遠くの空へ」
遠くの空へ
スーツを着た女が、学舎の屋上に立っている。
女は迷いなく、フェンスの向こう側へと逝く。
下を見ると、小さな点がそこかしこに見える。
――このままだと、巻き込むかな?
女は笑う。今から遠くへと向かうのに他人の心配をしている自分が阿呆に見えたからだ。
――いや、元から私は阿呆だった。今日ようやく気づけた!!
「今日は良い日だ!」
女は可可と笑う。上から聞こえた声に下にいた点達がわらわらと移動を始める。
女が落ちるであろう場所から離れ、板のようなものを彼女に差し向けたり、学舎へと入って行く者もいた。
――嗚呼、私の逝く様を焼き付けてくれるのか。
女は口角をにんまりと上げる。嬉しくて仕方がないのだ。
――私は、過去も未来も誰かにひっかかるような奴にはなれなかった。だか、今! 私を!皆が!
女は今日、10社連続で『お前は要らない』と言われた。
女はこの半年、失格を命じられ続けた。彼女の涙は枯れることなく、ついに現世に失望した。
面談をしてもきっと変わることはないだろう。
女は遠くに逝くのを望んだ。そして今日実行したのだ。
「それでは、皆様!」
女が空へ舞う。
「来世で逢いましょう!それまで、お元気で!」
女は遠くの空へと飛んでいった。
遠くの空へ
ふと空を見上げたとき、思うことがある。
この空の向こうには、何が広がっているのだろう?
地面はすぐそばにあって手を伸ばせば触れられる。
でも、空には背伸びをしたって届かない。
――まるで、自分みたいだと思った。
過去には触れられる。
あの日の声も、笑い合った時間も、
目を閉じればすぐそこにあるのに
未来は、空みたいに遠くて、広くて、
どこまで続くのかも分からない。
触れたくても触れられないまま。
ただ、前に進むしかない。
桜の木の下で先生に挨拶をして、
友達に手を振る。
「またね」なんて言いながら、
本当はもう同じ日々には戻れないことを
きっとみんな知っている。
ゆっくりと学校の門を出て、
一度だけ振り返った。
胸の奥が、少しだけ痛んだ。
――よし、頑張ろう。
遠くの空に向かって、そう心の中で叫んだ。
「お父さんこのアイスは明日たべる!」
この言葉を口にした、当時小学2年生だった私を今でも恨んでいる。
私は病気の父と2人で暮らしていた。
私のために仕事を頑張ってくれている父には感謝しかなかった。仕事から帰って、急いでご飯を作って、私をお風呂に入れて、寝かせるまでを男手ひとつでしていたのだ。
そんなとき私は、お父さんが家事をしているときもゲームをしたり、休みの日には友達と遊んだりもしていた。
そんなある日、父は亡くなった。
私と父はお風呂上がりにアイスを食べるのが日課だった。冷蔵庫を開けるといつもストックがあるのにその日はなかった。明後日買い物に行くと聞いていたから今日は我慢しようと思って、明日食べることにした。
明日なんてないのに。
なんで気づかなかったのだろう。
仕事を休んでいたこと。家事の途中休むことが増えたこと。出かける回数が増えたこと。
父は全部わかっていたのかもしれない。もうこの先長くないことを。
あたりまえの日常が、あたりまえではなくなったその日から私には後悔しか残らなくなった。
もっと手伝っていたら、もっと病気のことを気にしていれば、もっと生きていたのかもしれない。
私は父のいる遠い空に問いかけた。
後悔しかない人生をこの先どう生きればいいですか。
遠くの空へ
散歩コースの神社。
2礼2拍手、沈黙。
その後の目を開けた時に映る空が大好きだ。
立っている位置は毎日同じ。
でも、季節によって映るものは変わる。
お天気によって見える色は違う。
けさは薄曇り。
目を開けると少し青みがかった灰色の空に、ほぼ花を落とした桜。
新緑の季節に向けてどんどん葉っぱが増えていく。
目に入る色が変わる。桃色から緑に変わる。
私の目は180度認識できるのだろうか。
桜の手前には、先日まで咲き誇っていた椿。
今は右の視界の下に落ちたピンクの絨毯が映る。
ああ、今日も素晴らしい。
ありがとうございますと、最後の一礼。
遠くの空もきっと同じように毎日毎日誰かを幸せにしているんだろうな。
意図もなく、あるがままに。
遠くの空へ
このなみだ
君が渡れる
その日まで
川になればと
願うばかりで
なんだか寂しい夜だった
あの人は多分寝てるし
こんな夜更けに連絡するのもなんだし
ベランダから空を見れば一羽のカラスが
遠くの空へ向かって飛んで行く
あのカラスはどこまで行くんだろう
あたしはどこに行きたいんだろう
寂しいけど、あの人以外の誰でも良くない夜
んんんん、大丈夫、引きずられない、大丈夫
気にしすぎなくていいこと。
こちらが、気に病むことじゃない。
遠くの空へ思いを馳せていた。
どうやら私は自分から遠いものに惹かれるらしい。
ずっと追い求めていたいのだ。
私という存在と交わらないで欲しい空
私のいないあっちの景色は綺麗だ。
ああ、いい空だな
ずっと私の遠くにあってくれ。
遠くの空へ
この先の空の下には…そう想いながら、今日も空を見上げる…大地は途切れても、空はずっと続いているから…
そう、あなたと約束してから、幾つの季節を過ごしてきただろう…もう、お世辞でも、若いとは言えない程になったけれど…
あれから、音信不通になって、あの頃の俤が、朧げに浮かぶくらいだけれど…
逢いたい…屹度もう、違う道を選んでいるのは、分かっているつもりだけど…今でも、夢に出てくるあなたに、せめて、ひとこと…
この遠い空の向こうで、多分、違う誰かと幸せにしているだろう…けれど…でも、少しでもいい…あの日の想いを…
遠く遠くのいつかの空へ
この一歩が続いていますように
変わらず、もしくはもっと鮮やかに見えていますように
あなたの笑顔を託せるものでありますように
最期に見ても悔いのないくらいのものでありますように
あなたや私を思い出せる場所でありますように
世界中を繋いでいますように
君は1人ではないと伝えられるものでありますように
ただ、ただそこにありますように
そう願います
【遠くの空へ】
いつもと同じ場所。今までとは違う日常。
変わったのは、みんながいないこと。
卒業後、私はこの街に残ることにした。
私は何も変わらない。
「傘忘れちゃった。」
ピロン。
「そっちも雨なの?こっち最近土砂降りだよ。」
今までの仲間は私の何気ない投稿を見て話しかけてくれる。
みんなそれぞれの地で、今までとは違う目まぐるしい毎日を送っている。
雨が降っている。
遠くの空でも、雨が降っている。
私だけ今までと同じ世界に取り残されたように感じることがある。孤独だと錯覚する。
けれど、この空は繋がっている。
遠くの仲間も確かに同じ空の下にいる。
みんなが投稿する日々の景色にいいねと思う回数が増えた。
私の近くにいなくとも、みんながみんなであることに変わりはない。
今日もみんなの投稿を見て、遠くの空へ想いを馳せる。
ひとりで鬱々と考えていた事を
君はあっさり笑ってくれたから
僕の悩みは急に軽くなって
遠くの空へ飛んでいった