『逆さま』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
もう限界だった
こんな状態がいつまで続くのだろう
そう思ったら涙があふれてきた
つらいのは私だけじゃない
頑張っている人はたくさんいる
もっとつらい人もいる
分かっているけれど
この沈んだ気持ちはどうにもできなかった
あふれる涙をぬぐったら
水面に美しい景色が浮かんでいた
逆さまにうつる
美しい世界
#逆さま
#52
逆さま
時計の針を 逆さまに回して
過去へと戻りたいと思う
もう一度やり直せるなら
違う自分になれるだろうか
胸に秘めた 夢や希望
逆流する時の中 消え失せていく
でも諦めたくない 未来への想い
逆境に負けず 立ち向かう
人生も逆さまに捉えてみれば
大切なことに 気付けるかもしれない
失敗が糧となり 成長する道
逆境を乗り越えて 輝く自分になる
そう-信じていたい、たとえ、逆さまでも。
逆さまに落ちてる
あぁ、やっと楽になれる
やっと自由になれる
もう縛られる事は無くなるんだ
『……あれ?』
目が覚める。見慣れた白い天井。私の部屋だ。
それなのに違和感がある。
ムクリと起き上がり、部屋を見渡す。
物が散乱した机、子供の頃から使い古した棚、しっかり閉じた押し入れ。部屋のものは何も変わらない。
気のせいかな、と思い時間を確認しようとした時にやっと違和感の正体に気づく。
普段ある場所に時計がない。
向かい、逆側の壁にかけられている。
『逆さま……になってる。』
よく見てみれば窓の位置も、机の場所も全てあべこべになっていた。
上下までは入れ替わってはいないものの、配置だけ逆になっているとやはり違和感を感じるようだ。
誰がこんなことを……と思いつつ、とりあえず自分の部屋を出ることにした。
階段を降りて、居間の方へ足を運ぶ。
ガチャリと居間と廊下を繋げているドアを開けた瞬間、固まってしまった。
家具、間取り、全ての位置が私の部屋同様逆さまになっていた。
入ってすぐの右側にキッチンに繋がる通路があったはずなのに、左側にキッチンがある。
テレビの位置も向かいにあったソファーと入れ替わっているし、向かって若干左側にあったダイニングテーブルも今は右側にある。
自分の部屋だけでも奇妙なのに、居間までこうだとさすがに気味が悪い。
しかし、庭に繋がる大きな窓の位置は変わっていないところを見ると、無理なあべこべは無いようだ。
だとしても違和感は拭えないが。
「起きたの?」
聞きなれた声がして振り返る。
そこには見慣れた格好をした母がいる。
だが、何かがおかしい。
『あ、おはよう。お母さん、部屋どうしちゃったの。』
違和感を覚えつつも、母に話しかけると、その違和感は確信に変わっていく。
「部屋?何も変わらないでしょ、馬鹿なこと言わないでちょうだい。」
母は私を冷たくあしらい、キッチンに戻っていってしまった。
普段の母からは聞かない低めの声。
いつも優しく笑顔で答えてくれるはずなのに、無表情。
部屋の間取りとか家具の位置とか、そんなのどうでもよくなるくらい、一番の違和感だった。
いつも温厚で優しい母から “馬鹿” と言われたのが割とショックだったようで、ヨロヨロと朝食のあるテーブルに向かう。
朝は洋食が多いのに、今日は和食。
ご飯と味噌汁、お魚。
ここもあべこべなのか……と思い食べようとした時に、最悪の予想が頭をよぎる。
もしご飯もあべこべだとするならば。
母は料理上手で、美味しいご飯を作る。
でも今の母は全て逆さま。
という事は、このご飯……。
恐る恐る、ご飯を口に運ぶ。
美味い。
普通に炊きたてのご飯だった。
#逆さま
「1名様でお待ちの…逆さま〜」
そう読み上げた店員の低い声は途中から急に甲高くなった
「奥の方へご案内致しません」
錯乱しているのか彼は手前にある入口へ案内する
「す、すみま1/1000」
店員はそう言いながら頭を下げず後方へ反り返った
後ろにたまたま座っていた私と反転した彼の目が合った
謝罪の場面に反するように彼の表情は満面の笑みだった
狂っている 自分が呼ばれるのを待ってる場合じゃない
早くこんな店から出なければ
そう思い急いで出した私の脚は店の奥の方へ向かっていた
17.逆さま
ある日、逆さまな世界になっていた。全てが逆さま。
家も逆さま。言葉も逆さま。
みんな普通に暮らしていた。
まるで今までこれが当たり前のように。
でも僕は違和感を感じていた。
いつも通り僕は、学校に行った。いつも言われない、
「かっこいい〜!すごー!」っていう声が
聞こえてきた。すごく嬉しいと思ったが、すぐさま
逆のことを言っているんだと思い出した。
僕の憧れている好きな人が初めて声をかけてくれた。
「ずっと好きだったんだ。大好き!」って言って
僕から離れた。 僕はとても悲しくなった。
だって好きな人から好きって言われたけど
今は逆の言葉で話しているのだから
「嫌い」って言われたってことじゃないか。
次の日、僕は学校をサボった。
この世界から消えようと思ったが全てが夢だった。
僕はホッと胸を撫で下ろした。
物事を逆さまに考えると
それが間違いじゃない事が多い
世の中が常識を求めてきても
それが人の道に反しない限り
逆さまな考えを持って行動すると
自分にピッタリと当て嵌まり
心地よい生き方が出来たりする
この国は生きにくいようで
それからちょっとズレた
生き方するとね
これもまたいい感じがするんだなぁ
と思う今日この頃........。
逆さまの発想
自分の思い込みを外したら
自分が思う常識を違う視点から
見直してみたら
思考の振り幅を大きくしてみたら
自分の中にいるもう一人の自分は
どんな自分だろう?
相対する存在とか
自分と正反対とか
自分に無いものに惹かれる
自分という器を広げたかったら
逆転の発想って大事だね
[ #37. 逆さま ]
最も身近な異世界は水の反対側だという
触れられそうで触れられない
ありそうであり得ない
無いはずなのにあってほしい
逆さまの世界にいる私(あなた)
代わってくれないかな。
今はとっても苦しいから 辛いから
そういって、水面をさわっても行けやしない
隣にある逆さまのセカイ
#逆さま
言葉を推測してみても
わかり合えない とき
私が悪質なく言葉で
傷つけたとき
相手から傷つけられたときも
何故か
わかりきる100%無理
だが 逆に 無頓着に発した言葉
繰り返したら 失礼し過ぎたな
気づける 他者は違うから
冗談つもりでも 相手はそうなんだ
ないも 解ると
気をつけように できる
他者からも 何故 傷つくこと
話すか 無頓着か 意味があるのか
相手の 言葉を 声のトーンとか
真似てみる
苛々したのは 私を嫌いばかりでなく
好きだが 上手く言えないかも
なんか 嬉しくなる
逆に 相手と 仲良くしたい
摩擦 喧嘩には
逆なら どうおもう
その対応さ など 話し合えば
沢山 行き違いが あった
発見にも なるから
嬉しい
逆に私が されたら 迷惑だ
しないような していきたいな
不器用だけど
ここのところよく「逆さま」を思い起こす言葉を見る。
本屋のレジで見たポスター
「あなたの予想は全て裏切られる⁉︎話題の大逆転サスペンス!」
暖簾の奥の厨房に見えた段ボールの「天地無用」
「子猫を2匹拾いました。白と黒なので名前はポジとネガにしました。」
太極図。
誰かが誰かに送ったYouTubeのコメント「これ、立場が逆転したら同じこと言えますか?」
反転幾何学。
どんでん返し。
文字を目にして逆さまを想起する。
その後必ず強烈に眠くなる。
ああそう、ひっくり返るのかあ…へえ…ふーん。。
私はぴったりと吸い付くようにフィットした肌色のラテックスの手袋を脱ぐ。手首の部分を持って一気にひっくり返す。
そうして両方の指の先の先まで全部綺麗に裏返ったのを確かめたところで、パッと目を覚ました。
「逆さま」
私と貴女はまるで正反対
産まれるまでは同一だったはずなのに
出てきた瞬間から貴女は愛されて
私は忌み嫌われた
それでも貴女だけは私を愛してくれた
母様からも父様からも空気として扱われる私を貴女だけが認識してくれた。
だけどそんな日々も続くはずもなく突如として忌み嫌われた日々は終わりを告げる
私が貴女を…
唯一私を愛してくれた貴女を落とした
暗いくらい井戸の底
貴女は何も言わずに、ただ笑顔で真っ逆さまに落ちていった
私はその日から貴女になった
だけど、貴女は愛されてなんかなかった
私は貴女に守られていた事を知った。
貴女はこの狂った家から逃げられるのが嬉しかったのか
私は今日も愛される
醜い奴等に貴女の代わりとして
「逆さま」
世の中ひっくり返そう
くるっと一発 さくっと早く
何がホントでホントが嘘か
くるくる回って回って
海へと体が投げ出されて、宙に浮く。
目に入るのは、逆さまのセカイ。
それは、死の淵に見るには綺麗すぎる。
2年前生クリームを浴びるように摂取した無人駅で出会った恋人とツリーを見ながら公園のテーブルでおにぎりを食べている今日と
『逆さま』
逆さま
高校入学してすぐ。部活・同好会説明会でのことだった。
「来なくていいよ、うちにはさ。サッカー部とか、吹奏楽部とか、華々しいとこあるから。そっち行った方がいいと思う」
束ねた黒髪を真っ直ぐ降ろした人だった。
彼女は他の部活を見に行けとでも言うように、ほっそりとした白い腕をふらふら振った。
何かを諦めたようにたまらなく冷たい言葉。目尻は緩んでいる。世相から外れた様はどこか魔術的な魅力を持っている。
僕は宙ぶらりん同好会に入会を決意した。
その日の放課、文化棟最上階。廊下は使わない教材の入ったダンボールがところどころに山積みされていた。下階と違って人がいない。静謐が一体を支配している。
その最奥。世界の隅っこのような場所に、宙ぶらりん同好会の会室はあった。
「反対になってる……」
『宙ぶらりん同好会』と書かれたプレートが、逆さに吊られている。
僕はドアを叩いた。
「どちら様ですか」
ガラガラ
開くと、あの時の先輩が眉をひそめて僕をじっとみてくる。背筋をピンと張っている。
「新入生です!」
「……何しに来たの?」
「青春しに」
「馬鹿じゃないの」
先輩はぷいっと背を向けて中へ戻って行く。アップルミントの匂いがほんのり漂った。
「彩珠ちゃん! ……ごめんね。彼女、不器用なんだ」
代わりというように、男の先輩が出てきて言った。彩珠先輩っていうのか。放課なのに、セットしたばっかりみたいに整った髪をしていた。
「大丈夫です」
僕は言った。
「小嶋(こじま)といいます。新入生だよね?」
「はい」
「来てくれて嬉しいよ。いや、ほんとに」
小嶋さんは胸をなでおろした。
「説明会でキツイこと言われなかった? 」
「いや全然」
「そりゃよかったよ。彩珠ちゃん、言葉が悪いとのあるから。……立ち話もなんだから、ささっ、中へ」
会釈して中へ。辺りを見回す。ドア側にロッカーや棚が、窓側に長テーブルがある。彩珠先輩は椅子に座って窓外を眺めている。夕日が当たって眩しそうだ。
テーブル上のお菓子とマグカップが風景によく馴染んでいた。ここだけ時間がゆっくり進むような、そんな気がした。
「そこの椅子にどうぞ」
小嶋さんはやけに低姿勢に言った。
「ありがとうございます」
座るのを見計らって僕も座る。
「彩珠ちゃん。黄昏てないで」
「黄昏てる訳じゃありません」
「じゃあスカイフィッシュ?」
「スカイフィッシュ探してる訳でもありません!」
「照れてるんだって。説明会上手くやれなかったって言ってたから。来てくれて嬉しいよね」
小嶋さんは独り言のように言った。彩珠先輩はキッと小嶋さんを睨んだ。
「彩珠ちゃんの自業自得だよ。黄昏てることにしてあげようと思ったのに」
「そんな事頼んでません。それに、黄昏るなんて変な人だって思われるかもしれないじゃないですか! 」
「そうかなぁ?」
「そうですよ!」
聞いている限り、小嶋さんが3年生で、彩珠先輩が2年生なんだろう。
「ほら、彩珠ちゃん。新入生くんが暇そうにしてるから。何か話してあげないと」
小嶋さんはおせっかいな母のように言った。
「新入生くんって酷いですよ! 名前聞いてないんですか!」
「……うっかりしてた」
小嶋さんは頭の後ろを撫でながら言った。
「『うっかりしてた』じゃないですよ! 」
「ごめんごめん」
「『ごめんごめん』じゃないです! 」
彩珠さんは小嶋さんがわざと名前を聞いていないことに気がついていないらしい。
「……霧払 彩珠(きりばら いりす)。君、名前は?」
彩珠先輩は俯いて言った。
「夏寄 冬喜(なつより ふゆき)です」
「ふーん……」
彩珠先輩は鼻を鳴らすと、黄昏に目を向けた。眩しいのか、大きな目を細めている。白い肌は赤みを帯びていた。
「『ふーん……』じゃ駄目でしょ! 彩珠ちゃん、先輩なんだから」
小嶋さんは言った。
「新入生の自主性を育てようとしてるんです」
「早すぎるよ! というか一方的すぎるよ!」
2人のやり取りは楽しそうだ。あの時の直感は正しかった。ここならば僕の望む学生生活が送れる。
「彩珠先輩、でいいですか?」
「……なんでもいいよ」
「じゃ、彩珠先輩って呼びますね!」
「……君はなんて呼べばいいの」
「なんでも構いませんよ」
「困るんだけど」
「じゃ、夏寄で」
「……夏寄くんね」
彩珠先輩は俯いた。
「夏寄くん。僕のことは小嶋先輩と呼んでくれ」
「小嶋さんは小嶋さんがいいです」
「なんで!」
「小嶋さんっぽいから」
小嶋さんはガクッと肩を下ろした。
「夏寄、いいね」
彩珠先輩は意地悪に笑った。
「小嶋さんっぽいですよね」
「うん。小嶋さんっぽい」
「でもずっと小嶋さんって呼ぶのも他人行儀な気がしません? 」
「わかる。そういう時はコジコジって呼んでるよ」
彩珠先輩は口角を緩めて言った。
「コジコジですか」
「そそっ。昼休み遭遇した時に『コジコジ、ジュース奢って』みたいな」
遭遇って。エイリアン見つけたみたいな言い方じゃないか。小嶋さんには悪いけど……。
「黙って聞いてれば酷くないか。夏寄くんも笑って! 」
小嶋さんは全く調子を崩さない笑顔で言った。
「すみません小嶋さん」
「コジコジごめんね」
「まったく……」
小嶋さん全然怒ってない。むしろ喜んでるまである。何となくそんな気がしたから小嶋さん呼びにしたんだけども。
「ほら、夏寄くん。一応、活動内容を話すね」
「いいよコジコジ。夏寄なら入ってくれるよ」
「彩珠ちゃんの仕事でしょ! ほら、ちゃんと教えてあげて」
「……話すことなくないですか? 小嶋先輩、お手本見せてください」
「しょうがないなぁ……」
彩珠先輩は僕を見て眉を上げた。困ったことがあったら先輩呼びするといいらしい。
「じゃ、説明するね。宙ぶらりん同好会の活動目的は『逆さまから物事を見ること』です。噛み砕くと、世間と逆さまのことをしてより物事を深く見て、知り、考えることかな。例えば、皆が右を見たら左を見ます。青シャツが流行っていたら白シャツを着ます。私生活には取り入れなくていいよ。ここだけの話、形骸化してるから」
皆と逆さまのことするの大変ですもんね。とは言う気にならなかった。
「で、活動内容なんだけど。『会話より汲み取れるあらゆる推定を思考しつつ、積極的なコミニュケーションを取り社交性を身につける』です」
「つまり? 」
「『会話より汲み取れるあらゆる推定を思考しつつ、積極的なコミニュケーションを取り社交性を身につける』」
小嶋さんは笑顔で静止している。つまり、何もしない雑談部らしい。僕は頷いた。
「理解が早くて助かるよ。活動日は毎週火・木・金曜日。夕方5時から7時までって一応決まってます。基本もっと早くからいるけどね。学校外の活動があれば僕に言ってね」
「はい」
「それで、入会届だね」
小嶋さんは屈むと、もそもそと動いてバッグから取り出した。
「来たら渡す決まりになってます。入ってくれると嬉しいな。要らなかったら捨ててくれて構いません。連絡も要らないからね」
小嶋さんと彩珠先輩は僕から視線を逸らした。今日みたいなことをずっと続ける同好会なんだろう。U18とか、甲子園とか、目的がある新入生には暇で仕方ないだろう。
だから入会を断られてばかりなんだ。
僕はペンケースからボールペンを取り出した。
「説明会の時から入会を決めてました。いま書いてもいいですか?」
小嶋さんは口をすぼめた。
時計は18時を指している。地平線に落ちかけた夕日が、彩珠先輩の顔を真っ赤に染めた。
【逆さま】
猫派と犬派、コーヒー派と紅茶派、甘党と辛党、インドア派とアウトドア派……私たちほど正反対な双子というのも、世間には珍しいのではなかろうか。
放課後の教室、片割れを含めた友人たちと中身のない雑談を交わしていれば、よく喧嘩しないよねえなんて感心したように言われた。ちらりと片割れと視線を交わす。確かに私たちの趣味嗜好は何一つ噛み合わないけれど、だからと言って喧嘩などするはずもない。窓から差し込む陽光が片割れの横顔を美しく飾り立てるのを見つめながら、私は力強く断言した。
「「だって世界で一番、この子が可愛いんだから」」
ぴたりと重なった宣言に、友人たちが面白そうに笑い声を上げる。何もかもが逆さまな私たちの、たった一つの共通点。私たちは互いのことを誰よりも愛していて、何だって叶えてあげたいと本心から願うのだ。
机の下でそっと握り合った手の温もりが、私たちの全てだった。
『逆さま』
眼前に広がる湖とその先に遥か高くにそびえる山。カメラと三脚の用意を済ませたのは日の出の一時間も前。缶コーヒーはすでにぬるく、かじかんだ指先に息を吹きかけながらカイロを持ってくればよかったと後悔する。スマートフォンが知らせる天気予報と風速表示はおおむね正確だったが、頬に感じる冷たい風に不安を少しあおられていた。
薄明かりを先触れに太陽の気配が訪れて、ファインダーと対峙する。風よ吹くなと祈り続けていた。
逆さま
パァン!! 一つの破裂音が 響いた。
気付くと 俺は、後ろ向きに倒れる様に
意識を失った。
目が 閉じられる寸前 視界がぐにゃりと
歪み 反転する。上と下が 逆さまに
なった様な 体が宙に浮いた様な
空間に ぐるぐると かき混ぜられている
様に感じられ 体の中にある臓器が
口から 飛び出そうだった。
銃で 額を撃たれ 見事に 貫通し
俺の額には、空洞が 穿たれ
俺は、死んだ。....
呆気ないと言えば それまでだし...
ロクでもない生き方をした 俺は、
案の定 ロクでもない
死に方をした。
所謂 その筋の 末端の末端だった俺は、
体よく 使い潰されたのだ...
こんな扱い この世界では
よくあること 上に 珍しく
褒められた 俺は 調子に
乗ってたんだと思う...
その 褒め言葉さえも あいつらに
とっては、俺を嵌める為の
仕掛けだった。
それに 気付かなかった
俺の落ち度だ
分かってる...
でも もし何かが 一つでも違っていたら
全く 逆の 違う人生もあったのかも
しれない....
ああ神様 もし 生まれ変わる事が
できるなら...
誰も傷つけず 身内に 迷惑を掛けない
世間一般の平凡な庶民として
普通に誰かを愛して 結婚して
子供も 生まれて 平和な家庭を築いて
夫として 父親として 誰かを
大切にできる人生を...
今とは、逆の...
逆さまな人生を 俺にください...
【反転・・・】
「パパ起きて!!公園に行くって
約束だよ!」
息子が 俺の腹の上で ダイブする
俺は その衝撃で目を覚まし
伸びをしながら起き上がる。
「ん~っそうだったな...」
「貴方 大丈夫 やっぱり 今日の
お出かけは、やめて 家でゆっくりする?」
妻が心配そうに 俺を覗き込んで言う
「あ~あ 大丈夫 何か 変な夢見て
ちょっと夢見が 悪いだけだから」
「パパ 早く~早く」
「こらっ急かさないのパパ疲れてるんだから!」
息子が 俺の腕を引っ張り促す。
妻がそれを見て 窘め 叱る。
俺は、その光景を苦笑しながら
そして 幸せを噛みしめながら
見ていた。
何故だろう...
俺は、この光景を 当たり前だと
感じず ずっと欲しかった物が
今 目の前にあると感じる。...
妻と結婚し 子供も小学生になり
結婚生活も 随分立つと言うのに...
「パパ!」
「貴方!」
「「行こう!!」」妻と息子の声が重なり
俺に 笑い掛ける。
「ああ...」俺は、立ち上がり
玄関のドアを開け
二人と共に公園へと向かった。
この世の言葉が全て逆さまだったらいいのに。
そしたら私はあなたに気持ちを伝えられるのに。
いつもおちゃらけて、女の子には誰にでも優しく告白されたら誰とでも付き合う、隣の家に住んでるケンちゃん。
『なぁ、なんでお前はそんなに俺のこと嫌うの?』
『女の子を取っ替え引っ替えする人のどこを好きになれる要素があるの?』
『ほんと、お前って可愛くないよな』
そんな言葉のやり取りを、何度しただろう。
『うるさいな、別に私が可愛くなくてもケンちゃんには関係ないでしょ』
『そうだな』
『アンタなんて大嫌い』
『ああ、知ってるよ』
少しだけ悲しそうに笑うケンちゃんに胸が締めつけられる。
嘘だよ、ケンちゃん。
本当は、好き。大好き。
私もケンちゃんに告白する女の子たちみたいに素直にそう言いたい。そしたらケンちゃんと付き合えるかもしれないのに。
でも、そんな勇気私は振り絞れない。
言葉はいつも喉元で詰まってしまう。
だから今日も「大嫌い」しか言えないの。
本当は小学校の頃から好きで好きでたまらないのにね。