ある人は言った。
「人工物の光だね」
ある人は言った。
「わあ、綺麗」
同じものを見てもこうも受け取り方が違うのか。
物事というのは一面だけでなく、必要に応じてその裏側や斜め後ろからなど多角的に見る必要がある。
……と、つらつら書いてはみたものの、筆者が中々身につけることのできないスキルの一つだ。
とは言ったものの、夜景に関しては素直に「綺麗だ」と思える素直な感性でいたい。
ふわ、ふわ、ふんわり
あの子はいつもお花畑
頭の中を覗いてみたい
パステルカラーが彩る世界
混じりっけのない純度100%
時々石っころを蹴ってみるけど
やっぱりすぐにお花畑
傷ひとつないお花畑
だから時々花を摘む
少しずつ少しずつ
そうやっていつの間にか
草と石と砂漠になればいい
バケツをひっくり返したような大雨が降り始めた。
B男は突然の雨に驚きつつも、鞄で頭を覆いながらひた走る。
間に合え、どうか間に合ってくれ……!
祈るような気持ちで、靴に泥が跳ねるのも構わず走り続けた。
びしょ濡れのまま、脇目も振らずに建物の中に飛び込む。
目的の部屋が近付く。廊下には既に両親達が勢揃いしている。
「おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ」
間に合った……!
その泣き声は外の天気とは裏腹に、幸せに満ち溢れていた。
B男は思わず込み上げる涙を堪えることができない。
愛しい我が子に会えるのを今か今かと待ち続けた。
一生懸命文字を打ったのだろう、祖母のLINE。
誤字脱字は当たり前、内容にそぐわないスタンプも沢山あった。
今となってはどれも素敵な思い出の宝箱に大切に保管している。
ばあちゃん、またLINEしてきてよ。間違って電話を掛けてきても構わないから。
もう二度と更新されることのないトーク履歴を指でそっとなぞった。
燃え尽き症候群ですね、確かに医師はそう言ったのだ。
何故だかその言葉は、私のこれまでの生き方を全て否定されているような気がする。
必死に働いた。必死に働いて働いて、目標のためだけにひた走り続けてきた。
その結果がこのザマである。
言葉通り、燃え尽きたのだ。後に残るは灰の残りカスだけ。
やる気も情熱も全てエネルギーへと変換してしまった。
ぽっかり空いたは心の隙間。
医師曰く、ひとまず休めとのことだ。
休むって?何を?どうやって?そもそも休み方が分からない。
私、頑張っていたよね。生き方、間違っていないよね。
ただ誰かに認めてほしかった。
それでも現実はモノクロに染まってゆく。
味のしないご飯、針が止まらぬ時計の音、起き上がれない自分の身体エトセトラ
命を燃やせるほど打ち込めることがあるってきっと素敵なことだ。
それでも過ぎたるは猶及ばざるが如し。
先人達は偉大な言葉を遺してくれている。
何事も程々で良い。
燃やし過ぎにご用心。