『通り雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
予報外れの雨が架けた
なないろの橋
水溜りに落書きしながら
口を尖らせて
「天気予報なんて信じない」と君が言う
通り雨
今あなたが抱える苦しいこと
どうか通り雨のように
過ぎ去りますように!
みんながどうか温かな気持ちで
あの子を迎えて行けますように!
「天気予報の嘘つき」
今日は雨が降るなんて聞いてないと少女は独り言ちる。
久々に美容室で髪を思い切ってバッサリ切ってもらったばかりだと言うのに。もう自分の嫌なものを押し付けられなくていいという開放感に満ち満ちていた少女は、足取り軽く家に帰る途中だった。
慌ててどこかの家の軒下に駆け込み、ほんの少し雨宿りさせてもらう。
どんよりと重たい雨雲が、ここら一帯の空を覆っている。慌てて鞄を頭に乗せて走るサラリーマン。落ち着いて折り畳み傘を取り出し、ゆったり歩くご婦人。
木の葉を雨粒が優しく弾いている。私があの時流した涙よりもずっと柔らかい雨。世界が雨にぎゅっと閉じ込められているみたいだ。
髪を切ることで負のエネルギーから一刻も早く解き放たれたいと思っていた。今降っている雨にもそんな力があるのかしら、黒く淀んだ気持ちが排水溝へと流れていく。
やがて空からは日射しが射し込み、たちまち雨は止んでしまう。
「よし、帰るか」
少女はどこかスッキリとした面持ちで、再び元気よく歩き出して行った。
通り雨
柴犬のゴン太と夕方から散歩に出た。家を出たときは雨は降っていなかったが、、ゴン太と公園を回っての帰り道、雨が降りだした。
通り雨だ。
慌てて小さなカフェの軒先に逃げ込む。犬の散歩途中だからお金も持っていないためカフェの中には入れない。軒先に立ちながら空を見上げる。
「ゴン太〜。雨やむかな。」
ワン。ワン。
ゴン太も困り顔だ。
「あの。〇〇駅はどこですかね」
急に声をかけられて驚いたが、隣には同じように雨宿りをしていたお婆さんがいた。
駅の道を説明していると雨がやみ、日が差してきた。お婆さんとは挨拶をしてそこで別れる。
「さあゴン太!帰ろうか」
私とゴン太が歩き始めると、5分ほどでまた雨が降り始めた。通り雨は繰り返すと言うが本当だ。また、近くの郵便局の軒下に駆け込む。
「あの。〇〇駅はどこですかね」
へぇ?
また同じお婆さんに声をかけられた。どういうこと?違うお婆さんだったかな。
また駅までの道を説明しなからも不思議で仕方がなかった。雨がやみ家への道を走り出す。ゴン太はお婆さんに吠えなかった。やっぱり、さっき会ったお婆さんだったのかな?
また雨が降り出すまでには家に着きたかったが、強い雨が降ってきたためコンビニの軒下に避難した。あの角を曲がれは家なのについていない。
「あの。〇〇駅はどこですかねえ」
もう振り向くことはできなかった。雨が降っているのも構わず、ゴン太のリードを握りしめて走る。
慌てて玄関のドアを開け母親を呼ぶ。
「お母さん!」
「なあに。びしょ濡れじゃあない。しっかり拭かないと風邪ひくわよ」
母は喪服だった。
「お葬式?」
「隣組の〇〇さんのお婆ちゃんが亡くなったんですって。なんでも、〇〇駅まで息子さんの家族を迎えに行く途中に車にはねられたらしのいよ」
嘘でしょ。
あのお婆さんのことではないよね、でも、何度も駅までの道を聞かれた。亡くなっ人に会ったてこと。
「あんた顔色が悪いわよ。雨で風邪ひいたんじゃない。早くお風呂入りなさい。」
私は幽霊と話したのか。そんなことある?
ても、一緒に駅まで行かなくて良かった。実は、2回目にお婆さんに会った時、「駅まで一緒に行きましょうか」と声をかけていたが、歩き出そうとしてもゴン太が動かず、お婆さんだけで行ってしまったのだ。あのまま一緒に行っていたら、私たちは帰ってこれたたろうか。
ゴン太は、あのお婆さんが幽霊だと分かっていたのかもしれない。ゴン太がいてくれて良かった。
ザァーと降っていた通り雨がやみ雲の隙間から太陽の光が照り始めていた。
通り雨、私にとっては、とてつもなく嫌なものだ
自転車で走るようなものなので、濡れるのは、
勘弁なのだ。びしょ濡れとはならんが、
服がベタついて嫌になる季節になるだろう。
あぁ、早く冬よこい。
冷たい季節の方が私は、好きだ。
→短編・雨降って地固まる。
通り雨だと解っていて、彼女は彼を呼び出した。
「駅前の喫茶店で雨宿りしてるの。早く傘を持ってきて」
通り雨だと知っていて、彼は彼女に「うん」と答える。
「すぐに行くよ、少し待っていて」
彼が喫茶店に着く頃、彼女はパフェを注文した。二人はテーブルのパフェを挟んで向かい合う。
「僕の好きなヤツだ。ありがとう」
彼がぎこちなく礼を口にし、それを受ける彼女もまた固い顔で、ポツリと謝罪の言葉を口にした。「話の途中で飛び出してってごめんなさい」
「こっちこそごめん。一方的に言いたいことだけ言っちゃって」
「お互い、感情的になりすぎたわね」
「引くに引けないって不毛な空気、バシバシだったよね」
苦笑した彼はパフェを二人の間に滑らせた。
どちらともなくスプーンを手に取る。生クリーム、アイスクリーム、フルーツ……。他愛もない会話とともに。
スプーンがコーンフレークに進む頃、二人の緊張は解れ、寛いだ様子に変わっていた。
「雨、止んだね」
「通り雨だもの」
短い雨の後、太陽が顔を覗かせる。濡れた地面に陽光が反射する。キラキラと美しく輝く。
喫茶店を後にした二人は、普段よりも固く手を繋いで帰路についた。
テーマ; 通り雨
空っぽに染み込む夏の空
澄み渡る青色どこまでも
虹がかかる探してごらん
健やかな心でいることを
選択できる自分を育てる
雨が降ったら立ち止まり
見渡すといいあちこちに
散りばめられていた欠片
必要なものが見つかるよ
忘れないでどんなときも
自分を信じること、だよ
『通り雨』
晴れていたのに突然雨が降り始める
急いで外干しの洗濯物を取り込む
取り込み終えたと同時に雨が止む
再び洗濯物を外へ出すとまた降ってくる
お天道様からいたずらされているみたいだ
「通り雨」
今日は通り雨がふった
傘をもって出かけたので雨に濡れなかったな
だからスーパーで、買い物できた。ー
通り雨…
それはまるで
私の
僕の
俺の
心そのものだった。
さっきまで泣いていたのに
君に会えばたちまち笑顔になって
嘘の様に晴れている!
だからね、君の通り雨も
晴れにしてあげたい
っていつも思ってるんだよ。
愛しの君。
また会いたいな。
通り雨
通り雨を食べた。
なかなかいい感じのうまさだ。
通り雨から逃げて、晴れと雨の境目を走り抜けるのも悪くはないが、こうして喰らうのも実に悪くない。
悪くないというだけで別に良いとも言ってはいないが。
うむ、うましうまし。
通り雨が近づいてきた、雲が闇落ちしかけている。
人々はそれを見て憂いを感じた。記憶を想起した。
ただの気象、されど気象。それだけで勝手に人々は心が、感情が変わる。感情が体に出る。
とかいう俺もその普遍的人間の一人なのだが。
複雑な気持ちと傘を持って、外に出た。
通り雨が来た、循環した水がまた降ってくる。
刹那の間、待ち続けた。
苦い思い出はミルクではなく、水で溶かさないと。
雨声で何も聞こえない、耳元で鳴る音楽も喧騒も。
感情が静けさを持ったまま落ちていく。
肩に軽い暖かさが乗る、思わず振り返る。
通り雨が遠ざかった、雨は少しだけ止まない。
二度の後悔をさせない自分への鼓舞、そして雑談途中で告げる。熟成と改良を繰り返したこの感情を。
回答の待ち時間はさっきの雨みたいだった。望みと救済の太陽が、顔も心も空も晴らした。雨は止んだ。
祝福の虹が二つかかった、空と何かに彩りを与えた。
また近づいたその時、俺は想起するだろう。
刹那の雨の中行われた、今に繋がる乾坤一擲を。
通り雨
どこから来て
どこへ行くのか?
雨上がりには、🌈虹が出ることがある
通り雨の後は、空気も澄んで、空を見上げて
🌈虹を見つけて
気持ちがいいね
通り雨
ぬれても、好きだな
無数の雫に隔てられ
ひとときの孤独が横たわる
世界の温度が遠くなる
失意と安堵
矛盾を孕む檻の中
刹那の永遠を約束してくれる気がした
『通り雨』
通り雨に追い掛けられてずぶ濡れの
サイクリングそれもまた愉し
#通り雨
《通り雨》
まもなく9と3/4番線をゲリラ豪雨が通過します。
危ないですから傘をたたんで、黄色い線までお下がりください。
雷様の転落にご注意下さい。
発見した場合は、感電防止のために手を触れず、速やかに駅員までお知らせ下さい。
『悪魔は秋に現れる』
そんな言い伝えが、この村には残っている。
悪魔は誰にも気づかれず村に忍び込み、村人たちに呪いをかける。
呪われた人々は、常に飢えるようになり、どれだけ食べても満たされなくなってしまうのだ。
そして食べまくった村人は醜く太り、周囲から嘲笑《ちょうしょう》される。
その様子を、悪魔は影から見て大笑いするという。
子供の頃、よく親から聞かされたものだ。
言わなくても分かるとは思うけれど、『食べすぎに注意しろ』という教訓を昔話の形にしているものだ。
食べ物がおいしいいこの季節。
食べすぎて苦しまないように、この昔話は忠告している
もっとも効果のほどは疑問だ。
村の人間なら全員知っている話のなのだが、毎年食べすぎる村人が後を絶たない。
中には食べすぎて、昔話のように太ってしまう者もいる。
俺の妻であるクレアも例外ではなかった
「おのれ、悪魔……
許すまじ!」
クレアが慟哭《どうこく》する。
言葉にこそ出さないが、どうやら太ったらしい。
モチロン俺からは『太った?』なんて聞かない
わざわざ虎の尾を踏みに行くほど無謀ではない
俺も命が惜しいのだ
「バン様も、悪魔は残虐非道だと思いますよね」
「……そうだな」
妻が同意を求めてきたので、俺はクレアに同調する。
スマンな、悪魔。
お前は悪くないと思ってるけど、お前のせいにさせてもらう。
ここで否定しても、誰も幸せにならないからだ……
「しかし、この焼き芋美味しいですね。
悪魔の呪いが無くても、手がとまりそうにありません」
「……そうだな」
クレアはさらに新しい焼き芋に手を伸ばす。
どう考えても食べ過ぎであり、太るのは目に見えていた。
だが俺はなにも言わない。
焼き芋以外にも、秋の味覚を食べまくっている。
焼き芋を一つ減らしたくらいでは、何も変わらない
もはや手遅れだ。
だが救いはある。
実はこの昔話には続きがあるからだ。
村人たちが太ってしまうと、その事を憂いた女神様が村にやって来る。
そう!
この女神は太った人々を救う、救いの女神なのだ。
だがそんなにうまい話はない。
女神は、太った人たちを集め走らせる。
しかも、とんでもなく長い距離を……
人呼んで『運動の女神』。
方法はどうあれ、救いの女神ではある
もう少し日が経てば、女神に導かれた人たちが、村のあちこちで運動会を開催することだろう。
色々言いたいことはあるが、誰もなにも言わない。
毎年恒例の行事なのだ。
『もうそういう時期か』としみじみ感傷に浸るだけである。
おそらくクレアも、女神に救いを求めるのだろう。
それが悪いとは言わない。
だが――
「一緒に走らされるんだろうなあ……」
「何か言いましたか?」
「独り言だよ」
俺は『巻き込まれませんように』と、信じてもいない女神に救いを求めるのだった。
通り雨
生まれも育ちも大阪の私は、ゆくゆくは大阪のおばちゃんになるというカルマを背負っていた。朗らかで笑いの絶えないおばちゃんは大好きだが、清廉潔白、奥ゆかしいヒロインを夢見る私にとって、これは由々しき事態だった。
その日、地元の女友達と電車に乗っていた。車内ではおばちゃんたちが世間話をしていた。最寄駅に着くと、たまたま方向が一緒だったので、同じタイミングで改札を出た。空は一転して通り雨が降っていた。通行人たちが揃って空を見上げていると、大阪のおばちゃんたちが、うわっ、雨降ってるやん! に続けて、
「なんで?!」
と叫んだ。私は、おばちゃんがおばちゃんしてるなぁと思った。雨が降るのに、なんでもほいでもないがな。
私は澄ました顔で空を見上げた。
「どーする? 傘はあるけど」
「うちもあるけど、すぐ止みそうやわ」
友達がスマホを見て言った。私もスマホを取り出して、雨雲レーダーを確認する。と、ポップアップにメールの通知が来た。内容はクレジットカードの引き落としについて。その金額を見て、私は目を疑った。
「クレカ10万も引かれてる! なんで?!」
「たぶん、いろいろ買うたんやろな」
友達は慣れた様子で言い、それから、悄然とする私に手のひらを差し出した。
「飴ちゃん、いる?」
「なんで持ってんねん」
カラカラと舐めながら、この飴の中におばちゃん成分が入っているんだろうなと思った。それは美味しかった。
ほんの少しだけでいい
今だけ、今だけはどうか
この涙が見えないように
_通り雨
君の傘にお邪魔した10分
この時間はたしかに幸せだった