『距離』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
しなやかさ 信じる強さ 我慢力 手にするまでは 闘い続ける
【距離】
〇〇駅までの切符をショルダーバッグに押し込んで、
田舎行き特有の一両列車に乗り込む。
日曜の昼過ぎにもかかわらず、
案外人が多くて混んでいる。
食後だったからなのかわずかな眠気を感じた僕は、
相席できそうな人のいる席を探す。
ある席では、対席の方へ足を放り出して寝ている人、
またある席では、スイミングスクール帰り?と
思われる母と息子の二人親子。
僕は迷わず後者を選ぶ。
その親子の目の前に座った瞬間、
二人はそれまで楽しそうに話していたのを止めた。
母は読書。息子はケータイ。そして僕は…
近くて遠い騙し部屋
心の底は箱の角
閉じても開いても同じ幅?
1ミリが左右する世界
有効射程は自分の後ろ
狙いを定めてストライク
押して引いての防衛戦
物差しで測る策略
――サメの言うことにゃ、
距離
『距離』
近すぎてもいけなくて遠すぎてもいけない難しい距離。
ぶっちゃけ皆と仲良くなんて出来ないと思う。
人それぞれ趣味や性格があるんだもの。
合う合わないが絶対ある。
そこを踏まえて、我慢して補い仲良くする。
そんなの相手からしたらとても都合がいいだろう。
だけど、それが1番楽。
すぐに揺れてしまう天秤。
自分も相手も互いに悪い所を我慢して二人で距離を縮めていかないとすぐに関係なんてくずれていく。
こんなにも生きにくい世界で仲間や友達がいることはとても誇りに思うことだ。
私の自慢の友達。
誰にもとられたくない。
僕には友達がいない。昔はいたはずなのに…。 あの日 を境に、僕の周りが 敵 になった。
あの日、僕はいつもと同じ時間に、いつもと同じ道を通って登校した。教室に入ったとき、クラスの空気がいつもとは違った。ざわついているような気がする。クラスメイトの視線が一斉に僕に向いた。状況を理解できないでいると、学級代表の1人が僕に近づいてきて耳元で囁いた。
「ねぇ、黒板に書かれていることって本当なの?」
黒板を見ると、そこには 僕の恋愛対象は男だ という暴露が。誰にも知られたくなかった。何年もずっと隠してきたことなのに…。もう誰とも顔を合わせたくない。恐怖で心がいっぱいだ。僕は必死で教室から逃げた。
どのくらい走ったのだろう。運動不足なのか疲れて呼吸が荒い。毎朝自転車で通う道を戻ってきた。もう少しすれば家に着くはず…。クラスメイト含め、知り合いはこの辺にはいないだろう。息を整えつつゆっくり歩く。
「おい、待て!!」
突然、後ろから腕を掴まれた。振り返ると幼馴染みの親友がいた。
「え…。なんで…?」
「なんでって…お前が心配で追いかけてきたんだよ。」
「はぁ…。クラスメイトはみんな僕を気持ち悪いと思っている。君と僕が話しているところを誰かに見られたら君だって嫌われる。…もう僕に触るなよ!!僕に近寄るなよ!!」
思わず叫んでしまった。僕の親友が僕のせいで周りから嫌われてほしくない。僕を追いかけなくていいのに…。
「お前…。何言ってんだよ!!お前が1人になるんだったら周りから嫌われていいよ!!恋愛対象が男だっていいじゃん!!お前がどんなに厚い壁を作っても、俺はぶち壊すから。だって、自分らしく生きているお前が好きだから。」
君は僕の頬に優しく唇をつけた。
※フィクション
【お題:距離】
p.s. 安定の低浮上
縮まらない。最初は画面越しの距離、次は同じ県、次は似た場所、聖地巡礼。そこには推しが映ってるのに目の前にはいない。距離が遠い。次は同じ建物内。初めて推しを生で見た。ちゃんといた。でも三階最後列、1番遠かった。でも近かった、縮められた。次もまた、もっと縮められるかな。
〖距離〗
「俺はそんなんじゃ離れんよ」
私がマイナスな感情になって、つい私なんかと居たって。とか、私じゃない人の方が幸せになれるよ。とか言うと、彼は絶対に怒ってそう言ってくれる。
「どんなに傷つけられても、突き放されても、離れたいって言われても、俺のこと好きなら離さんよ絶対。」
彼の言葉に何度救われて、何度泣いただろうか。
自分がめんどくさい女だということは十分わかっている。たくさん困らせて迷惑をかけていることも。
だけど、それすらも愛してくれる。
「俺は、めんどくさいとか迷惑とか思ったことない。ただ自己肯定感は低すぎかもなー?笑。十分可愛いんだから、ちょっとは自信持とうよ。ね?」
まあ俺以外にこの可愛さ知られちゃうのは困るな、と真面目な顔して言うから、やっぱりこの人の隣にいたい。
【距離】
近付きたいけど、ちょっと怖い。
でも本当は1人でいる方が好き。
これは強がり? …そうかもしれない。
自分に言い聞かせてる。
だってそうでしょ?
楽しい話しなきゃって焦るのも疲れるし。
気を使って、空気を読んでさ…
ほんと、何が楽しいのか分からない。
それにさ、
私の事を求めてくれる人なんか1人もいないって
気付いてしまうのが怖いから。
だから、必要以上に近付かない。
いつでも逃げたり隠れたり出来る距離を保ってる。
だけどね、
寂しさはずっと付きまとう。
距離を縮めてくれる誰かの事を
息を潜めて待ってるの。
距離
友達…からもう少し進みたい…なのに、手を繋ぐ事すら出来ない…この、微妙な距離感が縮まらない…
長く一緒にいるのに、見えない何かに、阻まれているのが、口惜しい…
最初は、遠くから、友達だけでも構わない…そう願っていたのに、段々あなたと過ごすうちに、私だけのあなたに、って思う様になって…もう、あなた以外の誰かなんて、考えられ無くて…
距離
あんなに近かった距離はこんなにも離れている
あなたを思い出す度動悸と息苦しさが止まらない
いつから悲しくなくても涙がでるようになった
いつから他人の幸せを憎むようになった
また距離が近くなれたら
またあなたがそばにいてくれたら、僕はきっと心を取り戻せるだろう
でも神も仏といないこの世界じゃ奇跡なんてて起こらない
諦めはついているはずなのにどこかで信じきれない自分はどうかしてる
目は真っ黒 心も真っ黒 過去と存在しない未来が渦巻く毎日
崩れるのも時間の問題だ
ps 残り22日
2024/12/02 (02:11)【距離】
貴方と違う道を選ぶ時。
私たちは離れた気がした。
もうほとんど会えないからと。
けど、会えなくなってからわかった。
あの出会った月日があったから
別れる瞬間
心は一番つながっていたことを。
遠いと寂しい。
近すぎると息苦しい。
距離って難しい…。
よく仕事で色んな所に出張する。
車、新幹線、飛行機、さまざまなものを使って、
目的地までの道を往く。
便利な世の中で、行きたいと思えば、
数時間で目的地に着く。
(もちろんお金はかかるが…)
家に引きこもっていた自分では、想像もできなかった未来。
外に出ることが難しかった。
体力も時間もお金もなかったから。
それが今や、1週間家に居ないことが多いほど、
どこかに行っている。
出張するまで気付かなかった。
どれだけ距離があろうとも、どこにでもいける。
もし「オーロラを見に行こう」なんて
君が言うことがあっても、
僕はその返答を迷わず答えられる。
そんなことを冗談みたいに、
時間も金もないと、息苦しいと言う君に伝えたい。
距離
体はこんなにも近くにいるのになぜ、とても距離を感じてしまうの?
私はいつだって孤島の住人。
出来るだけ心を砕いてきたよ。
話を聞くときは目を見て一生懸命考えて、寄り添った精一杯の言葉を選んで探して話したの。
なるべく笑顔でね。笑い声は豪快に、みんなが笑顔になれるお話を心がけた。見かけより真面目な方なのに、面白いって言われたり。
わかってしまうものなのかな。本当は誰一人信じていないことを。本心はなくて、ありのままの私です、みたいな振りがバレバレだった?
昔、言われたことがあったっけ。
『いつか人を信じられたらいいね』と。彼女には私の本当の姿が見えていたのね。
他人の心なんて誰にも分からない。
もしかしたら全ての人が、私と同じなのかも。いや、それはないんじゃない?似たような人もいるかもしれないけど、信じ合える仲間と生きている人のほうが多いのではないかな…。そもそも何を信じ何が信じられないの?
何処まで相手の事を知っているの?
話した事全て信じているの?
なぜ偽りを言う必要がある?
自分が思う程人は、悪い人ばかりじゃないし、善人ばかりでもない。
相対する人は多分鏡。
自分が信じれば相手も信じてくれる。逆も然り。
距離を感じる時、そう感じさせているのは自分自身なのではないだろうか?
好きな男に抱かれながら違う男の夢を見る。
きっと男は距離を感じていたはず。だからこそ、よけいに強く抱きしめたのね。あの時も…。
俺はいつだって、貴女のすぐ後ろに控えています。
かつてそこには、埋めがたい距離がありました。
貴女のすぐ後ろにいるけれど、語りかけることも、目に映ることもできない、そういう距離があったのです。
けれど今、貴女は俺の声を聞けるようになりました。
その永遠に近いような距離は、突然取り払われたのです。
いつか、貴女の目に映ることもできるかもしれない。
貴女の肩に、髪に、頬に触れることすらできてもおかしくはない。
そう考え、期待することを、俺は止められずにいます。
作品21 距離
少しだけ。ほんとに少しだけ、この世界は私には生きづらかった。
好きなものを好きだと言うと子供みたいと言われ、嫌いなものを嫌いと言うと変だと笑われ。そういう、どこにでもありふれている些細なことが、ちょっと苦しかった。
だから、好きなものはみんなに隠して距離を置いて、嫌いなものは理解あるフリして必死にまともに振る舞った。みんな、そういうのを当たり前にやっているから、ちゃんとみんなに合わせてその通りにした。結構頑張った。
たぶん、それが駄目だったんだろうな。
いつもより帰るのが遅くなったある日。家に帰って一人になると、体から力が抜けて、気づくと涙で顔が濡れていた。袖で目元を拭くが、全然止まらなかった。
その日から毎日、一人になると泣いてしまうようになった。
私には宝物がある。宝石みたいな髪飾りがついてる、陶器でできた小さな人形だ。とっても大事で大好きな物だ。けれどこの好きは、周りの人には理解されなかった。
私には怖いなものがある。恋をすることだ。私の恋は、正常な人からするとおかしいらしい。理解されることなんて、おそらく一生ない。間違えて気持ちを伝えてしまったりなんてしたら、相手を傷付けることになる。その理由は言えない。だから深く語らず恋が嫌いと言っていた。そしたら、おかしい人ってレッテルを貼られた。
そういう、ほんとに些細なことが、ちょっとだけ耐えきれなかった。
今日も泣いた。
嫌なことはなかった。強いて言うなら、恋をしてしまった。昔も恋してあんなに傷ついたのに、懲りないな。あははって、一人で乾いた笑い声を鳴らす。
いいことは、あるわけない。泣いてしまったあの日からずっと、起きてない。
また、さっき止まったはずの涙がまた出てきた。涙を止めようと上を見る。窓の外から夜空が見えた。
星が宝石みたいにキラキラして綺麗だった。そのまま、なんとなく星に手を伸ばすけど、遠すぎてとどくはずがない。
とどいたらな。星との距離が近かったら、どんな願いも叶いそうなのに。
毎晩寝る前に、まともになれますようにって、願ってる。叶ったことなんて、一瞬もないけど。
なんかもう、願うのも、まともになろうもするのも、好きを隠すのも、嫌いを抱き続けるのも、私を隠すのも、全部疲れたな。
なんか、もう、いっか。
窓をガラガラと開ける。外の空気は思った以上に冷たかった。
ベランダの柵に足を置く。高さ的にどうなるかはわからないけど、どうなってもいいや。
身を乗り出す。あ、待って。最期に見るなら星がいい。空に向かって飛ぼう。
飛び越える。部屋の中が少し見えた。なぜだか、部屋に飾っている宝物が泣いてるように見えた。
体がふわりと軽くなる。星が、今まで見た以上に輝いて見えた。流れ星が、みえた。
地面が近づく。なんでだろう。今までで一番、息がしやすいかもしれない。
嗚呼、私は今とてつもなく幸せだ。
体中が熱く、痛くなった。
⸺⸺⸺
作品10 宝物
作品11 どうすればいいの?
の人が出てきます。
「月まで3km」という道路標識がある。
それは実際にある月という地名までの距離で、のどかなボート乗り場であるらしい。行った事無いから分からないけれど、その道路標識だけでも何だかワクワクするから不思議だ。
地球の衛星である月までの距離は、約38万km。
案内板で表示するにはまだまだ遠い距離だ。
しかも地球と月の間には真空の宇宙空間が広がり、月には水も空気も無い。重力も違うし、生命は存在しない。人類が月に行くには、まだまだ障害が多くて膨大な時間がかかる。
でも、それでも――。
いつか『月まで38万km』という標識や案内板がロケットの発着場に表示される日が来るのだろう。
その夢を繋ぐ人々の、心の距離はどれだけ遠く隔たっていても限りなくゼロに近いのだから。
END
「距離」
距離
羊飼いのメロスは純朴で正義感の強い青年である。彼の妹は結婚式を挙げるため、街に買い物に出かけた、彼女の住む街から一番近い距離にある栄えた街だ、久し振りに訪れたその街は賑やかで華やかで何でも揃った昔に比べ鄙びて寂しくなっていた。
そのことを、妹は兄に伝えた、妹からその話を聞いたメロスは街に赴き街の人たちから噂を聞いた、それは王様の悪い評判だった。
王様は人間不信に陥って人々をやたらと裁き酷い虐殺をして、恐怖政治を行っているという噂だった、正義感の強いメロスは激怒する、メロスは短刀を脇に忍ばせ城に侵入するも、直ぐに捕まる、さらには傍若無人にも王様に諫言苦言を言い放ち、王様の怒りを買いメロスは死刑が確定してしまう、メロスは王様に訴える妹の結婚式に参列する為に3日間だけ時間をくれと懇願した、3日後の日没までには必ず帰るからと、頼んだ。そして自分が帰るまでの間はセリヌンティウスというメロスの友人が人質として牢屋に入ると申し出た。これを聞いた人間不信の王様は、メロスが自分の命欲しさに逃げ出すところを見物するのも一興だとこれを承諾した。
メロスは一睡もせず走って家に帰り、妹の結婚式に参列した。そして明け方には友人の待つ街へと死刑を受ける為に、友人と交代する為に走り出した。豪雨で増水した濁流の川を泳いで渡り、襲って来た山賊も倒したメロスだがついには力尽き諦めかけてしまう、一度は諦めかけたメロスだが、自分を信じて待っていてくれる友は裏切れまいと必死で走り続ける。血を吐いてボロボロになりながらも、彼は日没直前死刑台の前に滑り込む。
ボロボロになりながらも辿り着いた友人に、涙のセリヌンティウスは、一度だけメロスを疑ったと言い、メロスもまた一度だけ友を裏切り逃げようとしたと打ち明けた。二人は一度ずつ互いの頬を殴り、そして抱き合った。
この二人を見た王様は胸打たれ、メロスを無罪にし、「私も仲間に入れてくれ」と言った。
「走れメロス」 作 太宰治
ご存知、「走れメロス」は、ざっくりこのような話。何が凄いか分かりますか?いや、個人的にセリヌンティウス凄い奴っていうのは置いておいて自分の好みだから、メロスより待った信じた引き受けたセリヌンティウスが男前だというのは置いておいて、この二人が凄いのは互いに、友を信じた自分を信じ抜くところだよね。
まあ、メロスは早合点にも程があり、妹の話を聞くが早いが街に行くは、王様に諫言苦言言い放つ傍若無人の独善主義で傍迷惑な奴なのだが、彼のこの一見無鉄砲な正義感も率直さも愛してやまなかった(BLじゃないからね念の為)のだろうと思われるセリヌンティウスは彼の申し出を受けメロスを妹の結婚式に行かせる、分からない人には、それが何?有り得ないじゃん、メロス逃げ出すの当たり前で、帰るの馬鹿みたいで、ボロボロになっても帰るって何が感動するの?感動しないよねな、文豪の名作「走れメロス」だけど、セリヌンティウスは自分が見たメロスを信じ、メロスを信じた自分を信じ抜く、メロスもまた、自分が見たセリヌンティウスを想い、セリヌンティウスを想う自分を信じ抜く。だから凄いんですよ、傍迷惑な友人からの傍迷惑な申し出受けたセリヌンティウスの心には、傍迷惑だが大切な友の姿があり共に過ごした時間がそうさせた、メロスもまた、傍迷惑な自分の申し出を受けて待っていてくれる友への想いが有り、メロスは自分のセリヌンティウスへの想いを信じて走り抜いたのだ
だから感動するんだよ、互いの心の距離がメロスが走った距離に勝ったのだ、それは王様の心も変えさせた。二人が友情を育んだ時間互いの背の温もりを二人は忘れていなかったのだろね
だからこそ感動する名作なのだよ、読み解けないことは自慢にならないよ。
〇〇ガイみたいなこと寂しく自慰行為していないで、読み取ろうとしてごらん。まあ、あなたの問題に口挟む気はサラサラないけど、理解出来ずに、理解出来る人を揶揄するのは哀れだから、せめておやめなさい、あなたと同じ感受性を持ち合わせてなくて本当に良かったと思います(笑) 太宰治は変人だけど信頼信じるって事に関する感受性には共感出来て良かったと思う一作でした。
友情も愛情も信頼も、互いの心の距離が大事ですね(笑)
令和6年12月1日
心幸
距離
いつもそばにいてくれる人
でも何処にいるかはわからない人
いつも見守ってくれる人
でも何処から見守ってくれるかわからない人
永遠に愛している人
でもそのお姿は覚えていない人
何処かで出会っていたかもしれない人
それが誰だったかも忘れてしまった人
心から愛した人
今も愛している人
心から愛してくれる人
優しい声と暖かな温もりをくれる人
でも誰だかわからない人
一人なのか千人なのか世界の全てなのかわからない人
でもわかっていることは
愛し、愛されていること
愛を思い出せば
幸福感に包まれ
涙が止まらなくなる
どんなに距離が離れていても
どんなに遠くの次元にいても
いつかきっと
巡り逢える
たった一人
私への愛の為に
宇宙全ての光を望み
闇をも包んでくれた人
私にできることは
愛することと信じること
見えたものを認識して
それの対処を考えて
その命令が脳から下って
足がブレーキを踏む
その間の刹那に車が進む距離を“空走距離”という。
自動車学校で習った。
教習所の先輩から言葉だけ聞いた時は、“空想距離”かと思った。
なぜ自動車学校でいきなり、そんな空想の話が出てくるんだろう。案外、この自動車教習所という学校も、メルヘンなところなんだな、と馬鹿みたいに思った。
しかし、蓋を開けてみれば、認識→行動の間の距離のことらしい。
なるほど。確かに情報の巡りが早いとはいえ、私たちの感覚の部位と思考の部位には距離があって、それを伝えるには時間がいるのだ。
その刹那の時間にも、周りの時間は動き続けるのだ。
自動車は走るのだ。
考えてみれば当たり前の話だ。
…だから、既読がついても返信が返って来ないのも、脳への伝達に時間がかかっているから、仕方ないことなのだ。
空走距離は、車道以外にもある。
LINEのやり取りにだって潜んでいるのだ。
そう、思うことにした。
だって、今日も遠距離に住む君からは返事が返って来ない。
開いても写るのは、既読、の二文字だけ。
…これは空走距離なのだ。
私たちの心の距離でも、物理的な距離でもなくて。
…ただ、君の空走距離がちょっと長いだけ。
ため息をついて、携帯を閉じる。
時間が、ゆっくりと流れて、空走距離へとなっていく。