『過ぎた日を想う』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
後悔ばかり想い出す
すぐにいいことが出てこない
これは性格なのか脳の癖なのか
過ぎた日を想わず
楽しい未来のことを考えよう
過ぎた日を思う (10.7)
え?——あぁ、ごめんね。“ブックストア”って私のあだ名だったから。小学校の頃の。
ちょ、ダサいとか言わないで。
呼んでたのは一人の男子だけだよ?「ブックストア、今日読んでるのは何の本なん?」みたいに、毎日私の読書に干渉してくるだけ。
別に悪口じゃないし困ってなかったけど、ある日宿題で
「嬉しかったことも、嫌なことも、今のみんなの気持ちを教えて」
って作文を渡されたんだ。それで——何となくあだ名のことを書いたら、すぐ呼び出されちゃって。
ほら、あの頃いじめとか問題だったじゃん?だから、仕方ない。
でもね。
次の日名字で呼ばれたら、肺が急にちっさくなって息が苦しくなったの。視界がじんわり滲んで、よくわかんないけど嫌だーって。
先生はからかってると思ったんだろうけど、私にとってはアイツからの“特別”のしるしだったの。些細な会話の繰り返しが、私の大好きな時間だったんだよ。
彼にとって私ってなんだろう。
都合のいい女?
「……みじめだ」
私はまたお酒を流し込んだ。
"過ぎた日を想う"
いつだって後悔ばかりが想起する。
あのときこうしていればとか。
あのときこう言ってあげていればとか。
ああ、間違ってしまったなと、苦く思うのだ。
でも幸せだったことや、楽しいことだって、後悔と同じ数だけあるのは確かで。
だから僕はたぶん。
間違ってばかりでもなかったはずだし。
それが間違っていたかどうかは、きっともっと後になって噛みしめることになるのだろう。
過ぎた日を何度も想いながら、今日も僕は今の僕だけができる選択を、どちらがいいだろうと天秤にかけている。
【過ぎた日を想う】
『過ぎた日を想う』
過去を振り返ることが年々増えてきたなと思う。もし自分の人生に心底満足していたなら、ここまで振り返ってたのかな。
人生をやり直せるならいつからがいい?っていう質問をたまに耳にします。やり直したいなんて思わない!前しか見てない!って言い切れたら格好いいですね。
私の場合は割と頻繁に、自分に対してこの問いを投げかけることがあります。答えはだいたい、高校生から。それか、高校も選び直したいから中学生の進路を決める頃からになるかな。
もしそこで別の道を選んでいたら、今とは違った人生になっていたのか。今頃どこで何をしていたのか。しかし思い返してみても、当時自分が選んだ道以外に選択肢ってなかったような…
それでも過去か未来かどっちに行きたいかと問われれば、即答で過去!
ということはやり直したいんだね、やっぱり。それは別の人生に興味があるからというんじゃなく、今の人生に納得がいってないからだと思う。納得できる部分もあるけど、全体通して見るとやっぱり納得いかない。現状に対して「なんで?」と思う部分がたくさんあるから。けどそれもこれも全部自分が選んできたこと。だから不満も満足も全部受け入れないと、、ってことになりますね。
昔の自分に会いたくなって、過去に働いていた場所を再訪したことがあります。
知ってる人いるかなとかそういうことじゃなく、ただそこの風景をもう一度見たくて。
もう従業員じゃないから内部には当然入れないけど、建物の外観とか中の雰囲気とか、あぁこういう感じだったなーこのドアから毎日出入りしてたなーとか。
懐かしさと、退職してから10年も経つのに何も変わっていない安心感がありました。
無意識に当時の社員さんの顔を探してしまってましたね笑 見当たらなかったし、私も気づかれてなかったと思いますが。たぶん。別に気づかれても良かったけど。
退職後、結果的にここでの仕事が足掛かりとなって今の仕事に繋がりました。
だから当時この仕事を選んだのは正解だったことになる。…けど間違いだったかもしれないと今は思う。思ってしまう。。
自分の経験で言うと、人生にタラレバは尽きないなと思います。言いだしたら本当にキリがない。なんなら生まれるのがあと10年遅かったら良かったのにとか。両親が出会うの早すぎたわとか。何の根拠もないのに。
ドラえもんの道具で過去に戻ってそこから人生をやり直しても、満足してたかなんてわからない。もしかしたら今よりもっと辛い状況になってたかもしれない。隣の芝はどこまでも青いんだろうと思います。
自分がこれからどこに向かうのかまったくわからないけど、たまには過去に戻ってみるのもいいことだと思う。くよくよしたっていいんだよ。そこで何か気づきがあるかもしれないし、なくてもいいし。
この先後悔が消えることはきっとないけど、満足100%になることもたぶんない。
行きつ戻りつしながら歩んでいったらいいのかなと思います。
もう終わったこと。
好きだったことも
毎日が幸せでワクワクしてたことも。
過ぎ去った日々は戻らない。
美しく、切ない色の記憶に変わるだけ。
物事は必ず終わりを迎える。
変わらないものはない。
そしてまた新しく迎える。
過ぎた日を想う
楽しくて仕方なかった日
悲しかった日
後悔で溺れた日
幸せを感じた日
うん。色んな日々を味わえてる
明日想う今日はどんな日かな
舞華
暗がりの道を歩き、ふと上を見やると電柱の明かりが点滅していた。この辺りにはこれ一つしかない、点滅する電柱。そうだ、確か、私があの時待ち合わせたのもここではなかったか。もう二度と来ることなどないだろうと思っていたがしかし、奇妙な巡り合わせだとも思った。あの頃からずっと、明かりはチカチカと点滅していたのか。
[過ぎた日を思う]
人生で出会う人達は必然なのか偶然なのか。
あの日あの時、こうしてたら、こうしてなければ
出会わなかった人達。
些細な事から重要な事まで毎日選択の繰り返しが
人生。
目の前には常に岐路があり、どちら一つにしか
進めないのが人生。
その中で出会っていく人達ってある意味
運命の人な気がする。
今まで出会った人達、これから出会う人達、
過ぎた日に想う、自分の選択は間違いじゃなかったと。
これからの日に想う、きっとこれからの選択も
間違いないんだと。
出会ってくれてありがとう。
過ぎた日を想うと苦しくなる
過ぎてしまったのは仕方の無いこと
わかってる
わかってるけど苦しい
過ぎてしまったけどまだ次がある
いつまで道があるかわかんない
だから過去も大切に扱おうか
過ぎた日を思う
若い男だった。
妻がいる。妻はどうやら妊娠している。家の中は質素だが、二人ともよく働くので日々の暮らしに不自由はなかった。
家の横に小さな畑があり、それなりに収穫できた。俺は農具も作るんだ。
そうそう、食卓の上の天井近くに棚を作って皿を飾るのが女たちの間で流行ってたんだっけ。
妻が珍しく何度も言ってきたんだ。俺に棚を作って欲しいって。あなたなら造作もないことでしょう?お願いよ。うんうん分かった。今度な。任せとけって。
そのうち戦争が始まって、俺たち若い男はよく分からないまま全員駆り出されることになった。
家を出る時、妻はイヤな顔をしていたが、俺たちは日常とは違う時間にワクワクしていて気にも留めなかった。
ずいぶん長い時間歩いて歩いて、みんな砂まみれになって、何もないこの土地にやって来た。
どうやらここは、俺たちの国の端っこに当たるそうだ。最果てってやつ。
…国?そんなこと考えた事もなかったな。
戦いが始まった。
誰かの号令と共に俺たちは走り出す。
何でもいいからあの岩の向こうに隠れてる奴らをやっつければいいんだよな。
あれ?武器が俺たちのとは違う。ずいぶん遠くから飛んでくるじゃないか。これは反則だろう。そうかルールもクソもないから戦争なんだ。
そんならこっちも…と俺は敵を踏み越え何とか斬り込んで行く。けっこうやれるな。みんな痩せた奴ばっかだもんな。
その時左の後ろから尖ったあれが飛んで来て、こめかみに突き刺さった。
俺もさっき誰かの頭に斧をブチ込んだばかりだ。あいつもこんな感じだったのかね?
大量の血が噴き出してきて、思わず持っていた武器を捨てて両手で押さえた。何てこった。ここでおしまいとは。全く思ってもみなかった。
こんなことならとっとと棚なんか作ってやればよかったな。俺が死んだらあいつはどうなるんだっけ。子供は生まれるのだろうか。髪は俺と同じ金色で、瞳はあいつの緑がかった灰色とか?
…ま、何とかなるだろう。俺だってここまで生きて来れたんだしさ。
しかしこのデカイ体がここで朽ちてしまうのは、何とももったいねえことだな。
ああ目が霞んできた。右の耳はまだまだ聞こえてる。鼻は元から大して利きゃしなかった。
男は膝から崩れ落ちた。足下にできていた自分の血溜まりが彼を受け止める。
砂と混ざり合い、ざらざらと温かく塩辛い血。大きかった俺の体に流れていた血。これが懐かしいってやつかなあ。
ともかく一旦ここで終わりだ。
さらば。さらば世界よ。
瞼が閉じられ、世界は消えた。
とさ、と、静かに着地をする音が聞こえた。紅葉の帳が降りる逢魔が時、決まって静かに現れては、いつの間にか消えている音。縁側に座る私の、すぐ隣にいる音の主は、いつもただ黙って私を見ている。私はゆっくりと立ち上がると、数歩ほど歩いてみる。ガサガサ、と落ち葉を踏む音が静かに響いた。
「こうして会うのも、今日で最後になりそうね」
縁側に座り、私を見る男は、罰が悪そうに立ち上がると私の手をとり縁側へ連れ戻した。そよ風が頬を撫でる。この心地よい風は、あと少しで肌を刺すような冷たい風に変わるのだ。
「何か、喋ってくださいよ。私だけ話をするのは寂しいわ。それとも、何か怒っているの」
男は気まずそうに息を吐いた。
「怒ってないよ、……ただ、僕が今までここにきてたの、バレてたんやなって恥ずかしくなっただけ」
握った手の感触。どこか力の抜けた、ゆるりとした声色は出会った時と何ら変わらず、どこか可笑しくて、くすり、と笑った。
「……ほんと、いやんなるわ。人間が生きられる時間は短い」
「まあ、貴方からするとそうね」
私は、随分昔に機能しなくなった瞳を彼に向けて微笑んだ。彼は、私の手をぎゅっと握った。ひんやりとした外気に寒くなった体を震わせると、彼が私の背中に羽毛をまわすのが分かった。
「今年は、もうここへ来ないんでしょう。明るい話がしたいわ。ほら、思い出話とか、ね」
「……呑気やな。君は。来年の秋までもたないって、医者から聞いた。……最後って、君も分かってるやろ」
男はむっとした口調で吐き捨てた。私は困ったように笑って、でも何も言わなかった。
「……最後くらい、なんかないの。もっと生きたいとか、死にたくないとか……そんなん。……一応、僕妖怪だから、君のお願い、一つなら叶えてやれるけど」
背中にまわった羽毛にぎゅっと力が入った。そうねぇ、と呟いて、お願いを考える。今、彼はどんな表情で私を見ているのだろう。初めて出会った時から胡散臭い薄ら笑いばかりしていた彼は、今。
「じゃあ、思い出話に付き合ってほしいわ」
―――
畳の上に敷かれた布団。横たわる彼女の傍らで、妖怪は呆然と座っていた。去年の今頃、妖怪は彼女と思い出話をした。話した思い出は出会った時のものばかりで、それでも彼女は嬉しそうに笑った。
彼女は、肝の座った少女だった。唐突に彼女の前に表れた妖怪に、自分も十分に食べれていないだろうに、少ない飯を恵んでやるくらいには、強かな娘だった。妖怪が少女を好きになるのに、時間はかからなかった。寿命について意識しだしたのも、このごろだ。少女の寿命はあとたった数十年でつきる。数千年生きてきた妖怪には、その事実がたまらなくつらく感じた。これ以上好きにならぬように、妖怪は少女が成人を迎えるのと同時に忽然と姿を消した。少しだけ離れて、結局戻ってきた時には彼女は年をとっていて、事故で失明していた。それから秋の間は彼女を見守って、怖じ気づいて離れ、また秋に彼女のもとへ戻る、を繰り返していた。そんな調子だったので、思い出話をしたいと言われた時、妖怪は何も言えなかった。
距離を取っていた時間も、全部。彼女にあてていればよかった。そして、かなうなら彼女と共に年をとりたかった。後悔する時は、いつもこうだ。
彼女は春を迎えるとほどなくして息を引き取った。妖怪は思い出を語れなかったあの日から、彼女の側にいることを決めた。久しぶりに、一緒に桜をみた。ほどなくして青葉にかわり、また紅葉の帳をおろすのだろう。
妖怪は静かに目を閉じた。
過ぎた日を想う
父とカブト虫を取りに行ったり
裏山に探検に行ったり
クリスマスにアイスのケーキを買ってきてくれたり
お休みのチューをおでこにしてくれたり
命日が来る度に過ぎた日の父との遠い記憶に
想いを馳せる
みんな、居なくなればいい。
毎日毎日、祈っていたら神様が願いを叶えてくれたようだ。
朝、起きたら一人だった。
父も母も、妹も居ない。
二階の自分の部屋の窓から外を見た。
いつもなら誰かしら歩いている道には人っ子一人居ない、うるさいカラスの鳴き声すら聞こえてこない。
みんな、居なくなった。
やったあ、と今まで出したこともない大きな声で叫んでいた。
それからは楽しい毎日だった。
朝から晩までゲームをして、大好きな漫画や小説を読んで、大声で歌を歌った。
家々の窓ガラスを叩き割り、アパートに火を着けて燃やしてみたり、金持ちの家の庭の池に入浴剤をぶち込んで真っ黄色にもしてみた。
あ〜愉快愉快、さあ、次は何して――。
ブチン、と音がして私が消えた。
姉の脳腫瘍が見つかった時には、既に手遅れだった。
意味のない延命をするくらいなら、と姉は安楽死を望んだが、父も母も反対した。
どんな姿でも良いから生きていてほしい、そう言って。
その日から姉は変わってしまった、おっとりと優しかった姉が父や母を罵倒するようになった。
安楽死に賛成してれば良かった、なんて父も母も言い出すようになった。
治る見込みもなく、身体が動かせなくなり自分で死ぬことも出来なくなった姉は、掠れた声さえ出なくなった口を死の間際まで動かし続けていた。
みんな、いなくなれ。
わたしよりも、くるしんで、苦しみ抜いて。
死ね。 、と。
テーマ「過ぎた日を想う」
過ぎた日を想う
幼い時にとある病気にかかって入院をしたことがある。その時に優しく接してくれた看護師さんに憧れて、自分もいつか誰かの為になりたくてここまできた。志望した看護系の大学にも受かってしばらく、ついに実習が始まった。奇しくも実習先の一覧には昔お世話になった病院の名前が連ねてあり、その偶然と、もしかしたらあの時の看護師さんに再会出来るかもしれないと心を浮つかせていた。
ついにその病院で実習が始まった。初日の挨拶をして顔を上げた時、私はあっ、と思わず声を零した。あの人だ。
かつて私に親身にしてくれた看護師さんの姿がそこにはあった。あれから幾分か経つが、直ぐにその人だとわかった。自分の道を決めるきっかけとなった憧れの存在と、形は違うが同じ意味を持つ服を纏って、今度は患者ではなく同じ立場でこの場所に立っていることに感動を覚えた。
看護学生の実習は慌ただしく進む。やらなきゃいけないことも多くて、それでも何とか隙間をみて、憧れに声を掛けた。
言いたいことは沢山あった。入院していたあの時、あなたの優しさに励まされたこと。寄り添ってくれて、嬉しかったこと。あなたに憧れて、看護師を目指したこと。一言でもいいから、伝えたかった。
「あの、すいません...!」
返答はなかった。憧れはこちらを見向きもせずに、パソコンに何かを打ち込み始めた。
「あの、」
ようやくこちらに向けられた目は、驚くほど冷たく刺すようなもので、思ってもみなかった反応に身をすくませた。
「煩いなぁ、邪魔」
吐き捨てるようにかけられた言葉に凍りつく。確かに、これまでの実習でも看護師に邪険に扱われることはそこそこあった。けれども、けれども憧れだけは私を裏切らないと、あの時のまま優しく接してくれると無条件に思っていたのだ。だけど、結局その他と何も変わらなかったことを思い知らされてしまった。
心の支えにしていた存在が幻想であったことを突きつけられて、ここまで何とか耐えてきたしんどさがのしかかり、疲れが一気に噴き出したようだった。
辞めたいな。その思いが思考を埋めつくしたが、けれどもここまでの労力や山積みの課題を越えてきたことが頭をよぎって、結局このまま踏みとどまることしか出来なかった。
再開の感動や、看護師になりたいという熱意はすっかり無くなっていた。
ぎこちない私を置いて、看護師は無言で立ち上がり、ナースステーションを出ていった。
「すいません、でした」
誰にも聞かれることのなかった謝罪は、去って行った看護師への言葉なのか、憧れを壊してしまったことへの過去の自分に対してのものなのか分からなかった。
「丁度3月1日、アプリ入れて最初に書いたハナシに出した花の花言葉が、『追憶』だったわ」
犬泪夫藍(たのしいおもいで)、蕎麦(なつかしいおもいで)、それから菊咲一華(ついおく)。
まったく、過ぎたハナシと花言葉は相性が良いねぇ。某所在住物書きはネット検索を辿りながら呟いた。
マイヅルソウなどは「清純な少女の面影」だという。春咲く小さな花に、恋した誰かの「過ぎた日」を想起すれば、これでひとつエモネタが完成であろう。
「反対は『汚れっちまった野郎の行く末』?
……俺じゃねぇよ。誰だ無言で指さしてんの」
アプリのインストールから、はや220日。
過ぎた220日前を思いながら、今日も物書きは苦し紛れにネタを組む。
――――――
三連休初日。東京はこれから段々曇ってきて、連休最後の月曜日には、降水確率が80%って予報。
どこもかしこも、インフルがどうとか、発熱がどうとかで、薬局も薬の在庫が無いって聞いたから、
風邪貰ってきてもイヤだし、たまには部屋でおとなしく、出費節約でもしようと思って、
ひとまず自分の部屋の掃除を、
「あっ、」
しようと思って、積読置き場の本棚の、上を小さなパタパタホウキで叩いたら、
「やだ、懐かしい」
棚の上から、ピラピラ、10cm四方のワックスペーパーが数枚落ちてきた。
花の写真が薄くプリントされた、オリジナルのワックスペーパーだ。
昔々、数ヶ月前、具体的には4月18日、
私の職場の、雪国の田舎出身っていう先輩が、その紙に小さなキューブチョコを、キャンディーみたいに包んで渡してくれた。
チョコは当然、とっくの昔に食べちゃったけど、包み紙の方はどうしても捨てられなくて、
いつかキレイに飾ろうって、折り目を直して、そのまま放ったらかしてた。
「すっかり忘れてた。ここに置いてたんだ」
スミレ、フクジュソウ、カタクリ。それから名前を忘れちゃった黄色とか白とか、ともかく春の花がキレイな包み紙。
先輩は「どこで買ったか忘れた」って、平坦な表情でとぼけてた。
本当はわざわざ、プリントサービスやってる人に頼んで、作ってもらったんだ。
私が「先輩の故郷の花を見たい」とか、「故郷に行ってみたい」とか言ったから。
「……この花、なんて名前だっけ」
カサリ。
随分昔に過ぎちゃった、季節のわりに暑かった春の日を思いながら、懐かしく包み紙の数枚を見てたら、
白いタンポポみたいな、フクジュソウみたいな、名前を思い出せない花が目に入ってきた。
『私の故郷はね』
3月最初、1日に見せてもらった花だ。懐かしい思い出がもうひとつ、頭にふわり浮いてきた。
『雪が酷くて、4月直前にならなければ、クロッカスも咲かなくて』
昼の休憩時間、美味い低糖質ケーキを見つけたから奢ると手を引かれて、外出した先のオープンカフェ。
先輩は虚空を見たまま、故郷の春を語ってくれた。
『今頃はまだ、妖精さんも雪の中だ』
「春の妖精」。春の最初から咲き始めて、夏来る前に土の中に帰る花。数十種類ある内の、そのひとつ。
「追憶」を花言葉に持つ、白と青紫の花畑。
あの頃がなんとなく懐かしくって、プリントされた花を見ながら、ちょっとだけ、しんみりした。
この紙をくれた先輩とは、近々すぐ、会う予定だから、その時「あの花なんだったっけ」って、聞いてみようと思う。
月を見て後悔するくらいには、貴方に焦がれていたのよ。
───『過ぎた日を想う』
卒業式だな、明日。結局3年間ずっと好きだった
もう会うことなんてないだろう、、、
私のノート書いてくれたな、
勉強教えてくれたな、
話も聞いてくれたな
テストも競争してくれたな、
たくさん笑ったな、
たくさんバカって言われたな
もう毎日が宝物だよ。私は君のせいでバカになるんだ
気づいたら過ぎた日のことを思っていた
今日で終わりにするんだ。
君のこれからの人生がずっと幸せですように。
いつも日々の節目には、過ぎた日を思う。
昔の自分があって、今の自分があるのだと気付かされる。
それがたとえ後悔する道であっても、全てが悪とは誰もわからない。
僕の選んだ道なのだから。
「過ぎた日を思い出す」
受験勉強の果てしなく迫られた状況で、
ふと2年前ことを思い出した。
あの時は幸せだったと、
中学1年生、慣れない環境で、慣れないテスト
キツかったはずなのに今は幸せと思える不思議。
そんなとき、ふと思ったことがあった。
私達は飼い慣らされてると、
小学生の時は、幼稚園のお昼寝を羨んだ
中学生の時は、小学校の自由さを羨んだ
じゃあ、高校生では中学の時を羨むのだろうか、
大学生になれば高校の時を羨むのだろうか、
私達はレベルの上がる檻に閉じ込められているのだと。
自分から途中でその檻から出る機会は平等にあるが
その先の安定を保証してくれる人は誰も居ない。
いつしか苦しみに慣れて、対応してしまうのだろうか。
大人が好む子供に。
社会が好む人間に。
世界が好む社会に。
そうやって、終わりの無い苦しみから逃げるために
縋り続ける
美化された、過ぎた日を思いだして