『遠い日の記憶』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
遠い日の記憶
昔の記憶
記憶に新しくないだけで
時間的には無関係なのかな
遠いってのは距離な訳だとしても
近くても記憶にないことはある
記憶って間違って覚えてたりする
思い込みを拗らせてるやつも多い
近いからこそ遠く感じる記憶もあるね
こっちからしたら
毎日のことで新しい記憶
あっちからしたら記憶にすらない
そんなこともよくある
不愉快極まりない
遠くない内に処分するから
致命傷でも負って
手遅れにしてから味わって貰うとしよう
意識してるから遅れていて
無自覚だと問答無用だったりする
意識してるだけに
無意識に終わらせてしまうと思う
終わらせてから気がつく
それから遅れて相手も気がつく
それはもう手遅れですよ
その無意識にそこに行き着くまで
数々の場面があったからこそ
なんの躊躇もなく行える
そんな遠い日の記憶
だけど既に興味はない
決定は下された後であるからだと思う
時
ときどき、ふと思い出すんです。でもそれはいつも曖昧で、情景の片端がぼんやりと思い浮かぶ感じで。だからどんな情景かって言われると、上手く説明出来ないんですけれど……そうですね、草の生い茂った崖に私はいるんです。それで、目の前には鮮やかな色の硝子で出来た塔があります。何色もの色が合わさって、溶けるような日差しを負けじとはね返しています。中には大きな柱時計があって、ゆっくり振り子が揺れています。───この情景が、夢なのか記憶なのかは分かりません。でも時々、ああそういえば時計は11:59を指していたなとか、新たな情報を思い出すときもあります。不思議でしょう。本当、いつの記憶かしら、はやく思い出したいのに。何千年も生きているとこんなに記憶が曖昧になってきてしまうんです。
「遠い日の記憶」
遠い日の記憶が蘇る。
弟と2人手を繋いで家に帰っていた時の記憶。その日もいつも通りの帰り道だと思ってた。弟とと一緒に近所の公園に行って俺の友達と弟の友達と皆でサッカーして雑談して5時のアナウンスが鳴ったから帰ろっかってなって...
弟と2人、帰り道に今日の夜ご飯何だろうねって話して、ハンバーグがいいとか唐揚げがいいとかキャッキャしながら帰っていた時。
目の前の交差点でおばあちゃんが横断歩道を渡ってる時赤信号にも関わらずスピードを落とさずこちらに向かってくるトラックが見えた。ここからおばあちゃんの所までは30mはある。叫んでも多分聞こえない。かと言って走っても恐らく間に合わない。どうするべきか、そんな事をぐるぐる考えていると...弟が走り出していた。危ない...早く行かなきゃいけないのに、思う様に足が動かない。
追いついた。そう思った時には遅かった。
弟はおばあちゃんを突き飛ばしてトラックに轢かれた。
四肢はあらぬ方向に曲がり、辺りは血の匂いで満ちている。おばあちゃんは目立った傷は無いものの、恐らく打撲、酷くて骨が折れているだろう。
俺は震える手でスマホを取り出し、119番にかけた。身体が勝手に動いていた。理解が追いつかなかった。気づくと目の前には救急隊員がいた。既に救急車は到着していて弟の身内か聞かれた。俺は首を縦に振って救急車に乗り込んだ。
病院にて治療に当たった医者の帰りを待つ間に俺は両親に連絡した。弟が跳ねられた、と。両親は飛んで病院に来て俺を抱きしめた。どこも怪我してないか、って。怪我なんかしてないよ、だって俺...
そんな思考を掻き消すように医者の声が響いた。手は尽くしたがついさっき亡くなったそうだ。両親は崩れ落ちた。俺は静かに泣いていた。まだ頭が混乱していた。
俺があの時止めていれば、いやまずまず俺が先に走り出していれば弟は轢かれずに済んだ。なんであいつが死んで俺が生きてる。なんで?なんで。なんで!俺が...
今日はあいつの命日。俺はあいつの墓の前に立ち涼しい風に吹かれ、そんな事を思い出していた。遠い日の記憶。
【遠い日の記憶】
ふと目を覚ますと、隣で眠っていたはずの恋人の姿が無かった。一人分のぬくもりが消えた寝床というのは、それだけで寒々しい。
携帯で時刻を確認すると、まだ午前四時。
ぼんやりした意識の中、彼女の姿を探した手は虚しく宙を舞い、枕の上に落ちた。
何度か彼女の名をモゴモゴ呼んでみるが、呼び掛けに答える声は無く闇に溶ける。
ゆっくりと泳がせた視線は、自然とキッチンへと行き着いた。
**********
高校時代の元彼の夢を見た。
正直二度と思い出したくない類のトラウマ、遥か遠い日の記憶。
夢の中の私はまだ元彼と上手くいっていた頃の、変わり栄えもしないごく普通の女子高生の日常を過ごしていた。別段刺激的な内容でもなかったし、まして本人に未練などないけれど、恋人と寝た夜に見るものとしては、充分に鬱陶しく、後味も悪かった。
そして目が覚めた時、視界に飛び込んできた彼の寝顔があまりにも無防備で……何とも言えぬ後ろめたさに、胸が軋んだ。
眼を閉じていると、いつもの冷めた眼差しが隠されて、彼の童顔が際立つ気がする。
彼のなだらかなカーブを描く頬が好き。鼻の形が好き。ちょっと半開きの薄い唇が好き。例えそれが、開かれた瞬間デリカシーのない毒を吐くのだとしても。
「好き」
そっと呟いて、その唇に自分のそれをほんの一瞬重ねた後、急に照れ臭くなって私はベッドから降りた。
もう眠れそうにないと思いヤカンに水を入れコンロにかけて、ガスの青い火を見つめた。
青い炎は、赤色のそれよりも高温なのだという。
熱さなんて全く感じさせないくせに、その内側は酷く激しい。まるで彼そのものだと思った。
そして私は……そんな激しさを秘めた彼が好きなのだ、とても。
初め、その気持ちをわざわざ彼に伝えるつもりは無かった。
それまでの『ちょっと親しく話をする職場の先輩後輩』という微妙で曖昧な関係でも充分満足していたし、変化など求めるより、現在の関係を保っていたい。
高校時代のトラウマもあって、恋愛には臆病になっていた。
だがそう願っていたのはこちらだけだったようで、出逢って半年後、私は彼に交際を申し込まれた。
その時は断った。
でも彼は、意外な程根気強く私に寄り添い、トラウマを払拭してくれたのだ。その後改めて交際を申し込まれ、私ももう断る理由はなかった。
「だーれだ?」
「ひっ……!」
突然背後から伸びた手に視界を遮られ、私は飛び上がる程驚いた。
慌てて振り返ると、不機嫌そうな顔をした恋人がこちらを見詰めている。
「もう、びっくりさせないで……」
「そりゃこっちの台詞だ、起きたら居ねえし。で、何してんだ? こんな明け方に」
「……嫌な夢見た。何か寝れないし、お茶でも淹れようかなって」
「ふーん」
抑揚の乏しい声音で呟きながら、彼はカチ、とコンロの火を消した。
「あ!」
「そんなのいいから、さっさと寝るぞ」
「でも」
「……寒いんだよ。寝れないなら俺の湯たんぽになれ」
ぐいと強く手を引かれ、無言のままベッドへ誘導する彼に、あっという間に中へ引きずり込まれた。
すっかり冷えてしまった身体を背中からぎゅっと抱きしめられて、思わず鼓動が速くなる。彼にもそれは伝わってしまったようで、ふっと笑う気配と吐息を耳元に感じた。
「何だ、今更恥ずかしいのかよ」
「ち、違う」
「……あまり心配させんな」
「?」
ちょっとベッドから離れたくらいで、一体何を心配したと言うのだろうか。肩越しに振り返り尋ねようとしたが、やめた。
彼が今どんな顔をしているのか、私をどんな眼で見ているのか、それを確かめるのが、何故か怖かった。
「……お休みなさい」
お休み、と短く返された後、うなじに穏やかな寝息。背後に温かな体温を感じて、私はほっと息を吐く。
そしてようやく訪れた眠りの波に身を任せながら、眼を閉じた。
―――きっともうあんな夢は、見ない。
君に出逢って、遠い日の記憶はそこへ置いていくと誓った。
これからどんな未来が待ち受けようが構わない。
君が国の為にと起こした出来事が反逆罪として扱われ、そして処刑されてしまう未来だったとしても。絶対に君を手放さないし、そんなことは起こさせない。
僕がここへ来たのはきっと、君と出逢う為。本来の目的なんてもう忘れる。
遠い日の記憶が教えてくれる。君を救う為の道程を。
いつかこの記憶が、全て書き換わり失われるとしても。それと共に僕という存在が消えてしまっても。
遠い未来からやって来た僕なら、それが出来るのだから。
君の為に、この世界の未来すら変えてみせるよ。
『遠い日の記憶』
差し出された
その手の冷たさに
怯えながらも
すがりつく
夜の淵を
彷徨いながら
ふたり落ちていく
場所を求めて
そんなさみしい愛し方
あなたの腕の中で
死んでいけたら
幸せと
本気で夢見た
あの頃のわたし
とても長い時が
過ぎたのに
あの頃の想いも
色褪せたのに
想い うらはら
冷たいその手に
震えながらも
すがりつく
☆ 想い うらはら (218)
「部活、やめたいです。」
私は中学校から5年間続けたバレーボールをやめた。私のミスで、相手チームの流れになってしまい、試合に負けた。
チームメイトの皆は、貴方のせいじゃない。と言ってくれたが、相手の流れになってからスパイクを打ってもミスばかり。相手のマッチポイント。私はフェイントでブロックに捕まった。私のせいで負けたんだ。責任を感じた私は部活を退部した。
部活をやめてから放課後は暇になった。いつもの習慣で、体育館の入口に来てしまい、体育館でバレーの練習をするチームメイトが見えた。すると、考えてしまう。あぁ、どうして部活をやめたんだろう。こんなにも、バレーが好きなのに。
「お母さん、部活やめたい。エースの私が大事なときに逃げちゃってミスをしたから、相手チームの流れになって、それで、」
私は逃げてしまった。逃げたことに今でも後悔している。
"一度のミスで逃げても後悔しない?"
遠い日の記憶は、なかなか拭いきれない。あの悪女によって印された、人生の汚点。
人のおもいを躊躇いもなく踏みにじった売女……人でなしの今井裕子。
遠い日の記憶……。
計りたい。計れない。計りたくない。
さまざまな思いが、交錯する。
♯遠い日の記憶
澄んだ夏の朝。
僕は大好きだった人を殺した。
白くも青い空に吸い込まれて行った彼は今日飛び降りた。
僕が大好きだと告白した。同棲愛だった。
彼は優しい笑顔で「伝えてくれてありがとう。」そう言って飛び降りた。
彼は元から死ぬ気だった。
両親からの虐待、学校でのいじめ。
生きる意味がなくなっていた。
僕が告白して死ぬ覚悟ができてしまったらしい。
僕が殺したのだ。
これは遠い日の記憶の話だ。
遠い日の記憶______。
2人の看守に引っ張られ、1人の老男が狭い通路を歩いていた。
しばらく進むと、小さな檻が幾つか並んだ部屋に辿り着く。
老男はほんのり抵抗を試みたものの、若い看守2人に敵うはずもなく、あっという間に檻の中に閉じ込められてしまった。
檻の向こうで、酷くこちらを睨みつける看守たちと目があう。
老男は誰にも聞こえぬほど小さく息を吐くと、看守に背を向け、痛めた右足を庇いながら、ゆっくり腰を下ろして正座を取った。
これで文句は無いだろうと看守を一瞥すると、やがて看守達はどこかへ行ってしまった。
さて、今日から三十日間、長い懲罰が始まる。
懲罰の間は、就寝と食事以外、朝から晩までひたすら壁を向き正座をしなければならない。
考えるだけで、退屈で気が狂ってしまいそうになる。
幸いにも老男には今まで生きてきた六十数年の人生があった。
思い出せる限り遠い日の記憶から、ゆっくりと振り返っていくとしよう。
遠い日の記憶
父は大工をしていて普段は寡黙な人だった。 父が帰ると必ず1番に風呂に入り、夕食の時は父の好きな野球を観ながら食べた。マンガが観たいなんて言えなかった。
妹と喧嘩をすると、うるさいと言われ2人で外に出された。
母は優しく、そっと裏から入れてくれた。
父はお酒が好きで、少し酔うと笑ってくれた。普段、笑わないから嬉しくなったのを覚えている。
父は大工だから本当は男の子が欲しかったんだろうな〜っていつも思っていた。
そんな父だったけれど、夏は必ず多摩川の花火大会に連れて行ってくれた。
「くるぞ、くるぞ〜ほ〜らでかいのきた〜
あれはナイアガラの滝っていう花火だ すごいだろ〜
連発花火だ!綺麗だな〜」
と、私と妹に上機嫌で話してくれる。
花火大会が終わると一斉に皆んな帰るため、ぎゅうぎゅうに混雑する。
父は妹をおんぶし、私の手をぎゅと握る。
「絶対に離れるなよ」
と言って痛いくらい握ってた。
父は60歳で亡くなった。癌だった。
私ももうすぐ父が亡くなった歳になる。 夏の花火を見ると父を思い出す。
夏の遠い日の記憶である。
小学校6年生のとき
9才の妹と5才の弟を連れて
海辺の道を必死に走っていた
手を繋いで全力で
妹や弟には速すぎて
妹はバッグを落として卵を割ってしまった
弟は走りきれず転んで膝から血を出していた
2人とも泣いている、でも
急がないと、走らないと
2人を連れて丘の上の病院まで
日が暮れてどんどん暗くなる
やっと、やっと辿り着いたとき
母はもう亡くなった後だった
白い顔をしていた
隣の部屋のテレビから
「浜辺の歌」が流れていた
あの曲を耳にすると
あの日の全部が押し寄せてくる
「遠い日の記憶」
#168
遠い日の記憶が巡る
TIMELINE
かつての記憶が刃になり
心を裂いたとしても
過ぎ去った日に戻ることは出来ない。
この世界に生きる人のどれだけが
後悔なく生きていけるのだろうか。
思い出は甘く苦く。
甘美と苦痛が織りなす複雑なハーモニー。
これが、この世界で生きてきた私の証。
「ねぇ、オネーサンが雨ヶ崎哀ちゃん?」
『? はい、そうですが……何か……?』
昼休み、急に知らない二人の女の子達に声をかけられた。
……いや、完全に知らないわけではない。
最近転入してきた子達。
私の中学校は1学年に8クラスだから、会ったことが無いだけで。
二人の転入生は、転入後直ぐに有名になった。
事情があるらしく、短い期間……1ヶ月だけの転入らしい。
今は慣れるための期間らしく、制服こそ着用しているものの、髪を下ろしていて校則違反だ。
そしてそれが許されるだけの理由があった。
彼女達はそれぞれデザイナーと小説家らしく、興味が無くても名前くらいは聞いたことがあるレベルの人気っぷりだ。
かく言う私も知っており、それぞれの作品を推している。
今日も仕事の合間に来たらしく、二日目だということもあり自由にしていても許されていた。
「良かったぁ!間違えてたらどうしようかと思ったよ……」
「まあ、結局あってたんだからいいじゃありんせんか」
にこにこと可愛らしい笑顔を浮かべているのが有名デザイナーの飴嶋喜楽。
独特の花魁言葉ではんなりと笑うのが人気作家、間宵優。
人が居ると話しにくいからと空き教室に連れてこられた私は気が気では無かった。
周りから人気の女の子達に目を付けられたらどれだけ恐ろしいか私は知っている。
周りに人がいないか確認をして、二人は交互に言い始める。
「さて、と。ボク達は君に個人的な用があってここに来たんだ」
「哀さんが受けている酷い仕打ちは知ってやす。それに関することでありんす」
「ねぇ、哀ちゃん」
「「ボク/わっち と一緒に 来ない?」」
『……なんてこともあったね……』
「そんなこともありんしたねぇ……。今思うと少し強引すぎたかもしれんせん」
「哀ちゃんごめんねえぇぇ」
『良いよ、あれのお陰で今ここにいれるんだし』
「めっちゃ良い子なんだけど~!(泣)」
ーお題:遠い日の記憶ー
-海- 【お題:遠い日の記憶】
「ふう」
大きな溜め息を着く。
この海は記憶に新しい。だけど同時に古かったりする。昔幼なじみの男の子と一緒にきたことがある。そして、
私が今"彼"と住んでいる場所でもある。
移住するとき私が海の近くを希望したら偶然彼が見つけてきたのだ。
そう。偶然。しかし必然だったのかもしれない。私には"彼"の考えていることがわからない。
付き合ってもいないのに一緒に住むだなんて考えても見なかったようなこと。
それをすんなりと受け入れ、生活をしている。
でも確実に分かっていることがある。
『"彼"は私のことは好きじゃない』
私が"彼"に何度伝えても伝わらなかった『好き』が私のことを攻撃してくる。
そして、今。こんな結末を連れてきた。
「はぁ、はぁっ、桜!」
「やっと来たんだ。千秋くん」
彼はここまで走ってきたのか息が切れている。
「なんで、出会った頃の呼び方...!おい、桜、何してっ!」
「ふふふ、秋くんまでこっちに来たら濡れちゃうでしょ?」
そう、笑いながら言う。
「そんなこと気にしている場合じゃないだろ!」
「ほんと秋くんは優しいなぁ、...きみが私のことを好きになってくれたら本当に良かったのに」
「え?」
「ずっと考えてきたんだよ。幼稚園の頃隣の家に引っ越してきた"幼馴染の君"と両思いになれること。
...でもそれは叶わなかった。だから今日、さよならをするの。世界に。全てに。」
「そんなこと!俺だって桜のことがずっと好きだった!」
「ふふふ、秋くんは本っ当に優しいなぁ。でもね、嘘は良くないんだよ?」
「嘘なんかじゃっ!」
「このタイミングで好きって言われてもそんなこと信じられないよ。私、神様でも何でもないから秋くんの気持ちなんて
わからない」
「でもっ、本当に!」
「秋くん、遊ぼうよ。昔みたいにさ。海の中、駆け回ったでしょ?」
そう言って海の中を走り出す。
「桜っ!」
そんな声が聞こえたけど、気にしない。冷たい。7月の海とはいえ、まだ夜の海は冷たかった。
まるで、あの日みたい。
「千秋く~ん!」
「待って、桜ちゃん!」
「きゃっ!」
「桜ちゃん!」
あのとき、転んだ私の手を引っ張り上げてくれたんだよね。秋くん。
そんな遠い日の記憶。それにふけってる間にもう顔に水かかる深さになっていた。
進みづらい。そりゃそうだ。全身で水の抵抗を受けているのだから。
人は20センチもあれば溺れるって昔学校の先生が言っていた。
「あっ!」
波に流されてバランスを崩した。沈む。
...もうこのままでいいか。さすがの秋くんもここまでは来ないだろうし。
そうして私は目をつむた。
君は言ったんだ。
『私、あなたに興味ないから。』
夕焼けのせいか赤く染まった顔を自分で自覚してそうな君。
「それでも、僕は君を振り向かせるために努力するから。」
『転校するって本当?』
「嘘でこんなこと言わねえよ」
『またね』
遠い日の記憶。
晴れて今日から大学生です。
『あのさ、あん時に言ったの嘘だから。』
「は?」
『私、あなたにしか興味ないから。』
久しぶりに会った君は
相変わらず眩しかった。
「遠い日の記憶」
すきなひととの思い出とか
ほめられたこととか
試験に合格したとか
嬉しい記憶はいつでも思い出せる
心の浅い部分に
きちんとしまわれていて
自信を無くしそうになったり
かなしくなって誰にも相談できない時
それを引き出しから出して
パラパラとページをめくって
私は虫の息をようやく
ゴホッゴホッと吹き返す
好きな人に拒否されたとか
誹謗中傷をうけたとか
あなたは要らないとばかりに
不合格になったバイト面接とか
忘れたい記憶は
もう出てこなくて良い。
心の奥の奥に鍵をかけて
深い海の底に沈めるように
真っ暗で探せないところに
放っておく
輪郭がぼんやりしながら
いっそ風化してほしい。
やがて塵となって消えて欲しい。
そういうのをまとめて
「遠い日の記憶」という。
昔、或る幼女が言った。
あの頃は虫さんたちと歌ってましたね。なつかしいです。土に溶けてなくなるまでは、よく風さんと踊ってました〜!!
周りの人は苦笑いしていた。またこいつ頭おかしくなったのかと。しかし、私は大切にしていた葉っぱさんがどこかに行ったのを鮮明に覚えていた、
遠い日の記憶。
一人ぼっちで広告の剣を作って。
一人ぼっちで図書室で本を読んで。
一人ぼっちで食堂でご飯を食べて。
その時は寂しかったかは覚えていない。
それでも大事な記憶。
今は一人ぼっちでも寂しくない。
大人になったからか。
一人ぼっちがあったから人の暖かさが身に沁みる。
遠い日の記憶
小さいころ、家族で買い物に来ていた。
私はわがままをいい、泣き叫んでいた。
お菓子を買ってもらえなかったから。
親の手をはなして、1人でスーパーの中を走った。
途中で、親を見失いまた泣いた。