『遠い日の記憶』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「遠い日の記憶」
私は、昔から嫌なことがあったり、死にたいと思った日に夢を見る。
その夢には、アパートのような部屋の窓と、黒く変色した爪が出てくる。
音はなく、ただその2つが写真のように出てくるのだ。
最近になってその夢のことが少しわかった。
この記憶はまだ私が小さかった頃のものだった。
この夢は、なくなったお父さんが見せているのかも…
もしくは、私の過去への執着かも…
遠い日の記憶
まだ幼稚園にも行ってなかったあの日‥わたしは勤めにでていた母の代わりに、叔母と家で過ごしていた。
ある日、裏口に人が訪ねてきた。物乞いだつた。叔母は、何かを渡してもう来てくれるなと言っていたと思った。
少し離れた物陰からそれを見ていたわたしは、心の中でこれは一生忘れてはいけないと思った。
何故かは分からなかったけど。
遠い日の記憶です。
大人になり、世の中がだんだんわかってきたころ、あの風景を思い出した。
あんなこと、本当はあっちゃいけない事、ってあの日、わたしの魂が伝えたと思えた。
そんな世の中、今も続いている。どうにかしなきゃと思うわたしと、どうにも出来ないと思うわたしがいる。
お題『遠い日の記憶』
コンサバトリーで、赤ちゃん用の靴下やミトンを編んでいらっしゃる主様のお世話をした。
担当執事は俺なのに、よくフルーレを呼んでは主様は裁縫談義に花を咲かせていた。時々ナックも立ち寄って刺繍の話をしていくこともあった。
俺だって裁縫関係の本に目を通したことがある。でも、実際に針を持つことはほとんどないし……。これが嫉妬という感情だと気づいた時には居た堪れなくなって「少し席を外します」と言いかけた。しかしそこで主様に呼ばれた。
「ねぇ、フェネス」
「……なんでしょうか、主様」
感情を押し殺した笑顔でお応えすれば、ちょっとこっちに来て、と手招きされた。一歩二歩と近づいたところで右手を取られ、そのまま主様は自分のお腹にあてがった。
「あ、ああ、主様!?」
「ふふふ、そんなに慌ててたら赤ちゃんがびっくりしちゃう」
手のひらに、ぽこん、ぽこん、と何かが当たった。
「今日は相当ゴキゲンなのかしら。よくお腹を蹴ってるの」
そのままくすくす笑いながら、この子は幸せ者ね、とおっしゃった。
「生まれた時からとんでもないイケメンがいるんだもの。しかも博識でこの上なくやさしいときた。他の男なんか目に入らないわね、きっと」
「そ、それは……」
まさか俺のこと? そんな馬鹿な! でも主様は俺に向かってにっこり微笑んだ。
「とんでもないお転婆母娘だけど、よろしくね」
ああ、主様。今あなたの掴んでいるその手の持ち主は、とんでもなく矮小で、醜い感情の塊なんです。なのにそんな風に……。
「そんなことはないです。俺の方こそよろしくお願いいたします」
嫉妬の塊を飲み込んで、俺は今日も和やかな仮面を貼り付けた。
「……さん、フェネスさん」
過去の日記を読み返しながら、やはり俺はあの頃と何も変わっていないと凹んでいたところだった。
そこに今の嫉妬の対象が書庫にやってきて俺のことを呼んでいる。
「どうしたの、アモン」
咄嗟に笑顔を貼り付けて、何でもないかのように振る舞う。こういう癖がついてしまったのは一体いつからだろうか。
「主様が呼んでるっすよ」
「え……主様が? 俺を?」
一方的に俺に休みを出し、アモンにべったりだった主様が、今更何の用だと言うのか。
俺の心中に気づいているのかいないのか、アモンはへへっと笑っている。
「早く行ったほうがいいっすよ」
「え? あ、うーん?」
事態が飲み込めない俺の背中をアモンがほらほらと押してきた。
「いいっすか、フェネスさん。これで貸しひとつっすからね」
よくわからないけれど、俺は急かされるがままに主様の部屋へと向かった。
📕遠い日の記憶📕
学生時代、部活や委員会に打ち込んで
後輩ちゃんの面倒を見たり、廊下、教室、
黒板、掃除など。よく周りはやっていないことを
1人で黙々とやっていた。先生や友だちは
外に行ったり、他のクラスに行ったりしていた
私は何もせずただ、ひたすら掃除に打ち込んでた。
するとある日、仲良くなった先生から、
いつもありがとうね。学校をキレイにしてるの
せいらちゃんだったんだね!ありがとうね。
せいらちゃんっていうんでしょ?
よく真面目な子だって言われてるよ?
すると、その先生の近くにいた
小学部の可愛い男の子が
せいらお姉ちゃん、ありがとう!
と、小さな手を差し出してくれた。
かわいすぎて、ありがとう。
しょうちゃん。ありがとうね、その日から
会う度に、せいらお姉ちゃんー!!
と寄ってきてくれた。あ、しょうくん!
おいでー!せいらだよー!!というと、
私の後をてちてち着いてきてくれた。
学校をキレイにするのが自分の役目だと思っていたから。よく、言われてた
せいらちゃんが卒業したら寂しいな
キレイにしてくれる子がいなくなっちゃう
って。私はお節介かもしれないけど
キレイな母校が好きだから。
今は分からないけど
後輩達にはしっかり
人生で学ぶことはきちんと学び、
人と関わり、マナーや礼儀をたくさん
学んでたくさん勉強して
恋愛してたり、親友と仲良くしてほしい。
私には幸せがなかったけれど、
今やっと心の居場所ができたんだ。
ここに記す
人は何歳からでも変われるし
男の子、女の子、
男女問わず
自分の努力で変われる
私は過去に誹謗中傷にあった。
ひどい言葉をたくさん言われて、
リスカとかした。罵詈雑言。
ひどかった
19〜21の間に色々あって
ダイエット開始して
ファッションやメイクなど。色々やって。
➖20kgになった。
今でも頑張ってる
もう、罵詈雑言や
誹謗中傷されたくない
もし、誹謗中傷する人がいて、私の大切な人を
傷つけたら容赦しない。
もちろん私自身傷つけられたら
容赦しない。
❌🈲誹謗中傷禁止です❌🈲
色んな意味で、ありがとう過去の
私の記憶たち。
せいら。
『遠い日の記憶』
シャーベットの、歩道
歳の離れた姉と、母が
私の手を、握る
まだまだ、小さな手で
姉の手は、しっかりと。
母の手は、カサカサと。
つるんっ…。
ガシッ。
姉の顔を見た
笑ってた。
母の顔を見た
笑ってた。
私も嬉しくて
しっかり、ギュッと手を握った
幼稚園の帰り歩道。
7/17 お題「遠い日の記憶」
真夏。久しぶりに訪れたプール。
水の中に沈んでいると、思い出す。
生まれたばかりの自分は、水底を流されるばかりだった。
さまざまな生き物の気配がした。日を陰らせるほど大きなもの、ごく小さな自分よりもさらに小さなもの。
世界は活発で、しかし静かだった。
どのくらい経たか、ヒレのようなものを動かすことを覚え、泳ぎ、捕食され、あるいは子を残し、また生まれ。
水は、全ての記憶をつなげる。ふとした拍子に、この身が記憶とともに溶けてしまいそうになる。
水の中は、懐かしい音がする。いつまでも聞いていたい、音。
(所要時間:9分)
『遠い日の記憶』2023.07.17
確かまだ子どもの時分だったと思う。
これぐらいの暑い日だった。叔父上が遊びにきて、縁側でなにかしらの書を読まれていた。
あの御曹司様の前ではトゲトゲした空気をまとっているが、こうして家にいると雰囲気は柔らかい。
構ってほしくて傍によると、叔父上は叔父上にしては優しい笑みを浮かべ手招いてくれた。
「この書は読んだか?」
そんな問いかけに、まだ読んでいないことを伝えると、叔父上はたしなめることなく、なら読んだ方がいいと言った。
差し出された書の一頁目を開く。
背中に叔父上の体温を感じながら、読み進める。難しいところは、叔父上が優しく教えてくれた。
そのうち、あたたかい眠気が襲ってくる。
ときおり吹く涼しい風と、叔父上の心地よく響く声がまるで子守唄のよう。
船を漕いでいるのを察した叔父上が、ひざ枕をしてくれた。
骨ばった硬い膝だが、今はそれが嬉しい。
「起きたらまた一緒に読もう」
誘いを聞きながら、夢に落ちていった。
そんな事を、ふと思い出した。
手元にあるのは、その時の書である。
あの大火の折に慌てて持ち出したので、焦げてもいないし煤けてもいない。
それを久しぶりに読んだために、あの夏を思い出した。
そんな、遠い日の記憶である。
遠い日の記憶
『だれか助けて。助けてよ、お願い。美来(みく)を助けて。僕ははどうなってもいいからこの子だけは。この子だけは助けて・・・・・・・』
人通りの少ない公園でみくという女の子を抱きかかえながら4歳ぐらいの男の子は泣きながら祈っていた。
「みくー、早く支度しなさい〜。
遅刻するわよー」
上からそんな声が聞こえてきて時計を慌ててみると電車ギリギリの時間だった。
あーもう、最悪!久々にあの夢見たと思ったら寝坊しちゃった。ほんとついてない。
何故か小さい頃から1ヶ月に1回ぐらいのペースで今日みた男の子が女の子を抱えて祈ってる夢を見るんだよね。
何でだろう。
その夢で朝方の4時ぐらいに起きちゃって、まだいいや
って2度寝しちゃった結果がこの有様だ。
焦りながら全力で廊下を走り家を出る。
それから汗だくになりながらも全力疾走したら何とか電車に乗ることができた。
学校近くの駅で下ろしてもらってそこからまた激走だ。
あー、やばい!きつい〜
「セーフ!!間に合った〜」
なんとか間に合った〜
「間に合ったっていうかほんとにギリギリだけど」
まなが苦笑いしながらも声をかけてきてくれた。
まなは小さい頃からずっと一緒でなんでも言い合える親友なんだ。でも同い年って言ってもまなのほうが全然しっかりしてるし、頭いいんだけどね。
だからよく相談に乗ってもらうんだー。
「あっ、まな!おはよー!!そうなんだよー
寝坊しちゃって全力疾走で走ってきた!」
おかげで朝から汗だくだよー
「もっと余裕持って起きなよ?」
「はーい。」
まなと話しているといつもよりみんなが騒がしいことに気づいた。
どうしたんだろう?今日なんかあるのかな?
「ねーねぇ、何で今日はこんなにいつもよりみんなうるさいの?なんか教室全体が浮気立ってるっていうか」
まなは知ってるかな?
「あんた知らないの?
今日転校生が来るらしいの。男子か女子かはわからないけど。」
「転校生?こんな時期に?」
今は2学期中場ぐらいだ。こんな時期に転校生が来るなんて、なんか事情があるんだろうか?
「そうなのよね。こんな中途半端な時期に何で来るのかしらね?」
まなと話しているとチャイムがなって先生が入ってきた。その後ろに転校生?もいる。男子だ。
「おはよー、お前ら席につけー
なんかもう伝わってるみたいだか、転校生だ。
おい、羽矢。自己紹介。」
先生が促すと転校生は頷いて言った。
「羽矢 洸夜(はねや こうや)です。よろしく。」
羽矢くん?が挨拶をすると一斉に教室が騒がしくなった。
理由はめっちゃ顔が整っていてかっこよかったから。
クールで、でも決してそっけなくはないから親しみやすい雰囲気の男子だ。
その時
羽矢くんと目が合った。
懐かしい・・・・・・・・・・・・・・。
会ったこともないのに何故か無性に懐かしい気持ちになった。
なんだろう。この気持ち、心が温かくなるような。
羽矢くんはこっちを向いて固まっていた。
目を大きく開いてびっくりしているように見える。
私は目がお互いに離せなくて、時間が止まったように固まっていた。
「・・・・・・ふ・・・ゃ・・ぉい!古屋!」
わっ!何?呼ばれてる?
我に返って、前を見ると先生は困った顔で私を見ていた。
「はっ、はい!何ですか?」
「まったく、しっかりしてくれ。何回も呼んでるのに古屋返事しないから。お前の後ろ空いてるだろ?そこを羽矢の席にするから羽矢に分かるように名前呼んだんだ。」
全く、気づかなかったな。
羽矢くんが私の後ろに?
私が色々考えているうちにも話は進んでいてもう羽矢くんはこっちに向かって歩いてきているところだった。
こんなにドキドキしたのは人生初なんじゃないかって思うほど、心臓が高鳴る。
だからと言って羽矢くんの方をずっと見ておくなんてことは出来なくてただ、ドキドキしながら前を向いとくしかない。
すると
「ごめん。」
えっーーーー
羽矢くんは驚くべき行動をとったのだ。
いきなりわたしの前にしゃがみ込んでギリギリです制服で隠れている二の腕を確かめるように見てきたんだ。
「ちょっと、なにっーーーぇ?」
何してんのよーって言おうとして羽矢くんの顔を見ると
羽矢くんはすごく真剣そうな泣きそうな顔をしていた。
びっくりした。
けど、真剣な顔をみたら怒るなんて出来なくて羽矢くんが離れるのを待つしかなかった。
ちょっとしてから羽矢くんは離れて
「いきなりこんなことしてごめん。」
と、泣きそうなホッとしたような優しい笑顔で言った。
「ううん、大丈夫。」
もう、何がなんだか。
結局、何がしたかったんだろうか。
私はみんなの視線を感じながら前に立っている先生の方を向いた。
続く
読んでくれてありがとうございました。
【遠い日の記憶】
真っ白な光の中、暖かい手が私を包み込んだ。優しく抱きしめてくれてた。けど顔は見えない。でも分かる。たぶんこの手は―、
アラームの音で目が覚める。いつもは寝起きが悪いけど、今日は何故か気持ちよく起きられた。コーヒーを2つ入れる。
「おはよう」
1つは仏前へ。飾られてるのは1枚の写真。幼い私を抱っこしながら微笑む母の姿。いつも優しく、料理が上手だった母。朝、時間がある時にはこうやってコーヒーを2ついれる。
今日はお供えするお花を買ってこよう。母が好きだったひまわりにしようかな。
幼い頃、毎年夏にはひまわり畑に行っていた。私より背の高いひまわり。いつも行くその畑は、ひまわりが迷路のように植えられていて、母の手を引いてひまわりの中を探検した。たくさん写真を撮ってくれ、私もひまわりが1番好きな花になった。
まだそのひまわり畑はあるんだろうか。今度の休みに行ってみよう。母が使っていたカメラを持って。
今後悔したことも、
今悩んだことも、
今泣いたことも、
今死にたくなったことも、
いつか全部、遠い日の記憶になる。
懐かしいと思える日が来るから。
大切な人と笑い合える日が来るから。
だから今、少しだけ頑張りたいと思った。
遠い日の記憶
子供の頃から焼肉といえばジンギスカンだった。
田舎では焼肉屋さんに行く機会もなかったし、牛は美味しくない。と親に聞いていたので食べたいとも思わなかった。
19歳の時、焼肉屋さんに行ったことがない。と友達に言うとビックリされ、パチスロで勝ったお金で連れてってくれた。
謎の部位、カルビ。
780円
震えるほど旨かった。
あれから26年経つが震えるほど旨いものに出会わない。
壮大な最高のスパイスをかけてくれた両親に感謝。
遠い日の記憶
昔の記憶
記憶に新しくないだけで
時間的には無関係なのかな
遠いってのは距離な訳だとしても
近くても記憶にないことはある
記憶って間違って覚えてたりする
思い込みを拗らせてるやつも多い
近いからこそ遠く感じる記憶もあるね
こっちからしたら
毎日のことで新しい記憶
あっちからしたら記憶にすらない
そんなこともよくある
不愉快極まりない
遠くない内に処分するから
致命傷でも負って
手遅れにしてから味わって貰うとしよう
意識してるから遅れていて
無自覚だと問答無用だったりする
意識してるだけに
無意識に終わらせてしまうと思う
終わらせてから気がつく
それから遅れて相手も気がつく
それはもう手遅れですよ
その無意識にそこに行き着くまで
数々の場面があったからこそ
なんの躊躇もなく行える
そんな遠い日の記憶
だけど既に興味はない
決定は下された後であるからだと思う
時
ときどき、ふと思い出すんです。でもそれはいつも曖昧で、情景の片端がぼんやりと思い浮かぶ感じで。だからどんな情景かって言われると、上手く説明出来ないんですけれど……そうですね、草の生い茂った崖に私はいるんです。それで、目の前には鮮やかな色の硝子で出来た塔があります。何色もの色が合わさって、溶けるような日差しを負けじとはね返しています。中には大きな柱時計があって、ゆっくり振り子が揺れています。───この情景が、夢なのか記憶なのかは分かりません。でも時々、ああそういえば時計は11:59を指していたなとか、新たな情報を思い出すときもあります。不思議でしょう。本当、いつの記憶かしら、はやく思い出したいのに。何千年も生きているとこんなに記憶が曖昧になってきてしまうんです。
「遠い日の記憶」
遠い日の記憶が蘇る。
弟と2人手を繋いで家に帰っていた時の記憶。その日もいつも通りの帰り道だと思ってた。弟とと一緒に近所の公園に行って俺の友達と弟の友達と皆でサッカーして雑談して5時のアナウンスが鳴ったから帰ろっかってなって...
弟と2人、帰り道に今日の夜ご飯何だろうねって話して、ハンバーグがいいとか唐揚げがいいとかキャッキャしながら帰っていた時。
目の前の交差点でおばあちゃんが横断歩道を渡ってる時赤信号にも関わらずスピードを落とさずこちらに向かってくるトラックが見えた。ここからおばあちゃんの所までは30mはある。叫んでも多分聞こえない。かと言って走っても恐らく間に合わない。どうするべきか、そんな事をぐるぐる考えていると...弟が走り出していた。危ない...早く行かなきゃいけないのに、思う様に足が動かない。
追いついた。そう思った時には遅かった。
弟はおばあちゃんを突き飛ばしてトラックに轢かれた。
四肢はあらぬ方向に曲がり、辺りは血の匂いで満ちている。おばあちゃんは目立った傷は無いものの、恐らく打撲、酷くて骨が折れているだろう。
俺は震える手でスマホを取り出し、119番にかけた。身体が勝手に動いていた。理解が追いつかなかった。気づくと目の前には救急隊員がいた。既に救急車は到着していて弟の身内か聞かれた。俺は首を縦に振って救急車に乗り込んだ。
病院にて治療に当たった医者の帰りを待つ間に俺は両親に連絡した。弟が跳ねられた、と。両親は飛んで病院に来て俺を抱きしめた。どこも怪我してないか、って。怪我なんかしてないよ、だって俺...
そんな思考を掻き消すように医者の声が響いた。手は尽くしたがついさっき亡くなったそうだ。両親は崩れ落ちた。俺は静かに泣いていた。まだ頭が混乱していた。
俺があの時止めていれば、いやまずまず俺が先に走り出していれば弟は轢かれずに済んだ。なんであいつが死んで俺が生きてる。なんで?なんで。なんで!俺が...
今日はあいつの命日。俺はあいつの墓の前に立ち涼しい風に吹かれ、そんな事を思い出していた。遠い日の記憶。
【遠い日の記憶】
ふと目を覚ますと、隣で眠っていたはずの恋人の姿が無かった。一人分のぬくもりが消えた寝床というのは、それだけで寒々しい。
携帯で時刻を確認すると、まだ午前四時。
ぼんやりした意識の中、彼女の姿を探した手は虚しく宙を舞い、枕の上に落ちた。
何度か彼女の名をモゴモゴ呼んでみるが、呼び掛けに答える声は無く闇に溶ける。
ゆっくりと泳がせた視線は、自然とキッチンへと行き着いた。
**********
高校時代の元彼の夢を見た。
正直二度と思い出したくない類のトラウマ、遥か遠い日の記憶。
夢の中の私はまだ元彼と上手くいっていた頃の、変わり栄えもしないごく普通の女子高生の日常を過ごしていた。別段刺激的な内容でもなかったし、まして本人に未練などないけれど、恋人と寝た夜に見るものとしては、充分に鬱陶しく、後味も悪かった。
そして目が覚めた時、視界に飛び込んできた彼の寝顔があまりにも無防備で……何とも言えぬ後ろめたさに、胸が軋んだ。
眼を閉じていると、いつもの冷めた眼差しが隠されて、彼の童顔が際立つ気がする。
彼のなだらかなカーブを描く頬が好き。鼻の形が好き。ちょっと半開きの薄い唇が好き。例えそれが、開かれた瞬間デリカシーのない毒を吐くのだとしても。
「好き」
そっと呟いて、その唇に自分のそれをほんの一瞬重ねた後、急に照れ臭くなって私はベッドから降りた。
もう眠れそうにないと思いヤカンに水を入れコンロにかけて、ガスの青い火を見つめた。
青い炎は、赤色のそれよりも高温なのだという。
熱さなんて全く感じさせないくせに、その内側は酷く激しい。まるで彼そのものだと思った。
そして私は……そんな激しさを秘めた彼が好きなのだ、とても。
初め、その気持ちをわざわざ彼に伝えるつもりは無かった。
それまでの『ちょっと親しく話をする職場の先輩後輩』という微妙で曖昧な関係でも充分満足していたし、変化など求めるより、現在の関係を保っていたい。
高校時代のトラウマもあって、恋愛には臆病になっていた。
だがそう願っていたのはこちらだけだったようで、出逢って半年後、私は彼に交際を申し込まれた。
その時は断った。
でも彼は、意外な程根気強く私に寄り添い、トラウマを払拭してくれたのだ。その後改めて交際を申し込まれ、私ももう断る理由はなかった。
「だーれだ?」
「ひっ……!」
突然背後から伸びた手に視界を遮られ、私は飛び上がる程驚いた。
慌てて振り返ると、不機嫌そうな顔をした恋人がこちらを見詰めている。
「もう、びっくりさせないで……」
「そりゃこっちの台詞だ、起きたら居ねえし。で、何してんだ? こんな明け方に」
「……嫌な夢見た。何か寝れないし、お茶でも淹れようかなって」
「ふーん」
抑揚の乏しい声音で呟きながら、彼はカチ、とコンロの火を消した。
「あ!」
「そんなのいいから、さっさと寝るぞ」
「でも」
「……寒いんだよ。寝れないなら俺の湯たんぽになれ」
ぐいと強く手を引かれ、無言のままベッドへ誘導する彼に、あっという間に中へ引きずり込まれた。
すっかり冷えてしまった身体を背中からぎゅっと抱きしめられて、思わず鼓動が速くなる。彼にもそれは伝わってしまったようで、ふっと笑う気配と吐息を耳元に感じた。
「何だ、今更恥ずかしいのかよ」
「ち、違う」
「……あまり心配させんな」
「?」
ちょっとベッドから離れたくらいで、一体何を心配したと言うのだろうか。肩越しに振り返り尋ねようとしたが、やめた。
彼が今どんな顔をしているのか、私をどんな眼で見ているのか、それを確かめるのが、何故か怖かった。
「……お休みなさい」
お休み、と短く返された後、うなじに穏やかな寝息。背後に温かな体温を感じて、私はほっと息を吐く。
そしてようやく訪れた眠りの波に身を任せながら、眼を閉じた。
―――きっともうあんな夢は、見ない。
君に出逢って、遠い日の記憶はそこへ置いていくと誓った。
これからどんな未来が待ち受けようが構わない。
君が国の為にと起こした出来事が反逆罪として扱われ、そして処刑されてしまう未来だったとしても。絶対に君を手放さないし、そんなことは起こさせない。
僕がここへ来たのはきっと、君と出逢う為。本来の目的なんてもう忘れる。
遠い日の記憶が教えてくれる。君を救う為の道程を。
いつかこの記憶が、全て書き換わり失われるとしても。それと共に僕という存在が消えてしまっても。
遠い未来からやって来た僕なら、それが出来るのだから。
君の為に、この世界の未来すら変えてみせるよ。
『遠い日の記憶』
差し出された
その手の冷たさに
怯えながらも
すがりつく
夜の淵を
彷徨いながら
ふたり落ちていく
場所を求めて
そんなさみしい愛し方
あなたの腕の中で
死んでいけたら
幸せと
本気で夢見た
あの頃のわたし
とても長い時が
過ぎたのに
あの頃の想いも
色褪せたのに
想い うらはら
冷たいその手に
震えながらも
すがりつく
☆ 想い うらはら (218)
「部活、やめたいです。」
私は中学校から5年間続けたバレーボールをやめた。私のミスで、相手チームの流れになってしまい、試合に負けた。
チームメイトの皆は、貴方のせいじゃない。と言ってくれたが、相手の流れになってからスパイクを打ってもミスばかり。相手のマッチポイント。私はフェイントでブロックに捕まった。私のせいで負けたんだ。責任を感じた私は部活を退部した。
部活をやめてから放課後は暇になった。いつもの習慣で、体育館の入口に来てしまい、体育館でバレーの練習をするチームメイトが見えた。すると、考えてしまう。あぁ、どうして部活をやめたんだろう。こんなにも、バレーが好きなのに。
「お母さん、部活やめたい。エースの私が大事なときに逃げちゃってミスをしたから、相手チームの流れになって、それで、」
私は逃げてしまった。逃げたことに今でも後悔している。
"一度のミスで逃げても後悔しない?"
遠い日の記憶は、なかなか拭いきれない。あの悪女によって印された、人生の汚点。
人のおもいを躊躇いもなく踏みにじった売女……人でなしの今井裕子。
遠い日の記憶……。
計りたい。計れない。計りたくない。
さまざまな思いが、交錯する。
♯遠い日の記憶
澄んだ夏の朝。
僕は大好きだった人を殺した。
白くも青い空に吸い込まれて行った彼は今日飛び降りた。
僕が大好きだと告白した。同棲愛だった。
彼は優しい笑顔で「伝えてくれてありがとう。」そう言って飛び降りた。
彼は元から死ぬ気だった。
両親からの虐待、学校でのいじめ。
生きる意味がなくなっていた。
僕が告白して死ぬ覚悟ができてしまったらしい。
僕が殺したのだ。
これは遠い日の記憶の話だ。