手を繋いで、2人で歩いていく。
こんな単純なことが、どうして分からなかったんだ。
本当に、馬鹿だよ
眠れないほどに、心が不安定になった日の夜。
明日はもうそこまで迫っていて、
すぐにでも瞼は落ちてしまいそうだというのに、
心だけが明日を拒絶してしまっている。
天使『お金を拾ったのですね。きっと持ち主はとても困っているはず、急いで交番に向かいましょう!』
悪魔『おいおい何言ってんだ。こんな大金滅多にお目にかかれないぜ?誰か来る前にとっと持って帰るぞ』
天使『何を言っているんですか!このお金は私たちの物ではありません』
悪魔『ふざけんな!俺たちが見つけたんだから、俺たちの物だろう』
天使『なんて下劣で低俗な考えなんですか』
悪魔『うるさい。聖人ぶった偽善者め』
頭の中で天使と悪魔が言い争いを始めてしまった。
本当なら天使の言う通りにして、早く交番に届けるべきなのだが、目のアタッシュケースの中身は1億円。
悔しいが、悪魔の囁きに身を任せてしまいそうになる。
光と闇の狭間、答えのないこの場所で葛藤し、新しい答えを導き出すのが、人という生き物だ。
私『まてよ、馬で倍にしてから返せばいいのでは?』
足元のアタッシュケースを握り締め、颯爽と競馬場に向かった私だったが、受付に怪しまれ、1時間後には警察署で取り調べを受けることになった。
失って初めて気づく大切な人やモノの存在に、
もっと早く気づくことができれば、
きっとそこが理想郷だったんだと思う。
『私の日記帳』
終焉の鐘が鳴る。
黒炎の剣は解き放たれ、この世界は浄土と化した。
遂にラグナロクの時が来たのだ。
黒雲の合間から、赤き月が笑う。
暫くして、天上の世界から次々と翼の使者たちが現れた。
彼らの使命は地上で生き残った人間たちを探すことだ。
捕えられた人々は、神々から永遠の命を与えられる代わりに、永遠の地獄を味わい続けることとなる。
もう、人類に未来はなかった。
いや、そんな結末、この私が許す筈がない。
大地を裂いた黒煙の剣を手にし、私は翼の使者達を次々と薙ぎ払った。
私が剣を振るう度、黒い鮮血が大地を濡らす。
やがて全ての使者を仕留めた私は、最後にその刃を天に振るった。
黒雲は裂かれ、とうとう赤月は姿を現した。
血で黒く染まった剣を月に向け、私は叫ぶ。
「私はお前たちを許さない。しかし、命だけは勘弁してやろう。だから、全てを元に戻せ」
という事が、前日にあったんです。
だから、赤点のことは勘弁してくれませんか、お母さん。