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もうあれからそんなに経ったんだと思う日が増えてきている。入学式、運動会、初めて見たオリンピック、好きなゲームの発売日、文化祭、卒業式etc…
「想えば想うほど、心が苦しくなるんだ。」
「分かるよ、その気持ち。」
「記憶を保持してる人間は、大変だね。確かその現象に名前がついているのはご存知かな?」
弟と河川敷で待ち合わせをしていると、シルクハットのメカクレが話しかけてきた。あたかも自分が人外かのように振る舞っている。ベラベラと数分間か、自論を語っていた。
「ああ、現象の名前を言い忘れていたね。確か、光陰矢の如し、だったかな。すまないね、人間の言葉は難しいんだ。…おっと、時間のようだ。さようなら、過去のご当主様たち。」
問いただそうとすると、消えていた。逢魔が刻に巻き込まれたのか?未来が本当にそうなるのか?議論しあう暇もないまま、従姉妹がきて、家に帰った。どうやら二人が何かと話していたから、少し待っていたらしい。
結局謎に包まれたままだが、いつかこれを想う日もくるのかもしれない。

余談だが、数分前に帰り道でトラックが暴走していたらしい。怪我人は一人も出なかったから良かったが。
もし話しかけられなかったら、巻き込まれていたのかもしれない。

10/6/2024, 3:00:00 PM