『踊るように』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
踊るように
世界のルールの中に自分ルールを内包して守ることで一定数偉くなる
それが幸せだった
ルールの中で踊ることができるようになってからは
自由と限界と境目を覚えた
それでも私が踊れば影も踊った
花弁が最後の生を全うするかのように
踊るように煌めいて落ちていった
その絨毯の残る橋は絶対に崩れない気がする
・踊るように
全く手が進まん。
紙の上をダンスフロアに見立ててペンを踊らせろ?冗談キツいぜ。
どんだけアガる曲を流してもペンは一切ノってくれないし、それどころか代わりに自分が踊ってたわ。
一体誰がこんなこと言ったんだよ。情報に踊らされただけじゃねーか。
って、ここで上手いこと言っても意味ないの。紙に上手いこと書いて欲しいのよ。
わかる?わかんないか。わかってたらもっとスムーズに書けてるわな。
あーあ。1度でいいから勝手に手が動いて執筆してくれないかなぁ。
→『彼らの時間』2 〜時よ、進め。〜
(改稿 2024.9.8)
踊るように手を動かしたワタヌキ昴晴は、階段の手摺を掴んだ。階段の踊り場で、彼の繊細で美しい手の動きに目を奪われた。
何とか友だちになりたくて、次の授業中に声を掛けた。国語だった。なぜだか心臓が跳ね上がるように速く打った。
「時を告げるって、なんか大層な言葉だよね」
急に話しかけられた彼は驚いた顔で何度も小さく頷いた。
その日の夜、なかなか寝付けず、「時よ、進め」と朝を待った。新しい友だちと早く会いたかった。それが友情とは違う、焦がれるという感情だと知るのは、もっと先の話だ。
あれから十年。偶然の再会を経て、ワタヌキと一緒に暮らしている。
「おかえり」
「ただいま。あれ? もしかして夕食作ってくれたの?」
「まぁね」
「ヒロトくんは優しいね」
ことある事に、ワタヌキは俺を優しいと言う。褒められている気がせず、彼を遠くに感じることがあるのは、何故だろう?
スーツ姿のワタヌキがネクタイに指をかけた。彼の美しい手が神経質にネクタイを解く。とても絵画的だ。何度も見ているのに、つい目で追ってしまう。
「ワタヌキ、生姜焼き、好きだろ?」
食べたかったやつだーと嬉しそうな声を残してワタヌキは着替えに行った。
ワタヌキは名前で呼ばれることを嫌がる。コウセイと呼びかけても返事をしない。
そう言った垣間見える問題を、いつか二人で乗り切りたい。
そしてずっと一緒に暮らすのだ。笑ったり、喧嘩したり、コウセイと手を取り合って。
二人の時間が今よりもっと絆を強くしますように。「二人の時よ、進め」と生姜焼きを盛り付けながら、呟いてみた。
テーマ; 踊るように
踊るように
剣舞と見紛うほど無駄の無い動き。
思わず後退りしてしまいそうなほど強い圧と覇気。
その姿に強く憧れた。格好良い。素直にそう思った。
いつかああなりたいって、それでいて、ただ。
凄く悔しかった。
ただただ暑い夏だと、早く過ぎて欲しいって思うけど、
楽しい日があると、夏終わって欲しくないって思う。
〇踊るように
入学式当日。学校が目前の通学路にある桜並木の坂道で、俺は馬鹿みたいに口を開けて上を見ながら歩いていた。ひらひら舞い落ちる桜が綺麗で、こんな春の良き日に入学式を迎えられて良かった!と心から思った。好きな季節は春。桜も好き。憧れだった高校に入学でき、待ちに待った入学式。春満開のこの光景は忘れたくないと、目に焼き付けたくて桜を眺めていた。
「あっ。」
と、後ろから声が聞こえ、なんだろと思ったその瞬間。身体前面に鈍い痛み。思わぬ衝撃には頑丈が取り柄の俺も思わず声を漏らしてしまう。
「ィ"〜〜…………」
額を抑えてしゃがみこむ。前方不注意で校門の柱に激突。春の陽気に浮かれてこんな事になるとは、恥ずかしい限りである。
「……大丈夫?」
控えめで冷たげな、けれどもこちらを心配してくれていると分かる優しさが伝わる声。頭上から聞こえるその声は、先程「あっ。」と聞こえた声と同じであった。
えっ、今の見られてた?恥ず〜……。と思いつつ、心配してくれてるんだからなんか言わなきゃな、と立ち上がって後ろを向いた。
運命ってあるんだ、って思った。この15年間生きてきて、ここまで心臓が跳ね上がる事は初めてだった。
黒艶の髪。透き通って触ると冷たそうな程白い肌。こちらを心配するように見つめる大きな猫目。見れば見るほど芸術品のように美しかった。
「だっ……ア、あひヘ……」
聞くも無惨な言葉とも取れない無意味な発音であった。動揺し、言おうと思った言葉が全て吹き飛んだ結果漏れ出た音だった。
目の前の女の子は心配そうにしながらも、眉を顰めて警戒するように俺を見つめた。それはそうである。目の前の男が上を見ながら歩いて前方不注意でぶつかり、心配で声をかけたら意味のわからない言葉を出してジロジロ見てくるのだから。
咄嗟に第一印象!という言葉が脳内を走り、なんとか言葉を口から押し出した。
「大丈夫です!俺、頑丈なのが取り柄なんで!」
「あ……そう、なんだ。良かった。気を付けてね。」
女の子はそれだけ言って苦笑いを浮かべ、そそくさと俺の横を通り抜けて校門をくぐって学校の敷地内へ入って行った。
第一印象最悪だった。このままではマズい。あの女の子に不審人物として覚えられたくないし、今巻き返さないと今後近付けるチャンスなんて無いかもしれない。
今ここで、引き止めなければならない。
俺は続いて校門をくぐり、女の子の背中に向けて「あの!!!」とここ一番の声量を出した。
びく、と驚いた顔で振り向いた女の子に、俺はすぐさま駆け寄る。しかし引き止めねば、と思って声を出しただけで、引き止めた理由なんて何も無かった。強いて言えば、挽回させてくださいだった。
どうしよ、と考えを巡らせてる間にも、女の子の顔は曇っていく。何か、何かないかと脳内の引き出しをガッタンバッタン開けまくっていると、女の子のネクタイの色が自分のネクタイの色と違う事に気付いた。つまり、上級生である。
「あ、あのっ、先輩、っスよね?あの、俺、教室どこか分かんなくて……」
「……あ、新入生だったんだ。」
「そっス!その〜、良ければ案内とかしてもらえないかな〜、なんて……あ、あは……」
我ながら雑すぎる引き止め方である。でももうなりふり構っていられなかった。俺はこの人と絶対に関係を繋ぎたかった。なんでもいいから、こっちを向いて欲しかった。
先輩はちょっと困った顔をして、でも先程よりかは警戒を解いたような顔だ。少しの沈黙の後、先輩は俺と目を合わせて頷いた。
「分かった。案内するね。」
「え!あ、ありがとうございます!!!」
思わず嬉しさ全開の声で大声を出してしまった。先輩はそれに驚いて、「声大きいね……静かにね。」と少し笑って言ってくれた。
その笑顔が可愛くて、俺は絶対にこの人の彼氏になりたいと思った。人生で最初で最後の一目惚れだった。恋に落ちるとは、こういうことを言うんだなと。思いがけない所に、とんでもない落とし穴があると身をもって体験した。
「俺、乾って言います!よろしくお願いします!」
「じ、自己紹介?えっと……櫻根です。」
先輩は困惑しつつも、自己紹介をしてくれた。先程からお人好しが溢れている。冷たそうな見た目なのに、優しくてお人好しだなんて。もっと知りたい。先輩はどんな人なのか。
少なくとも、知り合いにはなれただろうか。第一印象は悪めだけど、これから挽回していけばいいのだ。
高校生活一日目にして、一世一代の恋に落ちてしまったのだ。
俺はルンルンで先輩の後を着いて行く。
これが俺と先輩の出会いである。
恋という言葉の意味を知ったのは、その瞳を通して揺れ動く白のリボンを羨ましいと思ってしまったから。
その白色は確かにいつも私の隣にあった。
普段はボーイッシュでその髪を快適のために纏めていただけの後頭部は、いつのまにか白に侵されていた。
彼と私とあの子、彼はこの3人のグループが楽しいと言った。
彼女もずっと3人でいたいと言った。
苦だったのは私だけ。
貴方が好きだと言ったから綺麗に伸ばした黒髪、馬鹿みたい。
貴方が好きなのは黒髪じゃなくて黒に映える白だったのに。
1人俯く私の黒髪とは反対に、大好きな声に導かれ踊る白色を捉えた。
これは、俺が幼い頃。正確には小学二年生の頃の話だ。
大好きだった祖父が亡くなり、心にポッカリと穴が空いたように傷心した日々を過ごしていた。
親に怒られたときでも味方をしてくれ、たくさん褒めてくれた祖父は、俺にとって大好きで心の支えだった。
そんな祖父が亡くなった寂しさから、定期的に祖父の墓に赴き、その日にあった出来事と、よく一緒に食べた饅頭を置いて、5時の鐘の音が聞こえるまで、ずっと話し込んでいた。
ある日、いつものように祖父の墓に赴いた時、別の人があることに気がついた。その人は、墓場だというのに楽しそうに踊っていた。社交ダンスというのだろうか、見えない何かと踊っているように見えた。
Yシャツに黒いズボン姿で、短い髪を揺らし、ゆらゆら左右に揺れたり、大きく回って髪をふわりと広げたりしていた。その姿が、なんとも素敵で、目を奪われた。初恋をしたんだ。
「きれぇ…」
その言葉に、その人はピタリと動きを止め、言葉の方を探った。ハッとして口を押さえ、下を向いてしゃがみ込んだ。
「だぁれ?んー、君は小さいねぇ」
ゆっくりと話す口調が上で聞こえた。顔を上げると綺麗な人が立っていた。ビックリして尻もちをついた。その人は、ふふっと笑って俺に背を向けた。
「今、丁度ダンスを披露していたところぉ。君も観客として、見ていくといいよぉ。」
と言い、先ほどと同じように空中に手を添えて社交ダンスのような動きをしだした。虚無に笑いかけ、「上手だねぇ」と話しかける姿は、他の人から見たら異様な光景かもしれないが、俺にとってはそんな姿ですら、美しく惹かれていった。
数分のダンスが終わると、その人はいろんな方向に会釈をしていき、最後に俺の方へと向いて会釈をした。
俺は小さな手でパチパチと拍手を鳴らし、目を輝かせた。
「お姉さん…?は、いつもここで一人で踊ってるの?」
「お姉さん…。君がお姉さんというなら、お姉さんでいいよぉ。いつもじゃないよ。お客さんが来た時にだけ踊ってる。」
「お客さんって、おれ…?」
「君でもあるし、君ではない。」
「?」
「あんまり気にしないで。小さな君には難しい話だからぁ。」
「お姉さん、俺にもダンスを教えて」
「残念だけど、教えられない。」
「なんで?」
「君は小さすぎるからねぇ。もう少し大きくなったらねぇ。」
そう言って、断られてしまった。それでも、初恋したあの人と踊るために、俺は何度も顔を出した。祖父の墓参りをしながらも、キョロキョロとあの人を探してしまう。
運が良く、会えた日に「教えて」と言っても、その人は「まだまだ小さいねぇ」とだけ言って、虚無に向かい踊っていくだけだった。
そうして、何日、何ヶ月、何年、何十年と時が流れていった。その人はある日姿を全く見せることはなくなった。俺もその人を思うばかりではいけないと、初恋を諦め、新たな恋に出会い、家庭を築き、80まで生きた。
その頃には、祖父の墓には、今は祖母、叔父、父、母と俺の周りの人たちも身を納めるようになっていった。
ついに、俺の番が来た。俺も年を取って身体が弱くなっていき、一人で生きていけない体になっていった。そうして、あぁ、最後にあの人にもう一度会いたかった。そう思いながら、俺は病院で息を引き取った。
目を覚ますと墓場にいた。地縛霊にでもなったのかと疑ったが、そうではないらしい。死者は思い入れのある場所に49日間いるらしい。思い入れがあるのが墓場とは、なんとも生前の俺を叱ってやりたい思いだった。立っているのも疲れるので、しゃがみ込み下を向いた時、頭の方から声が聞こえた。
「大きくなったねぇ。」
ハッとして顔を上げると、あの人が立っていた。驚いた顔をする俺に対し、その人は口を開く。
「私は、死者と最後の思い出を作るのが仕事。その中でも、ダンスをして思い出を残すっていう不思議な人だよ。」
そうして、その人は手を開いた
「もう、小さくないから、踊りやすそう。」
「結局、貴方と踊ることはなかったから、踊れませんよ。」
「どうせ、49日も時間があるんだ。今から教えてあげるよ。」
その人は俺にダンスを教えてくれた。あのときと同じ動き。楽しいと思う気持ちが増し、周りを見ると、他にも人がいることに気がついた。半透明な姿から同じ幽霊であることに気がついた。この人が言っていた観客は幽霊のことを指していたのか。と初めて気がついた。披露するのは恥ずかしいが、踊ることは楽しかった。そして、暫くすると俺の手から、その人は離れ、叢に向かって言った。
「?」
「だぁれ?君、小さいねぇ。」
そう言われて出てきたのは小さな男の子。あの日の俺と同じだ。輝かせた目に、少し赤く染めた頬。きっと、あの頃の俺も同じような顔をしていただろう。
なら、この人の魅力をもっと伝えたい。あの日と同じように、この人を輝かせたい。そう思った俺は、戻ってきたお姉さんと共に、精一杯踊った。
お辞儀をした時、小さな弾ける拍手を聞き、なんとも嬉しくなった。
No.28 _踊るように_
《踊るように》
ぽん酢の酸にまみれながら喉を通り過ぎてゆくシロウオ 快晴の砂浜美術館でひらひらする1000枚のTシャツ いましもあつあつのお好み焼きにふりかけたかつお節のうごめき
貴方からの通知を受け取っただけで
踊るように脈が跳ねる
君は踊るような音を感じたことはあるだろうか。
重力を感じなくて、
さっぱりとしているような。
そんな音。
まあ、僕が勝手にそう思ってるだけだけどさ。
そんなふうに人生も生きられたらなって
ときどき思ってしまう。
過去のこと
未来のこと
考えすぎずに、
思い詰めずに、
ただ今を生きて。
この瞬間だけを生きてみたい。
踊るような生き方をしてみたいなって。
ー踊るように
青い空と小鳥のさえずり。
入道雲に突き刺さる飛行機雲。
スマホ片手に音楽を聴きながら、
好きな人との待ち合わせ場所へ向かう。
スッテプを踏むように軽やかに、
まるで踊っているかのように。
きれいに巻いた髪をなびかせながら。
彼のもとへ。
踊るように笑って
踊るように泣いて
踊るように怒って
踊るように微笑んで
貴方の一挙手一投足に目が離せないでいた。
親愛なる貴方の舞台が終わるなら、私は絶対スタンディングオベーションで歓声を送ろう。
そう思っていたのに。
静かな病室の中。
無機質なベッドの上に横たわる姿ごと、どこまでも広がる白に溶けてしまったようだ。
踊るように動いていた貴方は、今やその目を開けることもない。
思っていたよりも早く迎えてしまった閉幕。
まだまだクライマックスは訪れていないはずなのに。
こうも、神とは残酷なのか。
誰もいなくなった舞台上、そこに残ったのは誰も照らすことはないスポットライトのみ。
私は、そのまばゆい明かりを黙って見つめていることしかできなかった。
踊るように、貴方と毎日を過ごせたら
それだけでよかったのに。
踊るように
制服のスカートが踊るように風と揺れた。同時に空気の中に微かに胸が切なくなる柔い冷たさを感じる。
もう、秋が近い。
日々家
先日、久し振りに外国人の友人とたこ焼きを食べました。
その時に、どこかで見た「鰹節が踊っている」というのを教えられた外国人が「可哀想じゃないか!」と泣きそうになっている動画を思い出して、真似をしてみようと思ったんです。
「ねぇ、知ってる?」
「何が?」
「たこ焼きの上に乗っているこれ、踊るんだよ。ほら、今もたこ焼きの上で苦しんでる」
友人はまだ鰹節と言ってもイマイチ理解出来ないようなので、こそあど言葉で表してみました。
友人はまんまと信じ込み、「WOW!本当だ。踊っているよ」と、ましまじと鰹節を見つめました。
「ほら、食べてみなよ。美味しいよ?」と言うと、「そんな残酷な事出来ないよ!」と拒否します。それが面白くて、ひとしきり笑った後、食べ切ってしまったので、お皿を返しに行こうと思いました。
友人はまだ食べていません。「冷めるよ?早く食べてね」とだけ声をかけて、その場を立ち去りました。
「……もう行ったね。ほら、早く行くんだ」
そう言うと、人間はたこ焼きの上に乗っていた"それ"を逃がした。
"それ"は必死に何かを言おうとしている。恐らく、有難う、という感謝の言葉なのだろう。人間は優しく微笑んだ。
"それ"は逃げて行く。命拾いしたのだ。この人間の好奇心や、物をまじまじと見つめる癖に救われた。
…人間は、帰って来た友人に一言こう告げた。
「新たな友達が出来たよ」
「踊るように」
香ばしく焼けた生地に、濃厚なソース。
その上で踊るかつお節。湯気とともにさあお口へ。
踊るように、ではなく、踊りそのものの話です。
貴女は一時期、踊ることに興味を見出しました。それは必要があったからではありましたが、貴女は毎日毎日しっかり練習し、その団体の中で誰よりも上手に踊れるようになりました。
貴女は、地道に努力できる才能をお持ちなのです。
歌だって、同じことでしたね。カラオケで歌ったことすらなかった内気な貴女は、夏休みの間一日も欠かさず練習を続け、休暇明けの合同練習で、歌が得意だった方を青ざめさせるほどの声を披露しました。
今世の貴女は、努力することのできる秀才です。
天才とは言いません。けれど、ご自分が満足できるだけのことを成し遂げる力は、明らかにお持ちです。
どうか、余計な卑下をしたり、過度に怯えたりなさらず、全力で努力を続けてみてください。そうすれば、貴女の道は再び拓けるでしょう。
「踊るように」
自分の体、気持ちが隅々まで、動かされてる。
自分で自分に命令を出してるような。
指先まで、踊るように跳ねる。
動かしたいのか、動かされたいのか。
そんな疑問もどうでもよくなるくらい、私は私を動かしてる。
体は軽い。
気持ちの昂りを感じる。
暫くは収まりそうにない。
踊るように生きていたい。
何も考えず、ただ毎日楽しく。
でも実際、踊るのって大変。
音楽に合わせた動きをしないといけない。
音楽に合わせた表情でいないといけない。
ずっと動きっぱなしかと思えば、止まることも求められる。
それは休みではない。綺麗に止まらないといけない。
気をつけるべきことがたくさんで、すごく疲れる。
私は案外、すでに踊るように生きているのかもしれない。
#踊るように
冬あたりに髪を伸ばしては、
夏にドライヤーで乾かすのが辛くなって
ばっさりとショートにカットすることが
ルーティンになっていること。
…さっきお風呂から出て
ヘアミルクを毛先につけていたら気づいてしまった。
私の知っている
ロングヘアの似合う素敵な人は
足の爪先から頭のてっぺんまで
手入れが行き届いていて
余裕があって
しとやかな雰囲気が出ると同時に
その人の周りが無重力に感じられるほど
明るくて、快活だ。
踊るように生きているように見えて
ロングヘアが最初から彼女に備わっているみたいに
自然体なのだ。
比べるわけではない。
比べるわけではないけれど
汗だくになって乾かし終えたあとの
必死な自分の表情を目の当たりにすると、たまらず
毎年夏の終わりには馴染みの美容室の予約を入れている。
「また、切りたくなっちゃって」
「今年の夏は特に暑いからねぇ」
何年も同じ会話を繰り返しているような気がして
美容師に対して、気恥ずかしさとありがたさが同居する。
温かいお湯が頭にかけられて
たまにしか嗅げないサロン用のシャンプーの香りが店内に充満していく。
…さて、どんな髪型にしてもらおうかな。
私はまた今年の秋に向かって進んでゆく。