みんな、居なくなればいい。
毎日毎日、祈っていたら神様が願いを叶えてくれたようだ。
朝、起きたら一人だった。
父も母も、妹も居ない。
二階の自分の部屋の窓から外を見た。
いつもなら誰かしら歩いている道には人っ子一人居ない、うるさいカラスの鳴き声すら聞こえてこない。
みんな、居なくなった。
やったあ、と今まで出したこともない大きな声で叫んでいた。
それからは楽しい毎日だった。
朝から晩までゲームをして、大好きな漫画や小説を読んで、大声で歌を歌った。
家々の窓ガラスを叩き割り、アパートに火を着けて燃やしてみたり、金持ちの家の庭の池に入浴剤をぶち込んで真っ黄色にもしてみた。
あ〜愉快愉快、さあ、次は何して――。
ブチン、と音がして私が消えた。
姉の脳腫瘍が見つかった時には、既に手遅れだった。
意味のない延命をするくらいなら、と姉は安楽死を望んだが、父も母も反対した。
どんな姿でも良いから生きていてほしい、そう言って。
その日から姉は変わってしまった、おっとりと優しかった姉が父や母を罵倒するようになった。
安楽死に賛成してれば良かった、なんて父も母も言い出すようになった。
治る見込みもなく、身体が動かせなくなり自分で死ぬことも出来なくなった姉は、掠れた声さえ出なくなった口を死の間際まで動かし続けていた。
みんな、いなくなれ。
わたしよりも、くるしんで、苦しみ抜いて。
死ね。 、と。
テーマ「過ぎた日を想う」
10/7/2023, 4:54:47 AM