しじま

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 何時もの時間、何時もの電車に乗って、いつも通り隅っこの改札を通って、蟻の巣のような地下街から最短距離で地上へと目指していた。

真っ白な電灯に照らされた、人気のない通路に出た。

ありえない、通勤通学の時間帯だというのに人の話し声さえ聞こえない。

完全な無音、自分の靴の音だけがやけに大きく辺りに響いた。

 おかしい。

心臓が早鐘を打つ、視界が薄っすらと白く霞んで、息が吸いづらくなる。

はっ、はっ、と浅い息を繰り返す、手を付いた壁の氷のような冷たさに、ほんの少し頭が正気を取り戻していくようだった。

 とにかく、急がないと遅刻してしまう。

無遅刻無欠席だけが私の取り柄だ、すぅー、と大きく息を吐き、覚悟を決めて早足で歩くと目の前の角を曲がり、慌てて引き返した。

 なんか黒スーツの人がいっぱい居た……。

テーマ「どこ?」

3/19/2025, 5:32:17 PM