「天気予報の嘘つき」
今日は雨が降るなんて聞いてないと少女は独り言ちる。
久々に美容室で髪を思い切ってバッサリ切ってもらったばかりだと言うのに。もう自分の嫌なものを押し付けられなくていいという開放感に満ち満ちていた少女は、足取り軽く家に帰る途中だった。
慌ててどこかの家の軒下に駆け込み、ほんの少し雨宿りさせてもらう。
どんよりと重たい雨雲が、ここら一帯の空を覆っている。慌てて鞄を頭に乗せて走るサラリーマン。落ち着いて折り畳み傘を取り出し、ゆったり歩くご婦人。
木の葉を雨粒が優しく弾いている。私があの時流した涙よりもずっと柔らかい雨。世界が雨にぎゅっと閉じ込められているみたいだ。
髪を切ることで負のエネルギーから一刻も早く解き放たれたいと思っていた。今降っている雨にもそんな力があるのかしら、黒く淀んだ気持ちが排水溝へと流れていく。
やがて空からは日射しが射し込み、たちまち雨は止んでしまう。
「よし、帰るか」
少女はどこかスッキリとした面持ちで、再び元気よく歩き出して行った。
9/27/2024, 8:39:48 PM