遠い日の記憶______。
2人の看守に引っ張られ、1人の老男が狭い通路を歩いていた。
しばらく進むと、小さな檻が幾つか並んだ部屋に辿り着く。
老男はほんのり抵抗を試みたものの、若い看守2人に敵うはずもなく、あっという間に檻の中に閉じ込められてしまった。
檻の向こうで、酷くこちらを睨みつける看守たちと目があう。
老男は誰にも聞こえぬほど小さく息を吐くと、看守に背を向け、痛めた右足を庇いながら、ゆっくり腰を下ろして正座を取った。
これで文句は無いだろうと看守を一瞥すると、やがて看守達はどこかへ行ってしまった。
さて、今日から三十日間、長い懲罰が始まる。
懲罰の間は、就寝と食事以外、朝から晩までひたすら壁を向き正座をしなければならない。
考えるだけで、退屈で気が狂ってしまいそうになる。
幸いにも老男には今まで生きてきた六十数年の人生があった。
思い出せる限り遠い日の記憶から、ゆっくりと振り返っていくとしよう。
7/17/2023, 11:23:54 AM