通り雨
生まれも育ちも大阪の私は、ゆくゆくは大阪のおばちゃんになるというカルマを背負っていた。朗らかで笑いの絶えないおばちゃんは大好きだが、清廉潔白、奥ゆかしいヒロインを夢見る私にとって、これは由々しき事態だった。
その日、地元の女友達と電車に乗っていた。車内ではおばちゃんたちが世間話をしていた。最寄駅に着くと、たまたま方向が一緒だったので、同じタイミングで改札を出た。空は一転して通り雨が降っていた。通行人たちが揃って空を見上げていると、大阪のおばちゃんたちが、うわっ、雨降ってるやん! に続けて、
「なんで?!」
と叫んだ。私は、おばちゃんがおばちゃんしてるなぁと思った。雨が降るのに、なんでもほいでもないがな。
私は澄ました顔で空を見上げた。
「どーする? 傘はあるけど」
「うちもあるけど、すぐ止みそうやわ」
友達がスマホを見て言った。私もスマホを取り出して、雨雲レーダーを確認する。と、ポップアップにメールの通知が来た。内容はクレジットカードの引き落としについて。その金額を見て、私は目を疑った。
「クレカ10万も引かれてる! なんで?!」
「たぶん、いろいろ買うたんやろな」
友達は慣れた様子で言い、それから、悄然とする私に手のひらを差し出した。
「飴ちゃん、いる?」
「なんで持ってんねん」
カラカラと舐めながら、この飴の中におばちゃん成分が入っているんだろうなと思った。それは美味しかった。
9/27/2024, 4:49:45 PM