遠くの空へ
スーツを着た女が、学舎の屋上に立っている。
女は迷いなく、フェンスの向こう側へと逝く。
下を見ると、小さな点がそこかしこに見える。
――このままだと、巻き込むかな?
女は笑う。今から遠くへと向かうのに他人の心配をしている自分が阿呆に見えたからだ。
――いや、元から私は阿呆だった。今日ようやく気づけた!!
「今日は良い日だ!」
女は可可と笑う。上から聞こえた声に下にいた点達がわらわらと移動を始める。
女が落ちるであろう場所から離れ、板のようなものを彼女に差し向けたり、学舎へと入って行く者もいた。
――嗚呼、私の逝く様を焼き付けてくれるのか。
女は口角をにんまりと上げる。嬉しくて仕方がないのだ。
――私は、過去も未来も誰かにひっかかるような奴にはなれなかった。だか、今! 私を!皆が!
女は今日、10社連続で『お前は要らない』と言われた。
女はこの半年、失格を命じられ続けた。彼女の涙は枯れることなく、ついに現世に失望した。
面談をしてもきっと変わることはないだろう。
女は遠くに逝くのを望んだ。そして今日実行したのだ。
「それでは、皆様!」
女が空へ舞う。
「来世で逢いましょう!それまで、お元気で!」
女は遠くの空へと飛んでいった。
4/12/2026, 3:10:59 PM