封がされたままの手紙。
差出人も宛名も知らない名、だが歴とした私へ宛てられた物だ。
しかし、私はそれを見ることはない。
当然だろう?
なのに、その手紙は律儀に転送されて私の元に送られてくる。
全く、迷惑なことだ。
箱に入ったマッチを一本摘み上げて箱の側面をカッと擦る。
この時の為だけに購入した大箱のマッチも、中身を半分程に減らしていた。
朱色の頭の黒い擦過痕がチリッと瞬き、鼻をつく臭いとともに勢い良く火が着いた。
この火で差出人も燃やせないものか。
手紙を跡形もなく焼いていくオレンジ色の炎を見つめながら独り思った。
テーマ「隠された手紙」
糖質オフのヤクルト1000。
ちょっと身体に合わなかったみたい。
二日間も通行止めを食らっていて辛い。
思えばカロリーハーフのヤクルトの時も数日間、腹わたに激痛が走ったっけ……。
普通のヤクルト1000かミルミルSが私のお腹には合ってるようだ。
そして、糖質オフなのに糖質が9.6グラムも入っているなんて……。
どういうことなんだ、ヤクルトレディよ。
テーマ「あなたのもとへ」
今年は寝過ごすことなく初日の出が拝めたようで、頬を赤くさせた君が冷気を伴って帰ってきた。
「ただいま」と上機嫌に言う君の口から酒と薬の臭いがして、思わず顔を顰める。
「お屠蘇、呑んできたのか」
「うん、友達の家でちょっとだけね」
「いまどき本物だなんて、珍しいな」
少々羨ましく思いながら、黒い漆塗りの椀に焼いた角餅と小松菜や根菜の入った済まし汁を盛り付けていく。
「友達の奥さんが漢方の何か?を、やってるんだって」
「何か、って何だよ」
クスクスと笑っていると、キッチンカウンターに白い紙袋がトサッと置かれた。
土と木の臭いが微かに漏れてきて、「なんだコレは」と首を傾げる。
「分けてもらったんだ、屠蘇散」
一緒に呑もう?、と見覚えのない朱塗りの酒器を手にした君が言った。
「良いけど……、呑めるのは昼過ぎだぞ?」
テーマ「日の出」
達成出来そうもない目標は掲げるだけムダ。
なので最低限の目標だけ、決めておく。
「生きる」
これなら達成可能だろう?
死ぬ、その直前まで諦めずに、生きる。
あとは、気ままにやりたいことやっていこうかな?
テーマ「今年の抱負」
早朝から現在に至るまで垂れ流されていた流行りの飯食うテレビドラマから一時的に開放された君が食卓につく。
「年越し蕎麦、じゃなくてチキンラーメンかあ」
「長っ細いモノなら何でも良いんですよ、まあ、そんなモノ食べたところで寿命なんて変わりゃしません」
用意した白いどんぶりにポイッと乾麺を放り込んで、小皿に置いておいた卵を手にする君。
「お揚げ入れる?」
「コイツさえ有れば何も入りません」
「夜中に腹減っても知らないぞ?」
「その時はスルメでも齧っときますよ」
テーブルの角で卵に小さな割れ目を入れて、どんぶりの上でペカンッと卵を割った。
途端に、君の嬉々とした表情が更に明るくなって。
「見て、ふたご!」
君が両手で包み込むように持って見せてくれたどんぶりの中。
「うわっ、ホントだ珍しい!」
チキンラーメンの上に鎮座する二つの黄身を見下ろし、直後、ヤカンの湯を回しかけた。
テーマ「良いお年を」