物語は中盤の終わりをさしている。
今日の為に、必死に練習してきたんだ。
メインではないけど、大事な役目なんだ。
初めは自ら選んだ道に後悔することはあった。
でも、家族にこう言われた。
「アンタが物語の最後と余韻を彩るんだ、やるなら本気で!しっかり締めるんだよ!」
よくある言葉も、言う人によって気持ちが変わる。
さあ、終盤に差し掛かってきた。
急いで準備をする。
道具を構えて、気持ちを整えて。
もうすぐ終わり、力を込めて叩く。
[バァーン!!]
叩いた後しばらく静寂が会場を包んだ。そして、割れるような拍手が全てを揺らした。
もうあれからそんなに経ったんだと思う日が増えてきている。入学式、運動会、初めて見たオリンピック、好きなゲームの発売日、文化祭、卒業式etc…
「想えば想うほど、心が苦しくなるんだ。」
「分かるよ、その気持ち。」
「記憶を保持してる人間は、大変だね。確かその現象に名前がついているのはご存知かな?」
弟と河川敷で待ち合わせをしていると、シルクハットのメカクレが話しかけてきた。あたかも自分が人外かのように振る舞っている。ベラベラと数分間か、自論を語っていた。
「ああ、現象の名前を言い忘れていたね。確か、光陰矢の如し、だったかな。すまないね、人間の言葉は難しいんだ。…おっと、時間のようだ。さようなら、過去のご当主様たち。」
問いただそうとすると、消えていた。逢魔が刻に巻き込まれたのか?未来が本当にそうなるのか?議論しあう暇もないまま、従姉妹がきて、家に帰った。どうやら二人が何かと話していたから、少し待っていたらしい。
結局謎に包まれたままだが、いつかこれを想う日もくるのかもしれない。
余談だが、数分前に帰り道でトラックが暴走していたらしい。怪我人は一人も出なかったから良かったが。
もし話しかけられなかったら、巻き込まれていたのかもしれない。
プラネタリウムを見ていると、たまに想像力豊かすぎて、そうとはならんやろっていう星座がある。
牡羊座とかは代表的な例だ、ほら、アレとアレを繋げたら金色の羊完成ーなんてことあるかい!
そんなツッコミどころがあるから、星座は面白い。さんかく座とか、うお座とか、たて座とか。
ところで私が毎回プラネタリウムに観にいくとすぐ終わってしまうのは、一体何でだろう?
これほどまでに面白い88の星座達に魅了されたからかな、きっとそうに違いない!
今日は街で舞踏会があるらしい。庶民の私には関係ない話だけど、でも羨ましさは少し感じる。
美味しいご飯やスイーツ、煌びやかなお城に装飾品…とかは気になる。そんな事を忘れてせっせと宿題を終わらせる、すると居候の幼馴染の声が窓の下から聞こえてきた。
「おーい!こっち来いよー!」
窓を開けて今は忙しいと、お断りを入れていると。
「どうせそう言うと思って、アレ買ってきたぞー!」
アレ、漂ってくる甘い香りに釣られて庭まで降りてしまった。そこには月の背景に立つアイツがいた。
「りんごのタルト、しかもこの街で一番高い奴だ!」
私がずっと気になっていた、貴族しか買えないと言われている高級なタルトを買ってきていたのだ。…一切れだけ。
「まっ、流石にホールは買えなかったぜ!」
半分に分けて食べる事になった、親にも分けてあげたかったが、親は給仕でお城にいるから無理だ。
「せっかく買ったのに悲しい顔すんなって!」
悲しいんじゃない、お前がそんな気遣いのできる奴とは思わなくて驚いているだけだ。
「んっ〜!激うま〜!お前も、食べろって!」
言われなくても、と木製のフォークで宝石のようなタルトを奥に刺して口元へ運ぶ。うわっ、うっま!?驚いた顔を見たアイツが
「悲しい顔よりいつもの間抜け顔が似合うぜ、お前。」
と言ったのが許せず無茶振りをかますことにした、流石にその言い方はないだろ!?
「?かかってこいよ、ミニ舞踏会もフィナーレだし。」
要望を聞いてくれるとワクワクしているといきなりこちらに跪いて手を差し伸べてきた、おい、こんなことも被るのかよ!!
「俺と一緒に踊りませんか?」『私と一緒に踊りませんか?』
お城から聞こえてくるワルツに合わせて踊る二人、長いようで短かった夜は更けていく。街角で行われたミニ舞踏会は、こうして幕を閉じた。
今日も収穫がたくさんあった、なぜか怖がってたのはわからないけれど。
今夜も古来の枕の下に、撮った写真を忍ばせる。
まだ話しかけるタイミングじゃないから、思い出させたら混乱しちゃうから、夢で練習しておく。
貴方と巡り会えたらいいな、前世から様々な障害に阻まれた私達が今世で不自由のない生活を送るの。
待っていてね!
見たことある後ろ姿の子が今日も盗撮してくる、どうやら自分とその子は前世から恋人だと周囲にほざいているらしい。もし本当だとしたら、巡り合いたくはない。
この状況から早数年、助けてくれる人と巡り会えたらいいと思って眠りにつく。
早く諦めてくれ!