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 通り雨が近づいてきた、雲が闇落ちしかけている。
 人々はそれを見て憂いを感じた。記憶を想起した。
 ただの気象、されど気象。それだけで勝手に人々は心が、感情が変わる。感情が体に出る。
 とかいう俺もその普遍的人間の一人なのだが。
 複雑な気持ちと傘を持って、外に出た。
 
 通り雨が来た、循環した水がまた降ってくる。
 刹那の間、待ち続けた。
 苦い思い出はミルクではなく、水で溶かさないと。
 雨声で何も聞こえない、耳元で鳴る音楽も喧騒も。
 感情が静けさを持ったまま落ちていく。
 肩に軽い暖かさが乗る、思わず振り返る。

 通り雨が遠ざかった、雨は少しだけ止まない。
 二度の後悔をさせない自分への鼓舞、そして雑談途中で告げる。熟成と改良を繰り返したこの感情を。
 回答の待ち時間はさっきの雨みたいだった。望みと救済の太陽が、顔も心も空も晴らした。雨は止んだ。
 祝福の虹が二つかかった、空と何かに彩りを与えた。
 
 また近づいたその時、俺は想起するだろう。
 刹那の雨の中行われた、今に繋がる乾坤一擲を。

9/27/2024, 5:56:54 PM