Open App

「ねぇ、オネーサンが雨ヶ崎哀ちゃん?」

『? はい、そうですが……何か……?』

昼休み、急に知らない二人の女の子達に声をかけられた。
……いや、完全に知らないわけではない。

最近転入してきた子達。
私の中学校は1学年に8クラスだから、会ったことが無いだけで。

二人の転入生は、転入後直ぐに有名になった。

事情があるらしく、短い期間……1ヶ月だけの転入らしい。
今は慣れるための期間らしく、制服こそ着用しているものの、髪を下ろしていて校則違反だ。

そしてそれが許されるだけの理由があった。
彼女達はそれぞれデザイナーと小説家らしく、興味が無くても名前くらいは聞いたことがあるレベルの人気っぷりだ。
かく言う私も知っており、それぞれの作品を推している。
今日も仕事の合間に来たらしく、二日目だということもあり自由にしていても許されていた。

「良かったぁ!間違えてたらどうしようかと思ったよ……」
「まあ、結局あってたんだからいいじゃありんせんか」

にこにこと可愛らしい笑顔を浮かべているのが有名デザイナーの飴嶋喜楽。
独特の花魁言葉ではんなりと笑うのが人気作家、間宵優。

人が居ると話しにくいからと空き教室に連れてこられた私は気が気では無かった。
周りから人気の女の子達に目を付けられたらどれだけ恐ろしいか私は知っている。
周りに人がいないか確認をして、二人は交互に言い始める。


「さて、と。ボク達は君に個人的な用があってここに来たんだ」
「哀さんが受けている酷い仕打ちは知ってやす。それに関することでありんす」

「ねぇ、哀ちゃん」

「「ボク/わっち と一緒に 来ない?」」





『……なんてこともあったね……』
「そんなこともありんしたねぇ……。今思うと少し強引すぎたかもしれんせん」
「哀ちゃんごめんねえぇぇ」
『良いよ、あれのお陰で今ここにいれるんだし』
「めっちゃ良い子なんだけど~!(泣)」




ーお題:遠い日の記憶ー

7/17/2023, 11:14:46 AM