NoName2

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11/10/2025, 12:54:06 PM

怖くて眠れない夜がある。
寂しくて眠れない夜がある。
嬉しくて眠れない夜がある。
楽しくて眠れない夜がある。
そんな生活が続いて早十数年、あの頃の睡眠が恋しい。
そう思って、私は机に突っ伏しながら眠る。

今夜もきっと眠れない。
昨日もずっと眠れなかった。
明日もきっと眠れない。
過去も未来もずっと眠れない。
いつしか夜に眠れなくなってしまった。
昼夜逆転しているため、いつも昼に眠っている。
堂々と、講堂で。私は眠る。

誰とも話さなくていいから楽。
でも、たまには誰かと話したい。でも、迷惑かける。
怪訝な目で見られる、邪魔に思われる。
人々の関係を壊さないように、私は眠る。

幼き頃の睡眠が、暗い場所での睡眠が、人の声が、恋しい。
誰か助けてと思いながら、授業の話し合いの中、私は眠る。
いつもの寂しさを寝袋にして。
きっと今夜も眠れない、寂しくて眠れない。

11/8/2025, 5:25:07 PM

どうやら神様は透明な羽根を持ってるみたい
よーく見ると、落ちてるのが分かる
まるで、うんと、なんだろう、水グミみたい
そんか神様を吊って、撃ち落とした
今はもう、神々しい液体が羽根にはかかってる
神様の液体、人間でいう血液
ようやく、ようやく、終わった
みんな、見て!
みんなを悪意と気まぐれで殺した神様を、○○したよ!
「こ、この、」
もう満足!どんな神罰が与えられるかな?
一生彷徨うのかな?
言葉が喋れなくなるのかな?
大地を抱えるのかな?
ずっと内臓を食べられるのかな?
飢餓に苦しむのかな?
どんなのでも、受け入れるよ
だって、幸福感に満たされてるんだから!
「こんな、ことして…」
他の神様はこの神様を助けない、知らんぷり
残酷だね、可哀想だね、仕方ないね
最後の一撃、救済してあげるよ
不思議と神様を撃ち抜くのに抵抗感は消えていた
穴の空いた神様は段々消えていく
透明な羽根に液体を垂らしたまま…

あの人間へ送る神罰はない、ちょうど迷惑していた
ただ便宜上、罰をあげないといけない
だから透明な羽根をくれてやった
彼奴は空を飛べる事を知らずに、地を歩き続けるのだ


「これで話は終わり。何故私達は少しだけ空を飛べるのか?それは透明な羽根があるからだ、使わずに段々衰弱したから、少ししか飛べない。なんてね☆さようなら、こんな世界!」
間際に長々と架空の神話を語った親友は、柵の奥で下に飛んで行った
掴もうとしたが、手は空をきる
一瞬だけ、そいつの背中に透明な羽根を見た
夜空に染まった羽根は、嫌悪感を催すほどに綺麗だった
親友を被虐から助けられなかった惨めな自分には、似合わないほど
…透明な羽根は赤く染まった

10/25/2025, 3:26:01 PM

傷だらけの天使たちが宙吊りになっている。
純白の羽根はゆらゆらと揺れて、変色した赤いカーペットの上に落ちる。
まだ、生きている。
ここから解放しろと言わんばかりに、羽をはためかせている。
そのせいで赤いカーペットが白に侵食されていく。
まだ、耐えている。
天使も血は赤かった。なんだ、神父様の嘘つき。
天使たちは血を流さないんじゃないの?なーんだ。
まだ、抵抗している。
「やめてください。」と願ってるみたい、どうして?ただみんなの為に、死んじゃった村のみんなの為に、責任を取らせているだけだよ?
雪のように羽根が教会の中を舞う。
まだ、否定している。
知ってる、天使たちが村を浄化したこと。
僕の大切な村を、身勝手な理由で。
まだ、錯覚している。
確かに神や天使は偉い、今の世界の基礎を作り上げた。
けど、権力は虐殺を肯定する理由にならない。
まだ、生きようとしている。
なんで祈ってたんだろう、神様たちはこんなにも残酷で酷い奴らばかりなのに。
一旦、全ての羽が落ちるまで待ってみよう。
まだ、救済を求めている。
普段は求められる側が、必死に助けを求めるのはとても面白い光景だと思う。
羽根は揺れて、この全てを白く染めようとしている。
まだ、羽根は揺れて落ち続けている。
じゃあ、そろそろ許してあげようかな。
…天使って死んだらどうなるのだろう、気になる。
まだ、魂は動いている。
天使たちをひたすら撃ち続けた。
羽根がそれに合わせて、少し高いところからゆらゆらと落ちてくる。
まだ、血は流れている。
白く柔らかそうな床の上で、天使は横たわる。
神様はどんな風に羽根が揺れて落ちるかな?ワクワク。
まだ、残っている。
天使たちが宙吊りになっている。
純白の羽根はゆらゆらと揺れた後、みんな赤いカーペットの上で眠ってしまった。

10/23/2025, 3:40:58 PM

無人島に行くならば、家族に別れを告げたい。
くだらない事で笑い合える友達にも。
良くしてもらっている同僚や先輩、後輩にも。
今もう石の下で眠っているであろう恩人にも。
…俺が迷ってる間に行方を晦ましたあの人にも。
もう会えないのだから。
今から僕が行くのは、国の持っている無人島。
定期的に点検の来る無人島。
かつては、罪人の流刑地として使われていたらしい。
なら、有人島では?と思うが人がいないのを確認しているので、無人島だ。
理由は、疲れたからだ。
こんなにも恵まれているのに、疲れる事があるかって?
感じるんだよ、ここは俺の居場所じゃないって。
こんなにも恵まれているから、余計に感じる。
感じるんだ、その位置に俺は相応しくないと。
だから、来た。誰も気づかないところを終の住処にするために。と言っても、ほんの一瞬だけ。
ぼーっとしていると、船長さんが声をかける。
「着きましたよ。」
「ありがとうございます。」
「本当にいいんですね。」
「はい、もう決めました。」
小さな船の船長さんは、深く被っていた帽子を少しあげて笑った。そこにあったのは、
「昔はあんなに優柔不断だったのに、一丁前に覚悟決めちゃって。」
見覚えのある、顔だった。
「なに?そんなぽけーっとしちゃって、もしかして忘れ物した?」
かつての記憶を振り払うように思いっきり首を横に振る。こんな形で再会はしたくなかった。でも願いを叶えさせてくれたのかもしれない。
「おーい、生きてるかー?」
「ごめんなさい、ではありがとうございました。さようなら。」
「ちょっと待て。」
その人は僕のシャツの袖を弱く掴み、引っ張る。
「…返事、くれよ。」
「そんな話もありましたね。」
敬語で誤魔化すように答える、答えはあるがそれは口から出てくるのを躊躇った。
「ずっと待ってるって言っただろ?」
変わらないヘーゼルの瞳が僕の瞳孔を覗くようにこちらを見てくる。どうやら、離す気はないようだ。口内まで近づいている唾を飲み込んで、答える。
「僕も貴方の事が好きでした。さようなら。」
そういうと、その人は後ろから強く抱きしめてくる。圧と暖かさを感じる。
「気にならないのかよ、居なくなった理由。」
「気になりますよ。」
「気になったなら、この船に乗ってくれよ。」
見えやすい罠だ、敢えて乗ってあげよう。チャンスなんていくらでもあるのだから。

数年後、子育てと仕事の両立に苦戦しながらも間を縫ってここに来た。
はしゃぐ伴侶と子供達を連れて、僕の無人島へ。
景色は変わらず、手入れもされている。
ここはこれから有人島となる。
みんなの人生を豊かにしていくために、色んな経験をしてもらうために。
ああ、豊かなのに苦しい。楽しすぎて、苦しい。
ここを居場所だと主張するように、楽しさが僕を苦しめる。
でもその苦しさも、今や心地よい。
ある意味流刑地なのかもしれない、かつての心を流刑にして薄れさせるための。
なんてカッコつけて、砂浜を歩いていく。

そういや、前にこんな事を考えていたな。
無人島に行くならば、家族に別れを告げたい。
くだらない事で笑い合える友達にも。
良くしてもらっている同僚や先輩、後輩にも。
今もう石の下で眠っているであろう恩人にも。
…俺が迷ってる間に行方を晦ましたあの人にも。

今は違う。
無人島に行くならば、家族に愛を告げたい。
最近は会えない友達にも。
頼もしくて、互いに切磋琢磨し会える仕事仲間にも。
天国で酒飲みながらこちらを見てそうな恩人にも。
…こんな僕といてくれるこの人にも、子供にも。

10/20/2025, 12:59:02 PM

私達友達でいよう、ずっと。
だって、結ばれないから。
一ヶ月後、私は真っ白なチャペルの下で貴方の従兄弟と結ばれてしまう。
二ヶ月後、貴方は真っ白なチャペルの下で私の従姉妹と結ばれてしまう。
しょうがないもんね、決まっちゃったんだから。
友達でいよう、親友でいよう、恋人にはなれないまま。
くだらない事で笑い合って、クソゲーに文句を言いながら夙夜遊んで、老舗の町中華で餃子を分け合って、水族館でお揃いのイルカのペンダントを買って、とても楽しかったよ。
私は友達として、祝福してあげる。
だから友達として、祝福してほしいな。
次会うときは、親戚として、かつての親友として、よろしくね。
なぜか出る涙を笑って私は言う
「貴方は大切な私の友達だからね!」
なぜか出ている涙を拭って貴方は言う
「お前は大切な僕の友達だからな!」
そう言って、それぞれ反対方向に歩いていった。
お互い「大好きな友達だよ」なんて言えずに。

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