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10/20/2025, 12:59:02 PM

私達友達でいよう、ずっと。
だって、結ばれないから。
一ヶ月後、私は真っ白なチャペルの下で貴方の従兄弟と結ばれてしまう。
二ヶ月後、貴方は真っ白なチャペルの下で私の従姉妹と結ばれてしまう。
しょうがないもんね、決まっちゃったんだから。
友達でいよう、親友でいよう、恋人にはなれないまま。
くだらない事で笑い合って、クソゲーに文句を言いながら夙夜遊んで、老舗の町中華で餃子を分け合って、水族館でお揃いのイルカのペンダントを買って、とても楽しかったよ。
私は友達として、祝福してあげる。
だから友達として、祝福してほしいな。
次会うときは、親戚として、かつての親友として、よろしくね。
なぜか出る涙を笑って私は言う
「貴方は大切な私の友達だからね!」
なぜか出ている涙を拭って貴方は言う
「お前は大切な僕の友達だからな!」
そう言って、それぞれ反対方向に歩いていった。
お互い「大好きな友達だよ」なんて言えずに。

10/17/2025, 1:15:11 PM

「サラサラ〜という音が聞こえてきそうな砂時計。」
 今も聞こえてくる、最近よく聞くようになった
 落ちる途中でいつも起きちゃうけど
「砂時計には小さいものから、大きなものまであるって聞いたことがあるな!」
 目の前にあるのは自由の女神位大きいもの
「砂の色はバリエーション豊富!単色から、カラフルまで!」
 目の前にあるのは海を感じさせるブルーとオレンジ

「目の前の砂時計は、何の為にあるの?」
 重力がある事を示すためかな
「お好み焼きを作るため?」
 時間を測るためとか
「テストの制限時間を示すため?」
 ある意味あってるかもしれないね

「砂が全て下に行ったら、どうなるの?」
 しんじゃうとか
「砂が落ちる音は私の死を刻む音って事かな」
 そうかもしれない。だってもう立ってる事すら辛い
「早く落ちてる、という事は近いのかな」
 もう、なにも、考えられないや
 おねがいだから、ひっくりかえってその音をきかせて
 すなどけいの音を
 おちきるまえに、だれかひっくりかえ、して
 あとすこしで、おわっちゃう


「2025年10月6日午前3時25分45秒、○○さん。ご臨終です。」
最後の一粒が落ちて、砂時計は何も音を発さなくなった
彼女は夢を見ていた、砂時計が落ちる夢を
彼女の寿命を示すための砂時計は、もう動かない
何も言わず呆然と立ち尽くしたまま
底に艶やかな青と橙の塊を残して

10/16/2025, 12:47:02 PM

(学芸員):こんにちは、泥棒ですか?
(客):違います。
(学芸員):なら、何をしに来たんですか?
(客):展示を見に来たんです、ここには貴重な星図が期間限定で公開されていると聞きました。
(学芸員):なんでそれを知っているんですか?
(客):ここの公式Xで告知していたからです。
(学芸員):おかしいですね。私が今から投稿しようとしていた内容が、これの告知なんですよ。
(客):はい?
(学芸員):明後日から公開しようとしていました、なのに何故知っているのですか?
(客):それは、
(学芸員):泥棒ですね、通報します。
(客):いいえ、違います。運搬の現場を目撃したからです。それに、その星図は偽物です。
(学芸員):証拠はありますか?
(客):私の祖父がそれの本物を持っているからです、こちらがその写真です。
(学芸員):だから、分からなかったんですね。ご住所はどちらにありますか?
(客):教えません。
(学芸員):こう見えてもGeoGuesserが得意なんです。あと、ケイドロの泥棒側。
(客):だから何ですか?
(学芸員):明日、お伺いしますね。
(客):来ないでください。

数日後、私の家からあの星図が消えました。
きっと、あの学芸員(泥棒)さんは偽物と思ってこれとすり替えたのでしょう。
これが本物とも知らずに。
わざわざ特定しやすい写真を撮っておいて良かったですね。わざと偽物を撮ったんですよ。
今頃、あちらでは偽物が飾られている事でしょう。
そういえば、例の美術館で盗難事件があったらしいですね。犯人はまだ見つかってないとか。
他所の泥棒さんも可哀想に、偽物の星図を掴まされたなんて。
お祖父様、ようやく本物が手に入りましたよ。
これで成仏してください。

10/15/2025, 2:28:13 PM

[愛ー恋=?]

少し高いモニターに映された謎の数式。何だこれ。よく分からない。言葉遊びとかでも無さそうだし、哲学的に考えるべきなのか?愛から心を引いたら、受けるという字になるのは知ってる。
 ヤバい、これ解かないと出られない。帰省でのんびりしてたと思いきや、親に突然誘われてきたのがこんなとこだとは。おまけになんか書類にサインしちゃったし!自分は、思った外ヤバい事に巻き込まれたようだ。こんな監獄みたいなところから抜け出そう。
アイーコイ、ひとまずくっつけてヨにしよう。哲学的な事は専門外!長年テレビやYouTubeで培われてきたひらめき力が火を吹くぜー!
「あいよい、ん?」
Aiyoi、ii oya…いい親?
いい親=?
 要するにいい親って何か聞かれてるんだな!誰も見てないだろうし、思う存分話しちまうか。
「いい親は、普段は優しいけど何か悪い事しちゃった時は怒ってくれる。趣味が合って色々共有する時もあれば、合わなくて喧嘩する事ある。働き者だけど、ダラける時はとことん動かない。甘やかしは少ないけど、なんやかんや家族を思って色々してくれる。辛い時に鼓舞してくれたり、そっとしてくれたり、喜びや悲しみを分かち合う存在。まっ、うちの両親みたいなもんだな。」
 そう言い切ると近くの扉が開いた音がした、ドアノブに手をかけて押すとさっきの駐車場の景色と泣きそうになってる両親の姿が。
「あんたったら、そこまで思ってくれてたの。」
「俺に似て、良く出来た子だな!」
イマイチ状況が掴めていない。えっ、さっきの発言聞いてたって事は?
「実はね、この施設は親が子供の愛を確認する為に出来た施設なの。専用のアプリからあんたがさっきいた部屋が覗けて、あれ、もう出たから見れなくなってる。」
「何その法律スレスレかつ局所的な施設!逆バージョンもありそう。」
「あるぞ。」
「ごめんね、ちょっと気になっちゃった。」
「んだよ、そんなの…(小声)バカみたいじゃねーかよ。」
「悪い悪い!お詫びに、焼肉行くぞ!」
「ったくしょうがねーな!食べ放題な!」
…いつか絶対、逆バージョンの施設も入れてやる。まっ、そんなんしなくても、二人からの愛は十分感じてるけどな。
「どうしたのそんなボケーっとして、早く車に乗りなさいよ。」
「はいはい。」
愛から恋を引いたら、慈しみとか親心が残ったりして。そんな事を思いながら、シートベルトをしめる。少し小さい車の中で流れてる一昔前のラブソングを虚で聴きながら、さっきの問題の別解を考えてみる。

 …サプライズで来年の春、二人に紅白のカーネーションでも送ってやろ。もちろん、然る日に。

10/14/2025, 1:35:19 PM

「梨と林檎って似てない?」
「どこが?見た目は分かるけど、味は違う。」
「ほぼ同一個体じゃん、どっちかが突然変異で生まれた産物だよ。」
「その場合どっちになるんだよ。禁断の果実が梨になってた可能性もあるって事かよ。」
「そうだね、アダムとエヴァは梨を食べて追放された事になる。この家では、禁断の果実だけど。」
「どういうことだ。」
「これを食べたら呪われるって考えてる、二つの意味で旧套墨守だね。だからこっそり、持ってきてるんだけどね!」
高そうな木製の机に足を乗っけているそいつは、ガラスの器に乗っけられた梨と林檎をじっと見つめる。普段の学校じゃ、見れない。幼馴染である自分だけの特権。
「とりあえずどっち食う?梨?林檎?切ってくる。」
「どうしようかn…ごめん。そろそろ終わりの時間だって、また夏休み明け、学校でね。」
「そっか、じゃあな。」
俺はそいつの親を見ずに渋々帰った、これがさいごに交わした会話だってことも知らずに。今頃、晦渋…難しい文章でも読まされて、問題を解かされてるのだろう。暑い、早く家に帰って涼しい部屋でイベランしよう。

 あれ以来、連絡がない。勇気出して連絡先を交換したが、履歴の最新は数十年前のまま。まだ、話したい事がたくさんあったのに。…好きって、いえてない。未練タラタラかよ、こんな歳になって。
実家を出てノスタルジックな風景を歩いていくと、蔦が生い茂る白い家に着く。昔からこんなだ、両親の趣味だって話も全て思い出せる。インターホンを押して高そうなドアを叩く。
しばらくしても返事がない、留守なのだろう。仕方なく帰ろうとすると、恰幅の良い釣り帰りを伺わせるおじさんが話しかける。
「そこの家族なら、もういないぞ。」
「どういう事だ?」
「知らんのか?なんか、数十年前のこの時期だったか?親が子供を躾けた勢いで殺そうとしたみたいでな。その時反抗した子供が、ガラスの器で親を殺してな。どっちも死んだってわけだ。」
「…どうしてそこまで詳しいんだ。」
「事情聴取されたんだよ、そん時に小耳に挟んだ。知り合いか?」
「まぁ、知り合いでした。」
「そっか、残念な事だ。墓の場所、教えようか?」
「いや、大丈夫です。」
足早にその場から去った、暑さに体力を奪われながら実家に戻る。もし、あの時、禁断の果実である梨を食べさせて、あいつが追放されてたら。いや、無理やりにでも自分が連れ去ったら。なんて考えても
「意味なしってか。」

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