しじま

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 今年は寝過ごすことなく初日の出が拝めたようで、頬を赤くさせた君が冷気を伴って帰ってきた。

「ただいま」と上機嫌に言う君の口から酒と薬の臭いがして、思わず顔を顰める。

「お屠蘇、呑んできたのか」
「うん、友達の家でちょっとだけね」
「いまどき本物だなんて、珍しいな」

 少々羨ましく思いながら、黒い漆塗りの椀に焼いた角餅と小松菜や根菜の入った済まし汁を盛り付けていく。

「友達の奥さんが漢方の何か?を、やってるんだって」
「何か、って何だよ」

 クスクスと笑っていると、キッチンカウンターに白い紙袋がトサッと置かれた。

土と木の臭いが微かに漏れてきて、「なんだコレは」と首を傾げる。

「分けてもらったんだ、屠蘇散」

 一緒に呑もう?、と見覚えのない朱塗りの酒器を手にした君が言った。

「良いけど……、呑めるのは昼過ぎだぞ?」

テーマ「日の出」

1/4/2025, 9:27:29 AM