何時もの時間、何時もの電車に乗って、いつも通り隅っこの改札を通って、蟻の巣のような地下街から最短距離で地上へと目指していた。
真っ白な電灯に照らされた、人気のない通路に出た。
ありえない、通勤通学の時間帯だというのに人の話し声さえ聞こえない。
完全な無音、自分の靴の音だけがやけに大きく辺りに響いた。
おかしい。
心臓が早鐘を打つ、視界が薄っすらと白く霞んで、息が吸いづらくなる。
はっ、はっ、と浅い息を繰り返す、手を付いた壁の氷のような冷たさに、ほんの少し頭が正気を取り戻していくようだった。
とにかく、急がないと遅刻してしまう。
無遅刻無欠席だけが私の取り柄だ、すぅー、と大きく息を吐き、覚悟を決めて早足で歩くと目の前の角を曲がり、慌てて引き返した。
なんか黒スーツの人がいっぱい居た……。
テーマ「どこ?」
封がされたままの手紙。
差出人も宛名も知らない名、だが歴とした私へ宛てられた物だ。
しかし、私はそれを見ることはない。
当然だろう?
なのに、その手紙は律儀に転送されて私の元に送られてくる。
全く、迷惑なことだ。
箱に入ったマッチを一本摘み上げて箱の側面をカッと擦る。
この時の為だけに購入した大箱のマッチも、中身を半分程に減らしていた。
朱色の頭の黒い擦過痕がチリッと瞬き、鼻をつく臭いとともに勢い良く火が着いた。
この火で差出人も燃やせないものか。
手紙を跡形もなく焼いていくオレンジ色の炎を見つめながら独り思った。
テーマ「隠された手紙」
糖質オフのヤクルト1000。
ちょっと身体に合わなかったみたい。
二日間も通行止めを食らっていて辛い。
思えばカロリーハーフのヤクルトの時も数日間、腹わたに激痛が走ったっけ……。
普通のヤクルト1000かミルミルSが私のお腹には合ってるようだ。
そして、糖質オフなのに糖質が9.6グラムも入っているなんて……。
どういうことなんだ、ヤクルトレディよ。
テーマ「あなたのもとへ」
今年は寝過ごすことなく初日の出が拝めたようで、頬を赤くさせた君が冷気を伴って帰ってきた。
「ただいま」と上機嫌に言う君の口から酒と薬の臭いがして、思わず顔を顰める。
「お屠蘇、呑んできたのか」
「うん、友達の家でちょっとだけね」
「いまどき本物だなんて、珍しいな」
少々羨ましく思いながら、黒い漆塗りの椀に焼いた角餅と小松菜や根菜の入った済まし汁を盛り付けていく。
「友達の奥さんが漢方の何か?を、やってるんだって」
「何か、って何だよ」
クスクスと笑っていると、キッチンカウンターに白い紙袋がトサッと置かれた。
土と木の臭いが微かに漏れてきて、「なんだコレは」と首を傾げる。
「分けてもらったんだ、屠蘇散」
一緒に呑もう?、と見覚えのない朱塗りの酒器を手にした君が言った。
「良いけど……、呑めるのは昼過ぎだぞ?」
テーマ「日の出」
達成出来そうもない目標は掲げるだけムダ。
なので最低限の目標だけ、決めておく。
「生きる」
これなら達成可能だろう?
死ぬ、その直前まで諦めずに、生きる。
あとは、気ままにやりたいことやっていこうかな?
テーマ「今年の抱負」